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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2018/12/14)
2007年5月号

2007年5月号 (2007/05/13) 俳句 (選者=栢野桂山)


千の風の歌に余生を励まされ
嫁がずに親看る姉妹女性の日
【黒木ふく】

評: 先年のNHKの紅白で歌われた千の風「私のお墓の前で泣かないで下さい、そこには私は居ません。千の風になって大きな空を吹きわたっています…」。この美しい詩と曲、これほどの詩の作者不明というのも珍しい。その詩の如く余生を送りたいと願う作者。


桐一葉隠れ住むにはあらねども
丈なくて粃数多の今年藁
【伊津野静】

評: 「粃」は「しいな」と読み、籾殻ばかりで実のないかす米のこと。今年の新藁はそのしいなの多いのを嘆く小百姓。その嘆きは同じ百姓としてよく解る。


茘枝むくぷりんと赤児の肌のごと
燈火管制めくカンテラに袋継ぐ
【香山和栄】

評: 戦中空爆に備えて都会は燈火管制を布いて不自由に耐えたが、戦前の移民はそれを知らない。だが、それと同じような暗いカンテラの灯の下で読書したり、足の砂蚤ビッショ・ペーを掘ったり、収穫に備えて穴の空いた袋を継いだりしたものと、昔を回顧する老移民妻。


癌病院奉仕の主婦等女性の日
親戚にユダヤが一戸受難節
【木村都由子】

評: イエスがエルサレムで逮捕、十字架の上で死に至るまでの一週間が受難節。信徒の一人でありながら主イエスに叛いたユダヤ系の一戸が親戚に居るという。これは自分の事か他所事か解らないが、キリスト教の国では深刻な問題。


苺食ぶ銀の小匙はなけれども
結び文苺祭りの娘の篭に
【佐藤孝子】

評: 銀の輝きは古くから美しく貴いとされたが、その銀の小匙は童話の世界である。苺は一家で畑で作っていてふんだんに食べられるが、その銀の小匙で苺を掬ったことはないとこだわる夢の多い少女。


焼ジャバリーの里と呼ばれて移民村
秋のバラ凛と婦警の庭に咲く
【本広為子】

評: ジャバリーは今年の亥年の猪と豚との交配種。スザノにはこれを飼育して、その美味な焼肉のレストランがある。皆さんその三百キロの種猪や、瓜縞模様の可愛いい瓜子を見に、スザノの里を訪ねてという誘いの一句。


茶髪の娘連れて戻りし帰省の子
帰省の子英雄の如迎ふ村
【猪野ミツエ】

露の身の五十余年を添い遂げて
湯気の立つ新米供え新仏
【寺尾芳子】

新藁に醸す納豆香の高き
ピラミッドの石曳く奴隷サンバ山車
【野村康】

猪鍋は福博名物料理とて
猪鍋の恋しき頃となりにけり
【杉本鶴代】

とろろ汁のどに流して味わえり
二度三度老の夢見る夜長かな
【成戸浪居】

風強し藺草見物に伏し倒れ
威勢よく日焼の少女等新学期
【小野浮雲生】

遠のけるリベイラ富士や朝がすみ
蒲の穂を添へて活花引立てり
【大岩和男】

雨季たけて日暮れの空の鳩の群
草梅の香りに昔を偲び合ひ
【玉置四十華】

灯を消して闇のとばりに梟鳴く
地平まで緑の波や大豆畑
【中川操】

牧残暑馬の親仔の木の蔭に
奥地より友の土産の落花生
【矢萩秀子】

草梅にバナナ加えてジャム作る
留守をして荒るる花畑バラ散って
【近岡忠子】

夏惜しみ雨が降っても海の子等
池の面に山影うつる蝉時雨
【井出香哉】

姪一人嫁ぎ遅れて鳳仙花
伝え聞く薬効太陽の茸とて
【風間慧一郎】

黒雲の湧くと見る間に大夕立
やれやれと着きしホ句宿秋暑し
【伊藤桂花】

前夜祭に客船浮きたつカルナバル
老夫婦夢の観光初の旅
【三上治子】

毬栗をふみし悲鳴のひびく森
靴裏に付けて光りて夜光虫
【岡村静子】

誕生日の庭ひっそりとマリカ咲く
こがらしを耳に人生振り返る
【上坊寺青雲】

お正月獅子と龍舞う東洋街
風光る紅い幟の立つ広場
【彭鄭美智】

浜の家椰子の葉づれのさやさやと
雨季明けて空の青さよ眩しさよ
【矢野恵美子】

大王椰子偉容正してアベニーダ
女王花一と夜の命輝やかす
【遠藤皖子】

風の道示し傾く浜の椰子
サッカー王夢見て鍛錬汗みどろ
【川井洋子】

おだやかな今の暮しに灯涼し
久方に車椅子押す雨季上る
【吉崎貞子】

掌にのせて初めて見る子秋蛍
母形見の小さき擂鉢とろろ汁
【林田てる女】

夏の宵メイキャップして何処へ行こ
マンションは清潔ごきぶりなど居らず
【山田富子】

賑やかに歩け歩けと雨季晴間
バス旅行クーラー利かず汗みどろ
【原口貴美子】

夏時間終り朝々ゆっくりと
メトロ口赤黄と満開爪切草
【軽部孝子】

書初父の形見の筆正し
開拓の一歩ここより鍬始
【菅原岩山】

対岸の町横に伸び汀涼し
雨季暗く街灯ともる昼下り
【畠山てるえ】

無学われ汗をふきつつ推敲す
旅に撮る大王椰子の二た抱え
【杉本良江】

ココ椰子を植林バイアに住みつきし
汗拭い化粧を直す舞台裏
【纐纈喜月】

王椰子の穂先雨雲ひっかかり
旗持女汗を拭はず先頭に
【星野耕太】

仏人の恋人と年越す休暇の娘
D・V・D添えし国歌の賀状受く
【名越つぎ代】

入学児祖母に預けて母畑へ
母に手を引かれて泣く子入学す
【寺部すみ江】

春雷にかたまりて行く登校児
看とり妻笑顔たやさず春を待つ
【前橋光子】

さらけ出す小春日和の夜具あまた
濡れ髪に昼の冬日の充つる部屋
【佐藤美恵子】

アルバムは人生の控え帳春惜しむ
春愁や老に戻らぬ歳惜しむ
【稲垣八重子】

湯の宿のカラオケビンゴと夜長かな
日本荘の借景の森緑濃し
【矢島みどり】

秋暑し変りなきやと子への文
板壁の日語学校パイネイラ
【伊津野朝民】

扇風機届かぬ客へ団扇風
カルナバル四日四晩の午前様
【名越つぎ代】

病人を励ます嘘も万愚節
日語教師も出稼ぎに村の秋
【松崎きそ子】

プラスチコの靴軽るやかに爽やかに
タイプ打つ動きさわやか娘の十指
【栢野桂山】


短歌 (選者=水本すみ子)


時経れば背きし人もなつかしく思いて仰ぐ遠き星空
【フェラース 米沢幹夫】

辛かりし月日は過ぎて今日来れば街はあかるく輝きて見ゆ
【スザノ福栄会 青柳房治】

秋風にさしもの暑さやわらぎて夏の名残の簾をしまう
【スザノ福栄会 原君子】

血糖値骨祖鬆症わずかなる異常はあれど気にせず生きん
【スザノ福栄会 青柳ます】

裏庭に色とりどりの花が咲き小鳥囀り蝶も舞いおり
【スザノ福栄会 黒木ふく】

アテモイアの袋を貼ると古新聞広げしページに高知のニュース
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

夢にでももう一度聞きたし「七つの子」歌いし亡き娘のあの歌声を
【スザノ福栄会 野村康】

十年振り帰り来し息子と連れ立ちて散歩の夫の嬉しげな顔
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

街燈の光とどかぬ裏庭に椅子もち出して月蝕仰ぐ
【中央老壮会(バストス在住) 信太千恵子】

春一番岸辺のつくしの映像に幼き頃のふるさと顕ちくる
【セントロ桜会 鳥越歌子】

晩夏(おそなつ)の狭庭に今も咲きつづく東雲草(しののめぐさ)の淡き紫
【セントロ桜会 渡辺光】

肩に受けし手のぬくもりがやさしくて何も云えずにうつむきていし
【セントロ桜会 上岡寿美子】

あこがれしのみに過ぎきし若き日の夢はふたたびかえることなく
【セントロ桜会 井本司都子】

踊る人の要がえしもあざやかに扇を使い舞いおさめたり
【セントロ桜会 上田幸音】

われの住む区域は林に湖のありて雁の朝夕とべる
【セントロ桜会 富樫苓子】

中広く造りし歩道橋に土置きて草木植えありて花咲きており
【セントロ桜会 藤田あや子】

暑い日は足がむくんで重ければ壁に足上げ逆立ちをする
前世に竹に恨みがあるような友の仕草は異常に見ゆる
【セントロ桜会 板谷幸子】

日本着でステップふむも粋にして友と手を組みフォークダンス
【オウリンニョス長寿会 古山孝子】

秋茄子にほどよくきかせしわさび漬色良く朝の食卓に出す
【グァラニー桜クラブ 苅谷糸子】

臍(ほぞ)を噛むこと幾度をくりかえし生きて老齢をわが迎えたり
【サンパウロ 岡本利一】

町角に西瓜売る娘のたくましく声高々と客を呼びいる
【ツッパン寿会 上村秀雄】

予期もせぬ百と二才の高齢となり残る余命は天に任せて
【S・J・リオプレット 浅野三郎】

五日ぶり上天気の日を仰ぎ嫁御はせっせと洗濯干しもの
【ピエダーデ 中易照子】

秋ふかむ街路樹の種あわれなり歩道に落ちて芽も出せず居り
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

父よりも祖父よりも齢重ねきて異国に生ききし過ぎ去り想う
この国に移り来たりて五十年今日喜寿を皆に祝われており
【グァイーラ 金子三郎】

孫に手を引かれ杖つき亡き夫のお墓参りに今日は来にけり
蚊帳を吊り飛ばないように稲たたくざくざく落ちる実りし稲は
【タピライ 杉浦勝女】

一輪のバラの鉢植買い求め娘は私の誕生祝いと
只今と帰れば答える家族ありこれを幸せと思うこの頃
【ツッパン寿会 上村秀雄】

九十の坂を越しても今からでも学ばんと思う短歌への道
塀越にゆらゆら揺れる隣家のざくろ真赤に熟れしを見守る
【ツッパン寿会 林ヨシエ】

週毎に子が電話にて近況をたずねくるれば心充ち足る
【ミランドポリス 湯朝夏子】

何時来ても馴染みのうすきクリニカの眼科に来たりて肌さむく居る
【アチバイア 高井敬子】

時季違えグラヂオラスは見事にて亡夫に供え静かに語る
【ピエダーデ 中易照子】

姉の墓に大黄菊献げ法要す三年過ぎて教え子に写真を
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

ブラジルに住み古りたれど今になお馴染み難きは暑き正月
【グァラニー桜クラブ 内田千代女】

冬至風呂柚子の代りにレモン一個投げ入れゆっくり夕べを浸る
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

肺炎と脳梗塞併発の妻の寝息に一喜一憂す
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】


川柳


人みんな笑へば進歩と言ふ浮世
世を渡る心が己の位置を決め
馬鹿にされてはならないと子を育て
夢抱いて稔り少ない世を泳ぐ
原始林伐った其の手で植樹する
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

難聴は長寿の兆しと云わるるが
魚の棲む流れにすると云う企画
百人一首声立て読み書く会出来し
子は鎹(かすがい)など云えない世となりて
七転び八起きはならず出稼ぐと
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

物豊か医学進みて寿命伸び
人生の目標百才夢で無し
聖職者信徒の上にあぐらかき
引導は生きたる僧の務めとて
浄土とは此の世で己が造るもの
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

かど取れた雷親父好々爺
スピード狂誰より早くあの世行き
鍵かけて入れぬ教会誰のもの
秒読みの如き晩年歩まねば
一つづつ持薬が増えて坂登る
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】

習い事遊び心が邪魔をして
素通りをせず人生を見極めん
墨磨って北辰会に望みかけ
運命か女に苦労はつきものと
あざける者共にせざるを幸せと
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

移民の記それぞれの苦に脱帽す
思ひ切りラジオ体操に身体まげ
老いたればまげて伸ばせば節痛む
若者等アクロバットの様に動き
ケイタイで本まで読める世の中に
【サントス伯寿会 三上治子】

受難日は霊安かれと静謐に
灌仏会白象曳きて稚児の練り
鍼灸学触圧療法開発す
触圧療法直せぬものか静脈瘤
次郎長の義理人情に触れる会
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

運動会身体うごかず気はあせる
運動会アゴ突き出してばたばたと
季節(とき)かわる性格性情変りなし
物思ひ覚めれば煩雑現実に
ブラジル語嫁になおされ心外な
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

当るも八卦当らぬものはビンゴかな
ビンゴ会頭抱えて唸る人
暇人は他人の噂が生き甲斐か
噂され腹を立てるも糠に釘
青空に小鳥の声を聞ける幸
【セントロ桜会 矢野恵美子】





「人生哀話」

乙女十九の恋の花
二人の愛は結ばれて
人生行路六十年
いつの間にやら経ちました

四人の子供に恵まれて
妻と母との幸せを
この身にあびて春の風
楽しい夢を見てました

ある日突然北の風
病に伏したうちの人
あの世とやらへ逝きました
この世に私は残されて

闇の彼方のトンネルに
小さい灯がともります
残るお前の人生を
強く生きろと聞えます
【サント・アマーロあおぞら会 酒屋登喜子】


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