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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2024年の日記  (最終更新日 : 2024/12/08)
5月の日記 総集編 絵がいっぱいの街

5月の日記 総集編 絵がいっぱいの街 (2024/05/05) 5月1日(火)の記 五月に羽田で
→日本


ダラスからは日本航空機。
なんとエコノミークラスのトイレもシャワートイレになっているのに驚いた。
アメリカの航空会社とは異次元のサービス。
特撮、アニメなどから邦画を鑑賞。

まだ明るい時刻に羽田に到着。
さっそく・・・
アフリカでも受け取り拒否された古いドル札の両替、ジャパンレールパスの引き替えと懸念の指定席入手などがおこなえてありがたい。

東京の実家で旅装を解いて。
さあ近所の本屋の開いている時間に時刻表を買いにいこう。

長年、行きそびれていた地元の寿司屋は…
洋食っぽい店に改装中ではないか。
幼少いらいの継承がまた消えていく。

先回、大将と意気投合したもう少し先の寿司屋さんで、いただきます。
パックズシとは違う何かをいただきたくて。
カウンターの常連さんとコハダ談義で盛り上がる。


5月2日(木)の記 なんてこった
日本にて


時差ボケばっちりである。
とはいえゴールデンウイーク中の「貴重な」平日だ。

午前中は銀行系をまわる。
午後から撮影備品の買出し。

その足で私鉄を乗り継いで、京王永山駅へ。
多摩市乞田にある居酒屋「たぬき」詣で。
今日はお世話になっている愛煙家(僕に言わせれば毒煙家)を伴なうことにした。
駅から徒歩16分と伝えると、さっそくクレームが。
喫煙と歩き嫌いは正の相関関係があるのだろうか。

お店を仕切るのは、映画監督の榊祐人さん。
故・森田惠子さんの縁で知り合った。
この店を僕はすっかり気に入ったのだが…
玉に瑕は、喫煙オッケーなこと。

ところが!
老女将に確認すると、4月から都の条例が厳しくなって店内では遠慮してもらっている由。
僕にはヤッホーである。

連れは「それならこんなところまで来ることなかった」とむくれる。
ところでこのお店はすべての単価が安くて、頼んでみたどれもおいしい。
毒煙家はエイトマンのように煙の禁断症状となると店外に出ていく。

して、なかなか帰ってこない。
別の喫煙家の客と店外でタバコを吸い吸い、話が盛り上がってしまって、とのこと。

にしても、この店の料理のうまさは目を見張るものがある。
てっきり店の故・先代の秘伝があったことと思い込んでいた。
どれも榊さんの研究の労作だと知る。

これまで榊さんの映画の方は2本、拝見したのみだが…
映画監督と料理について考察をしてみたくなる。
僕は映画づくりと料理には通じるものがあると思っている。


5月3日(金)の記 連休の弔問
日本にて


パンデミック中に亡くなった在埼玉の親類のお宅に弔問に行くことにした。
電車をいくつか乗り継ぐつもりでいた。
が、ナント一本で行けてしまった。

日本の首都圏の鉄道網には舌を巻くばかり。
いっぽう、ひとり誰かが身を投げればカオスになるようだけれども。

地方紙マニアの血がうずく。
駅から親類宅までの近辺にあるコンビニをハシゴ。
だが、東京新聞はあっても地元の埼玉新聞を置いていない。
地元の新聞文化を支えてくれよ、県民そしてコンビニ。

親類宅を辞してから、インスタ用の日毎のアート探しも兼ねて付近を少し歩く。
地元のアンテナショップがあった。
・・・ちょっと食指が動くものがあっても値段が高いな。
応援の仕様がない。

帰路、新宿で用足し。
さあ明日は未明から今回訪日の最初のヤマ場に向かうぞ。


5月4日(金)の記 八重桜の木の満開の下で
ブラジルにて


さあ今回訪日の最初のヤマ場に突入。
東京駅始発の北陸新幹線に間に合うよう、東京の実家からJR目黒駅まで荷物を引きずりながら30分以上歩く。

妙高高原駅で、ブラジル以来のアミーガと合流。
懸念の八重桜は…、
なんと満開ではないか。

3月頃だったか、次回訪日予定の5月には妙高の桜の開花の撮影を狙う予定、と日本のさるシンパの人に伝えた。
すると5月の桜なんて(ありうるか)、とあきれられたものだ。

そもそもここは奇跡の場所かもしれない。

アミーガにさらに標高の高いところまで連れて行っていただく。
これか!
ミズバショウの群落に出会えた。

・・・、撮影していくうちに、今回のストーリーが紡がれていく感じ。

それにしても、遠景のみどりのグラデーションには息を呑んだ。


5月5日(土)の記 チョウの記憶
日本にて


日本の日の出は早い。
日の出前、5時前に宿を出て現場まで歩く。

のぼりたての陽をあびる妙高山は、まさしく妙にして高し。
撮ろう。

ほぼひたすら現場に通ってとどまり、模索すること。
おかむら流である。
こんな取材の記憶は…

ここと似た、伊豆大島富士見観音堂での取材とか。
いやさ、それ以上に『すばらしい世界旅行』時代のチョウの取材がより今の状況に通じるかも。

オオカバマダラと呼ばれるチョウの集団越冬だ。
北米大陸北部で羽化したオオカバマダラが、数千キロの移動を行なう。
そして冬場をメキシコ山中やカリフォルニアの森林で集団越冬するのだ。

「私たち取材班」はカリフォルニアを訪ねた。
樹木を覆って越冬中のオオカバマダラの群れの観察と撮影を続けた。
思わぬ発見あり。

ここ妙高では、チョウかと見まがう八重桜の花びらが舞い始めた。
これは撮影がむずかしい。


5月6日(月)の記 ノー壺宣言
日本にて


今日も午前4時台に祐天寺裏を出家。
荷物を引きずること半時間あまり、JR目黒駅へ。
東京駅始発の山形新幹線に。
人身事故がなくて助かった。

寺の駐車場の車中で喪服に着替える。
あわただしい芸能人なみだ。
親類の納骨。

他の寺からピンチヒッターで来たという僧侶の読経が終わり。
列席者のなかで唯一の故人の血筋である僕がお骨を抱えることになった。
え、おや、こんなに軽いとは?

墓地まで担いでいって、カバーを外して、木箱を開けてびっくり。
骨壺がないのだ。
木箱にそのままお骨が入れられている。

このあたりでは、骨壺を用いないのだという。
例によって、理由は不明。

反・統一教会運動の一環か?
自民党の代議士たちに見習ってもらいたいものだ。


5月7日(火)の記 四枚でも三昧とはこれいかに。
日本にて


午前中、左沢線を途中下車して山形県中山町歴史民俗資料館へ。
このウエブ情報を参考にしたのだが…
https://yamagatakanko.com/attractions/detail_2589.html
ナント休館。
この情報には月曜が祝日の際は翌火曜は閉館、と書かれていない。

資料館にはスタッフが詰めていたが、ブラジルから見学に来たと言っても開けてもらえなかった。
せめてウエブ情報をきちんとしてほしい。

午後から、在仙台の友と仙山線沿線で待ち合わせていた。
こんなことなら、もっと早い時間に設定できたのに。
この友は、僕をどこに案内するか、相当に煮詰めたらしい。
行きついたのが、定規如来西方寺というお寺。

門前に土産物屋と食べ物屋が並ぶが、連休明けで閉まっている店が多い。
ここの名物は、三角油揚げ。
アミーゴが選んだ店では、タレにさっと浸けてから焼いたものを供する。
まずはひとつずついただいて。

七味トウガラシ、ニンニク入りトウガラシを好みでまぶしていただく。
おう、よきかな。
なかなかのボリュームである。
けっきょく、三枚ずついただく。

店のおばちゃん、え、もう一枚?と驚く。
聞くと、ひとりで七枚食べた猛者もいるとか。

さらに製造している豆腐屋で揚げたてを一枚ずついただく。
これに醤油をかけるのだが、タレに浸けたおばちゃんのところの方がうまかったな。

一枚当たりの重さはネットで調べればわかるだろうと思ったが、これが見当たらず。
それにしてもこれだけアブラゲを一日で摂取したのは初めてかな。
アブラゲ三昧だ。

サンパウロでは厚揚げ風のが買える。
帰ったら、タレに浸けて焼くのをやってみよう。

久しぶりの友とは、話が尽きず。
仙台駅まで車で送ってもらう。


5月8日(水)の記 渋谷目黒横浜掛川
日本にて


(当日から一週間あまり、そこそこハードな国内ミッションの合間に書こうとして…
この日に何をしたのか思い出せず。
当日のインスタを見てびっくり。
遠距離ミッションの合間の一日で、これだけやったのか!)

さあ大変な一日だった。
まずは渋谷で備品購入。
次に目黒で打ち合わせの昼食。

さらに横浜に出て、横浜トリエンナーレ。
高齢者からも2300yenもとるのか。
ブラジルなら、タダだぞ。
「アートの殿堂」の周辺にストリートアートの乏しいこと。
なんだかキモチワルイ。

さらにさらに静岡掛川まで。
久しぶりの友との待ち合わせまで少し時間あり。
新幹線の静岡駅と掛川駅周辺をさっと歩いてみる。
いずれもストリートアートは乏しいぞ。

われながら、よくこの一日をはたらいた。
(それをすっかりわすれるとは。)
して明日からが、本番。


5月9日(木)の記 三田十三
日本にて


これまで日本の実家から新幹線で西に向かう時は、品川駅を起点としてきた。
が、東急線が新横浜駅とつながったことを知り、新横浜を昨日から使ってみる。
いつも荷物が多いので、なるべく混まない方で。

新横浜、そして新大阪での乗継にはかなり時間の余裕を見ておいたのだが。
いずれもカフェ・軽食の余裕もなくなった。
新大阪から関西学院大学に向かうバス乗り場、これがわかりにくくて。

高速バスで1時間あまり、関西学院大学三田(さんだ)キャンパス到着。
ブラジル日系四世だという女子学生に付き添ってもらい、キャンパス内をそこそこ歩く。
男子トイレ個室までのぞいてみるが、見事にグラフィティタギングステッカーが見当たらない。

3年生4年生対象に拙作『あもーるあもれいら 第二部・勝つ子負ける子』を上映、トークとディスカッション。
上映中もわが意を得たりのリアクション。

質問も絶えず、担当教授とともにうれしい悲鳴。
生きてて、よかった。

担当教官、有志学生らとともに三田駅近くで懇親会。
大阪十三(じゅうそう)の宿に入るのは、0時近くになった。
以前にも泊ったようだが、こんな立派なホテルだっけ。


5月10日(金)の記 地球の裏から日本の負の歴史を伝える
日本にて


十三のホテルの朝食会場がすごい。
朝からタコ焼きまで置いている品ぞろいもさることながら。

日本の修学旅行生、中国語圏のグループ、東南アジアのムスリム女性の団体、等々。
アジアのハブ空港の呈。
ホテル側のスタッフにもムスリムの女性。
食べ過ぎ要注意、テイクアウトのドリンクはしっかり確保。

さあ今日は連泊なのでチェックアウトを気にせずによくて楽だ。
めいっぱい休んでから、万博公園内の国立民族学博物館に行こう。
お目当ては企画展「水俣病を伝える」。
こういう企画展まで実施するみんぱく、あっぱれ。

水俣病に関わることになった人たちに焦点をあてている。
掲げられたことばにわが意を得たりのものがいくつもあり、スマホ撮りしておく。

僕が直接お付き合いした人では、原田正純先生と写真家の芥田仁さんが取り上げられていた。
芥川さんはじめ、何人かの人物の動画が「かけ流されて」いる。
座ってみるスペースもヘッドフォンもなし。

それでいて音量が低く、字幕のフォローもないので聞きとれない。
なによりも他の証言、それ以上にこの企画展以外からの音が多重に流れ込んできている。
同様に錯綜する照明もあいまって、とても証言映像を鑑賞する空間ではないのが残念。

『月刊みんぱく』の特集が「負の歴史を伝える」。
購入。
あ。
水俣病以外にも、ハンセン病、原爆被爆のことが取り上げられている。
いずれも僕がブラジルに移住してから、関わって取材して作品化もしている問題ではないか。

YouTubeにあげた最新作が日本最古のハンセン病療養施設の語り部へのロングインタビューだ。
https://www.youtube.com/watch?v=8uVlRAvZWrA

明日は広島の爆心地近くのカフェ「kitokoi」さんでの上映で、8月に僕が撮った南米の被爆者の証言映像を上映する件での打ち合わせもする。

そして来週月曜には京都から水俣に移ったカライモブックスさんで拙作『アマゾン新水俣病』の上映だ。

確信犯でやっているわけではないのだけれども。


5月11日(土)の記 広島で見るブラジルの先史アートと心霊アート
日本にて


昨夕は大阪十三で国司和宏さん追悼上映と飲み会。
僕の持参したDVDポータブルプレイヤーに異常が生じて。
主催者の用意したノートパソコンはケーブル忘れ。
来場者の持参していたノートパソコンを用いて。
用意した『ブラジルのユーカリ植林と日本』のDVDを読み込めないので、僕が限定公開でアップしてあった動画を流してもらう。

用意してあったプロジェクターも不具合で取り換え。
来場の皆さんはブーイングどころか、こころから心配して応援してくれた。
そのあとの追悼会の自己紹介は、ワタクチが仕切る。
国司さん、これぐらいでカンベンしてね。
して、想像を絶する縁が明らかになってしまった!
これは、あとをひくかも。

さて今日はまず広島へ移動だが…
わが持参のデッキの不具合はケーブルのトラブルと考えて、早朝からホテル近くのドンキホーテへ。
むむ、ない。
9時半開店の梅田のヨドバシカメラに行くか。
開店前から待機、探し物はチョイスに迷うほど種類もあった。
チェックアウト前に、ホテルのテレビにつないでチェック。
うーむ。
いずれにしろ、HMDI端子なら問題なくつなげる。

広島駅にアミーゴの堀江さんが令嬢とともに迎えに来てくれた。
まずは先回と同様、池田屋さんにチェックイン、畳部屋に荷物を拡げる。
上映はキワモノくさくとられそうな題目だったが…、
先回に勝るとも劣らず、よき参加者に恵まれて、懇親会含めて絶好調。
かけがえのない貴重なコメントもいただいて。

宿の入湯は23時まで。
先回は入湯しそびれた。
さらに機材の問題、そして来週のメインの予定に疑問が生じて応酬の要があること、明日明後日と移動と上映が続くこともあって懇親会を途中で失礼させていただく。


5月12日(日)の記 島根邑南町ギアナ高地化計画
日本にて


早朝、土橋の池田屋さんを出発。
雨だ。
傘もささで、荷物を引きずってカトリック教会経由で広島駅まで歩く。
ちょっと寒気がするぞ。

高速バスで島根県邑南町に向かう。
うひゃあ。
これはギアナ高地ではないか。
雨雲と寒気に驚く。

発起人の日高さんと会場に向かってセッティング。
集まるのは数名程度じゃなかろうかなどと心配されていたが。
鳥取からもシンパが駆けつけてくれて、これまでの島根上映会に来場された人たちも。
『ギアナ高地の伝言 橋本梧郎南米博物誌』、絶妙なリアクションをいただいた。

鳥取勢も懇親会に参加してくれて、相撲の話題などで盛り上がる。
ギアナ疲れがにじみ出ていたのか、日高さんが気をつかってくれて、先に休ませていただきました。


5月13日(月)の記 水俣のカライモ
日本にて


島根の山中から、南九州の水俣までぶじ移動できるだろうか?
バスなどひとつまちがえたらアウトだ。

新水俣駅下車。
水俣に立ち寄るのは、3回目だろうか。
徒歩にてとほとほ、昨年に京都から移転したカライモブックスさんを目指す。

ギアナ高地邑南町計画に反転したいほどの厳しい気候の島根邑南町から、夏が香り始めた水俣へ。
シン・カライモブックスはずばり作家の石牟礼道子さんのお宅だ。
なんともゆったり、まったりしている。

奥田さん一家との再会をよろこんでから、新規増築したという濡れ縁でごろりとさせていただく。
奥田順平さんからうかがう水俣かいわいの話は、意外なことばかり。

今回は移転したカライモさんを挨拶かたがたのぞかせてもらってから近くの温泉に、と思っていたが、ぜひ上映をとプロポーズをいただいた次第。
月曜の夕方からにもかかわらず、善男善女が集ってくれた。

鹿児島市から車中泊覚悟で畏友が駆けつけてくれたのには驚き、感激。

「アマゾン新水俣病」と「ブラジル最後の勝ち組老人」、30年以上前にまとめた拙作を再生。
来場の方々に、しかと受け止めてもらった手ごたえあり。


5月14日(火)の記 水俣ちゃんぽん
日本にて


「岡村さんの上映会はやはり特殊な磁場・霊域を形成するのだなと勝手に得心がいった次第です。」
昨日、鹿児島市から車中泊覚悟で水俣カライモブックスさんの上映に来てくれたアミーゴにいただいたメッセージの言葉。
御意。

自動車をたしなまない奥田順平さんに徒歩で目ぼしい場所を案内していただく。
徒歩は、望むところ。
予算をかけずにSF映画が撮れそうな一帯を、当局の視線を感じるような気がしながら、行く。
このあたりのことは、いずれ順平さんが書かれるだろうし、もう書いているかもしれない。

宮崎から所用で水俣に来るという写真家の芥川仁さんが、ぜひ会いたいと連絡をくれた。
うれしい。
奥田さんから、ちゃんぽんが水俣のソウルフードだと聞いた。
港の食堂で、三人でちゃんぽんをいただく。

芥川さんと、上野英信と写真をめぐる話などで盛り上がる。

カライモブックスさんで本を買い過ぎたかも。
東京への帰路、列車でこれらをフリースタイルで読む喜び。
ぎゃっ!
石牟礼道子さんの晩年のエッセイが、今日、奥田さんに案内していただいたことどもとずばり重なるではないか。
「避病院」とか。

奥田直美さんに、くまモンのバッグに買い上げ書物を入れていただいたが…
新横浜に着く前に破れてしまった。
少し別のバッグに移しておくべきだったな。

それにしても、ブラジルのエコバッグよりだいぶフラジャイルかも。


5月15日(水)の記 めんどくさいカフェ
日本にて


今日中に、先の撮影地にふたたび入ろうと考えていたが…
やめる。
みなさんに応援していただいている、自分をたいせつにしたい。

いずれにしろ、今日の午前中はこれに参加してみようと思っていた。
https://www.instagram.com/p/C6JLUXfP8gu/
畏友のシバヤスこと柴田靖子さんが始めた「めんどくさいカフェ」。

コーヒーを、豆の焙煎から自分でやっていれる、という教室。
メンドクサそうだが、柴田さんがガリ版誌『あめつうしん』の最新号に経緯を書いているのを読んで、機会があればぜひと思っていた。
月二回の開催日が、ちょうど今日にあたる。
少しのムリで、希望が叶うぞ。

会場の目黒本町までは徒歩にて。
早めに行って、道中でモーニングコーヒーでもともくろんだが…
それは甘かった。

豆から道具から、すべて柴田さんが用意してくれている。
まずは、東チモール産のコーヒー豆の焙煎。
うむ、ちょっと焦がし気味にしてしまった。

これをぱたぱたと冷ましてから、挽く。
そして、お湯を注ぐ。
うーむ、炒り過ぎで苦みの強い味となった。
お湯がぬるいかも。

いずれにしても、さほどメンドクサくはないではないか。
それを言われると、シバヤスは傷つくという。
ブラジルのわが家では土鍋でご飯を炊いているし、そういうことが苦にならないのです。

二回戦もオッケーとのことで、今度は浅炒りに…
と思ったが、余熱で同じぐらいまで焦げてしまった。

今週月曜から今日まで、地元祐天寺のお寺で収蔵品の特別展を開催中。
これも見ておきたかった。
コロナ前にも一度、訪日時期が特別展と重なり、拝観している。

開祖祐天上人がなかなかの書家とは先回、認識していた。
今回は南無阿弥陀仏の「南」の字がユニークな祐天フォントをヴィジュアルに把握。

それにしても、連日の強行軍の疲れ。
不本意なことが重なり、ノラなくなってしまった現場に行くのをやめておいてよかったと思う。
なにかに守ってもらったとも。


5月16日(木)の記 ユネスコ食文化創造都市
ブラジルにて


出典は日本の文化庁のウエブサイト。
山形県鶴岡市はユネスコ食文化創造都市として「日本唯一の認定を受けています」とある。
ところが他のページも調べていくと…
大分県臼杵市も加盟が認定されているではないか。

僕がたかだかウエブ日記をしたためるのにもこの程度のウラ取りはしているのに。
日本の文化庁は、いったいなにをしているのだろう。

訳あって当初の予定を見合わせて、鶴岡に行くことにした。
朝のバスや山手線があまり混まない時間を見計らって。
上越新幹線で新潟まで、新潟から羽越本線。

午後の鶴岡駅前、閑散としている。
遅い昼食でも…
駅前のビルに入ってみる。
在来作物を用いたイタリアンの店があり、女性スタッフに呼びこまれて。
ふむ、タケノコのアルフレード風パスタとな。

他に客もいなかったせいか、いろいろ説明してくれる。
パスタにもあうという地元の日本酒を頼む。
・・・ワインにしとけばよかった。
瓶はオシャレそのもので、お土産にいただく。
このビル内で鶴岡の在来作物などの展示もあり。

ホテル選びには難儀した。
駅近くで安め、朝食付を選んだが…
おお、部屋は広々、見晴らしもよろしい。
とにかく、今日はゆっくりしよう。

夜は、近くの料金も大衆料金らしいお寿司屋さんへ。
カウンターに座って。
脇に飾られた油絵の額に目がいく。
最上川か。

聞いてみる。
店の女将でもある、カウンター内に立つ若大将の母親がこってりと教えてくれた。
工藤道汪という山形で知られた洋画家の作品だった。
先代の恩師だった由。

すでに故人だが、本人から送られてきていたカード類がきれいに整理されていて。
何枚か持って行ってちょうだいと言う。
もっと価値のわかる人にと辞退するが、ぜひにと言われて。

鶴岡は二度目である。
先回に来た時、致道博物館でだったか、最上川を描き続けた画家の展示を見た覚えがある。
この工藤さんだっただろうか。

女将に在来作物のこと、そしてこのあたりの女性シャーマンのことも聞いてみる。
そうだった、山形でもこのあたりではイタコ系の口寄せ巫女を「ミコ」というのだったと今回、入手した『霊をよぶ人たち』(烏兎沼宏之著)で勉強していた。

それにしてもこのつながりは、なんでしょう?
どうして僕はこんなところに。


5月17日(金)の記 黒い聖母の朝
日本にて


なんだ、この寒さは。
しかも雨に強風。
鶴岡のホテルを午前6時過ぎに出る。

鶴岡カトリック教会の午前7時からのミサにあずかろうと思っての早出。
僕としては珍しく今回の旅には折り畳み傘を持参した。
しかし強風で、数秒ぐらいでオチョコ返しになってしまう。
薄着の上衣もびしょ濡れ。
ハードな道行き。

この教会には以前にも来たことがある。
日本で唯一、黒い聖母像があることで知られている。
像は西暦1903年にフランスから贈られた由。
なぜ黒いのかは諸説あるが、よくわからない。

6時50分台に天主堂にたどり着いた。
聖堂は扉が開かれている。
堂内は畳敷きで、折りたたみのパイプ椅子が並べられている。
誰もいないが女性ものらしいコートが置いてある椅子がある。

黒い聖母像を拝してから着席して黙想。
・・・7時過ぎても、誰も現れない。
いやはや。
7時20分ぐらいになって、聖堂正面の横から何人かが現れた。
平日の朝のミサはその先の小部屋で行なっていて、いま終わったところとのこと。

そもそも壇上には「立入禁止」と表示されていたので、その奥に立ち入ることなど思いもよらなかった。

またの機会があれば。
ふたたび強風と雨のなか、道を間違えながらもホテルに戻ってまずは入湯して体を温める。

以降、午後の早い時間までブラジルゆかりの方々とお話し。
ひょっとすると、面白い展開になるかも。

2週間のジャパンレールパスは今日まで。
帰路は、新潟まわりの方が速い。
が、あえて余目から接続バスで新庄へという山形縦断ルートをとる。

そもそも山形の叔母の納骨に参列するための訪日だったし。


5月18日(土)の記 コインランドリーの矛盾の解決
日本にて


うわ、来週の今頃はもうサンパウロのわが家にたどり着いている、はずか。
昨晩、東北から近畿中国九州までの列島巡礼から都に帰り…
明日は水戸で一泊、ファイナル上映会だ。

午前中は、洗濯ミッション。
地元の情報通の友人に教えてもらった、日中はカフェが併設するコインランドリー。
土曜の日中だけど、マシンも空いててよかった。

このランドリーはベルリンとトーキョーにあるとの説明書き。
「『洗濯』というキレイにする行為なのにコインランドリー自体がキレイでないことを解決したい」というヴィジョンが掲げられている。
・・・たしかにこれまで使用した他の実家近くのコインランドリーは長くはいたたまれず、息が詰まりそうなところばかりだった。
ベルリンも、そんな感じだったのか。

ところがここは心地よい。
持参した活字類を気ままに持ち出して、淹れたてのカフェラテをすすって。
洗濯が楽しくなるではないか。

出ニッポンに向けての体制に入りつつ、
どうやら風邪気味だ。
ノドがひりひり。
土産用のプロポリス飴を自分用にいただく。


5月19日(日)の記 シン・水戸学事始
日本にて


カトリック信徒と称するからには、それなりの義務がある。
たとえば週に一度、日曜のミサにあずかること。
義務といっても、怠っても罰則罰金があるわけでもない。

メンドクサイといえばメンドクサイのだが…
こんなたとえを読んだ。
シャワーを浴びるのが、えらく億劫な時がある。
とはいえ、思い切って浴びてみるとスッキリさっぱり、浴びてよかったと思うような。
ミサや礼拝は、こころのシャワーというたとえだ。

これも習慣になってしまうと苦にはならず、かえって楽しみなことがある。
たとえば訪日中は、どこの何時のミサに行けるかを考えて調べたり。
地方遠征時はけっこうむずかしいのだが。
知らない教会のミサにあずかるのが趣味みたいな感じに。
その地域のいろいろなことがうかがい知れるし。

といいながら、今日はふるさと目黒の目黒駅近くの教会にしておいた。
今日は若い人の洗礼式を兼ねていて、聖堂がいっぱいだ。
ミサ後に長崎純心聖母会のシスターたちも参列していたと聞き、探して声をかけてみる。
シスターたちから思わぬよき知らせをうかがった。

さて、水戸へ。
風邪気味疲れ気味である。
チェックイン可能時刻に定宿に入り、夕方の上映のお迎えまで安静に。
水戸にて、あんせいの大獄、なんちゃって。

第39回目!という水戸にのまえさん岡村作品上映会。
今日のメニューは最新作『消えた炭鉱離職者を追って リオデジャネイロ編』。
この作品は昨年、関西の大学で完成記念の上映会をしていただいた。
しかし大学側に僕の直接の知り合いはおらず、僕が技術面の担当もすることになった。
僕は大スクリーンの横で再生機側の小モニターを眺め、参加者は正面の大スクリーンを見る、というかたち。

上映後に友人から画像と音声がずれていた、と聞かされる。
僕の方のモニターでは問題なかったのだが…
もちろん、素材のDVDも問題なしだ。

それ以降、この作品の上映の機会はなく、今日は東日本初上映でもある。
まことに意にかなった上映となった。
関西では聞くことのなかった貴重なコメントをたくさんいただく。
さらに、驚きでは済まされないことが。
にのまえ店主の眞家一さんが、この作品のなかで移住地のキーパーソンとして語られる人と懇意にしていたというのだ。

その人は旧満州帝国で関東軍の将校だったが、ぶじ日本に戻る。
北海道の炭鉱の先細りとともにブラジル移住に踏み切った。
眞家さんはその人から満州式のギョウザのつくり方を教わったという。

今度は餃子屋も開けてもらいましょうか、と提案。


5月20日(月)の記 土浦港の生存
日本にて


寝具に沁み込んでしまっているのだろうか。
タバコ臭さが抜けきらない水戸のビジネス宿の朝。

ここの朝食バイキングは、納豆食べ放題などなかなかである。
が、今日はほどほどにしておこう。
10時のチェックアウトと列車の時間を照らし合わせながら、出発。
土浦駅で、畏友の櫻田さんと再会。
この作品の主人公だ。
https://www.youtube.com/watch?v=lwrTthVMWfs

回転寿司で会食。
たらふくいただいてから、もう一つの課題の「生存書房」さんの近くまで車で送ってもらう。

「生存書房」のことはやはり在茨城の畏友、写真家の柴田大輔さんから教えてもらった。
https://x.com/seizonshobo
土浦のウオーターフロントにある、昨年開店した古書店だ。
おや、ナント店内に昨夕の上映会にも参加してくれた柴田大輔さんがいるではないか。

ドキュメンタリー作品もつくりての人柄が出るが、古本屋も店主の人柄がにじみ出るというもの。
ああ、ようやく念願かなった。

柴田さんが新居を構えた龍ヶ崎まで車で送ってくれるという。
土浦の古民家カフェで耳寄りな話を聞いてから、いざ。

龍ヶ崎で僕は考古学徒時代、古城泰学兄の向地貝塚発掘調査に参加している。
して龍ヶ崎中央図書館にはわが壮大なトラウマ・師匠の牛山純一ライブラリーがあるのだ。
しかも驚いたことに今度の日曜には僕の一本立ち作品『ナメクジの空中サーカス 廃屋に潜む大群』が上映されるという。

これは今回訪日してから友人に教えてもらった。
残念ながらその前に離日をフィックスしている。

それにしても、尋常ならざる縁だ。
古城、牛山があって今日の僕がいる。

今日のインスタは、土浦港で面白い写真が撮れた。
https://www.instagram.com/p/C7MZT-VPRgu/


5月21日(火)の記 予感展の直感
日本にて


木曜の早朝に祐天寺裏を出家である。
今日明日で混沌を極める実家の使用空間のお片付け、荷造りほかもろもろの残務にあたらねば。

そもそも旅の重さがからだじゅうに。
よろよろと…
実家の寝床周辺に散らばる、日本各地で採集してきた紙モノを少し整理。

一枚のチラシに目が留まる。
ヨーロッパの洞窟壁画ではないか。
「山内若菜 予感展」。
鶴見のサルビアホールにて開催中。
このチラシは、横浜トリエンナーレの会場でゲットしたのかな?
裏面の文字を見ると、太古の洞窟壁画に福島の核の闇をオーバーラップした作品のようだ。
おう、しかも今日21日午後イチで作家のギャラリートークがあるではないか。

他にもいま、首都圏で見ておきたい、見ておくべき展示が…
三つある。
調子に乗っていると、実家の片づけ、荷造り、残務がおろそかになる。

それぞれに行くべき理由、それをやめておく理由をかんがみる。
のこり時間、体調も考慮して…

いざ、鶴見へ。
これは見ておいてよかった。
山内若菜さんのことは僕が知らなかっただけで、かなり意欲的な仕事を重ねていてシンパや応援団も各地にいることがわかった。
ギャラリートークは、ここまで手の内を明かしていいのかな、と思うほど面白い。

被爆後の広島を描いた大作もいい。
そうか、彼女は広島を歩いて、樹木から微生物までの生命力を感じたのか。
僕はつい先日も広島を歩きながら、そうした感覚がまるでマヒして閉じていた。
せっかくの水俣でも同様だったのではないか。

反省。


5月22日(水)の記 パンガシウスとチミチュリ
日本にて


明日早朝の出ニッポンを前に。
実家で諸々の作業。

昼は祐天寺駅近くの寿司屋のランチでもと考えていた。
が、お休みだった。
それではこれもちと高めだが、日本料理屋のランチとするか。
白身魚と野菜の素揚げ定食というのにする。
はて、なんの魚だろう。

聞いてみる。
パンガシウス、とな。
東南アジアのナマズである。
祖国最後の昼食に日本料理屋でフンパツして、東南アジアのナマズを喰うとは。

最後の晩さんは寿司、といきたいところだが。
ひとつ気になったまま食べ漏らしているものがある。
牛丼チェーン松屋の期間限定・チミチュリソースハンバーグ定食。
ポスターにはアルゼンチン国旗とともに「アルゼンチン発祥!」とある。
軽く検索してみてもアルゼンチン発祥はビミョーだが、アルゼンチン風ステーキの添え物ではある。

期間限定なので、かの松屋がどんな味で供しているかも気になるし、食べてみるか。
店内放送でもこれの宣伝で「からいのでご注意を」とな。
さて。
むむ。
トマトソースに油たっぷり、それにハンバーグなので「チミチュリ」そのものが判別しがたいのだが…、
塩からいのだ。
「からい」って、塩からいことだったのか。
すくなくとも僕が南米で知るチミチュリとは異次元のものだ。

いやはや。
ブラジルの親類に写真と簡単なポルトガル語の解説を流す。
・・・、さっそくウケている。

さあ、帰って少し仮眠してから作業を続けるか。


5月23日(木)の記 乗合タクシー独占
日本→


今回の出ニッポンは羽田を午前中に発つフライト。
荷物があるので、これまでなら実家からタクシーで渋谷へ、渋谷からバスで羽田に行っていた。
空港系に詳しい日本の知人が乗合タクシーの存在を教えてくれて。
試してみる。

ふつうにタクシーを予約すると、迎車料金がシャク。
いっぽうわが実家の前にバス通りがあるのだが、ここも流しのタクシーがすぐに拾えたり、10分15分、さらに待ったりで落ち着かなかった。
多少フンパツしても、確実で早い方がよろしい。

え、直前になってやってくる車が変更になったこと、さらにこちらへの到着が遅れるとのメッセージが。
とにかく待つ。

うわ、こんな大きなバンが。
東洋人の運転手だが、ニホンゴは片言だ。
おや、乗客は僕ひとり。

途中、カタコトの中国語で「あなたは中国人ですか?」と聞いてみる。
出身の場所はわからなかったが、次におそらく「瀋陽」と言った。
日本はもう10年以上の由。

空港が近づき「はやい、だいじょうぶ?」と聞いてくる。
乗合とはいえけっきょく僕ひとりだけで、予定より早く着いてしまうのだろう。
いんちき中国語で「OK」と返す。

早い分にはありがたい。
到着すると、さっそくカートを取りに行ってくれた。
深々と礼をされて、申し訳ないぐらい。

そのあとに尋ねごとをしたJALの女性スタッフのこちらをバカにした態度とまことに対照的でした。

さて、以下はオマケ。
トランジットのアメリカ滞在がすでに翌日24日かと思って書いちゃいました。

5月24日のB面・JFKの12時間
→アメリカ合衆国→


今回の帰路はニューヨークで11時間あまりの接続時間がある。
あわただしい接続よりはよろしい。

ニューヨークには戦友ともいうべきアミーゴがいる。
彼も現役で仕事をしているようなので、こちらの都合で束縛もできず。
無断で彼のシマを通過するのもナニかと思い、直前に挨拶のメッセージを送っておく。
もっと早く知らせてくれれば、の返しあり。

到着は第8ターミナルだが、他のターミナルに移動しなくていいようだ。
入国審査、手荷物をいったん受け取ってふたたび流し、あらためてⅩ線検査。
次の搭乗口まで行ってみる。

到着前の機内食は軽食だったが、とくに食欲もない、
洗顔を済ませて、昨今の日本の公園なみに横にはなれないベンチでうとうと。
サンドイッチとジュースを購入、18ドルあまり。
えー、日本円で計算すると2800円!

冷房が効き過ぎて寒いくらい。
こちらは薄着だ。
西日の当たる方に移動。
ひなたぼっこしながら羽田で買った本を読んだり、ふたたびうとうと。

念のためゲートを確認するといつのまにか変更されている。
そんなこんなでそろそろ搭乗時間となった。


5月24日(金)の記 絵がいっぱいの街
→ブラジル


サンパウロのグアルーリョス国際空港に到着。
ニューヨークでの搭乗直前に、アメリカン航空の職員から僕の機内持ち込み荷物はダメ、手荷物あつかいにするとされた。
基準内のサイズなのに。

ノートパソコンは取り出したが、ビデオカメラが心配。
そもそもブラジル発着のアメリカの航空会社の便ではおとがめなしで複数の大型荷物を機内に持ち込む輩が多く、大混乱。
けっきょく僕あたりのおとなしそうで老齢のジャッパにしわ寄せがくる。

この荷物がベルトコンベヤーが止まるまで流れてこず、ビビる。
直前押収荷物は、別のところに置いてった。
タグのチェックもないので、誰かに持っていかれたらアウトである。
ああ、ビデオカメラもぶじ機能。

さて。
おや、シャトルバスの乗り方がまた変わったのか。
ターミナル構内にある自動販売機で乗車券を購入するようになった。
国内線のコンゴニャス空港まで。

金曜の昼前で、大サンパウロ圏の車道の混雑はなかなか。
ようやくサンパウロの中心街に。
ビルの壁面を覆うグラフィティの大作がいくつも視界に飛び込んでくる。

後ろの席に座っている、日本でいえば小学校低学年ぐらいの少年が父親に言う(ポルトガル語)。
「サンパウロは、絵がいっぱいだね」。
まさしく。

さあまた、絵がいっぱいの街での日常の再開だ。


5月25日(土)の記 フェイジョアーダに付きもの
ブラジルにて


土曜日である。
昼は家族にフェイジョアーダを食べに行かないかと提案。
ブラジル飯屋では水曜と土曜に供されるこの国のソウルフード。
連れ合いと子の承認を得る。

さて、どこに食べに行くか。
近所の徒歩圏に何軒も候補あり。
ミナスジェライス料理屋で、という提案を僕が了承。

わが家の至近。
学校の体育館ぐらいの広さがあるが、ほぼ満席。
待たずに着席できた。

フェイジョアーダにはほんらい「バチーダ」と呼ばれるカクテルがサービスで供されてきたものだ。
ブラジルを代表するカクテル「カイピリーニャ」の、ライムと砂糖をより多くしたもの。
最近はこれを催促しないとよこさない店が増えてきた。

催促。
まさしく一口分のプラスチックコップで人数分ゲット。
ビールも頼んだが、これはオーダーを落とされた模様。

土鍋ぐつぐつたっぷりのフェイジョアーダを家族でひーこらと平らげていく。
バチーダは僕が全員分いただくことになり、マンキツ。
途中でビールを再オーダーしたが、大瓶一杯飲み干すのが苦しいぐらい。

ごちそうさまでした。
あ、お店に帽子を忘れてしまった。
皮製の帽子は鶴岡駅前の突風で飛ばされてしまったな。


5月26日(日)の記 ひとりで食べるアジ
ブラジルにて


さあ、日曜の路上市へ。
サカナは…

アジをすすめられる。
たとえば今日は同じ店でxaréuというやや大型で金色がかった魚とcarapauという青魚があり、どちらも日本人には「アジ」として売られている。
どちらも、味はアジだ。
ふつうはニホンゴの方が魚名も細分化されているが、アジはひとアジ違う。

carapauの方を購入。
さて、今日わが家で昼食をするのはワタクチひとりだ。
どうするか。

カルパッチョにするか。
かろうじてタマネギはある。
ピーマンとパプリカも買ってきた。

いやはや美味なり。
明日、戻る家族に遺しておこうと思うが…
またつくるか。


5月27日(月)の記 女帝読後に
ブラジルにて


今回、羽田空港で出国後に3冊の本を無税で購入。
10パーセントは少なくない。

うち一冊は石井妙子さん著の『女帝 小池百合子』文庫版。
ブラジル到着後に読み始めたが、一気に読んでしまった。
ジャーナリズムのお手本というべき力作だ。

単行本の出版は西暦2020年5月、文庫版は今年4月。
単行本では仮名となっていた小池現東京都知事のカイロ時代のクラスメートが、文庫では本名となった。
この人の勇気に敬服、拍手。

それにしても、これだけの本が出版された後で彼女が都知事選で当選をしたというのがショック。
東京都民は、本を読まないのか?
今回、日本で当然この本を読んでいるだろう友人に聞くと「まだ読んでいない」と言うのにも驚いた。

傲慢を極める彼女が今年の都知事選にも立候補予定とのことで、暗鬱たる思いがしていた。
ところが!
日本からのSNSで参議院議員の蓮舫さんが都知事選に出馬表明と知る!

これは面白くなってきた。
日本語の読める人は、まずこの本を読んでいただきたい。

都知事選は在外投票ができないのが残念。 


5月28日(火)の記 アマゾンの女王
ブラジルにて


お人好しがたたって、不愉快きわまること、しなくてもいいことに翻弄されて。
ムカムカ。
それはともかく、用足しの際に。

今日はアサイーとタピオカの店に行ってみるか。
少し値は張るけど。
わが大アマゾンを味覚で反芻しよう。

アマゾンの果物の女王といわれるクプアスーのジュースをオーダー。
クプアスーはミルクとの相性がいい。
ミルク割りで。

うむ、この味この味。
久しぶりのとろけるおいしさ。

日本からの通いのアマゾン取材の際は、クプアスーに接したことがないように思う。
1980年代後半、ブラジル移住後に水銀汚染の件でリサーチに回った時が最初だろうか。

日本でも飲めるようになったというが、日本まで行って飲みたいとは思わない。
が、現地では飲みたいねえ。


5月29日(水)の記 原稿つづき
ブラジルにて


去年いらい、だいぶのたうち回ってしたためた原稿が日本ですでに僕の手の及ばない工程へと向かっているようだ。
粛粛と、そして慎重に。
して、新たな原稿の締切り迫る。

日本のさる大学の紀要だが、学生たちからいただいた感想文をもとに構成してみようと思う。

あわせて今日もおカネの件で外回り。
明日のブラジルは祝日だが、僕にお泊り当番が回ってきた。
時差ボケを活用して、向こうでも原稿作業を行なおうか。


5月30日(木)の記 聖体の祝日
ブラジルにて


今日のブラジルは聖体の祝日である。
カトリックのミサで「キリストの御体」として供される、あれの記念日だ。

あれもカトリック信者にとっては至高のものとされるが、知らない部外者には金魚の餌ぐらいに思われるかもしれない。
大日本帝国時代の天皇の「御真影」や軍旗を想い出す。
宗教的価値ほど、信じる者と信じない者のギャップが大きいものが他にあるだろうか。

そして今日はカトリック信者にミサにあずかることが義務付けられている日だ。
ミサ後に、こちらの身内のところに炊事と泊り番のために出向く。

昼食と夕食の支度とお供。
あいまにノートパソコンを開いて原稿執筆。


5月31日(金)の記 遥かなる古書店
ブラジルにて


まずはこの写真をご覧いただきたい。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=10230358646725018&set=a.3410845544903

SEBOは古書店の意である。
今日はお泊り先からミネラルウオーターの給水に。
その源泉のあたりを散策して見つけたのがこの古書店だ。

ここに何度来たことだろう。
「呼び鈴を押してください」とあるが、さすがに入りにくい。
ネットで調べてみると、そうとうクセのある店のようだが、好きなムキにはたまらないようだ。
またの機会にと次に訪れてみると「外食中」の掲示があった。
こちらも昼食をするなどして待機したが、戻る気配がないままだった。

また別の機会には、呼び鈴を何度となく押しても応対はなし。
店内にはネコの気配があった。

そもそもこの店の前の街路樹に路上生活者が居座っていて「カネくれ」等の要求をしてくるので、長居をしにくいのだ。

そして、今日。
路上の男はいなかったが、
「健康上の問題で電話のみの応対」と掲示あり。
いやはや。

もしも入ったら、なにかしら買わないわけにはいかないだろうかと気をもんでいたが、それ以前に店内に入れる機会があるかどうかが怪しくなってきた。

日本に勝るとも劣らずにブラジルの古書店もクセが強いが、ここはさらに別格と見た。






  


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