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熟年クラブ連合会
     エッセイ  (最終更新日 : 2019/02/15)
2017年8月号

2017年8月号 (2017/08/18) この頃の私

サンパウロ中央老壮会 猪野ミツエ
 娘に誘われて、プレジオ(マンション)のアカデミア(スポーツジム)を覗きに行ってみました。先生は四十歳前後の日系二世で「日本で研修してきた」と日本語で応対してくれました。
 体操を始める前に基本的な検査のため、指先と腕に脈拍計を付け、歩行器に乗り十五分したら右ひざが痛み出し、二十分で機械を止めましたが、先生いわく「右足が湾曲しているため、その分、右足が短いので無理がかかります」とのこと。
 心音は六十歳代と、お褒めの言葉を頂きました。
 今年に入ってから、次女の所で世話になっているのですが、長年働いているドナ・アマンダの食事がどれも美味しく、「体重が増えたかなぁ」と思っていた矢先に専門家からのご指摘でした。先生は「減量は根気がいる」と言いながら、その方法を教えてくれました。自分の食べる分量のご飯をお皿に取り、四分の一を片寄せ残す事。惣菜の魚、肉、野菜などは普通に食べてよろしい。簡単のようで難しいのが食事制限。どこまで続けられるかしら?
 目覚めは決まって五時。ベッドの片付けをして、一日の始まりです。外孫を電話で起こし、六時のNHKニュースを見て、朝刊に眼を通し、まず娘が出勤。私はアパートの真ん前の停留所からバスでメトロ・アナ・ローザへ向かう。バス停で待つ間、何となく下半身がぎこちなく、メトロのパスを出すのに時間がかかるのでよく見ると、スラックスを前後間違えて穿いていた。熟連に着くなり、トイレに直行。顔から火の出る思い。今、思い出しても恥ずかしいことでした。
  ― ◎ ―
 時雨のつれづれ肌寒いある日の朝、いつものように一番前の特等席にいたら、イビラプエラ公園を過ぎた頃、中年浮浪者が所帯道具を肩にバスに乗り込もうとして、運転手ともめていたが、強引に乗り込んできた。一瞬、臭気が…。鼻を押さえて後部座席に移ったが、バスが揺れる度にその臭いが広がり、一日中胸が悪かったです。
  ― ◎ ―
 六月に入ってある日のこと。メトロ・アナ・ローザで二人の青年が前の席に座りました。一人は大きなムッシーラ(リュック)を背負い、両手に大きなカバンを抱げていました。連れらしい相手は小さなカバンを肩にしていて、友だち同士にしては、一人にだけ重いものを持たせ理不尽だなと思ったりしました。
 体操に行き、Tさんに話したら「自分のことに気をつけて、人のことは干渉しないの。バカね」。またしても年寄りのおせっかい。
  ― ◎ ―
 連休明けの六月十九日。いつもの如くバス、メトロでジャバクアラへ向かうと、メトロは満席。譲られた席に着く。隣の青年は堅気のサラリーマン風。斜め向かいの娘さんは心地よさそうにこっくりこっくり。向かいの席には四十歳代のご婦人が携帯でやり取り。様子からして、相手はご主人らしい。だんだんと言葉も荒れ、声も大きくなり、隣の娘さんもびっくり目を覚ました。別の青年は苦笑いで、目のやり場に困っている。そのうちに感極まり、携帯を私に投げつけ、次の駅で謝りもせずに下りて行った。
 泣きたいような一コマを見たり聞いたりして、メトロ、バスのお世話になっている毎日です。


如空の百人一首の恋歌

書道愛好会名誉会長 若松如空
歎(なげ)きつつ
ひとり寝(ぬ)る夜の
明くる間は
いかに久しき
ものとかは知る
【右大将道綱母】

 「あなたがいらっしゃらないので、なげきながら独寝をする私にとって、夜の明ける時間がどんなに長いものか、あなたにはおわかりでしょうか」という歌を作ったのは、蜻蛉日記を書いた作者です。当時、三美人の一人と言われ、美人だけでなく、歌人としても優れていました。摂政として、権力者だった藤原兼家が妻がありながら通って来て、のち、右大臣となった道綱を生んだのだけれど、その後、さっぱり通わなくなり、彼が家の前を車で通り過ぎ去って、他の女のもとへ行ったことに怒り百倍。久しぶりに着た彼を門前払いしたそうです。王朝の女の哀れさがよく理解できます。


思わず吹き出すような地名

名画友の会 安田功
 吉田兼好の徒然草ではないが、徒然(つれづれ)なるままに世界地図や穴場ガイドを見ていると、思わず吹き出してしまう様な地名、州市名や山川名を見付けたので列記する。
 まず、世の男性の心情を象徴するような地名がオランダにある、その名もずばり「スケベニンゲン」。皆さんも昔、大人に隠れてこっそりと読んだ経験があるはず、その通り「エロマンガ島」があるのがバヌアツ共和国、「イロイロ市」がフィリピン共和国。小学生が爆笑するような「珍小島=ちんこ島」が北海道にあり、「チンポー湖」が中華人民共和国にある。それが成長し少し大きくなって、イドネシア共和国の「キンタマー二高原」となる。
 一流大学を何回受けても落第「がっかり島」があるのが岩手県。その浪人生や両親の心境を吐露しているのが、北海道にある「ヤリキレナイ川」「コマールノ市」がスロヴァキア共和国。
 豊乳手術が盛んに行われ、シリコン製造会社が大儲けしているのか?アメリカ合衆国の「ボイン・シティー」。アイルランドの「ボイン川」。カナダの「アシニ・ボイン山」。
 昔の東映映画会社のヤクザ路線で、物故した高倉健を彷彿とさせる「オトコ谷」があるのがニュージランド。〈いぼころり〉が売れて売れて一財産築くことが出来るかも知れない「イボ島」があるのが、モザンビーク共和国。
 世の中の自称インテリを〈インテリ馬鹿〉と言うらしいが、それに匹敵する地名がある。「アホ」(アメリカ合衆国)、「アホバッカ」(スリナム共和国)、「バカ山」(インドネシア共和国)、「トンマ島」(ノルウェー王国)。
 子供の頃、大人から食べ合わせが悪かったら下痢をすると教わった。これを合食禁(がっしょくきん)や食合禁(しょくこうきん)と呼称する。蛸(たこ)やウナギと梅干、カニとカキ、若布(わかめ)と葱(ねぎ)等、ドイツの炭鉱町の炭鉱夫は、余程食べ合わせが悪いのか、名は体を良く表わしている。何しろ「ゲリバラ炭鉱」と言うのだから…。ゲリの次に来るのが言わずとしれた「シリフケ島」(トルコ共和国)、更に「オナラスカ市」(アメリカ合衆国)、「シリアナ県」(チュニジア共和国)、イタイプーならず「ワインガプー地域」がインドネシア共和国。それをすっぽりと包むのが「パンティー山」(マレーシャ)。
 鳥取県の男衆は、巨根の持ち主が多いのか「巨根橋」があるが、これは「きょこんばし」ではなく「おおむねばし」と読む。妄想を逞しくして読み間違わないで下さいね。
人から理不尽なことをされたり、言われたりすると「むかつく」が、漢字では「向津具」と書き、鳥取県にある。
 四国の一つの県は、アデランス婁(かつら)社が繁盛しそうなハゲ頭が多いのか「半家駅」と漢字で書き「はげえき」と読み、高知県にある。
 日本の企業のお偉方や、政治家達は、何か不祥事が生じたら直ぐ謝る「後免=ごめん」と、その地名が高知県にある。
 日本人は温泉大好き所変われば品変わる、ハンガリーには「キラーイ温泉」がある。
 世界的に研究が顕著なのは、アルツハイマー症状で「ボケ」ないようにそれぞれ予防策を講じてはいるが、なかなか思う様にならないのが世の常。皆ボケているのか「ボケ州」のあるのがギニア共和国。
 しわ取り整形外科医が喜びそうな地名が、エジプト・アラブ共和国にある「シワ市」。
六本木や渋谷で待ち合わせをしていても、なかなか来ず「マダカシラ街」のあるのがインド共和国。しかたない他の相手を見付けるかと「ナンパ町」がアメリカ合衆国にある。
 思わず意味深長な感じを抱く漢字「女体入口」が長野県駒ヶ根市にあり、「快楽入口」が佐賀県神崎市にある。それと相反するお堅い人達が住んでいる「オカタイナ湖」があるのが、ニュージランド。オーマン国が太平洋の真ん中に鎮座している。いやはや世界地図や穴場ガイドは、良く出来ていますナー。


=齢と共に=「喜び」

サンパウロ鶴亀会 井出香哉
 歳と共に嬉しいことや楽しいことが少なくなった。
 結婚式や誕生日などの目出度いことは若い者が行き、こちらは葬式やミサに行く。
特に私は頭痛持ちなので、フェスタやカラオケの賑やかな中にいると、頭がガンガンしてくるので、騒がしい所には行かないようにしている。カラオケをやっている友だちに「大会に出るから応援に来てね」と頼まれても会場の外で時間を潰して友だちが歌う時に会場に入り、友だちが歌ったら、すぐに帰ってくる。
 老いると喜怒哀楽をあまり感じないらしいが、本当に昔ほど腹が立たなくなった。悲しみの方は身内や知人の訃報に接したり、自分が旅立った後の子どもたちのことを思うと胸が痛くなる。
 楽しみは県人会の年に一回の旅行と熟年クラブの部活動とおしゃべり、そして一品持ち寄りの食事だ。一人暮らしなのでテレビを相手にちょこちょこと食べて終わり、すぐお腹がいっぱいになり、半分、残す方が多い。たいていは一汁一菜と常備菜である。
 戦中育ちなので、何でも勿体ないから無くなるまで、何日でも同じものを食べる。皆で食べると色々なご馳走があって、美味しいし楽しい。
 喜びは息子が小遣いをくれるのと、娘が時々ご飯を食べに連れて行ってくれること、この間、嬉しいことがあった。半日、大学へ行き、半日、仕事を始めた孫が、初月給をもらったからと、お寿司屋さんに連れて行ってくれた。母親を連れて行かないで、私を連れて行ってくれた。夢にも思っていなかったので嬉しかった。おまけに「もう三年したら卒業式だから、バアちゃん、元気でいないと式に出られないよ」と言う。孫の卒業式に出られるように頑張って生きなければ、と欲張って、セッセと歩いている。


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