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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2009年2月号

2009年2月号 (2009/02/06) 俳句 (選者=栢野桂山)
 皆様より沢山の年賀状を頂きましたが、こちらからは差し上げませんでした。有難うございました。身勝手なことをお詫びします。


飾り餅手水少なに搗き上げて
燈涼し水の撒かれし植木市
さそり座の話聞かせ子と外寝
【纐纈喜月】

評: さそり座は南天で最も目立つ星座の一つで、赤っぽい一等星。何人かの孫と外寝しながら、さそり座のある天体の話を聞かせている。物識りの父親


かくれ干す庭の病衣に春一番
病妻の爪切る庭に春惜しむ
迷彩服の軍犬侍る独立祭
【青木駿浪】

評: 病妻の病衣を人目に付きやすい処に干すのはためらわれ、裏庭にかくされたように干す愛妻家の心根のやさしい句。


夢二の絵抜け出す美女の涼しかり
タイヤ噛み苛立つ犬や朝曇
【猪野ミツエ】

評: 竹下夢二の絵は昔の日本人好みではない、瞳が大きくなよなよして憂うつな感じの美女を描いたが、その絵より抜け出したような美人を見て、涼しげなと思った。


真夜中の川面照らして浮家火事
サンタ爺パネトーネ提げ児童劇
【清水もと子】

評: 浮家屋は北伯の港町にある貧民の住む水上の家であるが、サントスの運河にもある。その浮家屋で火事があり、明々と水面を照らした―と言う誠に珍らしい火事を詠んだ佳句。


敬老会知らずに逝きし父と母
父母の汗染みたるこの地我が故郷
【疋田みよし】

評: 昔、若かった父母が渡伯して、毎日汗水流して働いて来た。そしてこの地に生れた己れは此処を故郷として、住み良い文化村にしなくてはならぬと、その頃の父母の写真を見て覚悟した。


葱坊主手の平ほどの子の畑に
手を擦れる一匹の蝿憎まれず
【前橋光子】

評: 日頃嫌な思いをしていた蝿の仔細な動作を見て、一茶の「蝿が手を擦る足をする―」という句を思い出した。そして蝿も憎めないなーと考えつつこの句をものにして、ちょっと一茶の気分になったところ。


移民史を漫画に残す文化の日
予定にはなきリオ夜景の灯涼し
【畠山てるえ】

評: この頃、日本の漫画本の面白さを見る人が増えつつあるという。この国の文化の日は十一月五日であるが、そういう日に日本移民のポ語はよく解らないが、真面目で正直でよく働いて、ブラジルの産業発展に寄興した移民史を、漫画にして残す人があった。


黄の花の吹雪く川辺の金鳳樹
地蔵様守る老クの初暦
【林田てる女】

月さして滝舞ふしぶきの二重虹
夕涼み鈴蘭灯の点る街
【森川玲子】

滝壷の奥より立てる虹の橋
七色のロマンの淡き虹の橋
【秋元青峯】

数発の見えざるままの遠花火
子等を追ふ鼡花火に大騒ぎ
【伊藤桂花】

抱かれて寝る子の乱る汗の髪
父に抱かれ熱の子眠る夜の秋
【玉置四十華】

遠く近く鳴りどよもして除夜花火
百八の鐘打つ除夜の移民寺
【矢萩秀子】

水害に泣くサンタカタリナの師走
鯉のぼり切りに来たかや鋏鳥
【寺尾芳子】

尺八を吹くトルコ人椰子の月
明滅す電飾木に巻き年の暮
【野村康】

買物客街に溢れる師走来て
不景気はどこ吹く風とクリスマス
【杉本鶴代】

河照らす燈篭映へて揚花火
花火揚げ燈篭流ししめくくる
運動会ゲイシャ歩きといふ競技
【大岩和男】

牛を飼ふ法衣の牧師牧遅日
拗牛の不貞寝捨て置く牧遅日
盗伐の痕虎刈りの山笑ふ
【菅原岩山】

ふくらんで光る一瞬滴れる
滴りの苔に滲みゆく静けさよ
書展出て肩並べゆく街薄暑
【伊津野静】

屋上に祖母と外寝の幼き日
野生猿とび交ふ鄙の夏木立
三人の餅搗くリズム杵のわざ
【杉本良江】

闇に浮く河面きらきら揚花火
汗拭ふ間をも惜しみて神父説く
【風間慧一郎】

足るを知り幸せ一杯年の暮
故郷の緑滴る高速路
【彭鄭美智】

餅搗くや皆の幸せ杵に込め
独学のカンテラに飛ぶ火取虫
【宇佐見テル子】

汗かいて眸輝く若さあり
花火明りに流灯会終る宵
【小野浮雲生】

道掃ける箒にリズム朝涼し
夏シャツの白襟黒の衣の乙女
【伊津野朝民】

春日和今日の命を大切に
姉妹の頬を濡らして春時雨
【山田富子】

外寝せる子の足元にパン置きて
インジオの野生の薬草探し掘る
【軽部孝子】

餅好きの亡夫偲びて佛前に
夏木立森林浴を楽しみて
【遠藤皖子】

餅搗きも今は電動餅搗き機
搗き立ての餅赤ん坊の頬のよう
【矢野恵美子】

一人居に事無き日々や年暮るる
二重虹眺む楽しき友と居て
【荘司恵美子】

勝鶏も気息えんえん羽根拡げ
小人像倒して芝の青嵐
【矢島みどり】

爽やかな日差し待たるる昨日今日
恙なく今年も過ぎ行き年用意
【失名】

夏帽子背筋のばして試歩の径
軽井沢めく荘なりし夏山家
【本広為子】

孫や子の支へに生きて年の暮
オゾン濃き森林公園蓮白し
【名越つぎ代】

有難や一家すこやか年の暮
書初のまだ真白な俳句帳
【青柳ます】

除夜花火一億余人の年明けて
クーラーの効きし新車の初旅よ
【青柳房治】

エス像の後光のさまに初日影
掃き納めして神棚も仏壇も
ホ句友故のちらばる机辺十二月
狐めく痩犬連れてうかれ神
女弟子より夫に来し暑気見舞
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


働かず火酒飲み俳句に熱中し早死にしたる友を語りぬ
試筆せる十四文字の古代の詩師は丁寧に批評くださる
咳止めに良く効くという蜂蜜を気休めの気で舐め続けおり
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:一首目少し変化させてみました。全首良くまとめられました。)

誘われて年末旅行に応募する今のうちならと杖しかとにぎりしむ
窓外の明るさにひかれ薄着して風邪をひいたは吾の不覚ぞ
吾が短歌に添削ありてありがたく謝しつつ写す控えの手帳に
【セントロ桜会 野村康】
(評:素直な勉強ぶりがうかがえます。健康にも注意しましょう。)

ブラジルの近況流す日本のニュース聞きつつ故郷を恋う
ブラジルに五十年目の初春迎え孫ら育ちし交わす乾杯
吉凶の交々ありし年なれど友あり我ありよろこびにいる
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:家族の絆は良いものです。小生も乾杯。)

笠戸丸その船腹にモジの街拓きし先駆者等展示されあり
モジ市長百周年の公園を残して去れり惜しまれながら
笠戸丸大きく見ゆるモジ公園に迎える市民の記念像建つ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:百周年記念像はコロニアの歴史の中でも永久に残したいものですね。)

追憶はおぼろとなりて八十の年数えつつブラジルに老ゆ
齢また重ねん春の夜のしぐれ九月の旅は暖くして
春ひと日外へ向けきし微笑の目尻の小皺夜の灯にほどく
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:三首共見事によまれてました。感服しました。齢重ねる度に冴えています。)

あちこちと痛みを感ずる今日この頃後期高令は云い得たり
爆音は町をゆるがせオートバイの群れて発するアパレシーダ目指し
雨あとの露の残れる畑に来て刺多き胡瓜刻かけて摘む
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:一、二首添削あり。三首目は新鮮な胡瓜が感じとれます。)

去年今年さして思いは変わらねど一夜明くれば挨拶変わる 
この年は丑にあやかりマイペース急がずあせらず転ばぬようにと
除夜の鐘一度もつかず傘寿過ぎ重ねし罪の計り知れずに
【スザノ福栄会 原君子】
(評:今年は牛歩のままにゆっくり余生を送りましょう。体に気をつけながら。)

移住して異国の荒波乗り越えて一息つけば我は米寿に
平凡な暮しをしていた日もありて移住配耕人生は激動
我が母校の百年誌今手にすればはたと止まりぬ恩師の顔に
【ツッパン寿会 上村秀雄】
 評 三首共良くまとまっています。)

万人の祝う祭日クリスマス泣いて迎ゆる被災地もあり
食べ残す程の馳走をすまないと思いつつ捨てる心苦しさ
不景気で親方倒れ子も泣きて必死で求むる生きる道をば
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:若干の添削あり。世界的不況の中、辛苦の様が地球上に見えますね。)

百周年日系移民認められうれしきことや大和魂
倖せの種蒔き運動「修養団」富士登山するブラジル青年
大勢のリベルダーデの新年は昨日餅搗き二千九年度開く
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:短歌はニュース記事にならないように気をつけましょう。素材を見て自分の心の動きを詠みましょう。)

一年の終りを告げる除夜の鐘闇をとおして夜空に響く
朝毎に窓より眺むる隣家の石榴も早や八年を過ぐ
【ツッパン寿会 林ヨシエ】
(評:二首目の結句若干添削してみました。良くまとまっています。)

今年こそプラス志向で短歌詠み楽しく生きよう一年の計
我が友の転倒骨折二時の手術時間に合わせひたすら読経す
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:老いづくと何が起きるか予測できません。お互いに健康に留意しましょう。)

健康に合わせこつこつと嫁達は夫婦で庇う美しき愛
子や孫で新しき年賑やかに共に達者で倖せを祝ぐ
【ピエダーデ寿会 中易照子】
(評:若干添削しています。素材良好。次回にも期待します。)

長男の娘が医大を卒業す吾は祝福す医師の父娘を
この年はより佳き年であれかしと夜明の空を仰ぎて祈る
幼なき日の楽しかりしはお正月切なきまでに思い出さるる
【ミランドポリス 湯朝夏子】
(評:三首目若干添削。誰しも願う平和で良い年でありますようにと。お互いに元気であることですね。)

拉致問題被害者達の心情思い早い解決祈る毎日
老人を欺く事の多き世に一人暮しの兄を気づかう
【セントロ桜会 板谷幸子】

百年に一度の不況日本に働く吾子らの身の上案ず
気がつけば雁飛ぶ時期となりていて今朝は群なす雁を眺むる
【セントロ桜会 富樫苓子】

夜の間に三十二ミリ降ったよと雨量の報告挨拶に代え
同じ石に二日続けて躓きぬ注意しながら歩いていても
【セントロ桜会 藤田あや子】

言いにくき言葉を告げて帰りゆく君の後姿黙し見送る
いつまでも「大人」になれぬ友の電話あくびかみつつ聞き流しおり
【セントロ桜会 梅崎嘉明】

夜の十時過ぎゆく頃を風出でて窓のガラスの鳴る音がする
かけ足で過ぎゆく日々か年かわり早や十日目となりにけるかも
【井本司都子】

恙なく正月祝う吾が家にて幼き曾孫もおめでとうと言う
声上げて千切れし凧を幼らは追えど電線にからみ躓きぬ
【セントロ桜会 上田幸音】

待ちわびし朝顔やっと今朝一輪紫紺の色は美しきかな
日本の国技をかざる大相撲初場所早くも波乱万丈
【セントロ桜会 大志田良子】

会館の玄関におわします地蔵様赤き前垂れに錫杖もちて
ブラジルで初めて見たる地蔵様移民百年蔵と命名さるる
【セントロ桜会 鳥越歌子】

尺八の演奏を聞けばうなづける首ふり三年とは良くも言いける
ブラジルの国旗の色に黄とみどりシビピルーナは今盛りなり
【セントロ桜会 上岡寿美子】


川柳


平和郷守る祖先の地の惨禍
天災で無能の人智ゆさぶられ
災害を遠くで聞いて寂しい日
賞讃で移民百年無事に過ぎ
年の瀬を乗り切る師走の風の中
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

歩行器を使って安心足ならし
子沢山苦労忘れて今の幸
子育てに仕事夢中で通しきし
働いた男の様にと誇り持つ
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:妻であり主婦で母と一人三役を務めて暇を作って畑仕事も男並みに働き通してきた現在安楽な暮らしの中でそれを誇りにしているが、それは本人の心の中の事である。)

インヂヨ等の薬草療法効確か
祝わるるアマゾン入植八十年
大胆な胸開けモードも流行りとて
若者のポ語ハイカイの年賀状
前掛のお地蔵様に初詣
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:今ではサンパウロの名物になりつつある老ク連のお地蔵様に正月にお詣りした赤い前だれが強く印象的だと作者は感じた。)

米つぶは大事と母の躾守り
孫五才すすむ英知にまどう祖母
生かされて居るを自覚し日を過す
合掌の気持で幸に向い合ふ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

メトロニュース小雨の中を傘がわり
付録つくメトロニュースはよく捌け
エスパゲティの小袋献立付録付き
ミナス旅騙されたふり駄石買ふ
【名画なつメロ倶楽部 田中保子】
(評:ミナスに旅行したこれは原石の宝石だか研磨をすれば素晴らしい物になると嘘八百を並べるを真顔で聞いて値切って買った。)

今年こそと未だまだ小さな夢育て
人情もねじれ戻らぬこと悲し
憂き事も孫の笑顔で癒される
何も彼も信じられない憂き世なる
【セントロ桜会 矢野恵美子】
(評:浮き世を憂き世として牛をかけた牛年である。騙したり騙されたりの世の中で何を信じて良いか判らぬと嘆いている。)

干支忘れ元号なじめず四十年
勝ち負けの無い世も一寸味気なし
おばあちゃん団体旅行は人任せ
洗濯機唸って水をよくも飲み
【セントロ桜会 森川玲子】

かつては紅顔今厚顔になりにけり
何事も茶化して生きて日々是好
居眠りし牧師の法話素通りす
公衆電話いつまで喋る前の人
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】
(評:急に用事を思い出して家人に知らさねばと公衆電話に行くと前の人が長々とかけてついいらいらとした。)

サッペ葺き丸太造りのレストラン
棒読みに出来し漢詩を書き初めに
施こされ労わり受ける齢となり
下戸の友土産に呉るる新走り(新酒のこと)
【余碌】


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