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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2005年5月号

2005年5月号 (2005/05/10) 俳句 (選者=栢野桂山)


お手製の大きお位牌秋彼岸
百樹の王なりし老松秋の風
【寺尾芳子】

評:
 今年の秋彼岸の三月十九日に西本願寺で、二十日に東本願寺で秋期彼岸会永代経があげられると聞く。その折持込まれたお位牌の中に手製の大きなのがあった。昔の奥地では急にお位牌は手に入らず、家の者が手製で間に合わせたのである。


蟇蛙背に仔を乗せて高歩き
茗荷の子忘れた頃に芽を出して
【井垣節】

評:
 養鶏場などによく、ひきがえるが殖えて、消毒液で死んだ蝿をなめるが平気である。又お玉杓子の足の生えた子蛙を背負って沼から出て来て高々と跳んでいる。それを「高歩き」と言ってさまざまの蟇の生態を眼に見えるように写生した。


朝夕にサビア鳴きくれ荘たのし
椰子の花土人の腰蓑見るごとし
【庄司よし子】

評:
 椰子は色々種類があり、三千種を超える。その中の観賞用の椰子の花房は大きく広がっていて、土人や浦島太郎の腰蓑のようだと感心した。


キロンボの旅情を唄ふ夜の秋
湯の里に初霜を見る客となる
【中原レメ】

評:
 折角遠方から湯治に訪れた温泉宿の朝は、今年はじめて見る初霜が、白く辺りを覆っていてびっくり。それを「初霜を見る客となる」と言って老巧な句となった。


秋の雲牧に一すじ防風林
電子辞書いつも身ほとりホ句の秋
【猪野ミツエ】

評:
 我々作句に精進している高齢者にとって、辞書は欠かせないもの。その辞書には色々あるが、最近は電子辞書というボタンを押すと文字とその訳が現われる便利なものが出回って、句作によく使われる。


霧の町見おろす祠のマリア像
霧晴れてダリア祭の人溢れ
【本広為子】

流木に蝦蟇乗り行手まかせかな
椰子の花池にこぼれて稚魚さわぐ
【阿久津孝雄】

通り雨の雫きらきら草の花
秋彼岸長き参道あるお寺
【杉本てる子】

枝豆食ぶ亡母の優しき声耳に
散歩道清楚な白い草の花
【菅山松江】

枝豆や明日日曜と集ふ孫に
日本の線香封切る秋彼岸
【梅林千代】

太陽を受けて向日葵鼓動うつ
椰子葉ずれもれる光や望の月
【中川操】

パイネイラ一本ほしき我が狭庭
パイネイラ街の十字路にありし頃
【矢萩秀子】

ご挨拶したくなるよな菊人形
そよ風に蓮の葉並の大うねり
【大岩和男】

乳を吸ふ仔馬ふんばる力かな
茶所に育ち二世等茶を摘まず
【小野浮雲生】

紫陽花の今が見頃よ我が狭庭
今少し品よく食べてよ青ミイリョ
【熊谷とめ】

草梅や七十余年の移民歴
パモニアの温くみは母の胸に似て
【風間慧一郎】

友病むと聞いて訪ふべし秋深む
岸壁に砕け白波秋の海
【伊藤桂花】

ガラス越し肌焼くバスの残暑かな
林なす自生のゴヤバや豚遊ぶ
【近岡忠子】

老斑の二の腕さらす秋暑し
甦る茶つみの頃の夏帽子
【藤井梢】

ゆく風と来る風極上星月夜
消せるもの消して生きたしパイナ散る
【浜田すみえ】

匂ふもと辿るとなりの花みかん
日かげでも塩ふく汗の残暑かな
【三上治子】

翻る鳥除け銀紙柿熟るる
道の辺の萩花こぼす露ふかし
【杉本鶴代】

渦巻いて押し寄せる霧夜道行く
なまんだと柿を供へて姑と娘と
【野村康】

朝明や馬の背中にサビア鳴く
アパートを突風吹き抜け大夕立
【軽部孝子】

水浴びしイタプーラの滝河底に
椰子の水飲んで美人に島娘
【宇佐見テル子】

ささやかな年金暮しの年用意
あと幾年生きるか知れぬ髪洗ふ
【下境とみ子】

花椰子や土民の民芸品の市
夕立や急げど進まぬ杖曳いて
【吉崎貞子】

母の許へ急ぐ山路の椰子の花
サビアーの遊び場なりしトマト畑
【森田静恵】

マンションのま上居据る夕立雲
健やかな余生を祈る椰子の花
【山田富子】

島影に消えゆくヨット雲の峰
森林浴冷気おぼえし秋の風
【川端マツエ】

北欧風豪邸点在野路の秋
秋晴れてイタペチの嶺々高く
【名越つぎ代】

日本を恋ふにあらねど帰燕見る
水晶村に一夜泊りの雨月かな
【伊津野静】

大日傘歩道狭しと露天店
行きずりの庭初秋のおもむきに
【伊津野朝民】

母病めばことさら暗し梅雨の宿
連れて来る犬の酔ひたるバス残暑
【前橋光子】

初鶏や酉年の閧高らかに
被災孤児幾万の島雲の峰
【菅原岩山】

息抜きしごとつと止んで春の雷
此の町に音なき朝春の雪
【佐藤美恵子】

レモンの香濃くて旨かり新ピンガ
何処にか知らねどつばめ帰り行く
【矢島みどり】

頼もしき富士の絵姿初暦
夏帽の日系夫婦蟹を掘る
【今田安枝】

ほかほかの石焼藷をほくほくと
スーパーに富有柿並ぶころとなり
【彭鄭美智】

草笛に童謡乗せて孫二人
井戸のぞくこと怖き日々大旱
【谷脇小夜子】

汗拭ふ表彰台のメダリスト
カルナバル果てて再び職探し
【松崎きそ子】

鳥の餌にバナナを吊りて庭の木々
新酒酌み合っては苦労話して
【寺部すみ江】

峠越せばすぐにビル街雲の峰
逝きし友恋えば瞬く春の星
【稲垣八重子】

イビラプエラの湖が気に入り残る鴨
両親に掲げて見せる卒業證書
【木村都由子】

テロの黒衣平和の白衣サンバ山車
双頭の白鷲羽撃くサンバ山車
【小橋矢介夫】

有難や平和な国に老ゆる秋
日焼して老斑少しうすれけり
【上辻南竜】

渋残る口をなだめて熟柿吸ふ
塀越しの声も母似の帰省の娘
【中井秋葉】

紺碧に炎えて輝く夏の海
髪に乗せアクセサリーかサングラス
【郡司はな】

見上げたる背高き孫や子供の日
上着とは脱いで荷になる夏隣
【中川千江子】

二千五年告げて初鶏いさぎよし
正月や子供時代を懐かしむ
【内田千代女】

轟々と引き込まれそう滝の音
若人の足美しき半ズボン
【矢野恵美子】

必要に迫られ学ぶポ語夜学
意気揚々丸刈り頭で入学す
【西沢てい子】

イグアスの滝十二図のカレンダー
難聴の声高電話夜の秋
【名越つぎ代】

コーヒーを飲み初夢を思ひ出し
三王囃子に聖樹の飾りはずす主婦
【佐藤孝子】

雨遠き初夏の大空今日も見て
裾分けのパッカの焼肉乙なもの
【上坊寺青雲】

霊水に手足を洗ふ跣の子
長身の二世三世夏帽子
【樋口玄海児】

針のごと萌えしミイリョや露の畑
野菜なき頃の移民等草摘んで
【桐田張男】

秋彼岸供華に豪華な胡蝶蘭
夜半の月出水汚れの街照らす
【岡本朝子】

仙人掌のサバンナ太古のまつの月
群羊駈け秋草水尾のごと筋に
【栢野桂山】


短歌 (選者=水本すみ子)


縄たばこ揉みほぐしつつしゃあしゃあと日雇い仕事の時間を盗む
【フェラース 米沢幹夫】

進みゆく地球温暖化にこくこくと自然環境かわりゆくらし
【オウリンニョス長寿会 古山孝子】

移りきて七十一年の月日越す同船の友在りて親しき
【サンパウロ 大塚清】

コーヒーの樹の下蔭に育てたる娘に守られて晩境しずか
【サンパウロ 岡本利一】

還るなき乙女の頃よ今一度夢にても見たし切なきまでに
【ミランドポリス 湯朝夏子】

とりわけて遺すものなく日本語を地域の子等に奉仕するなり
【グァイーラ 金子三郎】

愛語交えず遥かに遠く逝きし汝悔めど返らず永久の別れに
【中央老壮会 金田敏夫】

敬老日に貰って帰るシクラメン見事に咲きし白き花々
涼しけな色に咲きたる藤の花散らさぬように風は吹きたり
【ピエダーデ 中易照子】

冬うらら人出の多き郷土祭背中見歩き店は繁昌
和太鼓のリズムに合わせ三才児手脚が踊る母に抱かれて
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

曾孫は小さき靴を脱ぎ捨てて気に入り玩具のあと追いかける
相つぎて友みまかりぬ残されし想いにひとり寂しむ夕べ
【中央老壮会 信太千恵子】

眞赤なるポエーラもうもう立ち籠りゆるゆる行きしパラナ路思う
赤々と夕陽射し込むユーカリの林を行けりジョギングの午後
【サンパウロ 竹山三郎】

ぼけたりと言わるる人も朝夕に花に水遣るまなざしやさし
【サウーデ老壮部 田中夏子】

新年はあの世へ旅の一里塚うれしくもありまたかなしくも
【S・J・リオプレット白寿会 浅野三郎】

束の間の春のよろこびいかにせむ寒さきびしく冬戻りきぬ
休日を一人わが家に留守居して退屈しのぎに花に水やる
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

逞ましく生きよとねがい祈りつつ育てし息子も還暦祝う
子等巣立ち孫もそれぞれ成長し残る人生明るく生きよう
【グァラニー桜クラブ 苅谷糸子】

サンパウロ靖国大祭五十年「愛と平和」を主軸となして
歩く会イビラプエーラの芝生過ぎ皆颯爽とパウリスタ通りに
和やかな老人ホームよ入所者の幸せねがい「つつじ祭り」の人らは
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

久々の青空高く凧あがる長き尾びれが秋空に舞う
ひらひらと花の命は短かかり寒風去りて桜も散りぬ
返したき言葉こらえてゆっくりと老眼鏡の汚れ拭く
春迎え一雨毎に青々と若葉の萌ゆるゲートボール場
より添える小さき傘に降りかかる春雨もいつしか止みおさまりぬ
【グァラニー桜クラブ 内田千代女】

朝霧も水引くごとく晴れ渡り青葉の香り風伝い来る
苗植えて軽くぽんぽん土叩き芽生える春を心待ちつつ
貰い風呂月を眺めてゆっくりと浸ればふとも唄い出すなり
開拓地に身体やすめる野天風呂月と語れば里心出る
庭の花わが悲しみも知らぬげに今日もさやかに咲き誇りいる
【タピライ 杉浦勝女】

丘の上「黄色いハンカチ」のロケ地をばはるかに見つつ夕張を往く
ワサビ利く寿司を食べつつ札幌の名物の一つと噛みしめており
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

「ただ今」と笑顔でかえりくる嫁はイタリア系のブラジル人なり
目ぐすりと血圧薬にたすけられとにかく生きる老いしこの身は
【セントロ桜会 上岡寿美子】

腕時計机上に置きて水仕事明日えのネギも洗いておわる
すずらん灯赤々ともれど雨あとの夜は道ゆく人影見えず
【セントロ桜会 井本司都子】

思いきり新聞投げて走りゆく人それぞれの生きる道あり
青空にとび立つ四、五羽の鳥ありて今宵はいづこのねぐらに宿るや
【セントロ桜会 上田幸音】

この年は吾八十八の歳なるにヘルペス病みて弱りはており
意地悪く痛みのはしる左胸命はとらねどたえがたくおり
【セントロ桜会 鳥越歌子】

みどり濃き木々のはざまに歓喜樹の黄色さやけく咲きほこりいる
朝々を二匹の犬と並木道小走りにゆく七十路のわれ
【セントロ桜会 富樫苓子】

薄日うけパーキンソンにて臥せる友くぐもりなける鳩を見ており
【セントロ桜会 渡辺光】

遠く地平線上の空くれないにそまりつつ朝陽はのぼる束の間にして
ポ語に訳せし宮本武蔵読む人は日数かさねて読みゆくとゆう
【セントロ桜会 重道千代子】

木犀の香る朝を散歩する遠い古郷の道しのびつつ
目前に大型客船ていはくす夜ともなれば不夜城のごと
【セントロ桜会 板谷幸子】

山ほどに廊下にかさなる古新聞過去の出来事思い知らさる
今日の午後写真の整理を思いたち一枚ごとに想い出いっぱい
【セントロ桜会 大志田良子】

強烈なサンバのリズムに興奮が激しく燃ゆるリオのカーニバル
【スザノ福栄会 青柳房治】

夫植えし台湾竹は株増して生活うるおす筍の季節
【スザノ福栄会 黒木フク】

うす青きあじさいの花残り咲く庭を照らせり一三夜の月
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

夏時間もとに戻りて戸惑える時間の針の様にはゆかず
【スザノ福栄会 原君子】

拉致されし吾子が釈放されしとう報せを神の声かとも聞く
【スザノ福栄会 青柳ます】

脚痛むは体重過剰の影響と心咎めつつ量りに乗りぬ
【セントロ桜会 野村康】

平和なりし福博村も年毎に凶悪強盗増えきて厳し
【スザノ福栄会 杉本鶴代】


川柳


白煙で新法皇さま選ばれる
頼まれて嫌とは云えぬお人柄
和かな趣味の集ひを生き甲斐に
子や孫に遠慮無用と云ふけれど
譲られし席に我が齢省り見る
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

お前未だ生きて居たかと手を握り
長々と手紙故郷へ書く師走
親戚の増えて賀状の数を増す
若後家に横恋慕をし寺おわれ(追れ)
僧侶でもお布施の事が気になるか
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

結婚を今ごろ悔ゆる妻なりし
疑問符が多すぎて世は混沌と
あわててももう間に合わぬ歳と知り
スランプを一生抱え何もなし
衣食住足り平穏を噛みしめる
【サンパウロ 竹山サブロー】

テレビ落語笑ひもせずに独り者
お粥炊き一人暮しはいと気軽
夜花火が頭に落つと逃げる孫
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

決断の気持を空につたえよう
戴きし命大切生き抜かむ
巌に穴穿つは水の力なり
耐え忍び信じて愛をたしかめる
大夕立傘用なさずびしょ濡れに
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

朝顔の蕾見付けし夕瑞居
お目出度う言われて気付く我が齢
あれこれと夢がいっぱい我が余生
誕生日孫や曾孫が集ひ呉れ
死者の出て日本は災害多き国
【セントロ桜会 矢野恵美子】

四月馬鹿相手する程暇はなし
リョウマチに葉と根五種食ふ治療法
靖国の桜満開国だより
句友等とバスの旅行も又楽し
肩抱いて久闊を叙す仏連会
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

文明の利器もねずみに噛じられて
とうとうと威張りて己の非を曝し
讃美歌は人種国境越えるもの
【サントス伯寿会 三上治子】





「身辺整理」

高齢者とは我がことか
いつの間にやら登りきし
卒寿の坂を一つ越ゆ
しんどい事よとこぼしつつ
生きねばならぬ運命坂

余生の命限りあり
身辺整理もして置かな
ぎっしり積まれた本棚の
命の俳誌はどうしましょう
箪笥に吊るした我が古着
捨てるに惜しや人にもやれず

夢と過ぎたる我が一生
人生の末期迫り来し
身辺整理いそがるる

何から整理しましょうか
あれも惜しいしこれも惜し
この世の別れの執着心
まだまだ惜しき我が命

命に限りあるとても
心残りのこの浮世
明日からとは思いつつ
身辺整理延ばしゆく
これじゃいつまで手もつかぬ
生への執着ある限り

【イタニャエン 稲垣八重子】


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