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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2005年4月号

2005年4月号 (2005/04/25) 俳句 (選者=栢野 桂山)


物語多き水郷お茶の花
帰燕舞ふ平和な村をゆるやかに
【中川 操】

評:
 水郷と言いお茶の花と言えば、すぐ岡本寅蔵氏と夫人の俳人で「茶の花」の著者久江さんことと、シャー・リベイラ(リベイラ地方の茶)を想い起す。又水郷の物語りと言えば、夫妻がインドのセイロンから国法で厳禁されているお茶の種をパンに詰めて持ち出して帰伯された物語りを想い出す。その他物語りの多いのが、移民のふるさとレジストロである。


同じ陽が登りて暮るる去年今年
春うらら米寿の媼の恋のホ句
【大岩 和男】

評:
 句会で艶かしい恋を詠んだ句が出て高点となった。誰の作かと思ったら意外や意外、今年米寿の媼であった。米の字を分解すると八十八になるので、その長寿を祝う風習が古くからあるが、米寿となったこの作者は元気溌剌、恋の句は手馴れたもの、誠に春うららかな句会となった。


緑陰のバンカ人呼ぶ巴旦杏(ハタンキョウ)
プラネタリウム見て居る様な星月夜
【野村 康】

評:
 天体の運行を人工的に丸天井に投影する装置で、(サンパウロ市内の)イビラプエラ公園にある。普通はプラネタリウムで天体を見て星の知識を得るのだが、これは晴れた夜の星月夜を仰いで、プラネタリウムを見る様だ―という、全く逆の着想でそれが面白い。


草いきれ染みし野良着や厨妻
百姓の土しかと踏む草いきれ
【吉崎 貞子】

評:
 夏草の茂りが烈日に灼かれてムンムンとする熱気のある匂いが草いきれ。それが野良着に染み込むとは、男と同様に早朝から遅くまで働いたのであろう。その野良着を着替えもせず、腹を空かせている一家の夕食を作る―という働き者。まるで移民妻の鏡のような奥さん。


老ひてなほ馴染めぬものに夏毛布
嫁ぐ娘に浴衣ほどきし夏布団
【宇佐見テル子】

評:
 昔の新移民時代に、浴衣を仕立て直して娘の花嫁衣装にした、という話が筆者の身近にもあったが、それに競べると浴衣をほどいて、薄くて軽い夏布団にして嫁ぐ娘に持たせたというのは、移民の生活に少し余裕ができたからであろう。前句の移民妻の鏡のようは働き者の奥さんのその後の生活の一コマかも知れない。


ウルブ(ハゲタカ)舞ふ夕立一過の蒼い空
カップルの話途切れて滝の音
【阿久津孝雄】

絆てふハイビスカスの花言葉
こきこきと手首の鳴りて髪洗ふ
【香山 和栄】

初物の遠き思ひ出蜜柑の香
戸にはさみ四歳児の知恵栗を割る
【畠山てるえ】

虹の橋くぐり羊の群が行く
苦しみを試練と友の年賀状
【彭鄭 美智】

さまよふて居しがががんぼ失せにけり
蟻の塔殖えて切売り住宅地
【佐藤 孝子】

牧守の灯ともし頃を初蛍
飛んで来て山家の米搗蛍かな
【中川千江子】

母の居ぬ厨は淋し初かまど
鰐の木の肌脱ぎ若さとりもどし
【樋口玄海児】

追ひ抜かれつつも片蔭吾もいそぐ
冷奴心安らぐ一日暮れ
【玉井 邦子】

新世紀の世界はかわる雲の峰
新春や太鼓披露す米寿の宴
【林田てる女】

再三の洪水告ぐるテレビ見る
美しく金星輝く夏の夜
【小野浮雲生】

旅の果て甘露の如くマテ新茶
誰待つや一夜の命月下美人
【遠藤 皖子】

老いて子に従ふ習い雑煮餅
初句会同じ道行く人親し
【前橋 光子】

針とばす獣に怯む晩夏かな
歌詠みの亡き母偲ぶ星月夜
【本広 為子】

朝顔の小さく咲いて今朝の秋
枝切れば蟷螂落ちて地に怒る
【杉本てる子】

又会ふ日約し別るる花カンナ
朝市に秋立ち旬の野菜果樹
【菅山 松江】

今更に惜しめる月日十二月
剪定の枝の蟷螂怒り落つ
【梅林 千代】

庭広し花木を植えて老楽し
松手入庭の格調高めけり
【上辻 南竜】

パッカ(牛)肉淡白な味刺身とす
食卓に活け鈴蘭に談笑す
【上坊寺青雲】

病三つ持つ妻支へ暑に耐えて
大地割り切先赤きミイリョ(トウモロコシ)の芽
【中井 秋葉】

サングラス心かくしてゐる親娘
捕虫網追う子に高しモルフォ蝶
【小橋矢介夫】

年明けぬ気合をかけて生く余生
弱まれる心支えるホ句の秋
【稲垣八重子】

乗初のカローナ(相乗り)句友でありしかな
汗の香の男臭しや孫十七
【岡本 朝子】

海に逃げ山に逃げしてカルナバル
カルナバルドラマの名優総出かな
【杉本 鶴代】

八十路過ぐ沁みじみ記す初日記
月光に照らされ老の夕端居
【矢野恵美子】

雲の峰今し隠れてヘリコプター
一億の賞金ゴルフ雲の峰
【名越つぎ代】

日記買ふ三日坊主を自戒して
上向いてコッポデレイテ(花の名称)雨を待つ
【菅原 岩山】

妻と旅一千キロや雲の峰
鰯雲月のまわりをはなやかに
【成戸 浪居】

少年の吹く草笛が遠くまで
掘り頃の十アルケールバタタドーセ(サツマイモ)
(注:1アルケールは2・4ヘクタール)
【中原 レメ】

洗髪私の好きなセットして
夏の旅音なき滝の孤独とも
【山田 富子】

雑草の高さ風呼ぶ草いきれ
洗髪笑みを絶やさぬ今日一と日
【軽部 孝子】

車座に入らず草笛吹いて居り
走り根の傷いたいたし大夏木
【猪野ミツエ】

新いもや土割れてきて掘りごろに
新いもやさぐり掘りして子のおやつ
【井垣 節】

豚小舎の裏の茂みの草いきれ
赤白の新藷山積みして八百屋
【阿久津孝雄】

秋空や息子は遠き日本に
葉を担ぎ流れるやうな蟻の列
【川端マツエ】

霧雨に連休帰りのラッシュ事故
火焔樹や陸軍官舎の並木道
【西沢てい子】

留守居して老の小仕事日の永し
大輪の朝顔今朝は十二輪
【近岡 忠子】

男らしくなって来たぞよこの日焼
茄子漬の色つや母の形見とも
【伊藤 桂花】

電灯をめざし大火蛾飛びまわる
ピシーナ(プール)で遊ぶ孫等の日焼顔
【矢萩 秀子】

きびしくも寒さ乗りこえ梅の花
散る梅に残る桜に夢も消え
【熊谷 とめ】

凌ぎよき晩夏のねむり茅の家
でで虫に花芽なめられただ呆然
【藤井 梢】

星月夜更け行く街のたたずまい
カルナバル終えて静かな街戻る
【黒木 ふく】

飢える民救へとどくろのサンバ団
ゲートボールの帰りか白帽緑蔭に
【寺尾 芳子】

草笛を吹きつつ行くはどこの誰
休日の素顔涼しき厨ごと
【武蔵 好江】

草笛やはるかな記憶なつかしむ
自然好き染めたことなき髪洗ふ
【庄司よし子】

念腹忌下戸に徹する弟子一人
楽しかり草の芽俳句と謗らるも
【湯田南山子】

平凡な今が幸せつばめ来る
歌はずになりしサビアを放し飼ふ
【岡田 愛子】

未だ暮れぬ庭夕顔の咲き始む
待望の朝焼叶ふ庭に佇つ
【田県 市子】

しんがりに従く野の道や草いきれ
サングラス似合ひ運転巧みな娘
【永田美和子】

庭の木の真昼の蔭のばら真紅
地平はるかに茜濃き雲の峰
【小坪 悦子】

白梅をたたえ一と日の始まりぬ
一と畝の茎立残る町の畑
【佐藤美恵子】

足痛んで元日きびしき年となり
三ツずつお餅それぞれ雑煮椀
【寺部すみ江】

暑き夜寝返り打ちつ明けにけり
夏痩せて煙草やめない知人たち
【内田千代女】

父と見しにぎわふ燈篭流しかな
書初や我より二世上手な字
【下境とみ子】

月の雨更けてしみじみ人恋し
落せしばかりの紅やパイネイラ(花の名称)
【花土 淳子】

シクラメン衒ひそのまま小鉢かな
さざ波の破顔一笑水の春
【浜田すみえ】

薫風や此処に馴染みて半世紀
新しき命誕生風薫る
【竹内もと子】

望郷の歌碑古る園や燕去ぬ
かなかなに夕ミサの鐘鳴り終る
【栢野 桂山】


短歌 (選者=水本すみ子)


朝毎にパン買いに行く坂の道のぼり下りする距離三百歩
【フェラース 米沢 幹夫】

去年今年世界の国ぐに天災の相つぎおこり恐怖感湧く
【オウリンニョス長寿会 古山 孝子】

亡き父の夢を見たりと夫語る少年にかえりし如きまなざし
夕立の駆けぬけてゆきそのあとに土の匂いと草いきれ満つ
【セントロ桜会 富樫 苓子】

大晦日夜のシチオ(別荘)で降るような星空ながめ新年祝う
イミグランテ(移民街道)の長いトンネル下りゆく時に恐怖さえおぼえることも
【セントロ桜会 板谷 幸子】

年の瀬にやりくり算段の苦労なくわが身いとしみ余生を送る
池の面に花のごとしも錦鯉浮きつ沈みつのどかなる夕べ
【セントロ桜会 上田 幸音】

箸使う伯人の数ふえて来し醤油の中に鮨泳ぐ見ゆ
【セントロ桜会 渡辺 光】

夏と云えど夕べの風は冷たくてガラス窓を閉ざさんと立つ
朝顔の芽吹くを見んと種蒔きし鉢のぞき見る日にいく度も
【セントロ桜会 井本司都子】

夕焼けが梢に映えて一片の雲は西にゆるく流れる
ひまわりを三本育て裏庭はひまわり三ツ咲きて明るし
【セントロ桜会 上岡寿美子】

地下鉄の階段上りて足を止むクヮレズマ(花の名称)満開にほっとひと息
早朝は上天気なりしが俄か雨路傍の傘売りたけりて商なう
【セントロ桜会 鳥越 歌子】

雨期さなか四日五日と曇りいてせまき廊下は干物ならぶ
十年余歌いつづけしカナリアが二〇〇五年は一と声も発せず
【セントロ桜会 大志田良子】

午後二時も過ぎたりと云う故里の川上平野を偲ぶひと時
【セントロ桜会 重道千代子】

痛風で曲り始めし己が指呑み水不足と医師に告げらる
ガラス戸にはりつく守宮逃げもせずま白き卵透きて浮き立つ
【中央老壮会(バストス在住) 信太千恵子】

日系と言えど日本語知らぬ孫其の後は思わぬ事と決めたり
【セントロ桜会 大塚 清】

不憫とは思えど病妻の手首の布除き得ずただ涙もて擦する
【オウリンニョス 金田 敏夫】

祖父ちゃんは百まで生きると娘孫ら言う嬉しき予測亡妻よしばし待て
【サンパウロ 岡本 利一】

はらからと吉野の川原に戯れて小蟹に指をはさまれれしことも
【ミランドポリス 湯朝 夏子】

長雨に僅かな止み間を大切に嫁御はせつせつと濯ぎものを干す
【ピエダーデ寿会 中易 照子】

過不足のなき老い二人の暮らす日々この平凡を安らぎとせむ
【グァイーラ 金子 三郎】

風のはこぶトベラの花の香は甘し夕べ海沿いの道を歩めば
【スザノ福栄会 青柳 房治】

役職の多きをこなし矍鑠と米寿迎えし友を讃うる
【スザノ福栄会 原 君子】

日本の子より届きしカレンダの見事な四季の写真見飽きず
【スザノ福栄会 黒木 フク】

杖つきて出でくる夫を待ちながら隣家の垣根の朝顔かぞう
【スザノ福栄会 青柳 ます】

年の夜のロジョン(花火)鳴りつぎ替わりゆく年をうれうか暈かむる月
【スザノ福栄会 寺尾 芳子】

勤め持つ娘は日曜日を寝ね深し水仕の音に吾は気を配りおり
【スザノ福栄会 野村 康】

夫と吾の米寿と喜寿を祝われて北伯ナタールの旅を楽しむ
【スザノ福栄会 杉本 鶴代】

希望持ち心に太陽を持つ人は常に若くて頼もしき人
【中央老壮会 彭鄭 美智】

南より寒波前線いたりきて今年一番寒い朝くる
五月末秋たけなわの寒い日にヘソまるだしの少女らが行く
【サンパウロ 竹山 三郎】

異国にて祈る祖国の靖国に神と祀らる肉親の霊に
【中央老壮会 大沢 惠子】

よろこびし春の温みも束の間に寒さもどりて冬日にこもる
【サンパウロ鶴亀会 井出 香哉】

棒針は肩のこるとは知りながら今日は編みいる小犬のチョッキを
【グァラニー桜クラブ 苅谷 糸子】

弾みゆく心で踊る靖国祭安らぎてあれ眠れる御霊よ
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部 孝子】

悪しきことも思い出とおきノートより笑って話せる時も来るもの
【ナザレー老壮会 波多野敬子】

明治大正昭和平成四代を生き抜きて我財も無けれど悔いもなし
【S・J・リオプレット白寿会 浅野 三郎】

久し振りに逢えば話題つきなくて老いし二人は刻を忘るる
健康のためと思いて早朝をメトロに乗りて通うゲート場
寒波来てまだ七分開きの桜花を仰ぎ故国を偲びておりぬグァラニー桜クラブ 【グァラニー桜クラブ 内田千代女】

喜びも悲しみも皆つつまれて静かに流れゆく除夜の鐘
かまくらで餅焼き食べしあの頃の遠き昔が脳裏に浮ぶ
雨止みて箒を持ち出し落葉掃く加勢の孫が邪魔にもなりて
【タピライ 杉浦 勝女】

移民とも棄民とも言わるも堪えて来て明日の希望に今を生くなり
札幌の電話帳に島貫と其の名見出し妻の喜び
北国に妻の親戚の栄えるを我が誇とし喜びとする
夕張の炭坑病院に亡き父が勤めおりしと妻云い出す
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】


川柳


剣詩舞の白虎隊にて臥し倒れ
落人と言ふを踊りて足袋裸足
由緒あるダリヤ祭りに秋日祭
子駝鳥の餌を食ぶ空の群蜻蛉
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部 孝子】

独り寝も虫の声聞き安らかに
月登る我の歩みに合す様に
花ユッカ雨にうたれて風情あり
葉桜のそよ吹く風に生気満ち
【サンパウロ中央老壮会 山田 富子】

火酒飲んで我が健康を確めし
節会もせで痩せたきと大食し
老妻の爪を切りやる鋏研ぐ
曾孫抱く親びっくりす雷一つ
ニュースには暗く切なき事多し
【サンパウロ中央老壮会 交告 余碌】

メトロ出て手をかざし見る空模様
夕風の浜辺に立ちて波を聞く
星仰ぎ明日も良き日であれかしと
【サンパウロ鶴亀会 井出 香哉】

雄弁の人が先達老人会
難聴者兎角大きな声を出し
何もせで気忙わしかりき年の暮
武力より人道支援を優先に
前向きに努力惜まず地味な道
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

独断で決められとは気楽な身
災害に貧者の一燈寄せ集め
昼寝して夜眠れぬと愚痴る人
友同志同じ話題を繰り返し
悪童も末大物となる素質
【サントス伯寿会 三上 治子】


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