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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2007年10月号

2007年10月号 (2007/10/05) 俳句 (選者=栢野桂山)


かまど猫お世辞の裏を知って居り
おくどさんと言ひしは祖母よかじけ猫
【佐藤孝子】

評: 少し難解な句。友人か親戚の人が来て、家の花壇や子供を誉めたあげく、竃から出て来た猫にまでお世辞を言うが、賢い猫はその言葉の裏を知っていて、振り向きもせずその場をはなれた。


ふんばって乳飲む仔馬の目やさし
根分して菊に命の息吹あり
【矢野恵美子】

評: 根分した菊が生きいきとして立派な花を付けたのを「命の息吹あり」と詠んだ。菊は皇室の紋章でもあるので、特別の思いで見たのである。日本では古くから十月十三日に浅草観音堂で花々の供養をする。


種取りのネクタイ結び葱坊主
坊主だけ取らせて葱の小束かな
【杉本良江】

評: 種を取るつもりで切られないように、赤い派手な布の識しを付けたのを、ネクタイを結んでいると洒落た見方をした。ブラジルの坊さんは洋服にネクタイで法事に来られるので、葱坊主も坊さんの仲間と見立てたユーモアのある句。俳諧には滑稽(こっけい)という意味があり、こういう句を佳しとする。


春塵や上履持参の移民寺
寒明けて九十歳の深呼吸
【風間慧一郎】

評: この国の立春は八月八日頃で、俳句ではこの日から春で、この立春の日をもって寒明けとなる。それを喜んで日々続けてきた健康のための大きな深呼吸をする九十歳翁。


父の日や写真にシンコエンタウン供へ
【野村康】

評: シンコエンタウンは字の通り、一九五一年から作られ始めた名のある火酒の銘柄。昔の移民は鍬疲れと郷愁のやるせない思いから、この安い酒に酔いつぶれて、人生を粗末にした者が多かった。今もあるこの銘柄の酒を見ると、そんなことが思われる。この句のシンコエンタウンとある字余りも、かえって面白くしている。


炭坑節サンバで踊る郷土祭
きび団子黍の穂波をまなうらに
【香山和栄】

評: 先日の郷土祭では各県の名物が出揃ったが、その中に桃太郎で知られた岡山のきび団子があった。同郷の作者はそれを手にして、さわさわと風にそよぐ黍の穂波を目に浮べて懐かしがった。


春めきて程よき場所に母の椅子
起立してちょっと愛嬌葱坊主
【吉崎貞子】

葡萄畑抱いて小春の丘匂ふ
延々と続く冬田の水鏡
【名越つぎ代】

啓蟄や根をはみ出して鉢のもの
掃けど又啓蟄の土盛り上げて
【伊津野静】

原爆忌テレビに我等黙祷す
街路樹の丸く剪られて風光る
【伊津野朝民】

牛千頭の牧の若草青々と
たまさかの旅大寒に会いにけり
【矢萩秀子】

焼野あと地肌を染めて草青む
初サビアー枇杷畑袋掛け終る
【本広為子】

寒紅を引いて勝気の性見えし
甘蔗刈る女の力あなどれず
【木村都由子】

初雷とおぼしき音に首かしげ
春来いと老婆の願ひ杖ついて
【藤井梢】

命ある限りの声や猫の恋
ふらここのかたえに寝椅子置き忘れ
【伊藤桂花】

浴衣着て異人娘もミス候補
初雷や海岸山脈どよもして
【大岩和男】

冴返ることあなどれぬ老となり
若芝にミミズ引きずりサビアかな
【小野浮雲生】

笠戸丸の歴史が刻む移民の碑
難聴の返事あいまい山笑ふ
【中川操】

百姓に定年はなし種を蒔く
三寒をくり返しつつつつじ咲く
【近岡忠子】

冬休朝寝ぐせつく孫二人
眠る山ぼんやり眺め吾も眠し
【岡村静子】

洗礼名貰ふみどり子マリア月
香焚いて愛人の日の妻の墓
【菅原岩山】

アツアツの雑炊夫と手にす幸
氷雨して餌探す鳩の冷たかろ
【矢島みどり】

風の色映してやさし仔馬の眼
春めくと旅行鞄の地図拡げ
【星野耕太】

若葉風廃墟の遺跡見て歩く
花のなき畑に蝶来る葱坊主
【高井節子】

足首の白きは親似仔馬跳ね
菊根分腐植土鉢に盛り並べ
【纐纈喜月】

家回り花で埋めたく菊根分
仔馬見て園児等はしゃぐバスの窓
【畠山てるえ】

湯ざめせぬ様卵酒夜な夜なに
風強し葱の坊主の揺れ止まず
【山田富子】

春めくやフェイラで大型マモン買ふ
特別の艶よきマモン土産とす
【前田ミサオ】

踊り弟子九十五歳で逝きし春
駅前の公園つつじ満開に
【軽部孝子】

烈風の吹きわたる道落葉舞ふ
鍋かこみ一家団欒あたたかし
【井出香哉】

春めきて俳句勉強また楽し
蝿生る小さき貌にドングリ目
【酒屋登喜子】

赤白黄揃い咲きして五月花
根分けして小さき庭に菊あふれ
【原口貴美子】

投句しておけさ踊って郷土祭
重ね着て威厳いよいよ大女将
【猪野ミツエ】

小春鳩体操会には目もくれず
母の日の尽きない話長電話
【彭鄭美智】

即席の一句を得たり冬の菊
年々や形見の踊り浴衣の絵
【佐藤美恵子】

悲話のある茶畑育て老ひし人
花愛でし難聴の人苦労言ふ
【重松公子】

春雷に慈雨恵まれてミイリョ蒔く
借金で買ふ大き土地山笑ふ
【上坊寺青雲】

生きのびし人も苦しみ原爆忌
山と積む折鶴に祈る原爆忌
【三上治子】

気の強き八月生れの娘は独身
この浴衣着たくて習ふ盆踊
【寺尾芳子】

八十路坂越へて健康蘭根分
爺婆の暮しひっそり薊咲く
【青柳房治】

八月の空の余白にウルブの輪
父の日や父となりたる子等揃ふ
【青柳ます】

野に山に春の足音きこえ来て
幾年振り八月霜の銀世界
【杉本鶴代】

大家族支える木藷植う女房
カトレアの白紫と庭小春
【黒木ふく】

乳色に見ゆる灯や霧の街
出稼ぎ娘待ちわび一人住みの老
【前橋光子】

竹に鳴る短冊数多星祭
踊り太鼓に人の波星祭
【林田てる女】

軽快なギリシア踊りも花卉祭
涼しさや百花の中の滝の音
【岡本朝子】

人波に押されて田楽草の餅
土匂ひ草匂ふ園初燕
【中川千江子】

満杯のローラジガンテ雲の峰
鍬疵の無き朝掘りの筍ぞ
【青木駿浪】

訪問の客を知らせるピリキット
炊き上がる新米待ちて老夫婦
【郡司はな】

アマゾンの木の実つづりし娘の首輪
青珈琲日々の実入りに枝しなふ
【寺部すみ江】

日差し浴びつんつん伸びし葱坊主
春めきて白雲軽やかなるみ空
【遠藤皖子】

葉桜の下木洩日と遊ぶ鳩
寝に戻る蛾に金雀枝の風やさし
夕雀群れ葉桜の日をこぼす
冷しマテ飲み空港の離別かな
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


結婚の宴に詩吟を所望され無事にうたえて餞とせり
【セントロ桜会 鳥越歌子】

色褪せし亡夫(つま)の日記を繰りおれば「人生とは」と毛筆のあと
【セントロ桜会 上田幸音】

海の上湧きいだしたる濃き霧に白一色の視界となりぬ
【セントロ桜会 板谷幸子】

桜の花見に行きし友はこまごまと賑わいしことなど語りてくるる
【セントロ桜会 井本司都子】

友逝きて四十九日の法要にうからと語り在りし日を偲びぬ
【セントロ桜会 大志田良子】

枝いっぱいに花を担ぎしマンガ樹に冬の朝日のさして温とし
【セントロ桜会 藤田あや子】

幾年(いくとせ)も会う事もなき親友はこのブラジルの今はいずこに
【セントロ桜会 上岡寿美子】

今年また黄イペーは咲き盛り道行く人はカメラ向けおり
【セントロ桜会 富樫苓子】

恋人ができて明るき孫の声青葉さやけき庭より聞こゆ
錆色の雲ちぎれ飛ぶ夕べなり球児の友がしめやかに逝く
【スザノ福栄会 青柳房治】

道の辺に沖縄桜咲き満ちてジョギングのわれの心なごます
寡婦となりし友を抱きしめ共に泣く嗣朗さんのお通夜の席で
【スザノ福栄会 青柳ます】

列島のさくらを追いて北上するテレビの映像幾日も楽しむ
満開となる日を想い五分咲きの並木の桜見上げつつ行く
暖冬に開花も早き故郷の花見に来よと息子の便り
【スザノ福栄会 原君子】

これの世は双六人生それぞれに浮き沈みなる系図残せり
帰日せし曾孫の名にて贈られし座椅子に憩い平和な余生
【スザノ福栄会 黒木ふく】
(評:一首目言葉を少し変えてみました。如何?)

楽に合わせ水中体操を若きらに負けじと身を振るしぶきを上げて
チエテ川の護岸工事は整いて植えられし並木育ちつつあり
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

十八の孫を囲みて誕生日前途を祝う今日の宴は
輝ける程に若さを漲らせ友等の祝福受ける吾が孫
二回目のカナダ留学終えし孫日々の学びを語りておりぬ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:三首目の結句言葉を変えてみました。)

芸能祭の二人ひょっとこ踊るを見て片方はおかめが良いと見やる
吾が短歌(うた)を見しとう旧友の電話にて生きて在りしか問いてよこしぬ
【セントロ桜会 野村康】

一応は文化生活してるのに自分本位で道徳が無し
交番ができて安心できる街もっと増やして守ってほしい
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:今日の歌は標語みたいに感じます。気負わず自然な自分の心を詠みましょう。必ず良い作品ができます。次回に期待。)

NHKの映像視れば故郷の細流(せせらぎ)の音と鶯の声
悔いは無しどちらが先に逝こうとも苦労を共にせし夫婦(ふたり)なり
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:二首共添削してみました。御参考までに。)

志半ばに逝かれし先輩の遺徳を偲び迎える百周年
幼きころ空一面に見た星も今では汚染でその数まばら
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:二首目若干言葉の変更あり。レジストロの方でも大気汚染がひどいのですか。困りますね。)

猫にまで一別以来の声かけて旅より帰りし娘はくつろぎぬ
朝あけを鳴きつぐ小鳥ともどもに早や四十年をこの里に暮らしぬ
【グァイーラ 金子三郎】
(評:一首目の言葉の整理をしてみました。倒置法でない方が判り易いようです。)

昼月の下をジェット機翔びゆきぬ飛行機雲を白く残して
目を開ければ想いは走るアラカジェの吾が子は如何に過ごしいるやと
【ツッパン寿会 林ヨシエ】
(評:一首目添削しました。二首目の「空」は削りリズムを整えました。佳作です。)

取引する銀行の名が変わるとの報せを受けて狼狽す
世の習い弱肉強食常にして理想の社会いつの日成るか
朝三度午後は三十五度と昇り行く異常気象が今日も続いて
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】
(評:時事詠は難しいですね。身近な素材の主眼とする一点に絞って詠むと良いですね。)

柔道の世界選手権開幕し日本文化の健闘祝す
柔道の選手が手にした金メダル移民百年の種が実りて
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:日本伝統の柔道もレスリングの様に様変わりして残念なことです。)

東洋市行き交う人を眺むればシャツに漢字の文字が目立ちぬ
見渡せば日曜市は人、人、人、陽気な気候に浮かれておりぬ
【サンパウロ玉芙蓉会 前田ミサオ】
(評:二首共添削しています。作歌の後、再度音読する習慣をつけるとリズムが整います。)

例会の集いを友に連れられて足弱き我もたのしく過ごす
老いづきし我のためにとはんてんを送りくれたる孫の愛しき
【ピエダーデ 中易照子】
(評:二首共添削しました。お孫さんの愛情の温もりが読者にも伝わってきます。)


川柳


人生の笑顔苦難の坂を越す
褒められたとこで見直す己が道
掛け引きの巧さに算盤玉笑ふ
諦らめの言葉蹴散らし夢を追ふ
東風吹けば郷愁日本の方に向き
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

年老えば人の親切身に染みて
功徳とは只善行の積み重ね
不安なるどこまで地球の温暖化
自衛隊のテロ対策に一寸疑問
自主性のある憲法を待ち望み
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

悪行の垢の詰まりし爪を切る
鍵かけて人に心を覗かせず
風呂鏡拭いて己の過去を消す
落ちぶれて靴の泥掻くだけの役
しとやかに歩く女の強き意志
【サンパウロ中央老壮会 丸丁呂】

金星に座布団とべる勝名乗り
世に尽す心を持てば今日の晴れ
土地よこせ窓なき小屋が建ち並び
祝福に来し方しかと見直して
戦前の家長移民は今はなく
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

努力した実りが今日の書道展
帰宅して寒さしのぎの玉子酒
昔し船今は飛行機移民来る
亡き父母は趣味に励げみし事もなく
悔のなき人生として前進す
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

姫に虎やられし郷土の参院選
武士道に叶ふ取り口大相撲
堂々と受けた相撲の双葉山
辛抱に耐えて六年大関に
十倍値輸出完売日本米
【サンパウロ中央老壮会 香山かずえ】

山本賞代々受けし篤農家
バトンタッチ苦しみ喜び共に受け
ふんばって二度の挑戦日語熱
腕だめし勉強不足に匙をなげ
ぶつかって荒れ政界は向上す
【サントス伯寿会 三上治子】

台風が来て政界をゆるがせる
一難の去らずに早も次が来る
ひげ面の頬寄す孫は四十才
花束の土産嬉しく胸に抱き
【セントロ桜会 矢野恵美子】

惚けたふり上手に使い分けをして
新移民と呼ばれし我等半世紀
新移民後続無ければ其のまんま
おいしいとお世辞に朝昼晩までも
ナムアミダちょんと切れたる赤い糸
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】

経済の発展誓う実業家
地域経済失業対策第一に
独立祭講演会増ゆスラム街
夏の朝海岸線ゆく歩こう会
体操はサビアを聞きつ快調子
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

人いきれ満員メトロ何も見ず
飛機の旅早く着けども味気なく
うたた寝に昔乙女の夢見たり
天高く馬と同じく我も肥ゆ
運ちゃんよ美人に見とれて呉れるなよ
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】





「靖国神社に詣でて」

九段の坂をのぼりつつ
なぜか瞼が熱くなる
お国のためとは言いながら
若き命を捨てた人々

靖国神社に両手を合わせ
深く頭を下げながら
帰らぬ御霊に誓いつつ
世界平和を祈ります

九段の母のあの唄よ
我が子をなくした悲しみは
戦死事故死病死でも
母の心は同じこと

九段の坂の桜花
風に吹かれてハラハラと
愛国心に散った人々
靖国神社で安らかに

【サントアマーロあおぞら会 酒屋登喜子】


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