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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2005年9月号

2005年9月号 (2005/09/13) 俳句 (選者=栢野桂山)


青空は無限の浄土花まつり
フランスの旅の記念のサングラス
【林田てる女】

評:
 お釈迦さまの誕生を祝福する四月八日、ガルボンブエノ街では稚児行列があり、小さな花御堂が建てられ右手をあげた御像に甘茶を潅ぐ。その日お参りすると珍しく晴れた青空が見え、それが無限の浄土、一切のけがれもない仏さまの住む浄土のように見えた。これは信心深い作者にだけ詠める句。


縄張りの喧嘩も一寸寒雀
冬ばらを売って日当り良きお店
【伊津野静】

評:
 雀はいつも身近に居て親しみ深い鳥。それが冬になると丸く膨れ軒端に日当りを待つが、それぞれ縄張りを主張して喧嘩をする。小さい鳥だけにその喧嘩までが親しく思える―という佳句。


愛人の日絆ふかめしこの指輪
捨て惜しむ愛人の日の羊皮靴
【名越つぎ代】

評:
 曽って恋人から愛の誓いとして貰った指輪は、指に馴染んで断ちきることのできない証となっていて、六月十二日の愛人の日が来ると、高齢となってもその日のことを思い起して、自分の体の一部のような古びた指輪をいとほしむのである。

青首を揃えて宮重大根畑
木藷汁豚のあばらを叩き込む
【纐纈喜月】

評:
 大根は古来おほねと称したので大根の字を当てた―と言われ、種類は色々あり、すずしろと呼ばれ春の七草の一つ。その中の宮重大根は太ってくると土より高く首を出して青くなるので、それを擬人法で青首揃べと面白く詠んだ句。「大根洗ふ首に土橋の土こぼれ」桂山の句がある。


青き野を食い尽したる群蝗
深秋のマヤの遺跡の旅便り
【菅原岩山】

評:
 マヤ族はメキシコ南部に棲むインジオで、紀元前三世紀からマヤ文化を築き、象形文字を持ち、数学、天文学、彫刻などにすぐれていた。旅に出て秋も深まったこのマヤの遺跡を見て廻った。この句は「旅便り」とだけあり、友人から届いた便りか、自分で出した旅便りとも解すが、それはどちらでもよい。


木の葉髪老を忘れし顔の艶
すてきれぬ移住名残の古毛布
【内田千代女】

雑炊に温もり早寝老一人
七月や合宿所めく祖母の家
【岡本朝子】

ユダ人形足蹴に哀し受難節
日本着の異人の娘等も雛祭
【上坊寺青雲】

献楽の筝弾く二世移民祭
追悼歌に涙こぼるる移民祭
【香山和栄】

母の日や老夫も共に祝はれて
再婚の話まとまるアリア月
【木村都由子】

夜寒し寝そびれて聞く波の音
砂浜にパン屑拾ふ小春鳩
【井出香哉】

マンジョカ食べて育ちし我が世代
花白しと見れば葉裏よからっ風
【畠山てるえ】

スキー漕ぐ防寒マスクの息荒く
風花や怪我の血痕残るシャツ
【佐藤美恵子】

三代の母の日祝う目出度き日
夕方の句友の集い秋うらら
【矢野恵美子】

ぬくぬくと干せる布団に冬の蝿
花抱いて愛人の日は夫の墓に
【井垣節】

思い切り大根引いて穴覗く
冬晴や柏手響く今朝の空
【吉崎貞子】

桜祭り上空に凧日伯旗
体調良し切干大根庭いっぱい
【軽部孝子】

悲しみも流して行くや冬の雨
長き夜や思案ころがし詩をつづる
【山田富子】

通学の一里桑の実熟るる道
木の葉髪染めて友人ダンス会
【下境とみ子】

枯牧や牛もあるじも骨ばかり
見初められ農家に嫁ぎ大根引く
【杉本良江】

耳遠き母との手話を日向ぼこ
底ぬけにほがらか娘蝿叩く
【中原レメ】

マンジョカ揚げるはしから孫つまむ
芥と見て払へば飛びぬ冬の蝿
【庄司よし子】

針とばす獣に怯む晩夏かな
歌詠みの亡き母偲ぶ星月夜
【本広為子】

冬ぬくし湖越え畑越えテレフエリコ
七夕や千羽鶴などきらめきて
【遠藤皖子】

鉄路錆び地平に山羊鬚草続く
国境へ一筋道や山羊鬚草
【猪野ミツエ】

年毎に桜の名所増える国
マンジョカ主食に子育てする土人
【阿久津孝雄】

水中体操たったの五人朝寒し
貯水池の日本画めきて冬霞
【西沢てい子】

星冴えて今宵バールも早終い
七色の短冊に秘め願い多々
【矢島みどり】

着ぶくれて小毬のような孫が来る
幸せは布団の中の陽の香り
【彭鄭美智】

むかっ腹たつは寒さか気疲れか
窓際の老へ冬日の集り来
【伊津野朝民】

空曇り暮れ早かりし谷の家
冬陽さす部屋を好みて母長寿
【寺部すみ江】

マンジョカフェジョンありて事足れる
牧枯れて売られ行く牛ふり向かず
【宇佐見テル子】

浅漬けの真面目な味を忘れけり
手抜かりを計られてゐし主婦の冬
【浜田すみえ】

起こされず起きよう日曜日の朝寝
冬の蝿群れして壁の片隅に
【小野浮雲生】

股開き当る焚火の細るまま
呟きつ行く人の背の丸さかな
【伊藤桂花】

頼らるること生甲斐に冬ぬくし
冬薔薇亡き妻居間に在るごとし
【風間慧一郎】

晴れわたり朝虹の濃く橋かけて
坂道の遠くきらめき春の海
【矢萩秀子】

開墾の土湯気立てて冬ぬくし
蹴球の花火に眠る山覚めず
【中川操】

花の乏しき庭冬蝶の低く舞ふ
新婚の孫出稼ぎに冬の朝
【近岡忠子】

桃色の穂の起伏なす脂肪草
混血の孫に看取られ冬に逝く
【大岩和男】

新豆腐に箸水牛の乳試飲
父の日やたらひ回しの父悲し
【中井秋葉】

手ばなせぬ手垢の字引冬ぬくし
走り来る郵便くばり息白し
【前橋光子】

頬被取りて電車の客となる
手仕事のはかどる一ト日冬ぬくし
【杉本てる子】

兎飼ひ日々草刈りに幼き日
何事も素直に老の根深汁
【菅山松江】

息白く新聞投げ込む苦学生
南風吹く街行く人みな前かがみ
【梅林千代】

耕主邸今はムゼウに枇杷の花
恋人の日もなく老いて看とる日々
【佐藤孝子】

冬も尚さつきとつつじ競い咲く
冬ごもり曾孫が二人増える幸
【黒木ふく】

冬ごもり返上着飾りダンス会
和太鼓の少年凛々し寒稽古
【野村康】

寒夕焼休耕の畑赤く染め
眠られぬ耳にするどく虎落笛
【杉本鶴代】

山春日や杖を忘れて百歩来し
胸熱く読む「荒野の人」瓢骨忌
【稲垣八重子】

飢える民救えとどくろのサンバ団
ゲートボール帰りか白帽緑蔭に
【寺尾芳子】

切株に冬日をもらい憩いをり
恋人の日息子夫婦の熱き仲
【竹内もと子】

ジャズミン茶喫し春待つ支那婦人
空港に法度の迷ひ凧一つ
【栢野桂山】


短歌 (選者=水本すみ子)


高見盛のパフォーマンスに拍手湧き仕切り直しの肩盛り上る
【フェラース 米沢幹夫】

寝室の天井に娘のちりばめし夜光の星で夜空を楽しむ
【ミランドポリス 湯朝夏子】

旱りでも蕾ふくらむ庭の花にホース延して土を湿らす
【中央老壮会(バストス在住) 信太千恵子】

壊滅のふるさと恋して山古志に帰りたしとの住民の思い
【オウリンニョス長寿会 古山孝子】

かよわなる体調保持に腐心する骨董化しし五臓六腑は
【サンパウロ 岡本利一】

年金の思わぬ高の差額受く歳をとりては使い途みなく
【グァイーラ 金子三郎】

銀杏の葉血の循環に効くと云う足のほてりの失せるを願う
【ピエダーデ 中易照子】

黄昏に溢るるばかりカンポスの篠懸並木路人ら群れゆく
【スザノ福栄会 青柳房治】

刈りこみしさつきとつつじ競い咲く庭の華やぎ飽かず眺むる
【スザノ福栄会 黒木ふく】

蒸し暑き目覚めし夜半に稲妻が窓にひらめき部屋が明るむ
【スザノ福栄会 原君子】

ベレンまで水泳大会に行く孫に小遣いはずめと祖父ちゃんは言う
【スザノ福栄会 青柳ます】

来世は異なる人に嫁ぐと言う媼よ女にまた生るるや
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

働きし我が手思わすプラタナスの落葉は垣根にやすらうごとし
【スザノ福栄会 野村康】

ビル街をゆるがす如く上る花火サンジョン祭の夜空彩どる
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

最高年齢者との指名受け新年の祝辞述べる我は百才
【S・J・リオプレット 浅野三郎】

ジャラグワーの頂上青き空に浮かび光りて見ゆるテレビアンテナ
【サンパウロ 竹山三郎】

青い目の孫嫁増えてなごやかに家族そろってナタール祝う
【グァラニー桜クラブ 苅谷糸子】

オニブスを待つ間にも指を折り短歌にかける思いは深し
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

今を盛りと咲くイッペーの見事さに盆栽にすればとふと思いみる
【ナザレー老壮会 波多野敬子】

あたふたと地下鉄に入る人を見て余裕のある日々のありがたきかな
寝心地の良き枕そばがらを知ざりしこと友と笑い合う
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

ようやくに小雨晴れたるバス旅行イパネマさざ波ささやく如く
海鳴りの音静まりて頬温し霧の山路を越えて聖市へ
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

ズボンより腹せり出せる中年の足引きずりてわれの前をゆく
【セントロ桜会 渡辺光】

信号の変るを待ちて大通りわたりて子らの家を訪う
朝の陽は昇りくるなり向い家の壁を照らすも時の間にして
【セントロ桜会 重道千代子】

二十年前に旅せし北伯の椰子の葉ずれが思い出させる
胸にしまう誰にも告げぬ思い出を八十五才忘れ得ずいる
【セントロ桜会 上岡寿美子】

朝五時の起床を知らせる目覚ましは今日も一日ファイトと呼びいる
終戦時平壌(ピョンヤン)に居た頃思い出し六十年前を懐しみいる
【セントロ桜会 大志田良子】

テレビ点けひとり食みおりほそぼそと夕餉の卓に子ら思いつつ
難聴の友に声たかめ語れども多くは通ぜず口を閉ざしぬ
【セントロ桜会 井本司都子】

寒風に身なり卑しき男居て車止まれば素早く寄りくる
手の平でつぶれる程の一ぴきの蚊がわが睡眠を一夜さまたぐ
【セントロ桜会 上田幸音】

沼百合の咲き乱れいるかたわらに五、六頭の牛草食みている
マイリンキの義姉の庭より持ちて来しアベンカは年々鉢に繁れる
【セントロ桜会 富樫苓子】

都芯とは思えぬ静けさ休日は弟いかにと便りしたたむ
おくればせカニサボテンの蕾出で日毎ふくらむ花のいのちは
【セントロ桜会 鳥越歌子】

小雨あと一際色ます黄イッペー房鮮やかに夕陽に映ゆる
耕やせば畑は生きいきよみがえり土の香匂う春はそこまで
ふんわりと炊きたてご飯よそいつつ亡夫と向き合い食べし思い出
【タピライ 杉浦勝女】

夜の更けに通る車の音聞きつつ近づく旅行を心楽しむ
混み合えるメトロの階段一段づつ足踏みしめて吾れは降りゆく
季節感うすき国なれど朝市に初栗ありて晩秋と知る
ゲートボール注意されつつ何時しかに習い覚えて生き甲斐となり
【グァラニー桜クラブ 内田千代女】

桑の木を街路樹として植えてあり枝振りも良く実も赤々と
庭の木を丸く刈り込むこの主芝生の手入れも行き届きいて
混み合える自由市場に今日も又珍らしきものなと行きつ戻りつ
自由市自動玩具に孫達があれもこれもと手を伸しおり
自由市運動シャツに漢字あり吾に説明せよと伯人達が
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】


川柳


良き夢の実現する世でありたしと
推敲を重ね重ねて未完の詩
八十路坂神にまかせて登るのみ
百年祭何が何んでも生きぬかん
民飢えても国は体面だけ守り
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

父の日も母のボーロで子等集う
猩々の仕舞を稽古す着袴して
老ク連祝三十周年盛大に
歌手招き南米コンサート始まりぬ
拓魂碑の記念撮影して来たる
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

テレビの音深夜放送低くして
声たてず皮肉な苦笑の口ゆがめ
役たたず口答えだけ人並に
よく喋るだけで中身の無い漢
いつの間に癖となりたる独り言
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

四面楚歌幸運なきにしもあらず
混血孫ポ語と日本語使ひ分け
久闊の友と昔を語り合う
日本見に混血孫は出稼に
成功は素晴らしい子を育て上げ
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

好き嫌い言わぬ躾の出来た人
養国に友人知己を得たる今
道を行く袖振り交すも縁とか
広島と長崎憶ふ痛恨事
信用のならぬ思ひの採点者
【サンパウロ玉芙蓉会 白藤原曠聖】

老人会パワーいっぱい旅楽し
政界は地震洪水大津波
足弱の同志で旅は道連れに
見晴るかす蘭のハウスに圧倒さる
他人信じ己を信じて進むのみ
【セントロ桜会 矢野恵美子】

立ち合いに逸るを行司まだまだと
采配を譲らず隠居まだまだと
余徳とは目には見えない遺産です
牧場にならぬ平な不毛の地
踏み倒す気持無しとは本当か
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】


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