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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2009年1月号

2009年1月号 (2009/01/01) 俳句 (選者=栢野桂山)


青き踏む杖引く夫を労りて
ひねもすの雨に明るき白イペー
蓬摘む土のぬくみの掌に親し
【前橋光子】

評: 蓬を摘んで居ると早春の土のぬくみが掌に伝わってくる。我々人間をはじめ、もろもろの生物を育て生かしてくれたものに感謝する敬虔な心を表現した句。


枝張りて大空狭く夏木立
生き残る淋しさに耐え墓参り
町住みの我にも嬉し喜雨しとど
【宇佐見テル子】

評: 作物の生長や稔りに一年を賭ける百姓にとって、そのしとどの喜雨ほど喜ばしいものはないが、町住みになっても身に沁みついた喜雨の悦びは大きい。


逝きし人の面影胸に抱き墓参
杖の身に人の情けの身に沁みて
子と孫の墓並びをり供花あふれ
【矢島みどり】

評: 昔の移民は過酷な労働と粗末な食のため、大人も子供まで短命で、移民の墓が親子並んだのが多く、掃苔した人の嘆息が伝わる。


返書待たぬ手紙したため春惜しむ
敬老の日まだ現役と思ふ自負
敬老の日余り大事にさるも嫌
【猪野ミツエ】

評: 老人の日だと言って外出するのを心配して、それを許してくれず、寒暖につけ色々と心配して呉れる家人に、自分は未だまだ元気だと自信のある老人にとって、それは迷惑千万。


息を吐く大口開けて牛蛙
斧創が瘤となりたる大夏木
カランカにしたき瘤ある夏木立
【纐纈喜月】

評: サンフランシスコ河を就航する船舶には必ず船首には、人間と獣の合の子顔のような、魔除けのカランカというものが付いている。その魔力を信じているが、それがどのようにして生れたかは誰も知らない。


椿寿忌の藤の咲いたる句碑の園
寄せ書の父の形見の秋扇
染卵兄弟喧嘩なくなりし
【岡村静子】

評: 幼なかった兄弟姉妹は何かにつけてよく喧嘩をしたが、少し成長してナタールの染卵をやり取りする頃になると、それが無くなり、仲良くなる。染め卵にはそんな不思議な効用がある。


鳥帰る出稼ぎ夫は行ったきり
パンタナルの百鳥騒ぐ春の朝
定年を目指し嫁がず教師の日
【佐藤孝子】

評: 一家の生計の責任を一身に背負い働いている女教師には、結婚する夢は持てず、やむなく定年の日までそれを続けなければならなかった女教師に「教師の日」が巡って来た。そういう日の隠された涙。


四代の一族揃ひ墓参かな
百年の偉業称えん移民祭
【遠藤皖子】

喜雨の音聞きつついつか夢の中
久方の喜雨に百姓手を合はす
【矢野恵美子】

檜舞台に燿めく舞初祝賀の日
くり返す照る日曇る日夏木立
【軽部孝子】

廃校の庭に寂しく大夏木
夏時間なかなかなじめぬ腹時計
【原口貴美子】

崩れ朽つ隣りの墓にも花供ふ
雨蛙ふと鳴き止みて風の音
【森川玲子】

ガゼッタ塔天を刺したる春うらら
立春の空天国はどの辺に
【山田富子】

老ひ呆けて逝くは仕合せ銀河濃し
墓地に咲き花鳳凰樹少し派手
【林田てる女】

信号のなき蟻の道とどまらず
寺裏に佇ずむ旅愁霧深し
【村上士郎】

犬の日の金賞麻薬捜査犬
うそ寒き降りみ降らずみリラの雨
【菅原岩山】

春惜しむ庭の草花色あせて
水草生ふ家鴨の親子遠泳ぎ
【岡村静子】

開けて見たきお地蔵前の落し文
日々平和祈る地蔵と春惜しむ
【香山和栄】

囀に合せ鼻歌うたいつつ
庭の春小鳩二三羽砂浴びて
【矢萩秀子】

水死せし従兄弟の霊のせ流灯会
リベイラ川を照らし灯篭流れゆく
【疋田みよし】

凧揚げやリベイラ河を望む丘
桜貝残して孫の嫁ぎけり
【風間慧一郎】

御先祖の御霊なぐさめ盆踊り
春うららあやとり遊びの孫相手
【藤井梢】

燈篭の流れ片寄る岸添ひに
美風かな敬老会といふ行事
【大岩和男】

リベイラ富士はっきり見えし夕立晴
バナナ園リベイラ河添ひ青々と
【玉置四十華】

親子三代出揃ひ楽し運動会
五代目となりし移民等墓参の日
【小野浮雲生】

訪日の吾等等先づ墓参
怖くありお可しくもあり蟇の貌
【秋元青峯】

石南花やチャベルの鐘に昏るる町
杖を引き参ず友増へ念腹忌
【木村都由子】

雲乱し風吹くまつに朝焼けて
趣味の手作り団扇ごわごわと
【伊藤桂花】

受け取りて大筍によろめきぬ
立て札はホテルファゼンダ夏木立
【畠山てるえ】

夕立や便利な車庫の自動ドア
蟇鳴くや父母を訪ねし里の夜
【杉本良江】

窓外に白き影さす十三夜
濡れし坂足踏みしめて春の雨
【井出香哉】

芽吹きし庭の樹なでて春の風
土掘って落葉を埋めて元肥に
【三上治子】

知らぬ間に菜園みどり葱の花
凧の糸切れて追ひ行く風の児よ
【荘司恵子】

落し文園丁使う竹箒
夏川のリベイラの橋バスで行く
【野村康】

菓子代りの西瓜で育つ移民の子
プリマベーラ鉄扉に揺れて華やげる
【本広為子】

夏の陽に白け落選のビラ道に
未だ早い新藷掘って戦時中
【寺尾芳子】

高台の窓開けて干す夏の服
夜明道起きよ起きよと雀鳴く
【青柳ます】

花卉展めぐりて小さき春の旅
末の娘も乙女の匂ひ春の風
【青柳房治】

夏服に老いも若きも半ズボン
夏雲や予告もなしに大雨来し
【杉本鶴代】

白百合にトルコ桔梗と供華豊か
芝の霊園虹色供華の花明り
【名越つぎ代】

亀鳴いて月蝕あとも沿暗し
ジュキア路の山紫水明夏に入る
夏の海くぼめてヘリコプターのショー
波の穂を踏む足先に夏来たる
病む窓を開け金雀枝(エニシダ)の風入るる
衣替へて闘志しづかに若き女医
鍋火事に女の悲鳴十二月
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


真夜中の窓うつ雨におどろけり遠くで雷の音もきこえる
出来るだけ一人で外出せぬように気をつけいしにまたも倒す
いつのまにか季節はうつり今年も亦さるすべりの花色つきはじめる
【セントロ桜会 板谷幸子】

赤い服のサンタ爺さん街に見れば自づ心の忙しくなりゆく
誕生日をパラケーダで降下して七十歳の元気な男
木陰にて行き交う人々眺めやる老の楽しみ老いてこそ知る
【セントロ桜会 藤田あや子】

芋をむき鶏をさばきて好き嫌いのはげしき孫に食事ととのう
日曜のメトロのろく駅名を告ぐる声まで眠そうに聞こゆ
真白な番の蝶のもつれあふ緑の間に朝光あびて
【セントロ桜会 富樫苓子】

母国にて大陸性高気候を学びしがブラジルに住み身をもって知る
メトロ出て足弱き吾は店のウィンドウの前立ち止まり眺めておりぬ
良きことも悪しきも包みて七十五年異国に老いて短歌をたのしむ
【セントロ桜会 鳥越歌子】

眼鏡の検査久しく怠りて今度の検査で白内障とは
歌友より朝顔の種のプレゼント蒔いて三日後発芽
書展の日に活花られていし好きな花名前を忘れたずぬればアザミ
【セントロ桜会 大志田良子】

左手で咲きし花差し吾を呼ぶ久しぶりなる病む妻の笑み
年末となればまた咲く胡蝶蘭賜びたる人はすでに世に亡し
大会に貰いしペンは書きやすく下手なる文字も少し良く見ゆ
【梅崎嘉明】

朝顔の十八輪も咲きたれば息(こ)はカメラ持ち庭に出てきぬ
飼犬をわが子のようにあつかいて同じ寝床にやすむ人あり
ブラジルに八十年の長き旅両親兄弟等の逝きて久しき
【セントロ桜会 上岡寿美子】

年明くれば九十歳を三つ越ゆわれを思いて少しとまどう
子や孫に守られ異国に五十余年悲喜こもごもの歳月は過ぐ
師走の夕べ不況の風が吹く中を若きら集いて大声でゆく
【セントロ桜会 上田幸音】

ヨーロッパ帰りの孫の土産なるチョコレート時折口にふふめり
窓近く飛び交う小鳥の見えぬ今朝ただ太陽の光あるのみ
老眼鏡とりてながむる花の色桃色黄色吾が目にやさし
【セントロ桜会 井本司都子】

追憶はおぼろとなりて八十歳の年齢かぞえつつブラジルに老ゆ
齢また重ねん春の夜のしぐれ九月の旅は暖くして
春一日そとへ向け来し微笑の目尻の小皺夜の灯にほどく
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:一首目読者も同感でしょう。三首目の二句の「そとへ向け来し」が消化不良のようです。)

わずかなる儲けなれども楽しみと福神漬の野菜をきざむ
足上げて歩くようにと夫に言いわずかの段差で自分が転ぶ
きれいな花もきれいに見えず植え過ぎと夫子は言えど春の風吹く
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:お互いに歳を重ねると歩行には充分に気をつけたいものですね。)

さそわれて見に来し日本芸能祭に若きら三味と尺八合奏を聞く
バッテリーと太鼓尺八フルートの和す楽の音に胸とどろかす
テクラード三味とギターも加わりぬ楽の祭典また来むと思う
【セントロ桜会 野村康】
(評:今回の歌は芸能祭の舞台説明だけになったようです。次回に期待。)

書道展夫と二人で肩並べ見入る掛軸の墨痕躍る
書道展百周年の記念にと美術館に並ぶ有名人の書
熱心に学生達が眺めいる百周年の記念書道展
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:日本文化に触れる機会が増えてサンパウロは良い街です。)

招かれし吟行歌会の去年想うめぐる月日の早きに驚く
バスに乗ることもなくなり駆込みの夢見ることなく安らぎの日々
【スザノ福栄会 原君子】
(評:満員のバスを今尚見かけますが、交通機関が発達して大分住み良くなりましたね。年寄りには良い社会です。前川佐美諸賞受賞おめでとうございます。)

目の限り車窓の草の芽出揃いてつづく焼野は伊予絣めく
街道の端に置かれし大き石冬陽を浴びて温く見ゆ
アパートより日々に通える我が耕地青葉若葉が朝陽に燿く
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:春らしい歌が出揃いました。二首目若干添削。)

アマゾンは八十年祭おめでとう皇室お待ちし多彩な行事
西式療法お水を飲みて健康や背筋伸ばして爽そうと歩く
Xマスツリーに宝石飾りいて大名気分に盛り上がりたり
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:クリスマスは年に一度、大いに盛り上がりましょう。元気なうちに…。そして二〇〇九年も頑張りましょう。)

行く年や百周年よありがとうハッピーエンドで自分史閉づる
揺れ止まぬマスピの書展目に浮かぶ涙は熱し老移民
黄金の月に照らされ行く道は喜萬載冥土の旅路
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:百周年とあって様々なイベントで二〇〇八年も暮れました。良い想い出があったことでしょう。今年も元気で行きましょう。)

煤払い門松などの言の葉に遠き昔の古里偲ぶ
移り来て五十幾年哀歓の流れの中で吾も老いゆく
テレビより自然を見よと諭しおりノーベル賞受賞者の言
【グァイーラ 金子三郎】
(評:三首共良くまとめられ佳作に仕上りました。今年も期待しております。)

沖縄の「美」の公演に心酔す元気を貰い興奮覚ゆ
百年祭イベント多く移民せる人の心を慰みて止まぬ
アメリカと台湾の旅はブラジルの良さをつくづく憶う旅なり
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:老壮の友の歌稿は三首以内となっていますので三首のみ掲載します。二〇〇八年は多くのイベントがあり観客を湧かせましたね。良い年でした。今年も頑張りましょう。)

良き伴侶を得られそうだと嬉しげに吾娘は語りぬ息子のことを
長女が来てクリスマスにと数々の品を揃えて帰り行きたり
娘らが孫の写真を送り来ぬ我の曾孫の愛しくてならぬ
【ミランドポリス 湯朝夏子】
(評:多くの子供や孫さん達が居ると、その数だけ倖せですね。)

描きかけし富士遠眺の秋景色仕上げぬままに年は暮れなむ
忘年会甘党辛党入り混り歌うカラオケ大会の如し
混血の男曾孫の髪の色黄より次第に黒くなり行く
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:身近な素材で良くまとめられました。趣味も多いと忙しいですね。でも楽しいものですね。)


川柳


失敗の踏み台明日の夢を描く
移り来た国で平和な子が育ち
和を抱いた己の影が丸く見え
移民だと言える所に住める幸
ユニフォーム脱ぐ王さんの立ち姿
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

笠戸丸移民の六世純血児
日系の証は蒙古班ばかり
錆び古りしふところ刀嘆く長
東洋街の変遷上塚像嘆く
【サンパウロ中央老壮会 栢野丸丁呂】
(評:移民の父、上塚翁の銅像も東洋街の日系商社の衰退を嘆いているかと百周年に思った。)

かしこまり電話にお辞儀おじいちゃん
人の世は泳いで渡る知恵が要る
良き友が居てこそ今の我が有る
孫曾孫末広がりの目出度かり
孫増える度に増えるは吾の皺
【セントロ桜会 矢野恵美子】

餅代と餌をばらまいて子分釣る
秩序なき自由あふれて住みづらし
神の丘一夜の豪雨に言葉なく
サングラス老いの目じりの皺かくす
【セントロ桜会 森川玲子】
(評:黒眼鏡は日除けやおしゃればかりでなく老い目じりの深い皺を隠すためが主な目的であると作者はそれを見破っている。)

お付き合いあなた様とは器が違う
老いて来て心の中の灯を消せず
書に励む私の命ある限り
初めての孫の卒業幼稚園
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

女とは死ぬまで不思議な生き物と
屑石と承知ミナスの石を買ふ
レイセッカノースモーキングの次は何
丸めれば叩きたくなるメトロニュース
猛犬に注意がチワワ走り来る
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】
(評:猛犬に注意と張り紙がある。おそるおそる呼び鈴を鳴らすと小さなチワワが飛び出てきて唖然となった。)

もどかしき補聴器人語の聞きづらく
火酒止めず煙草も喫いて尚達者
所書き読めず返書の出せなくて
百周年終止符を打つ除夜の鐘
【余碌吟】

「二〇〇九年年頭吟」

百年を越えて二百え初日の出
【博柳】

充分な気迫を満たし年迎ふ
【余碌】


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