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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2005年10月号

2005年10月号 (2005/10/12) 俳句 (選者=栢野桂山)


若芝や駅の小さな憩ひの場
子雀の遊ぶオアシスビルの谷
【畠山てるえ】

評:
 高層ビルが並ぶ街中にも鳩にまじって子雀が遊んでいる、小さな人通りのない広場がある。それは砂漠の中に水が湧き樹が茂った隊商の憩いの場のオアシスのようだ―という。こんな複雑なことが十七字で詠めるのが俳句。


陽の庭の土匂ひつつ春を待つ
寒波来る恵みの古着置きし駅
【吉崎貞子】

評:
 暖かいこの国にも寒波が来る。豊かなサンパウロを目指して北伯から南下して来る出稼者。パウ・デ・アララなどが着く駅には、宗教団体などが集めた古着の箱が置いてあり、それで寒さ凌ぐことが出来る。それを見て自分も不要な古着をこれに加えたいものと思う。


ちらほらとイペー咲き初む日に帰伯
機内食の冷凍寿司とミニトマト
【寺尾芳子】

評:
 おそらく日航であろう訪日機の中の機内食など、一生の内にもめったにないので注意して見ると寿司がある。これは冷凍して持込んだものであろうか。野菜サラダには真赤なミニトマトがある。訪日する移民にとって機内はもう懐しい日本なのである。


添竹になほもたれ合ひ菊枯るる
花模様の大き布団に若返る
【稲垣八重子】

評:
 大きな牡丹花などの派手な模様のふかふかと寝心地の良さそうな厚い布団。これは作者の卒寿祝いに子供達から贈られたものであろう。この布団に休むと九十歳を超へた体が若返るような幸福感があふれて来る。


ふるさとの雪の廂の鯉のぼり
母の日を待たずに逝きし友のミサ
【名越つぎ代】

評:
 ブラジルでは十月十二日が子供の日だが、日本では五月五日の端午の日である。その頃の北国ではまだ廂に残雪があるが、男の子にそんな寒さを吹き飛ばす勇気、何者にも負けない気概を育てる色鮮やかな鯉幟を立てる。訪日した移民には雪も珍しく、その寒気を払うかに大空を泳ぐ鯉幟に感動する。


大根の厚切り主役のおでん鍋
子沢山お八つおかずもマンジョカ
【矢野恵美子】

凍てし蝶石の温みに甦る
鴨の群湖畔の日射しに羽繕ひ
【木村都由子】

汗の掌を洗ふシャボンの香を好み
掌の内にたたみて軽き日傘かな
【佐藤美恵子】

新米に思はず食のすすむ老
大正の生れも老ひて秋思ふと
【内田千代女】

冬日さす部屋好もしと母こもる
冬日和老人夫婦の散歩道
【寺部すみ江】

竹馬は祖父の手作り嬉しくて
冬のばら一輪なれど凛として
【竹内もと子】

冬日和木魚訥々移民寺
寒肥を処理のたやすく山羊の糞
【菅原岩山】

着ぶくれし子を自転車の尻に乗せ
対岸の大秋夕焼火事かとも
【中井秋葉】

ホーム長赤いネクタイ冬の日に
わが住居日差し変りて春を待つ
【中原レメ】

着ぶくれて粗大ごみだと笑ひ居り
羽たたみ石の割れ目に冬の蝶
【庄司よし子】

着ぶくれて歩幅を狭む下り坂
黒帯を目指して孫の寒稽古
【杉本良江】

楽しげな人ばかりなる春隣
叶ひたる外出楽しみ春を待つ
【山田富子】

異人らも花見酒盛してをりぬ
寒波来し句座の茶わんに掌をぬくめ
【伊津野朝民】

その中の一と重桜をめでにけり
庭にある漬物石も春待てる
【伊津野静】

桜満開タンスよりハッピ出す
こわごわと飲んでケントン口に合ひ
【下境とみ子】

暖かき芝生に置かれ乳母車
のどけさにとぎれとぎれの子守唄
【伊藤桂花】

伯人等スキヤキ党で箸使ふ
夢を追ふガリンペイロ等髭面で
【上坊寺青雲】

板の間に正座も修業寒稽古
打ち合いの気合溌剌寒稽古
【纐纈喜月】

孫生れ暖かき春を待ちわびる
体裁は要らぬ歳なり着ぶくれて
【宇佐見テル子】

吾が植えし木々に手を置き春を待ち
古里の信濃は遠し冬銀河
【小滝貴代美】

孫達と折鶴吊りて原爆忌
待ちわびしつつじテラスに咲き満ちて
【遠藤皖子】

還暦のこころころがす冬日向
花の下人それぞれに吹雪浴び
【浜田すみえ】

寒けいこ竹刀の音のひびく街
寒波来る予報にハウス目貼して
【阿久津孝雄】

父の日に供える火酒を味見して
春風や老の背筋をピンと立て
【野村康】

混血の曾孫好みの根深汁
移民祭夢とも過ぎし八十年
【近岡忠子】

唐辛子めく花スイナン散り敷ける
春風や浴衣ブームの故里ニュース
【黒木ふく】

耳澄ます向ふの山の初サビア
父の日に釣り来しパクー父が焼く
【本広為子】

プリマベーラ桃色と緋と競ひ咲く
三十年を祝ぐ老ク連風薫る
【杉本鶴代】

野焼跡しずめて夜の雨続く
柵を出て下萌あさる仔牛どち
【前橋光子】

腰一つ叩き白菜漬け終る
エス像の御手より雫初時雨
【梅林千代】

群はなれ一つ流れて蛙の子
大株の白菜しばし買ひしぶり
【杉本てる子】

車椅子の姉の静かに日向ぼこ
春浅き庭の夜明の花に露
【菅山松江】

重ね着てなりふりもなく看とり妻
母代りの長姉嫁ぎてマリア月
【佐藤孝子】

歌声に童心のせて春を待つ
椿咲き植えくれし亡き娘をしのぶ
【藤井梢】

一人居の夕餉ビールと漬物と
一面の落葉の中の蛙の目
【小野浮雲生】

軒つばめ冷たい風を切って飛ぶ
足腰の痛むを苦にし春を待つ
【矢萩秀子】

冬に逝くハーフの孫に見守られ
南麻州にその名を留め冬に逝く
【大岩和男】

うららかや仔牛に角の生え初めて
老ぬれば余生手さぐり秋の風
【中川操】

寺奉仕今日は休みの布団干す
囀に目覚めの一と日の始まりぬ
【岡本朝子】

終戦の日の俳句会掌を合はせ
春待つや夕焼け小鳥樹に群れて
【軽部孝子】

望み無き老と言ふまじ春隣
仕合せの歩巾確め春の土
【風間慧一郎】

客送り元の独りや冬ごもり
朝散歩冬バラの咲く此処が好き
【猪野ミツエ】

春待って晴着を縫ふも又楽し
ケントンに大胆ムラタの飲みっぷり
【井垣節】

久闊の同窓会や春惜しむ
うららかやちゃんで呼び合ふ同窓会
【西沢てい子】

よもぎ餅舌で草の香たしかめて
マンジョカ料理上手な嫁の居て
【彭鄭美智】

着ぶくれてひたすら春待つ老となり
亡き父母に一目見せたき桜咲く
【矢島みどり】

枯木山焼け飛ぶたびに火花散る
山焼きの闇にうごめく炎大
【成戸浪居】

献楽の二世も古希に移民祭
嵯峨流の正花に活けて菊五輪
【香山和栄】

月照らす七聖堂や枯木中
姉弟に分ける形見の白き蘭
【林田てる女】

イペ咲く平和な国に齢重ね
百花撩乱見てあかず花卉祭り
【上辻南竜】

苗木札舞ひつつ風を楽しめる
小さき家の小さき暮し菜飯炊く
【栢野桂山】


短歌 (選者=水本すみ子)


触れゆけば擬死を装おうかなぶんぶんかかる知恵持ち生きとし生きる
【フェラース 米沢幹夫】

いくたびも躓きにつつ生きて来ぬ若さで耐えし波乱の自分史
【サンパウロ 岡本利一】

庭隅にダリヤの薯が芽吹き初む忘れいし頃土盛り上げて
【中央老壮会(バストス在住) 信太千恵子】

積雪に埋ずもれし屋根、道路など痛ましき思いにニュース見ており
【オウリンニョス長寿会 古山孝子】

懐かしき昔の唱歌をハーモニカでひとり楽しく何曲も吹く
【ミランドポリス 湯朝夏子】

ぼんやりと物売りを見る駅の前バスを待つ間の退屈まぎれ
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

外出の少なくなりし此の日頃短歌を詠むは吾が生き甲斐とも
【グァイーラ 金子三郎】

夫逝いきて歌つくる気力も失いて心淋しく喪にこもりいる
【ピエダーデ 中易照子】

伯人に齢はいくつと尋ねられ百才と言えば「パラベンス」と握手さる
【S・J・リオプレット 浅野三郎】

満開の黄の水仙に囲まれて冬日穏しく父の碑に降る
【スザノ福栄会 青柳房治】

丸き背も丈の低きもおしなべてわが影法師長くてたのし
【スザノ福栄会 原君子】

物差しをためらいながら使いおり久しくなさざるズボンの製図
【セントロ桜会 野村康】

朝霧のうすく流れる公園に匂い放ちて咲くくちなしの花
【スザノ福栄会 青柳ます】

足痛みて八十五才となりし我夫は平成を迎えず逝きし
【スザノ福栄会 黒木ふく】

乾きたる花壇のつつじ素枯れいて去年の華やぎ見れず季は過ぐ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

みどり濃き小高い丘に葬られ陣内さんの魂よ安かれ
ゆっくりと朝のコーヒー飲みているこのひと時に満つる安らぎ
【セントロ桜会 富樫苓子】

曲芸の如く電柱をまたぎて電工たちの動きたくまし
俄雨強風に足もと気にしつつ地下鉄に入りて大きく息を吐く
【セントロ桜会 上田幸音】

短歌のこと話される時の陣内さん自ずと声の高まりゆきし
ここ一年入退院を繰り返されし陣内さん遂にかえらぬ人とはなりぬ
【セントロ桜会 井本司都子】

足早に秋去りゆけば庭に立つ桜のあわれ裸木となりぬ
【セントロ桜会 渡辺光】

土に泌む雨水の如き思いなりたまさかにある娘との出会いは
幼くして来たりしこの地に父ははや兄、子らも瞑りて我老いにけり
【セントロ桜会 上岡寿美子】

仏前をかざりし花も保ちいて亡夫の写真は老ゆることなし
【セントロ桜会 重道千代子】

学校が休みとなれば秋空に色とりどりの凧が舞いおり
五月花少しおくれてやっと今鉢いっぱいの蕾出そろう
【セントロ桜会 板谷幸子】

日本祭り人出の波に足疲れ煎茶のコーナーに茶をいただきぬ
日曜日訪う人はなく電話もなし一人居なれば話もなくて
【セントロ桜会 鳥越歌子】

雪国に生まれ育ちしわれなれば冬の寒さも苦にならずなり
日本祭り五十米の「絆寿司」つくる人らの力強さよ
【セントロ桜会 大志田良子】

ありし日の友の写真を見詰めつつ人の命の儚さ思う
【サンパウロ 中島昌子】

また今日も支え給えと祈りつつ夫一人残して市に行く我
【ナザレー老壮会 波多野敬子】

八十路すぎ思いは残る妻の上なるようになると妻は笑えど
【ナザレー老壮会 波多野定三郎】

狭庭辺に舞い降りて来しチコチコの歩み見ており燕し暑き午後
【サンパウロ 竹山三郎】

クラーク博士の賀状届けり青年よ大志を抱けの言永久に
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

年末に遺影の夫に留守たのみ海辺の家にて新年を迎う
除夜花火多彩の光曝じかせて長い尾を引き海へ消えゆく
【グァラニー桜クラブ 苅谷糸子】

家中を走り戯むる幼な孫憂きことは知らずすくすく育つ
豊作の茘枝甘くて赤き実は故郷の味たっぷり湛え
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

子供達皆それぞれに独立しやっとわが身も日向ぼこする
野佛に降る雨つづく蔓草が庇うが如く巻きつきている
枯れ果てしと思いし株に芽が吹きて一葉二葉と青葉広がる
【タピライ 杉浦勝女】

腰痛めし人を見舞うと階登る吾が足元を確かめながら
再会を固く約して別れしにその友も逝きし便りは寂し
友も吾も同じ訛で語りつつ共に老いたり遠く異郷に
【グァラニー桜クラブ 内田千代女】

仲天に繁り聳びゆるマンガの木樹齢五十年はすでに過ぎいて
庭先にマンガを植えて五十年主の腰は少し曲がりて
優顔で冷徹に人の心理呑込みて見事な裁決女弁護士
老夫妻どちらにも良しと取り決めし折衷案の裁量の良き
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】


川柳


我がままは他人様には通じない
日本の軟弱外交昔より
義理を欠き多忙になるとは横着な
世間の目恐れぬなどとうそぶける
本人は呆けは他人の如く云ひ
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

扇風機使はず首相上着脱ぎ
なまなかに真似の出来ない人多し
ヨサコイソーラン競い若さのはけどころ
音痴でも練習かさね直したり
【サントス伯寿会 三上治子】

背広着てネクタイ締めて紳士顔
紳士顔してノーネクタイで背広着る
世渡りは上手と下手の別れ道
小心の人こそ無駄な気を使ふ
品よく着馬子にも衣装と云うけれど
【サンパウロ玉芙蓉会 白藤原曠聖】

耳遠くなりて長寿の証しとか
在外の選挙一と役果し得て
モンゴルの力士負ければ手を叩き
パンタナルの土産木の実の胸飾り
あなた誰友は電話で繰り返し
【セントロ桜会 矢野恵美子】

情こめて一期一会の握手して
星空のすずらん灯の街に来て
君送り飛機の爆音露に消ゆ
明朗な世渡りするも芸の内
忍耐と至誠尽すは世の宝
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

老人週間八岐大蛇の神楽舞
神楽舞豪華衣装に笛太鼓
満席の月読之命への舞ひ舞台
薩摩琵琶昔を語る日高川
寒き日は皆早や足で街を行く
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

人の世は誠実なるが勝利得る
神仏の名を借りて説く偽善者居
良きにつけ悪きにつけて前向きに
骨粗鬆症病む老人の太き杖
若返るとアマゾン人参買わさるる
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】


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