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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2018/12/14)
2009年12月号

2009年12月号 (2009/12/16) 俳句 (選者=栢野桂山)


初孫の洗礼の朝つばめ来る
藤色の母の遺愛の春日傘
納屋の隅芽ぶき種芋植へ頃に
斧持って同じ足跡念腹忌
【森川玲子】
(評:入植当時、男も女も同じように斧やホイセを手に、山焼きの跡片付けをやったが、俳句の普及に全伯を行脚されている念腹先生も、入植当時は我々と同じ足跡をたどられたのであろうか――と、念腹忌の日にふと思った。)

蕨採る野良着引っぱる鬼アラメ
山里に住む幸蕨飯炊いて
一階より二階明るし金鳳花
子供の日別居の父母に手をひかれ
【佐藤孝子】
(評:気が合わず別れ別れになった父が、子供の日(十月十五日)にやってきて、離別したのを忘れて、それぞれの子供の手を引いて、何処かへ行った――。この複雑なことを一句にまとめたもの。)

一人居の日暮哀しくサビア鳴く
束の間に延び放題の草若葉
明け暮れの霧にリベイラ橋古いし
【矢野秀子】
(評:リベイラ河の周辺は常に霧の深い日が昼夜と続く。そのために其処の木造橋ははげしく古びゆくのである。)

元気よく夫の遺愛の梅開く
カジュの雨出稼ぎの父待つ童児
黒母の日乳母恋ふ白人耕主の子
【香山和栄】
(評:「黒母の日」は九月二十八日、その日白人耕主の子が、自分の乳母として可愛がってくれた黒人の女を恋しがった――という句。〔黒母の日とは、ブラジル生れの奴隷の子の自由を認める法令が公布された日〕)

やさしくて明るく育つ娘桃の花
敬老日祝ふ紅白餅贈られ
青梅のほのと紅さす一樹あり
【木村都由子】
(評:畑の梅が揃って青々と丸くふくれ初めた中の一樹の、一粒だけの両頬が、ほんのりと紅くなったのを見付けた。)

日本の孫卒業アルバム送り来し
何百キロ旅してリベイラ河温む
リベイラ河の灯篭流しや原爆忌
【疋田みよし】
(評:原爆を投下されて、広島長崎が全滅した日を「原爆忌」として、リベイラ河に灯篭流しをして、厳粛にその日を供養するこの河辺の住人と、遠くより駆けつけた人々。レジストロでは五十五回目、二千余が流されたこの河の風物詩。)

滝の虹くぐりて元気初つばめ
仲好しさん前向き後向き春日傘
【原口貴美子】
(評:大の仲良しさんの二人が話しながら向き合って、春日傘を差してゆっくりと歩いて行く。だが向き合うには一人が後ろ向きに歩かねばならぬが、若いので平気の平座。「仲良しさん」などと童児のような言葉が面白い。)

車椅子押させて開く春日傘
沼に釣る人をかすめてつばくらめ
しろがねの燃料タンク陽炎へる
【纐纈喜月】

風船を二つ双児の乳母車
木藷植うグワラニー族の焼畑
マチュピチュのインカの遺跡風薫る
【菅原岩山】

句座にほのかに匂いたつ八重桜
チャンネルをひねれば古都の青嵐
【杉本鶴代】

山頂の旗破り去るはたた神
降り止まぬ夏雨に古る波戸場町
【清水もと子】

花祭日系の腕の見せどころ
人気ある芸能たっぷり日本祭
【三上治子】

春日さんさん米寿の父を祝う日ぞ
桜見て自慢話しに花が咲き
【遠藤寅重】

父の日や美田買い得づ老いし我
スモッグに汚れず街路樹芽吹きたり
【風間慧一郎】

鉢植に二タ月咲き次ぐ皐月愛で
花の芽を痛め争う猫の恋
【小野浮雲生】

不器用に歩くサビアの子可愛い
朝風にゆれて椰子の葉かろやかに
【藤井梢】

庭先で蕨摘む友うらやまし
切られたる株の哀れや蘖ゆる
【寺尾芳子】

山住みの友に賜わる蕨かな
陽焼せる孫の土産の浅蜊かな
【青柳ます】

蕨摘む母子見て立つ牧の馬
砂吐かす浅蜊のつくだに見せ合ふて
【野村康】

春と言へ寒さに耐えて夕仕度
雲の間に淡々見ゆる春の月
【井出香哉】

菊根分大輪の花夢見つつ
燕の巣家族順番覗き見る
【秋元青峯】

リオ五輪喜びに沸く国の春
書道展俳句草書と街の春
【軽部孝子】

群つばめ空に道あるごと里へ
春日傘くるくる廻し立ち話し
【宇佐美テル子】

忘却のこころに春の雨降りて
春雨やつづる女の句が重い
【山田富子】

八重ざくら初咲き解ぐれ庭の景
ジョンデバーロ古巣に覗き囀れる
【本広為子】

客を待つ園のほろ馬車陽炎へる
家周り花で埋ずめん菊根分
【畠山てるえ】

春深し目覚めて夢の続き追う
春深し眠りもふかく夢楽し
【矢野恵美子】

燕来て出稼ぎの吾子帰伯せし
コーラスの歌声流れ春深し
【遠藤皖子】

逝く春と共に去り行け吾が病魔
麻酔覚め朧に娘の声を聞く
【名越つぎ代】

セータの人ランニングの人朝涼し
月冴えてホ句会の道明るくす
【前橋光子】

束の間の陽差しに小鳥囀れる
束の間の陽差し惜みて布団干す
【矢島みどり】

庭先に伸びるマモンはひとり生え
遠き日の思ひ出なつかし独立祭
【玉置四十華】

ムクインの肉眼に見えぬ小さき虫
寒夕焼夫亡き里に住み古りて
【岡村静子】

日の温み染み込ませんと布団干す
這い松の若葉地に垂れ萌え初めし
【大岩和男】

親しみて土に馴染みて菊根分
潤おふて緑りの園となる芝生
夫の居るそれだけの幸妻の春
【吉崎貞子】

春川に添ひ通学路七曲り
ジュキア路の山柴水明探る旅
凶作の畑哀しめる案山子翁
ウルブーに似たる地鶏の羽抜けたる
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


春風に吹かれて帰るスザノ路は道路補修のブルトーザ唸る
見ちがえる程に補修の出来た路サントス下りの幹線道路
寒暖の厳しきこの頃小鳥らも屋根の廂に体寄せ合う
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:二首目の「重要道路」は「幹線道路」にしました。良くまとまっています。)

ベンテヴイ朝一番に縄張りを誇張して鳴くビルの屋上
形には見えねど侭す真心は宝の如き光を保つ
恥かしと思うは見栄か情なし読み書き出来て手紙の書けず
【スザノ福栄会 原君子】
(評:一首目は「鳴けり」と過去形でなくても良いと思います。文章を書く事を苦手の人も大勢います。決して恥ではありません。立派な歌ができるではありませんか。)

福博は第二の故郷短歌に俳句に福栄会と楽しみてゆく
喜寿すぎてすぐに忘るる物事をメモして置くなり呆けたくはなし
この人と同じ運命を生きるとて渡りし伯国に悔なき生活
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:多才な趣味で言うことなし。)

春が来て今年も半ば過ぎんとす八十路の月影うつろいはやく
細腕の娘の我を看る健気さを謝しおり亡夫の遺影に対い
日曜を休むことなく吾娘は行くシチオに用なす荷物持ちつつ
【S・P中央老壮会 野村康】
(評:若干添削母娘の絆磐石ですね。)

踏んばって生きている吾娘が爪先に穴の開きたる靴下洗う
早朝の街を綿菓子かつぎ行く老爺はいずこへ児等を目当てに
和裁の師も時折り弾かれし筑前琵琶今宵テレビで「那須の与一」を
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:一首目はほのぼのとした良い作品ですね。)

生き甲斐を友と論じた日の記憶彼の日抱きいし主義も捨てたり
核心に触るることなく妥協せし吾が顔さむし灯にさらされて
冷え冷えと義歯洗いつつひたすらに老いゆく吾の命いとしも
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:きっちりとした心情が表現されています。)

拍手して仕事さがしておしゃべりす長寿の秘訣を百寿の母披露す
花嫁は美し優しおしとやか婚約せし孫に吾教えたり
皆嬉しやたらに会えぬ友とうから母の祝宴に三百人余
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:若干言葉を変更。盛大な祝宴おめでとう。)

暑き夜に降る雨音に乾きたる牧の牛群案じつつ眠る
我が母校百周年を祝ったと学友我れに記念誌送る
父母すでに在さぬ故郷に再訪日親亡き古家にぬくもり漂う
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:一首目は作者の心情が余す所なく表現されています。三首目の結句も良いですね。)

芸能祭友は十八番のマドロスを見事に踊る後期高齢者
同郷の友が唄いしおてもやんほんによかよか芸能祭は
投稿した老壮の友に短歌あり当て字訂正選者に脱帽
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:面白い作品となりました。一首目字余りでも「後期高齢者」としましょう。)

ひと握りの訣れ悲しく土かけて息詰まりしを忘るることなし
いつの間にか足取り弱き我が姿まだよまだよと見守る家族
餌拾う番の鳩が楽しそう追っかけごっこの夢消え失せり
【ピエダーデ寿会 中易照子】
(評:一首目は埋葬の場面と思いますが、具体的に誰の埋葬かを入れた方が良い様です。)

妻を呼び子らも呼びて共に観る稀に咲きたる南天の花
童心に還りて食ぶる桑の実は七十年経しなつかしの味
遠のきし遥かなる古里偲びつつ見上ぐる空に星は耀う
【グァイーラ 金子三郎】
(評:三首目は字余りの為言葉を変えました。)

母親にとしをとったら解るよと教えられたこと現実にあり
百歳の翁昇天愛されて子孫あまたに見送られつつ
ゲートボール老人生き生き若返り少しの病は忘れ去るなり
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:三首共結句が字足らずでした。)

八十路すぎ思いは残る妻のその後を成るようになると妻は笑うも〔亡夫の遺作〕
死のふちをさ迷う夫のさまを見て命の重さをつくづく思う
亡き夫の遺せしさ庭にいくつもの大手鞠の花美しく咲く
【ナザレー老壮会 波多野敬子】
(評:三首共良い作品が出来ました。)

友だちもなくて始めしウォーキング会えば会釈す人が増えたり
句集読みふり仮名欲しき文字ありて豆辞典では見つからず
芝刈機電気モーター唸らせて大草小草を蒔きとばし行く
【中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:短歌も俳句も作者の考え方一つで辞書にない漢字や、ルビがあるので日本語のむつかしさが判りますね。)

今年又グラジオラスの季来たる背のびしながら咲き競いいる
故郷の親しき友の訃報受く次は誰かと思えば虚し
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:「背伸びしながら」は自己満足の感あり。「背伸びするがに」の方が良いようです。)

珍らしく今日は晴れたりフィナードは人等早くより供花たずさえ
肝臓が悪いと診断されし友二年足らずで遂に帰らず
【セントロ桜会 鳥越歌子】
(評:一、二首共若干添削しました。)

傘寿超えなお現在先祖の墓掃除出来る日をただ感謝のみ
汗流し鍬を引きたる掌の固きを擦りて移民老い
日本のラヂオ体操ブラジルで朝毎集る様々な顔
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:老移民といえども毎日の体操で元気な姿が想像されて結構な事です。)

ジャカランダ四十余年の枝拡げ抱え切れざる大木となる
木いっぱい花咲きたれば花見せんとて娘らを呼ぶ
【セントロ桜会 藤田あや子】

遠くよりピアノ発表会に来てくれし友あり胸のあつくなりたり
年明くれば九十歳になるわたしそんな齢に信じかたかり
【セントロ桜会 井本司都子】

盆の日は亡夫眠れるパース墓地子等も集いて花に埋もる
年に一度巡り来たれる盆の日の父の墓前で子等と合掌す
【セントロ桜会 上田幸音】

愛犬のねむれる所に夫と行き黄イペーの苗を植えたり
二十センチ余の藤の挿し木に時季はずれの蕾ひと房出でて色づく
【セントロ桜会 富樫苓子】

玉木君くれし白藤六年経て今年咲きたり見せたきものを
貰いたるストレッチャ活けて卓に置く昨日より今日花冴えかえる
【セントロ桜会 梅崎嘉明】

会場の窓うつ大雨に帰りのバスが気になりており
小雨降るビルの門辺に美しきミモザの咲きてしばし歩を止む
【セントロ桜会 上岡寿美子】

訪いしカッシャンブーの教会の百二十九段いっきにのぼる
バスの窓ゆノッサセニョーラ教会の見えてしずかに胸に手をおく
【セントロ桜会 大志田良子】

(小評:今回の作品は、リズムが整っていないのが数首見られました。短歌は三十一音のリズムが一番大事な事だと言われています。一音の過不足は言葉の都合で必要な時もありますが、ルールとして三十一音のリズムは成るべく守りたいと思っています。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


宿命と思う日もある遠い故郷(くに)
移り来て昿野の汗は夢で燃え
人生の裏と表にある進歩
不況風すさぶ心を吹き抜ける
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:故国を離れて幾星霜、多くの移民が背負った宿命だったのですね。)

心にも整形欲しい科学の世
文明がつくる背徳国乱れ
老の春今八十路の恋を知る
【アルジャー親和会 近行博】
(評:「三つ子の魂百まで」と言われる所以ですね。)

リオ五輪どうするつもりこの治安
ばあちゃんは有閑マダムいつも留守
百一年邦字紙にきく危機の声
占いに運命線をなぞられる
【セントロ桜会 森川玲子】
(評:二〇一六年五輪対応への重要課題ですね。)

新時代超然として生きている
二代目の風格しかと譲り受け
勇気ある実行が生む格差
なぐり書き原稿用紙役立たず
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:「我れ関せず」といったところでしょうか。中七が利いていますね。)

ホ句と川柳酒とピンガの違いあり
老後みる娘への感謝亡夫(つま)拝む
五線紙にない音の出るカラオケ会
【S・P中央老壮会 野村康】
(評:「酒とピンガ」の対象が良いですね。二句目若干添削。字余りにならないように―。)

迷い道独りぼっちの暮哀し
やもめ同志支え合って老い楽し
重い荷も二人で持てば軽くなる
故郷の押し花のせて手紙つく
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:下五に寂寥〔せきりょう〕感が漂っています。二句目、少し言葉を変えました。)

さあ停年我が人生はこれからだ
どの顔も至福いっぱい川柳会
紙ひとえ乗り切り人生老いの春
久しぶり日本が匂う便り来る
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:ご停年おめでとう!!これからの人生を満喫されますように―。四句目若干省略。)

あんた誰卒寿の叔母の笑顔かな
齢聞かれ指を九本出して見せ
切符無しわたしを待って終着駅
【セントロ桜会 矢野恵美子】
(評:明るい表現がいいですね。)

温い友情大事に老いの坂
ナフキンにおつまみ取ってビール飲む
敬老会卒寿の友も泣き笑い
古稀過ぎてますます励む健康体
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:一句と二句目、分かり易くするために、少し言葉を変えました。)

頼もしいほろ酔い気分の金一封
ラブレター百通不明となって老い
愛ひとすじ人の心と風の行方
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:若干添削。参考になさって下さい。)

老人に欲しい転ばぬ先の杖
紙一重ゲートボールに得点差
趣味仲間笑い合って老い忘れ
【セントロ桜会 中山実】
(評:言葉を入れ替えて分かり易くしました。)

秘めごとは口で言うより紙に書き
新年の誓い今年も同じこと
【新川一男】
(評:「紙」の課題をよく活かされましたね。)

語らずもうしろに見せる友の老い
財なれど老いて隣に情もとむ
老妻との話題作りに味をほめ
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:うしろ姿に友の老いを見て感慨ひとしお。奥ふかい作品です。)

思春期の初恋心の宝もの
日系の汗が築いた大市場
山本賞日系あまた篤農家
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:初恋の思い出は、生涯心の中に生き続けるものですね。)


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