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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2007年3月号

2007年3月号 (2007/03/08) 俳句 (選者=栢野桂山)


金箔入お年酒受ける古九谷
猪料理食べさす村のレストラン
【寺尾芳子】

評: 金箔のキラキラ浮遊する日本酒を家族が揃って酌み交して新年を寿ぐ。それを受ける盃が名の知られた陶器の古い九谷焼というのは豪華なお年酒。日本酒党である者は一度こういう年酒を味わいたいものである。そして九谷焼で年酒を酌むような豊かな余生を送りたいもの。


道草も手抜きをせずに蟻の道
従いてゆく戯れ心の道おしえ
【竹内もと子】

評: 金緑色の美しい虫で、人が近づくと翔って先々に行き、道案内をするように見えるのでこの名がある。その虫の動作を「戯れ心」と見たのは一つの発見。新鮮な写生句とは他人が見出せなかったものを発見するのが条件。


待たされて空しく戻り蝿叩く
彩りのショート・ケイキ緑映ゆ
【杉本良江】

評: 何か大事な用件で人を訪ねたが、永らく待たされて嫌気がさして帰宅した。その腹立ちを蝿叩きに込めて、厨に生れ次ぐ蝿を叩いて回ったという。その折の当事者の感情がよく現れた俳句であるが蝿こそ迷惑?


来る筈もなき人を待つ日傘の樹
闇に浮く月下美人に息凝らす
【風間慧一郎】

評: 来る筈もなき人とは?恋人逢瀬の時日場所を約束したのか、また別の重要な用件での事なのか解らないが、それが行けないと知らせて来た。でも諦めきれず若しかして来るのではないかと、約束の場所に待ったがやはり来て呉れない――という作者の若き日の想い出なのかもしれない。傘を拡げた日傘の樹が涼しい木蔭を提供してくれている下での追憶。


女王花や美人薄命てふ言葉
初御空今年も明るく生きぬかん
【木村都由子】

評: 女王花は中南米原産のサボテンの一種で、純白の睡蓮に似た花を夜開く。一夜切りの花の芳香を嗅いで感賞していると、竹下夢二の描く美人画のなよなよとした細身の姿態を想像して「美人薄命」という言葉が浮び上ってくる。


舟を漕ぎ寄せて逢瀬や夜光虫
夜光虫人魚とまがふ娘の髪に
【佐藤孝子】

評: 上体は乳房を持つ乙女で、胴下は尻尾のある魚のからだをした想像上の生物が人魚で、ジュゴンという獣がモデル。夜光虫は海面に浮遊して燐光を放つ原生動物。夜の海を泳いでいた均整のとれた乙女の金髪に、この夜光虫が取り付いて光っているという、前句と共に浪漫的夢想的な句でこれも写生俳句の世界。


日の出まで散歩の老に露涼し
伏し拝むテレビの富士の初景色
【内田千代女】

苦楽なめて生き来し二人の老の春
笑みかける声に安らぐ初電話
【前橋光子】

教科書も服もお古で卒業す
白靴に原色似合ふ黒き肌
【香山和栄】

土人の子頭より大きなジャカ食べて
初空に昇る太陽燦々と
【上坊寺青雲】

正月の栗めしまさに母の味
みどり濃き日傘樹の蔭まんまるに
【藤井梢】

佳き夢を追いかけている朝寝妻
胸に秘む人の名一つ春うらら
【稲垣八重子】

やせ土地も我が家の宝鍬始
蝿帳に夜学帰りの子の食事
【矢野恵美子】

ポトと落つ乙女つばきのみな小ぶり
こぼれつぎ咲きつぐ山茶花日和とて
【佐藤美恵子】

初夢に故郷の甲斐の富士を見ん
亥の年の白髪の夫と鍬始
【本広為子】

友よりの押花入りの年賀状
お雑煮と馳走に飽きてお茶漬を
【黒木ふく】

乗り初めや杖曳く媼の白き席
惜春の八十路なる吾マイク持つ
【野村康】

オルゴールの小箱にピンクの桜貝
漆黒の貫禄しかと甲虫
【猪野ミツエ】

たまたまの嬉しき出合ひ初詣
雨音のリズム窓辺に寝正月
【畠山てるえ】

初句会焼栗食べて賑やかに
書初の吾をパソコン小馬鹿にす
【杉本鶴代】

何事も齢に甘え年明かす
耳遠き老にもひびく除夜花火
【小野浮雲生】

月下美人見んとテレビに夜を更かす
満開のジャズミン香る庭散歩
【近岡忠子】

霧晴れてリベイラ連峰湯気立てて
胸算用して人波の師走行く
【中川操】

流燈の取り持つ縁旧知来る
捨てられて弊履のごとく古暦
【大岩和男】

海越えて届く楽鳴る年賀状
海越えて届くテレビの除夜の鐘
【遠藤皖子】

果樹園のみどり無限にアメリカは
寒帯も熱帯もありアメリカは
【彭鄭美智】

チラピアの白き腹見え網たぐる
羅や肌の黒きがよく似合ひ
【岡村静子】

鶏舎より背中に蝿を止めて来し
苺摘む腰の痛さにまだ馴れず
【纐纈喜月】

ブラジル人茅の輪をくぐる御弊捧ぐ
人生に新年という贈り物
【軽部孝子】

学校のおやつの時間苺ジュース
天井の鼡に起きる寝正月
【原口貴美子】

我が友の何時も一心鍬始
蟻さんよ涼しい庭のどこに居るの
【山田富子】

なまけものクラブの森の人だかり
憎まれぬ貌も姿もなまけもの
【伊津野静】

行く先に着かぬ初夢なりしかな
植えし芝漸く青む陸橋下
【伊津野朝民】

百才を目ざして生きんお元日
おだやかな大河の流れ秋の晴
【寺部すみ江】

心新たに包丁を初厨
初鏡心新たに紅を引く
【矢島みどり】

いぬふぐり嗅ぐや仔牛のつぶらな眸
声もなく贄引き入れて蟻地獄
【菅原岩山】

お年賀の髭が頬さす孫二十才
染みと皺これが私か初鏡
【名越つぎ代】

除夜花火心は遠き子の上に
雑煮食ぶ二人の曾孫餅が好き
【岡本朝子】

出稼ぎに行く子交えてキャンピング
うさ忘れ背伸びあくびのキャンピング
【成戸浪居】

日焼して孫等海より戻り来る
緑こき葉のジャズミンの光る朝
【矢萩秀子】

カンブキーラ採るほど畝に拡がりて
ベランダにジャズミン香り月出づる
【伊藤桂花】

紫陽花の色々な毬咲きみだれ
年忘れ子供にもどり栗拾い
【酒屋登喜子】

孔雀椰子大王椰子と並木なす
千キロの往復父母の墓参り
【中川千江子】

祝ごとに春風吹いて父機嫌
秋晴や無邪気な子等の声流れ
【寺部すみ江】

ていねいに書いても癖字書始
鍬始夫さっそうと庭いじり
【吉崎貞子】

赤い羽根胸に留学生帰国
畝に置く茶篭の上のジュキア富士
【栢野桂山】


短歌 (選者=水本すみ子)


カナリアは囀るなれど難聴を託ちて長き吾がコンプレクス
【フェラース 米沢幹夫】

アマゾンの樹海が雲の帯となり大河に一点白き鷺舞う
【スザノ福栄会 青柳房治】

幼な日に「爺ちゃん先生」と親しみし孫青年となり墓に香たく
【スザノ福栄会 原君子】

初産の孫の入院近づきぬ息子と共に安産祈る
【スザノ福栄会 黒木フク】

訪日の友の土産のペンダント椿の花は伊万里焼にて
【スザノ福栄会 青柳ます】

無沙汰を詫びる文字連ね「ここブラジルでも桜咲く」と従姉妹に
【セントロ桜会 野村康】

そんなには泣かなかったよザンザ降る雨に呟く切れし指抱き
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

遠い日に作物呑みたる洪水を思い出すのか百歳の母
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

金色で誠と書かれし法被着て若人は踊る勇壮に踊る
【オウリンニョス長寿会 古山孝子】

共白髪までもこの世に生きたしと希いしことは夢と消えたり
【サンパウロ 岡本利一】

ことごとに意見の違う妻と居て五十年目の歳月思う
【サンパウロ 竹山三郎】

来年も誕生迎えよと励まされバーモスベールと笑えりわれは
【S・J・リオプレット 浅野三郎】

孫呉れしベゴニアの鉢美しく色も褪せずに黄色鮮やか
何処までもタンポポ咲いて杏子空美しき夢誘われる我
見えぬ風に静かに揺れるカーテンが長閑な香り乗せて来るなり
【ピエダーデ 中易照子】

夫を看る友の日常いかがかとただ安かれと我は祈るのみ
息子にすべてゆずり裏方で生きようと心に決めしその日から身も心も軽くなりたり
美しき花付けそめし百日紅日毎見ており子を慈しむごとく
【ナザレー老壮会 波多野敬子】

定年を迎えし我は自信なき身なれど商売をなさむと思う
幾たびの移転生活に見切りつけこの地に安住なさむと
【ツッパン寿会 上村秀雄】

流れゆく雲の速さが気になりて雨降る前にと家路を急ぐ
夕立の過ぎ去りしあとのさわやかさ舗道の草木も生気を見せて
【グァラニー桜クラブ 苅谷糸子】

朝市の人出少なくさびれゆき賑やかなりし頃の懐かし
市役所と郵便局は休日が多くて市民のあこがれの職場
【ミランドポリス 湯朝夏子】

日本の冬は寒しと冬帽を深くかぶりて楽しくもあり
朝寒の霧も薄れて晴れゆきてラジオ体操見事に揃いぬ
三年忌過ぎし墓には花飾り亡姉も聞きしよナタールの楽
朝暗きビルの屋上に眺むれば入道雲が勢い湧き出ず
聖体祭という佳き日ありて心地よき風に作歌を誘われいる
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

二世等が踊るマツケンサンバ見る親の心は弾み頬綻びる
かくしゃくと生きる喜びかみしめる九十五才翁をお手本とする
ドラ焼きの焼く匂い立つ夕暮にひっそりと冬は市に這い寄る
思い出と友情大切に手紙書く寒き夜起き近影そえて
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

雷の音遠くなり春の雨一際はげしく降りしきるなり
山の宿プールに浮かび見渡せば小鳥飛び交い春の日のどか
山の朝鶏の声なつかしく新移民の頃思い出される
ブラジルは物資豊かな広い国教育面にも力入れたし
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

医者の兄すこやか長寿の本贈り共に励もう異国の空でと
老牛の如忍耐強く理屈ぽい女性になるなと医者は訓せり
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

朝露の恵みゆたかに朝顔は庭を飾りて美しく咲く
幾年も親しきゲートボールの友病い重しと聞く淋しさよ
再会を固く約して別れしがその友も逝くうつつ淋しき
季節感なき国なれど朝市に初栗ありて秋と知りたり
混みあいしメトロの階段一段づつ足踏みしめて吾は下り行く
勝てばうれし負くれば次に励まむとゲートボールの出来る幸せ
思い出のいくつかありて待つ友の便りは嬉し又読み返す
【グァラニー桜クラブ 内田千代女】

立ち並ぶフィックス樹の木陰にて憩う老夫婦の睦まじげにて
訪ね行きし老夫婦共留守にして伝言の紙扉に挟めて
ひとしきり大雨に風吹き来たり傘をすぼめて風に背を向け
俄雨に追われて走る群集の傘持たぬ人多勢ありて
俄雨空家の庇に身を寄せて空を見上げて止むを待ちおり
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】


川柳


温暖化氷が割れた事故ありと
途中下車そんな事など知らず来た
着飾って心の隙をちらつかせ
他人事のそれより己がこと大事
健康と言う幸せに掌を合わせ
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

膝弱を自覚す階段降る時
姉卒寿梨のつぶての文を書く
臭い物蓋してどっかと胡座かき
在外の選挙の一票も国の為
日本で犯した罪は逃げきれず
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

共々に詩心育て生き抜かむ
長年の固執を捨てて気も軽し
ブラジルに賭けたる夢に移民老ゆ
健康なあしたがありと餅を食ぶ
捨去った気の煩悩に又なやむ
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

有難や唄にゲートが楽しくて
他人ごとあげつらふまで年老いて
夢支へ生き抜く気力の極楽翁
我れ忘れ他人の衰え気にかけて
生あらば江差で祝わん百年歳
【オウリンニョス長寿会 金田敏夫】

つまみ喰い弱肉強食世の慣い
落選議員首都の居心地忘れかね
山の神に尻叩かれて目をつぶり
肥たごに漬ってしまへば臭くなし
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】

孫と寝て布団取り合ふ明けの冷え
差別なく海浜に皆日焼けして
おそろしき事故は突然おこるもの
夏の来て浜辺の警官半ズボン
突然にふりかかる事故おそろしや
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

目覚めよと清き水よりメッセージ
同じ水感謝の念で美しく
清き水悪の念ではにごりゆく
宇宙の神秘念波届くと云われしが
各国の言葉違えど通づる意
【サントス伯寿会 三上治子】

喜怒哀楽写真展見て心うつ
健康法の講師と共に柿茶飲む
健康な卒寿の笑顔体操会
会場は満員健康法の師の来伯
カンナバール警備の警官凛然と
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

人生の荷物整理もままならず
一人ではないと自分に云い聞かせ
粗大ゴミいつか自分もなりそうな
子を生める機械になれぬひとも居る
古日記吾が人生に悔い多し
【セントロ桜会 矢野恵美子】

百薬の長とし少しは飲みましょう
なごやかに邪慳な心すてて世を
天与信じ自然まかせと世を進む
うめ酒は良薬中の良薬と
晩酌は一人手酌で物思ふ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】


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