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     文化・芸術・スポーツ関係  (最終更新日 : 2003/04/11)
舞踏家: 田中 敏行さん

舞踏家: 田中 敏行さん (2003/04/11)
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氏名田中 敏行
住所サンパウロ州 サンパウロ市
職業舞踏家
生年月日1960年
出身地東京都
渡伯年月日1994年


2001年2月

※東京のどちらの出身ですか?

武蔵野市です。国木田独歩の「武蔵野」という本がありますが、まだまだ僕の小さな頃はその面影がありましたね

※どうしてブラジルに来られたんですか

 来たのが94年の11月で、その2年前に結婚しました。女房がブラジルの日系3世なんです。結婚して初め1年間ぐらい日本に住んでいたんです。1人目の子供が生まれて、その後2人目が生まれることになって、彼女が2人目は絶対ブラジルで産みたいといって、じゃあブラジルで産もうということで来たんです。それが、産まれるともう帰らないっていうんです。はははは。それでしょうがないから、ブラジルに住もうということになったんです。

※じゃあ永住ということですか?

 そうですね。今はそのつもりです。子供がもう3人目も生まれてブラジル人ですし。

※今のお仕事はどういうことをやられているんですか?

 二つありまして、ひとつはダンサー、もうひとつは「動法」というものをブラジルの人たちに教えています。
 動法というのは動きの方法という意味です。日本で整体法というのがありまして、これは人間が持っている本来の力を十全に発揮して自然とともに健康に生きるというために身体を修練していくものなんです。動法は、この整体法の中から生まれてきたものなんです。
 例えば立つということ。何も意識せずに立つということと型にそって立つということは凄い違いがあります。僕らは何気なく立っていますが、能楽師が舞台で立つということは非常にしっかりした型と修行が必要なんです。型を継承していく上で必要な身体の動き、感覚を身に付ける身体技法が動法なんです。

※ブラジルに住んでどう思いますか?

 ブラジルに来て一番面白いのが人との関係が非常にダイレクトにできるということが一番いいところだと思います。アフリカ系、ヨーロッパ系、インディオ系などいろんな人々がいますしね。

※ダンスを通してそういうコミュニケーションをなさるんですか?

そうですね。生徒でもいろんな方がいます。動法というのはいわゆる日本の動きなんですが、ずっと感覚の世界にまで入っていくと、当然共通の部分があっていろんな発見があるわけです。そこで僕自身も発見があります。

※日系社会というよりはブラジル人社会で暮らしていますよね。

そうです。動法を伝えていくにあたって、日本人の中では受け入れられにくいんですね。というのはあまりにも馴染んで近いことですから、知っているわ、とか、それはじいさんがやっていたことだみたいな感じに捉えられて、なんとなく稽古するという気にならないんです。ブラジル人には非常に距離のある世界だから捕われずに入ってきます。権威などに捕われないところはブラジル人の良いところですね。

※ブラジル人を教えていてどうですか?

 最近面白くなってきました。というのは演劇や踊りをやっているプロの方たちが増えてきたんです。とにかく、彼らはものすごく吸収力が早いし、やる気がありますし。

※奥さんもダンスをやられているとお聞きしたんですが。

 妻は、日本で大野和雄(舞踏の第一人者)氏の門下生だったんです。日本に行ったのは踊りだけが目的だった訳ではなく、日本人としての自分のオリジンに興味があったようです。踊りを通じていろんな疑問がでてきたんでしょう。それで僕が井の頭公園で、踊ったり、稽古したりしているところにたまたま友人が彼女を連れてきたわけです。それで知り合ったのがきっかけです。

※奥さんは日系ですけどやっぱりブラジル人ですよね。生活してみてどうですか?

 やっぱりブラジル人ですね。ケンカしたときこっちの女性は強いですよね。いいたいことは全部いうでしょ。日本人だったらだいたいの人は譲るというか抑えますよね。だけどうちの女房は言って言い過ぎて後で後悔する場合が多いです。

※子供さんが3人いらっしゃるそうですが、教育の面で困ったことはありますか?

 8歳、6歳、2歳なんですが、日常的には日本語とポルトガル語の両方をしています。日本のビデオと僕との会話を通じて日本語は大丈夫なようです。これから読み書きの部分で問題がでてくると思いますが。

※子供さんととのスキンシップは結構されているんですか?

 しています。寝る前は本を読んであげたりしています。親戚に日本語の先生がいるんですが彼女によると、常に日本語で話していると大丈夫だと言ってましたので心がけています。

※今後の夢は

日本とブラジルとの交流を持っていきたいですね。
去年エンブーを引越しまして自分たちの家と稽古の拠点を設けたんです。エンブーまで行くと(サンパウロから35キロ)結構環境もよくて、ちょうど理想的なところがあったわけです。外国からサンパウロに来たときに、いい環境があれば凄く楽しいんじゃなかいという気持ちもあったんです。1,2週間泊まっていただいて一緒に稽古したり研究したりすることができれば、ゆっくりしていただけるし僕らのためにもなりますし。
 6年こちらに住んで、いままでは一生懸命火をおこしていたかんじなんですが、何もしなくても生徒さんが集まってきてくれるようになったし7年めになってなんとか軌道にのってきたかなという感じなんです。

※今の日本についてどう思いますか

 この1年半ぐらい日本に行ってないし、情報が切れているんですよね。
僕が日本にいた頃とは基本的には流れは変わっていないと思います。
僕らの観点からいえば腰がしっかりしてくれば、どうにでもなると思います。学校が悪いとか社会が悪いとかいろいろ文句いうでしょう。でもそんなことは結局はどうでもよくて自分自身の問題なんです。自分自身ということを省みれば、自分の腰がしっかりしてくればなるようになる。あるいは思うようになると思います。腰がヘナヘナしていれば積極さもないし、だから動法やって鍛えていけばいいですね。


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