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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2007年11月号

2007年11月号 (2007/11/10) 俳句 (選者=栢野桂山)


胎動のなき日は淋し桃の花
展墓の日吾が影しかと連れ戻る
【前橋光子】

評: 十一月二日は死者の日。大恩ある父母の墓に参り、丁寧に墓を洗ったりするうちに暮れかかり、墓の影わが影と共に影が長く伸びたが、子や孫の待つ家に帰る気にならず居たがやっと重い腰を上げた。それを「わが影しかと連れ戻る」と表現して、柔軟で感性が新鮮な佳句になった。前の句「胎動のなき日は淋し」というのも男性であるぼくにもよく解る。


隣り家は蹄鉄鍛冶屋アラポンガ
狙ひ撃つかたちに開く春日傘
【野村康】

評: 最新形の春日傘はボタンを押すと同時に、ポンと音がしてパッと開き、華やかで近代的なスタイル。柄の中のバネがその仕掛人である。それは丁度獲物を狙って銃を放つかたちに似ているという句。


イペー咲き孫に「一平」と名付けしと
交替に鶏舎を守る野火強し
【杉本良江】

評: 大正期の漫画の第一人者である岡本一平の妻は岡本かの子で、小説家にして歌人としても活躍、その子岡本太郎は画家彫刻家で、万博の「太陽の塔」で有名。それを知ってか知らずか、イペー満開の春に生まれた孫に一平と名付けた。国花イペーの名を持つ一平君の大器となる日が待たれる。


兵の如直立不動葱坊主
アルカショフラ一片方ずつの佳き味覚
【風間慧一郎】

評: アルカショフラは和名を朝鮮あざみと言い、紅紫色で花弁は松笠に似て厚い。ヨーロッパ原産で高級食用として食前に食べると食欲をそそり薬草でもある。この句の「一片ずつの佳き味覚」と言って、むつかしいとされたこの季語の句を詠んですぐれている。


笑顔にも苦労の年輪秋桜
息かけて悴みし掌の深き皺
【中川操】

評: 樹木を伐ると円い輪がいくつもあって、その樹の年齢を知ることができる。我々移民や移民妻にも笑顔の時のように、この年輪のような皺を見ることができるという。幹が細くひょろひょろ風に揺れるコスモスを見ると、長年苦労に耐えてきた移民妻のようであると思える。


孫七人金髪も居て子供の日
七歳の種痘の名残り腕にあり
【上坊寺青雲】

評: 種痘は天然痘予防のためウイルスを接種する法。一九八〇年に廃止されたが、それ以前に接種した人の腕には今もはっきりとその跡が残っていて、それを今も懐しく思いつつ時折見ることがある。


夫逝きし真夜の凍星見つめおり
あの日から一人の暮し夜々寒し
【宇佐見テル子】

評: かぎりなく頼りにしてきた夫が逝った。鉛色に凍てついた雲の間に見える星を、哀しみで涸れた涙の目で見つめる日が続くという。実際に遭遇した者の句は胸を打つ。


テノルのパバロッチ逝くバラ散る日
仏壇は婆様のもの春埃
【寺尾芳子】

写真撮る満開イペー背景に
行く先々絵になり唄になるイペー
【高井節子】

野火消えて一番星の光り初む
バスが来て野焼く匂ひの男乗る
【星野耕太】

種芋の残ればゆでて食ふ農家
ぎりぎりに種芋残し売り食ひす
【纐纈喜月】

コロツテを振れば空っぽ虻の昼
パソコンを持たぬ子等来て凧上げる
【佐藤孝子】

いずこより千の風吹く花イペー
黄イッペー国花としたりこぞり咲く
【吉崎貞子】

仔猫捨て幸せ祈り立ち去りぬ
寺掃除お地蔵洗ふ水ぬるむ
【原口貴美子】

親無しの仔犬に捕乳猫の親
身辺の整理はかどる日永かな
【矢野恵美子】

ピンク散り白満開や牧イペー
山彦の淋しく遠く消ゆる秋
【酒屋登喜子】

日永かな雲なき空に風そよぎ
客人に鈴鳴らし寄る子猫かな
【軽部孝子】

動くものみなに興味のある仔猫
鳩るるとのどを鳴らし園小春
【畠山てるえ】

塩田の風車忙しき春の風
ぐんぐんと防波堤打つ春の波
【遠藤皖子】

イペー今満開日々が楽しくて
仕事はかどりベランダの良く日永
【山田富子】

温泉の移り香残る春の旅
まつわれる悲喜物語り花珈琲
【青柳房治】

コーヒーの花の畑に咲きし恋
春愁や鐘の音が沁む七七忌
【青柳ます】

春雷や雹伴いて荒々し
春の野の牛の頭突きの凄まじき
【本広為子】

春の雷雹つれ散らす牧イペー
煙曇昇る太陽赤く燃ゆ
【杉本鶴代】

混血美人ミスに輝く星祭
日本の政治気になる入道雲
【林田てる女】

大朝寝良き夢をみて良き気持
NHKの颱風ニュース次々に
【三上治子】

父の日や優しき気配り祝はれて
お祭りの終りし夜半春一番
【清水もと子】

コーヒーの若葉に夢を膨らませ
野を拓き背水の陣木藷植う
【名越つぎ代】

研修に旅立つ孫と春惜しむ
卒寿翁踊るタンゴや春の宴
【岡本朝子】

春と言うに雨兆さざる空っ風
荒き風浴びつつも蛇穴を出づ
【成戸浪居】

おしたしの三葉の緑あざやかな
父母偲ぶ千々の出来ごと百年祭
【近岡忠子】

椰子一樹腰蓑の如花の房
物言わぬ動物既に春を知る
【大岩和男】

あの花もこの花も艶庭小春
久々の雨に飛び出し枝蛙
【矢萩秀子】

木の芽吹く季節次々友逝きて
ジェット機の双翼光り風光る
【小野浮雲生】

蕎麦殻の枕に眠り春の夢
心はずませて洗濯水ぬるむ
【藤井梢】

爺婆の宝探しや運動会
盆栽に手入れ十年梅の花
【伊藤桂花】

古き良き時代のビルやジャカランダ
鉄砲水の傷あと隠し山笑ふ
【香山和栄】

パラチ港鰡大漁の旗揚げて
寒鰡の刺身大盛り九谷焼
【岡村静子】

百姓の庭自家用車花コーヒー
終の地に記念の苗木植樹祭
【黒木ふく】

焼芋や街の鳥居と名物に
林檎富士吾に小さき幸呉れる
【彭鄭美智】

春の海夜とはちがう顔見せて
青く澄むセアラーの海夏の風
【井出香哉】

春の風邪かくす紅濃くタイプの娘
橋架かりバルサ廃れて水草生ふ
牧夫祭耕主夫人の名ある町
音のなき老の手仕事韮に蝶
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


熊本より郷土料理の師が見えて育て残そうおふくろの味をと
講習の郷土料理は熊本弁爆笑渦巻く県人会
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:一首目若干添削しました。たのしい一日が表現されました。私も熊本ですので情景が目に見える様です。)

勉学に旅立つ孫を見送りし風の冷たい夜の空港
かわりゆく時代について娘は孫とインターネットで語る毎日
【グァラニー桜クラブ 苅谷糸子】
(評:二首共佳作です。目まぐるしいテクノロジーの進歩に年寄りはついて行けませんね。)

月宿す湖面を撫でる風ありて金波銀波に耀いて見ゆ
髪切りて若く見ゆると妻の言う吾はひそかに鏡を見ており
【グァイーラ 金子三郎】
(評:一首目と二首目の結句の言葉を変えてみました。水も滴る良い男になりました。素材良好。)

幼少を故郷に生活(くら)し今もなお夢見る山河四季の平野を
老い夫婦(ふたり)倖せそうに寄りそいて笑顔をみせて通り過ぎたり
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:二首目添削しました。原作と比較してみて下さい。故郷は歳をとる程思い出されるものですね。)

「あなたっ」と我は叫びて目覚めたり耳朶に残れりあの叫ぶ声
亡き夫の意志で造られし湯朝家の墓をこの地に永久に残さむ
厨まで来て佇ち止まり「はて何を?」思い出せずに頭かかえる
【ミランドポリス 湯朝夏子】
(評:一首目添削しました。原作と比較されたし。三首目の様に誰もが経験しますが、歳のせいとはしながら困ったものですよね。)

上衣着て健康講演のビデオ観る座したる椅子に涼風通る
大講堂工芸美術展示場作品すべてすばらしきかな
敬老者の検診続く老ク祭演芸講演出演見事
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:一首目助詞を入れました。「見事」と「すばらしさ」は意味が重複するので、「すべて」とします。熟語を多く使うと歌が堅くなります。佳作。)

親子してアイスを食べる子供の日ビルに太陽の反照まぶし
夕茜乳母車押して若き娘はメトロに急ぐ人込みの中
【サンパウロ玉芙蓉会 前田ミサオ】
(評:二首共歌意にそって添削しました。原作と比較して下さい。折角の素材ですから言葉を選んで工夫してみましょう。きっと良くなります。)

イペーの花風に吹かれて散りゆくを見つつ惜しめり友逝かしめて
気にかけしお礼の手紙書き終えて朝のコーヒー吹きながら飲む
佳きことも書きたきものを遠く住む友への便り訃報の多し
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:流石に良くまとまっています。三首目の結句の言葉を変えてみました。)

性格は吾が父に似る娘と暮し時折叱られ嬉しく謝る
昨日は春今日は真冬の不順さにプランタのマルガリーダが咲きあぐねおり
【セントロ桜会 野村康】
(評:二首共良くまとまりました。視点が良いですね。娘に甘い仲良し親子ですかね。)

クチナシの甘き香りの流れくる体操教室の汗なす中に
数々の思出残し草津の湯バスは出て行く湯煙の中
泣き虫でありたる孫も年頃となりて今宵はギター弾きおり
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:ベテラン故に良くまとめてあります。)

春雷はビルゆする如とどろきて風吹き渡る石の街並
青春を謳歌する如孫達の会話はずめり明るき我が家
住み古りし庭の木蓮花終えて緑若葉に春風の吹く
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:一首目の結句の言葉を変えてみましたが、如何でしょうか。)

晴天に恵まれ終わりし日本祭りの餅食ぶ雨の音聞き
地位高き子はおらねど日本語をうけつぎくれて心かよえり
ベレー帽にトンボ眼鏡をよそおいて旅行く如く君は棺に
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:三首目寂しき素材も明るく感じます。)

末息の初孫を抱いてもう少し長生きしたいと思うこの頃
欲りていし四足の杖で移動する我が身に部屋は狭くなりたり
【スザノ福栄会 黒木ふく】
(評:二首目歌意に添い添削しました。一首目の作品は孫の居る家庭の総意でもあるようです。)

台風が吹いてくれたらと思うほど九月半ばの蒸し暑き夜
日本の音色やさしき風鈴を孫三人の恋人に買う
作りすぎ悔いつつ今日も同じ物食ぶれば飽きる一人の食事
【スザノ福栄会 原君子】
(評:一首目の二句は口語にしてみました。二首目は言葉を入れ替えてみました。素材の視点良好。)

見通しの良きグランドに久々の野球観戦に血が躍るなり
街路樹の涼しき陰に足止めて老の三人話はずめり
何となく風情ある椰子三本の中天高く聳えておりぬ
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】
(評:「久方の」と枕詞をよく使われますが、「久方の」の受ける言葉は、「天、雨、月、日、雲、光、都」ですので、御注意を。「久方の光のどけき・・・」)

サンパウロの寒暖の差のはげしくて何を着るやら毎日まよう
【セントロ桜会 板谷幸子】

ビルとビルの狭間通して差す旭日に街路樹の葉は輝きて見ゆ
【セントロ桜会 藤田あや子】

カラオケにいつも来る女(ひと)の姿なく病ではないかと気にかかりおり
年寄の話題はおもにその昔苦労せしことそれぞれ語る
【セントロ桜会 鳥越歌子】

色あせる街路樹のあり青々と繁る樹もあり乾季となりて
【セントロ桜会 富樫苓子】

日曜の朝はエレベーターの音もまれ、曇り日なれば人声もせず
【セントロ桜会 井本司都子】

義姉逝きし生家を想う日がありて甥の電話に胸あつくする
【セントロ桜会 上田幸音】

寒い日は夕餉の支度も億劫で「あるものでね」と我慢を強いる
【セントロ桜会 大志田良子】


川柳


移民百年希望の花を咲かす夢
移民百年故郷出た日が胸にある
柳道一と筋燃やし希望の夢を描く
五年振り心温もる柳友(とも)と会い
大会のわびしさ先輩見当たらず
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

音もなく砕け瓦礫となりし珠
投げ入れた石に表情変へぬ水
容れ物を染めない水の清さです
行きずりに女を探る女の眼
まさぐった髪の記憶のある十指
【サンパウロ中央老壮会 丸丁呂】

口づさむ唄のリヅムで歩く人
上向いて歩けばいつも躓づいて
万歩計必要もなし三万歩
会う人に暑いですねは口癖に
暑い日の散歩疲でぐったりし
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

感ぐって其の口裏を黙考し
諸差しの相撲に力を入れて観る
坂降る膝の脆さに齢知る
芸の無き吾が生涯に嫌悪する
自分史に初恋の事少し触れ
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

夢に出し母の笑顔に励まされ
八十路過ぎ未だまだ希望持ち続け
浮世風胸に穴あけ吹き抜ける
死亡通知又も見出す知人の名
足腰は立たねど口の立つ媼
【セントロ桜会 矢野恵美子】

対処する前向き姿勢に悔いもなし
もどかしき鳥になりたや老の足
酒好みグラス揃えて並べもし
人の世は一寸とはづればもの笑い
寒暖の変化はげしき国に住み
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

運筆に迫力感ず書道展
疾き事は風の如くと武田ぶし
横文字の墨の芸術書道展
志願せし若き誇りや終戦忌
五本指の白靴下や武道祭
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

温暖化世論に耳もかたむけず
電化して機械化にして便利化す
運不運真面目だけでは通れぬ世
競馬うま風邪が流行りて大損害
【サントス伯寿会 三上治子】

大兵が小兵にやられ土俵割り
悪口を云うも供養と満中陰(四十九日忌)
ソプラノの吾れを愛犬顔見上げ
首相続投打たれマウンド遂に去る
【サンパウロ中央老壮会 香山かずえ】

健忘を歳のせいとし慰める
満月をながめて円い顔をなで
教会を素通りをして十字きる
あれこれと耄碌防止で呆けており
一人居のお茶漬け食べて簡素なる
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

祭寄付新米後家の泣きどころ
居るはづもなきに「只今」と声をかけ
郷土食お目当て屋台の長い列
焼きそばはどの県名物問うまいよ
踏まるるな五寸釘めくハイヒール
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】

カレンダー相手にされず乱気流
百姓は馬鹿じゃ出来ぬぞセンテーラ
電子メール故郷の便り味気なし
尋ね犬世は混沌ぞお前もか
長生きの秘訣も知らず百二才
【セントロ桜会 森川玲子】


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