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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2009年10月号

2009年10月号 (2009/10/13) 俳句 (選者=栢野桂山)


荒涼の牧場潤す初時雨
道の辺に十字架傾ぎ蔓枯るる
息詰めし如園の木々春を待つ
【畠山てるえ】
(評:息詰めし、とは緊張して息が詰る感じを言う。園の樹々がその感じを持って、芽吹くばかりで春を待っている――と、作者は視た。)

咳込める背を撫でくるるもみじの掌
鮪船男のロマン乗せて発つ
鮪船水盃も一ト昔
【猪野ミツエ】
(評:鮪漁は太平洋と地中海、日本海などを主な漁場としているが、昔は船が小さく事故を心配して、水盃まで交して出航した。)

田舎にて見し清冽な星月夜
運動会走って転んで子等楽し
リベイラ川原始のままや秋時雨
【疋田みよし】
(評:聖州とパラナの州境を流れるリベイラ川の周辺は、拓けつつあると言っても、その一部はまだ原始のままの風景の中に暮しているが、それに晩秋寒々とした通り雨が過ぎた。)

豊かなる耳朶の覗ける冬帽子
冬ざれの野路に思索の往き戻り
涸滝の一縷の水の漏らす岩
【風間慧一郎】
(評:瀑布が涸れているようだが、仔細に視ると小さな流れが岩間を潜るように、まだ流れているのを発見して、瀑布の秘めている偉大さを見る。)

葉蔭々々にひっそり冬の蝶
故里の石焼き藷をなつかしむ
さわさわと息づく街路樹初時雨
【矢野恵美子】
(評:今年始めての時雨が街路樹を濡らした。これまで降雨不足気味で喘いで居た樹々が、これで生き返ったようだと見た。)

パン屑を啄み弾む寒雀
合掌の羽を解かずに蝶凍てし
友垣に米寿祝はれ木の葉髪
【菅原岩山】
(評:友としての交わりを結ぶことを、垣を結ぶことに例えて友垣と言う。その友が米寿祝いに来てくれたのを見ると、彼も己れと同じように木の葉髪。冬近い頃の抜毛したようだった。)

内輪もめ相談に来る冬菜畑
祖母に落す玉子一つや冬菜汁
冬葉盛る笊も遺品の一つなる
【佐藤孝子】
(評:冬菜を持った手光りのする古い笊は、永らく姑が使ったもの。これには永い間の色々な追想が伴う遺品の一つである――と見て詠んだ句。)

焚火消へ酒びん転げホームレス
出航船芥返却山笑ふ
【清水もと子】
(評:返却とは置いてきたものを元に返すという意。先日ヨーロッパの或る国が芥を積んで来て、再びそれを積んで戻って行った――と、新聞記事にあったが、その複雑なことをまとめた。)

本棚の遺影の額に春埃
亡き母の貧亡自慢嫁菜めし
【森川玲子】

国広く南三州雪景色
初期移民上下せし河水涸るる
霜に枯れ閑古鳥鳴くお茶の里
【大岩和男】

古里にみどり育てる植樹祭
食文化芸能文化と郷土祭
【小野浮雲生】

新しき臼父の日の餅をつく
露光り生命たくまし花南瓜
【前橋光子】

澄む空に白雲浮べ国豊か
うっとうしき雨季や小鳥の寝床何処
【矢萩秀子】

落葉掻くつむじ風きて又飛ばし
親父似の髭が良く合ふジュニナ祭
【秋元青峯】

春近し逆光に雲輝ける
週末の枯園鳩の影見えず
【鈴木照諸】

七夕やキスして吊す黄の色紙
巣作りのサビアー鉢の水欲りて
【香山和栄】

降雹に軒並み被害春菜畑
タンポポの絮飛ぶ日和久し振り
【本広為子】

バラ落下して花替へて蜂雀
春時雨傘をささずに濡れて行こ
【山田富子】

霰降る音高かければ身がまえて
冬めくや襟元立てて体操会
【彭鄭美智】

婿のっぽ花嫁小がらジュニナ祭
マラクジアの一つ下りて蔓枯るる
【原口貴美子】

ジュニナ祭継ぎはぎ衣服縫ひし夜々
音なき音心で聴いて初時雨
【吉崎貞子】

けいこ事終えて帰宅や日短か
草花に飛び交ふ小さき冬の蝶
【荘司恵美子】

咳く夫を気づかい呉るる嫁優し
しんしんと足元より冷ゆこの寒さ
【矢島みどり】

屋根裏の親子ふくろう声高し
追ひ出せしふくろうすぐに元の巣に
【岡村静子】

短日のポトンと落ちし入日かな
北伯へ夢を果せし避寒旅
【宇佐美テル子】

短日や失せもの探しにすぐ暮るる
父の日や三代の父祝ふ宴
【遠藤皖子】

ふる里の味と香りの桜餅
あこがれは一度の登山富士の山
【三上治子】

安泰の一家や冴ゆる夜々早寝
老体の命惜しめと月冴ゆる
【伊津野静】

父の日の父老へど健母もまた
運動会八方へ裾万国旗
【伊津野朝民】

秋澄んで雲の上航く飛機の音
おにぎりと朝鮮漬出る夜食かな
【木村都由子】

鈴懸の落葉しとねに猫寝まる
寒厳し長きマントの老夜警
【名越つぎ代】

のどかなる大空泳ぐ凧一つ
小学生の芋弁当や終戦忌
【青柳ます】

耕して子孫栄える福博村
父の日やグァラナで乾杯下戸の父
【杉本鶴代】

春そこに老の旅路の二頭馬車
明日から八月と言うこの寒さ
【青柳房治】

終戦の日も知らされずお見合す
自信付く句座で褒められ蓬餅
【野村康】

木藷植う食べるだけとて欲なかり
終戦日偲びて食べるダンゴ汁
【寺尾芳子】

時ならぬくしゃみ会堂ふるわせて
しとしとと一ト日物憂し冬の雨
【伊藤桂花】

濡れ続く小鳥のねぐら冬の雨
子育ての頃思ひ出す雨期長し
【藤井梢】

朝起きをしてはがっかり冬の雨
かず知れず彩とりどりや菊花壇
【玉置四十華】

夢育てつつタイプの娘春寒し
熱き茶の嬉しき齢春寒し
母の日の日本土産の安産符
春うららビラに似て舞ふ寺の鳩
貧富の差なき移民村春祭
髪梳いて居て出そびれし春寒し
朝焼けに染まらず看護腹乾く
リズムある羽音庭訪ふ鋏鳥
淋しさにかたまり露路の野韮咲く
俳目高のたかぶり受胎時ならむ
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


楽しみがあるから祭日待ちかねて命の洗濯家族連れにて
一枚の紙で複雑な動物を指先器用に折紙を折る
指先と頭を使い折紙を時を忘れて痴呆防止に
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:日々ささやかな楽しみも大切に御自身の体調管理に役立ってますね)

バンザイで兄は戦地に赴けり今は無言で先祖の墓地に
歌作り始めて早や幾久し恩師の一句に今なお続く
戦時中日語学校閉鎖され養蚕小屋のランプの明かりで
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:初期移民の苦難の表現も歴史の詩になります。)

満開の庭のつつじは三メートルリンド、リンドと訪う人毎に
容赦なく老いは露骨にやってくる上歯皆抜き心も抜けて
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:三メートルの躑躅とはすごいですね。良い作品です。)

花が二度イペーローザに咲く姿凛として立つ姿美し
小きなるボッテの草を抜き取れば蚯蚓おどろき土にもぐりぬ
【ナザレー老壮会 波多野敬子】
(評:一、二首共若干添削しています。原作と比較してみて下さい。次回も頑張ってください。)

陽光の兆し見えたり東洋街に買物客増え陽射しが強し
広場にはもう春ですとあちこちに色とりどりの躑躅咲きおり
喜寿になり尚健やかにありたしと日々早起きて体操会参加
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:お元気な様が歌に表現されて良い作品です。)

身にいまだ気力の有りと思うなり夜遅くまでものを書く老夫(つま) 
捨てられいしプリマベーラを持ち帰り我が庭に置き手入れ楽しむ
一枝の花瓶に咲ける桜花家内(やぬち)にあれど若芽吹き出ず
【スザノ福栄海 青柳ます】
(評:夫婦で毎日お元気な様子、何よりです。作品も上出来。)

絵を見ても判断しきれぬポ語の漫画辞書を傍えに挑して見る
十六夜の冷たい風に干し物を撫でさすりして取り込みて来る
頭脳良くなれと願いて栄養に心配りし弁当持たせる
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:日頃の栄養食が頭脳生活に役立つようですね。この様な作品もその証かも。)

こんなにも日本人が居たのかと日本祭の会場めぐる
数知れぬ人混みの中遠き子と日本祭の食堂で会いぬ
寒き日の庭を黄色に染めて咲くミモザに今年の冬は長かり
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:二首目の結句簡単にしました。三首共良い作品ですね。)

郷土祭り日本情緒豊かなる物をそろえて客を呼びおり
久しぶり会いたる友と抱き会いて過ぎしを語る日本祭に
娘等に連れられて来しお祭りで先ず食べて見た牛丼うすし
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:補足した点もありますが、良くまとめられました。)

怪しげなビニール袋が路地にあり瞬時ひらめく爆発物やも
寒がりの我をはげましくるるがに寒気迫れば色増すランターナ
彼岸会の行事も疎き今の世に季(とき)をたがえず咲く彼岸花
【スザノ福栄会 原君子】
(評:三首共素材をうまく表現されています。)

新聞の文字見え難くなりし目に大きな見出しのみを追いゆく
控え目に出したる黒き手を握る人間の温み伝えくる手に
縛られて注射されいる子犬の眼悲し気に潤み獣医見ており
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:変わらぬ良い作品を投稿され、嬉しく思います。)

孫よりの真心こめし贈り物感謝感激言葉につくせず
はるばると贈りくれたる車椅子感謝の涙止めどなくして
私ほど倖せ者が世にありやすべての物にあたえ恵まれ
【ツッパン寿会 林ヨシエ】
(評:三首共前回投稿された作品と同じでした。折角ですから再度掲載致しますが、評は前回と同作品ですから書きません。)

懐かしや五十年振りでの再会で乾杯交わす同窓会
貧しさに慣れて生き来し我今も鰯の塩焼き足ることを知る
親孝行気付けば既に親はなし真心つくせ親の在る時
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:二首目、「き」という発音が重複するため初句を「貧しさに」としました。「親孝行したい時には親はなし」という諺ですね。結句を変えてみました。)

強剪定されし団地の冬のばら芽吹き遅きは肥料不足か
小さきばら哀えず咲く花圃に来て迷うが如く冬の蝶消ゆ
体温より少し高めに温め酒風邪の予防と言い訳をして
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:言い訳をしてでも飲める人は倖せですね。三首共うまくまとめられています。)

日本祭朝早くより人の波広い会場も賑わいており
日本祭(おまつり)に迷子になっては大変と吾に持たせし携帯電話
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:一首目の三、四句の言葉を変えてみました。)

満開のイペー花毬は夕陽うけ紅むらさきに輝くが見ゆ
咲き揃うイペーの花に留まりては蜜吸いやまぬベージャフロールの
【セントロ桜会 藤田あや子】
(評:一、二首共若干言葉を変えてみました。素材の細やかな視点が良いですね。)

パイネーラ散りて久しき裸木はようやく芽吹きて春の装い
イペーの花の木下に佇う二人なかなか会話終らぬらしく
【セントロ桜会 上岡寿美子】
(評:一首目の結句を変えてみました。二首共春らしい歌で良いですね。)

終日を降り止まぬ雨に家の中湿度の高き日々が続きぬ
かけている眼鏡を探す短歌読みて思わず独り微笑みており
【セントロ桜会 井本司都子】
(評:一首目四句の言葉を変えてみました。天気が悪く体にも悪いですね。)

恙なく老いゆくわれにも落し穴すってんころりと手首骨折
わが趣味と云うにはおもき短歌(うた)なれど作品にする喜びもあり
【セントロ桜会 上田幸音】
(評:二首目の三、四句を若干補足。お互いに気をつけましょう。思わぬ時に事故がおきますから。)

窓繰れば霧晴れてゆき一片(ひら)の雲なく春の装いが見ゆ
不精なりし夫が育てし万両の鉢植えを子に遺し逝きたり
【セントロ桜会 鳥越歌子】
(評:一首目、「窓くれば」とありますから結句は「装いが見ゆ」としました。二首目の「手不精」としないで、ただ不精で良いと思います。)

九月とはこの国の春朝々を雛鳥の鳴き藤の花咲く
窓繰れば庭に二鉢の蘭の花朝日をうけて輝きて見ゆ
【セントロ桜会 梅崎嘉明】
(評:二首目の「窓くれば」をありますから結句は前者の作品と同様に終止形にした方が良いと思いました。)

不注意に愛犬(いぬ)死なししを悔やまるる想い出す度こころ苛む
あたたかき朝陽浴みつつ愛犬の死の哀しみを想い出しおり
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:一、二首共若干添削しましたが、犬に対する愛情が良く表現されています。)

サンパウロと隣接の町ポッソスは気温は高く真夏の姿
出でて来しポッソデカルダスは二年振り空気は澄みて紺碧の空
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:一首目若干言葉を変えてみました。たまには温泉旅行で長生きしましょう。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


選挙戦移民の一票空駆ける
移り来て心に冨士を抱いて住む
喧噪の町をのがれて流す汗
不況から抜け出す餌を撒く選挙
欲と言う字から燃えたつ日を貰う
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:意欲は人生の生甲斐、益々の意欲を燃やして老後を楽しく生きましょう。)

新時代超然として生きてゆく
打ちとける心に通う趣味の友
脱皮して浮世の風を嗅ぎ分ける
老いし身も当てにされれば応えたく
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:当てにされるうちが花。応えてくれる人と信じているから当てにされるのです。)

旅好きの連れが居ないと淋しくて
ボケたくはないけど自覚ない怖さ
探し物日課のひとつとなって老い
物あふれ捨て場所探す世となりぬ
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:使い捨て時代、塵芥の処理は困難を極めるばかりです。三句目、若干添削しました。参考になさって下さい。)

才媛も恋には勝てず親捨てる
ヘボ将棋負けても勝ってもボケ防止
夜のバラ香りで誘いトゲで刺す
【サンパウロ中央老壮会 新川一男】

移民して戦禍に遇わず救われる
寅は皮人は仁徳名を残す
【アルジャー親和会 近行博】
(評:一句目の「合う」を「遇う」としました。二句目、少し添削しました。参考になさって下さい。)

詩舞紅白今年も見られた「祝賀の詞」
書道の半紙やっと探せておちつきぬ
あなたもですか眼鏡の置き忘れ
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:言葉を少し入れ替えて分かり易くしました。原句と比べてみて下さい。)

高いけど似合うマフラー探しだし
老いらくの恋に亡夫の夢を見る
イペー満開老いも明るく腰伸ばす
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:少し言葉を入れ替えてみました。参考になさって次回も頑張って下さい。)

裂帛の気合いに観衆腰浮かせ
ペードロを漢字で書いてと異人請い
宰相が国語忘れたワッハッハ
【レジストロ春秋会 大岩和男】
(評:三句目、少し添削しました。次回に期待しています。)

上乗せし少しの罪が命とり
物大事時代おくれと笑われる
【サントス伯寿会 三上治子】

乳母車に乗ってワンちゃん得意顔
ブラジルの太陽が好き喜寿の幸
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

☆次回も皆様からのご投句をお待ちしています。柿島、または老ク連宛にお早目にお送り下さい。


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