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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2009年8月号

2009年8月号 (2009/08/11) 俳句 (選者=栢野桂山)


母の日や母の器量を叔母に聞く
パラグアイ領へ道一すじや枯野原
マスク取り家庭のママに戻りたる
【猪野ミツエ】
(評:女教師か看護婦かマスクをして居る時はきびしい顔をしているが、家庭に戻れば一変して優しいママの顔にもどる。職業婦人として、また家庭の母としての二面を詠む。)

毬イペー広場飾りて凛と咲く
寒風の中凛と立つ冬木立
酷寒の晴着彩る街となる
【彭鄭美智】
(評:酷寒の日も街行く人々の、派手な晴着が彩る商店街。その中の大きな店の女主人として生きて行くきびしさを詠む。)

燦然と明けの明星冬空に
蒼穹の空ウブルーの王者ぶり
恙無き夫在る幸や恋人の日
【本広為子】
(評:病気知らずの頑強な夫をもつのは、主婦にとって最良の倖せ。それは恋人の日の良き贈物と思う。)

六月や日々祭日の花火鳴る
花婿七才花嫁十才ジュニナ祭
聖体渡御粛々花絨緞を行く
【木村都由子】
(評:キリストの聖体が花の絨緞をしゅくしゅくと進む、セマナサンタの行事。他に言い様のない静かな華やかさを詠む。)

葱刻む君とふたりの味噌ラーメン
コバルトの空華やげるイペロッショ
【青柳ます】
(評:コバルトブルーは強く鮮やかな青。それをカンパスとして咲くイペロッショ。まさに華やかな佳き風景。)

母の日や海越へ届く祝品
華やかに空のカンパスイペロッショ
【遠藤皖子】
(評:この頃街の一画を華やかに彩るイペロッショ。それは大空をカンパスとして絵のようだ!と詠みあげたはなやかな一句。)

懸崖の菊目を奪ふ花卉祭
マチュピチュの遺跡銀河に近々と
【菅原岩山】
(評:マチュピチュはペルーのクスコ市北西の遺跡。インカ様式の建築で有名な遺跡は正に、銀河に近々と見えて神秘そのもの。)

見合写真愛人の日に出して見る
返り咲く蟹仙人掌を卓上に
【寺尾芳子】

秋冷や一句に篭めしわが想い
入学子よりも母の目輝きて
【秋元青峯】

三世の嫁に看病受ける冬
裏庭の葱の出番よおみおつけ
【黒木ふく】

里芋を茹で味噌和に祖母の味
道端に可憐に咲いて千草かな
【矢野恵美子】

小袋のピポカぽりぽり夜学生
野草みな彩を変へつつ春を待つ
【軽部孝子】

小春日や流るる草書書道展
小春日や抱く子の髪に陽の匂ひ
【森川玲子】

野辺歩く雑草の花あどけなし
おでん煮る里芋ころころおいしそう
【山田富子】

草の花牛馬毒草除けて食む
転ろがりて見たき山羊髭草の原
【纐纈喜月】

街を行く袖なしショーツ冬暖し
老犬と老母ひっそり冬日和
【矢島みどり】

車道わきちらほら芒穂を解けり
行く秋や話はずまぬ夫と居て
【吉崎貞子】

カイピーラ踊るパレード祭月
旅客機の堕ちし報道肌寒し
【清水もと子】

新渡戸菊咲く福博村春浅し
リングイサ熱々スープ冬の夜
【杉本鶴代】

極楽鳥花柩に入れて永久の旅
うつらうつら仏顔して日向ぽこ
【香山和栄】

雲出でし日の又雲へ寒波急
認知症の友今いかに日向ぼこ
【伊津野朝民】

雑炊の湯気立ちのぼる古厨
飛ぶパイナ雪に見立てて移民老ゆ
【伊津野静】

着ぶくれてそのまま寝つく老となり
長き夜や辻褄合わぬ夢ばかり
【宇佐見テル子】

講演会の同時通訳冬ぬくし
バスメトロ無賃謝しつつ木の葉髪
【野村康】

ピラカンサ真赤に熟れて庭静か
カラオケの会場黄に染め水仙花
【青柳房治】

乾杯の声高からかや母の日に
人気ある青首大根完売す
【小野浮雲生】

まだ少しカンナの臭い新ピンガ
大根葉もみ塩漬けに母の味
【大岩和男】

スイナンの朱の棘抱いて人誘ふ
妻の遺骨を新墓に冬日和
【風間慧一郎】

マンジューバのサシミ肴に新ピンガ
咲き誇る黄菊白菊マリア月
【失名】

七人の子育てあげたる木の葉髪
今朝うれし鉢植椿二輪咲く
【伊藤桂花】

スイナンの燃ゆる水郷冬来たる
真白き大根並べて朝の市
【矢萩秀子】

霧深し音なく眠る港町
アボブリンニヤの収穫急ぐ露の畑
【三上治子】

裏の畑大根の花咲く日和
何を待つ枯木に一羽野カナリヤ
【玉置四十華】

長距離バス今快適や芒原
里芋の煮物うれしき季節来る
【畠山てるえ】

陽に灼けてくたびれ据る種茄子
鰯雲映して魚の棲まぬ川
【佐藤孝子】

遂に来ぬ母よもしかと待つ夜寒
母の愛心にしみる夜学の子
【前橋光子】

音立てて大き土塊冬耕す
寒風に砂丘風紋動きつつ
雁帰る飯場流転のダム工夫
接吻すごと二花寄りて冬のバラ
海を背に立つ移民像寒夕焼
冬木根を蛇のごとくにつまみ掃く
月冴へて棟木一寸下がる刻
双塔のひま月寒く明減す
冴へ返り一つの星もこぼれざる
冴ゆる夜の人恋ひ顔のこけし達
インジオの岩絵風化す寒夕焼
木藷汁余生暖め合ふ夫婦
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


六十四年住みし故郷今もなお亡き父遺植の椰子は実りて
出稼ぎが影響及ぼすコロニアの悲しや家庭の崩壊ニュース
二階にも下にも一台ワープロ置き趣味に任せて老いは楽しも
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:三首共良い視点で描写も良し。良い作品です。)

草叢に秋を告げんと虫の声懸命なるを愛しさの増す
寝そびれて聞く風の音カタカタと窓を揺らしてしばし静もる
流行にあわせようとてブルーザの裾切りすぎて頭かかえる
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】
(評:一首目言葉を入れ替えてみました。三首目の素材なかなか面白い出来です。)

車窓より色とりどりの車の波渋滞の中バイク疾走す
【サントアマーロ青空会 竹内千賀子】
(評:言葉を変えてみました。折角ですから次回は三首ぐらい出してみませんか?)

若者の昔好きな人達は今も昔も変わることなし
ギター弾く食事しながら我我夢中そんな時代も忘却の彼方
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:二首共まとまりました。次回も頑張って下さい。)

夫逝けど家族の愛に包まれて思い煩う事一つ無し
紅に燃ゆる紅葉を眺めつつつくづく思う我の倖せ
落葉し裸木となりし桜木も走り咲き見ゆ二つ三つと
【ナザレー老壮会 波多野恵子】
(評:素材も良好、視点も良し。勿体ないので若干添削してみました。原作と比較してみて下さい。)

今日一日留守居と炊事まかされて大丈夫と答う自信なけれど
鍋焦がしの常習の汚名晴らさんと留守居の炊事に心を配る
【スザノ福栄会 原君子】
(評:万事心配なそさうですね。炊事もうまくできた事と思います。歌も良し。)

黒人は主役となりて活躍すオバマ大統領の治世となりて
恋愛のドラマの合間を水漬く町のニュースは写す水の恐さを
川柳を習いてつくづく思うこと世間に疎き我が身口惜し
【スザノ福栄会 野村康】
(評:時代の変遷で政治も変わり、世相も変わる。天災だけが相も変わらず、と言ったところですね。)

信玄公は獅子噛の謙信公は大半月夫の愛でいし兜を飾る
幾年振り訪い来し郷に友は老い庭に蟹味噌を夫と搗きおり
生り年のビワの花びら散りしきて背戸の小道は淡雪かと見ゆ
(評:流石に三首共良い作品にまとめられました。)

湯田中を過ぐれば続くリンゴ園二人の旅の夢が広がる
修羅いくつ潜りきたるを顧みつ妻と旅行く高原の秋
九十九折る白根山地を降り来れば志賀高原は紅葉の秋
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:情景をうまく描写されて良い作品ですね。)

コンピューター、デジタルカメラ、セルラール年毎変わる時代の進歩
二人親の慈愛に包まれ育ちたる孫十七歳の誕生祝う
孫娘十七歳の誕生日いつの間にやら良き娘となりて
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:両親に育てられる倖せこの上なし。孫の成長に目を細めている作者。)

虚子忌大会参加賞の猩々花秋晴れの庭に置きて賞でいる
大学の花壇に植えられしサルビアが昨夜の雨に元気づきたり
友が呉れしモデルすたらぬワンピース秋の大会に今年も着て行く
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:短歌、俳句と多才な作者に感服の至り。)

飛行船そっくりな雲空飾るあら珍しや手を振ってみる
階段に手摺つけたる家多く温情溢るる老いてゆく身に
日暮時雲は動かず鳥帰る犬は吠えたち静けさ破る
【ピエダーデ寿会 中易照子】
(評:一、二首共面白い素材で良い作品。この調子で次回も頑張りましょう。)

幼な友北海道より特産のコンブを大量送りくれたり
映像にて桜の花びら水面に落ちて流るる花筏見る
意を決しブラジル移民に籍を入れ遥々渡りし二か月の渡航
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:素材を生かすため三首共若干添削しました。視点良好。次回も期待しています。)

幼な児が煉瓦掘りあてインジオの家の跡よと真面目に言うなり
冬陽射す温き広場に鳩数多群れて遊べる平和なさまに
長年を悩みし胃腸も良くなりて朝のトイレも快適となる
【グァイーラ 金子三郎】
(評:三首共、言葉を変えています。良い仕上りです。)

孫は今日祖国台湾へ中国語の研修に旅立つ二十歳になりて
寒き日はすき焼、おでんに人気あり沢山食べて風邪ひかぬよう
寒空に目覚むるばかり鮮やかにピンク色なり毛毬イペーの
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:三首共、結句の言葉を入れ替えてみました。良くまとまっていて、良い作品です。)

すばらしい「祖国はるかに」二世らは日語解せず侘しさおぼゆ
上空にヘリが止まれば何かあるバンデランテかイミグランテに
【セントロ桜会 板谷幸子】

移民の日笠戸丸より百一年安らぎ給えと慰霊の席に
移民祭献花と献華おごそかに読経の声会場に満つ
【セントロ桜会 鳥越歌子】

アパートの四階にして流し場に蟻がはい出て餌をさがしいる
毎日が留守番のごときわが暮し退屈であり楽しくもある
【セントロ桜会 上岡寿美子】

妻は病み娘は足くじきお手伝いの休暇となりて右往左往す
金貸せと電話のありて持ち行けば「何の金か」と呆けたる義姉は
【セントロ桜会 梅崎嘉明】

どんよりと曇りて寒き日つづく水仕事ばかりで面白くなし
日の照ればたちまち暑きブラジルよ重ね着一枚いちまいと脱ぐ
【セントロ桜会 富樫苓子】

寒き朝産声あげし曾孫は小さな口を思いきりあける
はなれ住む女孫はわれを気づかいて月に一、二度訪ねてくるる
【セントロ桜会 井本司都子】

星のロマンしのぶ今宵は七夕祭世界の平和願う短冊
日本語で「イタダキマス」と曾孫はにっこり笑顔で箸をとりたり
【セントロ桜会 上田幸音】

二世の娘名古屋の暑さは異常だと今年も冬のサンパウロに来し
六年間人工透析つづけいし大好きだった姉は逝きたり
【セントロ桜会 大志田良子】

右脚の痛みかばって右腕の疲労いや増す気をつけおれど
早やばやと風邪ひきたれどタンボールの酸素吸入で癒ゆるも早し
【セントロ桜会 藤田あや子】
(評:井本さんの歌「生れてきたる」は「産声あげし」としました。大志田さんの歌「遂に逝きたり」は字余りになりますので、「遂に」は削っても理解できます。)

待たれたる東洋街の星まつり雨天になりて日延べされたり
毛を刈りて洗いて爪も磨かれて犬の美容も人間なみにして
寒き日に画布に向かえどなかなかに根も続かず鈍りがちなる
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:二首目の「人なみに」は人間同士の言葉に使いますので、この場合「人間(ひと)」と読ませた方が良いと思いました。多才な趣味で誠に結構です。)

次々と何の容赦もあらずして過ぎ去り行きぬ時の流れよ
亡き夫の早や三回忌は巡りきて子等も集いて無事に勤まる
悦びも悲しみも皆押し寄せてくるこれが人生人の世なるか
【ツッパン寿会 林ヨシエ】
(評:一つ一つ物事を処理してゆく事は大変ですね。家族の協力でうまくゆく事は倖せなことだと思います。御自身のお体に気をつけて長寿を祈ります。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


我田引水これも浮世の生きる道
愛想で受けた言葉にある笑顔
爆笑の真只中で虚をつかれ
夢追った移民の広野向きを変え
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:次世紀に向かって移民の歴史はどの様に変わっていくのでしょうか。)

腹の虫元気に泣かせダイエット
大戦はなくも平和のない世界
細い目で笑っているよな祖母の顔
何故にお腹空かせて核兵器
【サンパウロ桜会 森川玲子】
(評:国民の飢餓を無視してミサイル発射に余念のない北鮮。)

詩ごころ寒波に負けて鈍り勝ち
世は進歩すれど秩序の退廃目に余り
猛犬に注意の掛札チワワ吠ゆ
人間がだまして咲かせ花を売る
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:時季はずれの花を咲かせて高買を狙う人間の知恵と欲。巧みな表現です。)

ばっちゃんと呼ばれてびっくり店を出る
気乗りせぬ誘いやんわりお断り
悪性の風邪の広がり打つ手なし
犬のフン踏んで一日気が晴れぬ
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:全句とも良く纏まっています。次回もご投句をお待ちしています。)

人と犬ペアの服着て幸せそう
人よりも思慮深そうな盲導犬
流石ポップ王借金遺産も世界一
【セントロ桜会 野村康】
(評:世紀のポップ王と言われるマイケル・ジャクソンの総てが世界のトップとしてマスコミに報道されました。解り易くするために若干添削しました。参考になさって下さい。)

主人待つハチ公今も駅にあり
修身が消えて道徳地におちる
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:少し言葉を入れ替えて解り易くしました。参考になさって下さい。)

百一年歌謡祭伴奏はギターのみ
寒波来る急ぎペットにもチョッキ編む
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:若干添削してみました。次回に期待します。)

名犬も飼い主次第でただの犬
犬のフン片付けもせずシャラリシャラリ
【サンパウロ中央老壮会 新川一男】
(評:下句の表現が面白いですね。川柳の妙味が発揮されました。)

夏痩せか貧乏痩せが本音らし
移民した夢と現実天地の差
老いらくの恋は実らぬ財がない
【アルジャー親和会 近行博】
(評:老いらくの悲恋を詠ってお見事。次回も頑張って下さい。)

出稼ぎの引き揚げニュース胸いたむ
移民苦も新老人は茶でにごす
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:開拓移民の苦労は体験者にしか分かりません。)

岩風呂も入ってみればすばらしい
リベルダデの風物年暮の餅搗き会
【セントロ桜会 中山実】
(評:少し言葉を入れ替えました。次回に期待します。)

世の中は矛盾だらけで侭ならず
面倒な世の中首脳陣も右往左往
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:言葉を少し入れ替えました。参考になさって下さい。)

達人の書を読み眼(まなこ)のウロコ取れ
人生の幸せ自分で作るもの
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:若干添削。ご参考になさって下さい。)

魅せられた花にトゲを忘れてた
海越えた桜異国の春を知り
一生を素顔心に花を植え
【高田早波】
(評:「心に花」が良いですね。いずれもよくまとまっています。)


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