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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2008年9月号

2008年9月号 (2008/09/01) 俳句 (選者=栢野桂山)


出稼ぎの家守る猫に日脚伸ぶ
子等去ればいざりなほして竃猫
味噌搗いて夜逃げすることあきらめし
【佐藤孝子】

評: 珈琲耕地のコロノの収入では生活が苦しく、夜逃げしようかと思ったが、何処へ行っても甘いことはなかろうと、無くなりかけた味噌を作ることにした。昔の移民の繊細な心の動きを、単純明快に詠んで胸の病む句であるが面白い。


寒紅を引いてかんばせ引き締まり
雲も無く寒満月の澄みわたり
日光を吸込む如く寒の鯉
【木村都由子】

評: 寒鯉と云えば渦をなして泳ぐ日本館の池の緋鯉を思い浮べる。群をなしている水中の一尾が、口を先にして浮いてくるが、それが日光を吸い込むようだというリアルな写生。


前掛に胼の手かくす客の前
床に伏し胼だんだんに癒へてきし
袖たたみし如くに凍てし胡蝶かな
【猪野ミツエ】

評: 袖たたみし如く――とあり、蝶が凍てて動かないさまを、着物の袖を畳んだようだと詠んだ句で、写生の目が確かで格調がある。


塩と水に命継ぐ牛牧枯るる
痩牛の買ひ叩かれて牧枯るる
痩乳房しゃぶる仔牛に牧枯るる
【菅原岩山】

評: 乾季が続き牧草が枯れ果て、牛が痩せて乳の量が減って乳房が小さくなった。その乳房をしゃぶる仔牛を写生して、牛飼いに熱心な作者は枯れ行く牧に心を痛めるのである。


大枯野昔苺を作りし地
幟立つ孫より曾孫と続く村
【黒木ふく】

評: 幟立つ――とあり、十月十二日の子供の日(日本では五月五日)に孫の幸せを願い幟を立てた。そして孫より曾孫へ続く村――とあり、福博村ではその名の福博、福祉と博愛によって、孫から曾孫へと続く村として、栄えて行くであろうと詠んだ。


市役所の玄関染めてイペローザ
網戸拭き海の青さを近くせり
【青柳房治】

評: 網戸は風を通しながら蝿や虫が室内に入るのを防ぐため、金網など張ったもの。それが汚れたので拭いたところ、青い海がすぐ近くなったように見えたという、情景がありありと伝わる句。


一徹の鍬に夢かけ耕せる
日伯友好ののぼりや秋日和
【中川操】

評: 一徹とは思いこんだことを押し通すことで、鍬一本に大成するべく夢をかけて耕さんと、己れの意気込みを詠んだ句。生彩躍如男の気迫のこもった句。


肩で息しては妊婦の大根引
風寒し汚染の川の泡立ちて
【纐纈喜月】

評: 汚染したチエテ川が泡立っていると、新聞記事があったが、乾季で水量が減るとサボンなどが原因で汚染した川が白く泡立った。それを見ると風が寒いどころか心まで寒くなる。


埋葬を待つ間の背の寒さかな
大根ためして今日の幸を知る
【杉本良江】

七月や石鎚神の山開き
青空を翔けるウルブの猛者ぶり
【本広為子】

皇子迎へ百周年祭冬晴るる
田植へせし遠き日のこと思ひ居り
【矢萩秀子】

今日一日降ってくれるな野を焼く日
星祭みんなの願ひ届けよと
【三上治子】

凍蝶や枯山水の石の上
冬木立中のモダンな美術館
【香山和栄】

百年祭吾が家三代目誕生す
百年祭米寿を祝ふ夫が居て
【矢島みどり】

朝毎に掃いて豊かな花の屑
茗荷の子走りが一つまた一つ
【伊津野静】

ふた開けしケイタイ電話冬日向
諦めは悟りに似たり冬霞
【伊津野朝民】

短冊に願いを込めて星祭
七夕や短冊つるす笹ゆれて
【井出香哉】

一山をわがものとしてウルブ舞ふ
これからも独りの余生冬灯
【吉崎貞子】

サンジョン祭四方震はせて花火鳴る
庭隅の自生のカフェー色づきて
【森川玲子】

弧を描き不気味禿鷹何狙ふ
この寒さ路上の浮浪者思い遣る
【矢野恵美子】

お城模すブラデスコ銀行移民祭
法要のさんび歌流れ冬温し
【山田富子】

枯野行売られたる牛影悲し
ボンバ買いブラジル戦の明日を待つ
【宇佐見テル子】

日本人魂爽やか笠戸丸
風物詩の七夕祭百周年
【軽部孝子】

温泉行きの歌声のせて枯野バス
ウルブ舞い逃げ足早の小猿かな
【原口貴美子】

思ひ出のやせ地の辛き大根かな
大いなる地の恵みなる大根引く
【畠山てるえ】

大根汁甘し甘しと老夫婦
早々と湯ざめせぬよう老床に
【遠藤皖子】

秋扇形見となりし師のサイン
ごみ箱に要の折れし秋扇
【岡村静子】

移民船に荒海越え来て百周年
日脚伸ぶ友とも話題笠戸丸
【青柳ます】

井戸涸るるタンボール積み貰い水
落雷に会いしも混じる枯木立
【野村康】

笹竹に老いも若きも願い事
華やかに春を知らしてつつじ咲く
【杉本鶴代】

移民百年追悼法要菊日和
移住祭鳥居と五重の塔除草
【林田てる女】

皇太子様爽やかに百年祭
百年祭ビデオテープの出来を待つ
【彭鄭美智】

水洟や遊び呆けて子等帰宅
入日射す銀杏黄葉の金色に
【松崎きそ子】

茶の花の上のリベイラ富士仰ぐ
皇太子迎え意義ある百年祭
【大岩和男】

田植終へ豊作祈る御神酒撒く
浮沈みありての人生種選
【小野浮雲生】

風呂吹に憶い新たや母の味
雲流れパライバ盆地田植時
【風間慧一郎】

日中の暑さいとはず田植せし
人波を押しわけて吊る願い糸
【玉置四十華】

抛る餌待つ白鷺や魚市場
七夕や平和願って鶴を折る
【清水もと子】

手で撫でる髪にしめりや梅雨長し
幸多き顔を並べて移民祭
【前橋光子】

憶い出の尽きぬ手紙を庭に焚く
炎えさかる壁炉に更ける移民秘話
【名越つぎ代】

幼き婢手櫛を当てて朝寝髪
若鶏の肩巾張って日脚伸ぶ
マラクジアの花の時計に蜂雀
出稼ぎの妻の写真と春を待つ
啓蟄の沈思黙考ひきがえる
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


省みてさしたることもなさざるに祝われており今日は父の日
冬の日の温き広場に鳩あまた群れて戯る和やかなさまに
固執せし信念も徐々にほぐれゆく時というもの優しかりけり
【グァイーラ 金子三郎】
(評:三首共良い仕上りです。子供達にしてみれば母の日より父の日は希薄に思われ勝ちですね。祝われることは倖せですね。)

亡き夫の命日迎え過ぎし日を偲びて遺影の前に涙す
永らえて悲喜交々の来し方をしみじみ思う卒寿となりて
キタンダで出合う知人と日常の些細なことを話して楽し
【ミランドポリス 湯朝夏子】
(評:良くまとまっています。会話を交わす相手が居るだけでも倖せなことだと思います。)

胃を病みてあれほど好きな酒を絶ち並びし酒瓶去年のままに
色々と花はあれども日本の桜に勝る花はなきやも
寒の朝日向ぼっこに手足伸ばす着ぶくれ老いのダルマが二つ
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:分り易い出来上りです。やはり病には勝てない様ですね。酒を絶つ思い切りが良かったですね。健勝のほどを・・・。)

慶びて祝う移民の百周年充実されし文化紹介
華やかに日本祭も終わりけり繰り広げられたる芸能式典
ふるさとの味を凝らした郷土食日本祭りの誇りとなりぬ
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:あっという間に百周年の記念行事の大半が終わり静かな毎日が来たようですね。意義ある祭典でした。)

隣家よりせっせと聞こゆる鍬の音「精が出ますね」と声をかけやる
セメントの僅かな隙間に浅緑生命の叫びたくましきもの
これからも百年祭を大切に続けて欲しい祖国の為に
【ピエダーデ寿会 中易照子】
(評:一首目は言葉の順序を変えました。良くまとまっています。)

鉄柵を覆いて咲きしアラマンダ庭師の二人が惜しげなく切る
八階の窓に見下すプラタナス若葉芽吹きがちらほらと見ゆ
父の日に孫や曾孫も集い来て日語判らずポ語ばかりなり
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:一首目の結句少し変化させてみました。花への愛着が表現されます。)

咲きのぼる蔦サンジョンの色冴えて隠居所の庭明るく暮れる
思いきり窓を開きて風入れるプリムラの鉢の甘き香りも
百年の移民祭にわくセントロに吾も行きたし足引きながら
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:良い作品です。流石ですね。)

右腰にピーノを入れる手術して長女の家で看病を受ける
忙しい仕事の合間に吾を看る長女の寝不足すまぬと思う
【スザノ福栄会 黒木ふく】
(評:手術後が大変ですね。私の家内も同様に手術しましたが時間が薬だと思っています。)

頑なに癖と思えり外国に幾年経れど「もしもし」と言う
杜若、あやめと菖蒲の見分け方NHKのTVで教わる
和太鼓に合わせて踊る民謡が移民百周年を盛り上ぐ
【スザノ福栄会 原君子】
(評:毎日の生活の中から生まれた歌です。よくまとめられました。)

足元の危うき夫と今日も来て馴染みのバールに焼き鳥を食う
移民船に酔いし幾日の苦しみも荒海を越え来し遠き憶い出
食細く貧弱なりし孫も十八歳となりUSPに学ぶ
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:家庭の状況を歌にし記録しておくと良いですね。)

胸あつく小旗うちふり大阪橋に皇太子迎う老ク連の吾等
皇太子をこの眼で迎え感激を吾忘れまじサンボードロモ
スクリーンに写りし皇太子ブラジルに百周年の感謝述べらる
【セントロ桜会 野村康】
(評:良い想いでとなりましたね。自作の歌も遺しておくと良いと思います。)

皇太子迎えて祝う百周年老いし移民の顔がほころぶ
皇太子迎えて祝う百年祭老いし移民の頬つたう涙
百周年先没移民の慰霊祭アンニャンビー大講堂に読経の声満つ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:海外であるブラジルならではの光景だと思います。良くまとめられました。)

郷土よりはるばる慰問のなつかしく御国訛を耳にしたれば
難聴の姉との筆談老いし今昔話しは語らずにおり
様々な苦労重ねる科学者も自然界の力には勝てぬ
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:視野が狭くとも毎日の身の回りの事を歌に詠めば良いと思います。)

百歳に近き齢を堂々とカラオケ唄う友の傘寿に
祝いの席昔の友との再会に互いの老いを口には出さず
【セントロ桜会 鳥越歌子】

編むも縫うも一針づつのつみ重ね仕上り楽しみ指を動かす
編物を一つ仕上げてくつろぎぬ心は十年若返りたり
【セントロ桜会 藤田あや子】

うつろなる思いのきざす日の夕べ窓のガラスにあたる鳥あり
来し方を思いて夜更け目覚めおり世に誇る一つの事業もあらず
【梅崎嘉明】

妹の遺品となるを送られしマフラー首に今朝もウォーキング
振込め詐欺たびたび電話かかりくる振り込む金もなく被害なし
【セントロ桜会 板谷幸子】

見上ぐれば街路樹いつしか裸木にさえずる小鳥の宙返り見ゆ
めぐり来し郷土祭りはたけなわでお国なまりが風に乗りくる
【セントロ桜会 上田幸音】

朝の陽の映る窓辺を飛び交える鳩はひと日をいずこに過ごすや
歩むことかなわぬわれはソファーより雲一つなき空を眺むる
【セントロ桜会 井本司都子】

早朝の体操に行く歩道をば黒猫横切り我を驚かす
先輩が三人揃いて入選す我が短歌会を誇りに思う
【セントロ桜会 大志田良子】

久に降る雨はよきかな人も樹も息吹あらたに力湧きくる
椰子の葉の根元に雨水たまりいて小鳥が時折り水浴みしており
【セントロ桜会 富樫苓子】

あざやかなピンクの躑躅咲く庭は誰の住居か立ち止まり見る
たのしさは夜半に目覚めて一刻を静寂のなか読書するとき
【セントロ桜会 上岡寿美子】

空高く赤き風船流れては雲の切れ間に消え去り行きぬ
ゆるやかなチエテの河水流れゆく小舟に男女(ふたり)の姿も見ゆる
【サントアマーロ青空会 酒屋登喜子】
(評:二首共添削していますが、素材が良くすっきりします。次回も期待します。)


川柳


美の祭典オリンピックは咲き競い
人生の一と筋道で神と合う
我田引水心の隅に鬼が住み
照り曇り愚痴は言えない慈雨の音
一と花を咲かす夢見て移民老い
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

文明が進めば温暖化も進み
反対の為の反対野党哀れ
温暖化すべてに影響甚大と
苦労など昔の事に移民祭
【カンポグランデ老壮会 上坊寺青雲】

大任を果して御帰り皇太子
目がさめて夢でよかった逃げられて
物あふれ道徳心が失なわれ
好きなことやって自由に倖せに
有がたき若者達にかしづかれ
【サントス伯寿会 三上治子】

天真無垢みどり児の笑みに乾杯す
老友転倒一瞬命を失なえり
人の世の一寸先は闇と知り
即死され死に顔意外と安らかに
パパガイオソコロと叫ぶ主人の死
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

明け暮れの身辺整理が吾が仕事
あんた誰卒寿の叔母に問われたる
地蔵尊に悟れぬ我れの救い乞う
呆け叔母に付ける薬は家族愛
これからが吾が青春と張り切らん
【セントロ桜会 矢野恵美子】

連れありて海岸山脈遊歩して
山の樹々赤黄みどりの若芽出し
春旅行昔ばなしも楽しくて
サントスの海岸散歩も久しぶり
春光を受けて黄イペー眩しかり
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

レイセッカ下戸に痛痒無き如し
良政を敷いて市長の人気落ち
酒肴遺影に供えパパイの日
気難しい遺影に一寸と舌出して
又一枚箪笥のこやし増しけり
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】

油売りの斉藤道三国を盗る
七夕の横書き短冊願い文
掃除婦の帰った後で掃き直す
若く見られ年寄り仲間となれもせず
留守居番日めくり三日前のまま
【セントロ桜会 森川玲子】

人の世の二人三脚転びつつ
戦争の落し子哀れ故郷なく
惚けた顔ぼけが見ている木瓜の花
落語聞き笑ひころげて齢忘れ
イペまつり雨にうたれて花散れる
【サントアマーロあおぞら会 酒屋登喜子】

情熱と行動いつも前向きで
望郷へどっと崩れる砂の塔
深夜放送オリンピック見て夜明けまで
甥の忌のサムライ眉の遺影顔
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

焦げにぎり作り呉れたる母憶う
テレドラマ文句を云えど一人きり
事故ありとメトロは止まり皆黙す
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

合掌し哀れなそぶりで物乞える
一と悶着あって納まり相続す
男子より女子が頑張り蹴球戦
新らしき地蔵に早もお賽銭
灼かなお前欲しき地蔵尊
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】


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