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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2018/12/14)
2010年1月号

2010年1月号 (2010/01/06) 俳句 (選者=栢野桂山)


八十路尚夢を抱きつ日記買ふ
そっけない蛙に話す独り言
笑ひ皺一つ増やして去年今年
【吉崎貞子】
(評:あわただしく年が去り来る――と言うのに、ほがらかによく笑う人が居て、眼や口のあたりに笑い皺ができている。去年今年を過す人の表情をよくとらえた句。)

臥す母に程良きところ金魚鉢
何事も善意に受けて春隣
引際のあざやか舟虫群なして
【松崎きそ子】
(評:舟虫は小判形で茶褐色、動作がすばやく、海岸に人が現れると、まるで命令されたようにさっと引き、人が去るとまた元のように群をなす。舟虫の習慣をよく見た句。)

仕事終へ蟇鳴く沼辺急ぎ足
雨誘う頬ふくらませ雨蛙
夏時間告げて諸鳥鳴き競ふ
【宇佐美テル子】
(評:「夏時間になっても老人はそ知らぬ顔―」という句があったが、これは様々な鳥が「夏時間の五時だぞ!早く起きなさい――仕事に遅れるぞ、と言うように、朝寝を楽しんでいる人に鳴き立てるのである。)

火を慕ふ虫に集り親子蟇
すだれなす気根の夏木園深く
虎を描く絵葉書き買ふも年用意
【纐纈喜月】
(評:十二支の三番目のその年に引っかけて、虎を描いた絵ハガキを買った。虎は全身三メートルにも達し勇猛である。それにならい新年を迎える心用意に、虎のようになろうと思った。)

物言えぬ日々の看護や春深し
虹の橋渡れば父母に逢えるかと
芋の葉に濡絹めける雨蛙
【猪野ミツエ】
(評:濡れた絹の衣のような肌をした枝蛙が、仏陀のように芋の広葉の上に安座している蛙の写生。)

楽にのり白靴揃ふ広場かな
チエテ河の森造成の夏木立
【畠山てるえ】
(評:チエテ河上流に日系奉仕の夏木立の一部が完成した――とのこと。コロニア挙げて賛意を表したい。)

夏めくやポニーテールの娘の頃
野遊びと海へ行く子等ジャンケンポン
【野村康】
(評:ポニーテールは女性の髪の形で、後頭部を一束にして仔馬のしっぽのように垂れる結い方。夏めいてきて人々も動物植物と、みなその成長を謳歌しているが、特に若い娘等の可愛いそのうなじにそれが現れている。)

朝寝してだれに気がねのなき余生
野火遠き狐火のごとチラチラと
若芝にころげて遊ぶ孫と犬
【矢野恵美子】

晦日そば食べて安堵す大晦日
ひきがえる出湯の客を驚かし
八十路媼ナツメロ歌ひ年忘
【遠藤皖子】

烏賊と海老たっぷり入れて五目寿司
帝政の世のタイパ塀ジャカランダ
海の日や軍艦マーチまだ耳朶に
【香山和栄】

春眠の己が鼾に目覚めたり
晩酌の火酒程々にして菜飯
芦の芽や芦舟浮かぶチチカカ湖
【菅原岩山】

抽斗の滑りにぶりて雨季長し
釣り帰えり遠雷を背に
鬱蒼と茂り大夏木の緑
【秋元青峯】

何時逝くも悔なき余生夏の露
園涼しペンチへ老いのまた一人
【伊津野朝民】

曇り日の日ごとの続く雨季に入る
静かなる雷光なりし夜の街
【荘司恵美子】

夏時間時計はそのまま老夫婦
貯水池のチラピア跳ねて雨季に入る
【森川玲子】

古里の筍飯の味継ぐ娘
宣伝の風船人形水着きて
【原口貴美子】

真心を込め年末の寄附少し
百才の表彰祝い夏の宵
【軽部孝子】

雨降らずおどろかしたる日雷
記念日の沖縄じゃんけん夏の日に
【山田富子】

春眠や吟行バスに夢心地
春光や園のつがいの孔雀の尾
【岡村静子】

寒き日の粕汁うまき夜なりけり
年の瀬や三ヶ国の旅終へし
【彭鄭美智】

夏風邪の始めか気怠るき昨日今日
爽やかな夏の陽待たる昨日今日
【矢島みどり】

椰子の花生涯を農一筋に
幼なき日金魚の柄の浴衣着て
【星川としい】

白イペー咲けば山鳩巣作りす
古写真涙もろくて老の秋
【前橋光子】

立初めの足裏まろき跣足の児
湖近くみな浴衣人盆踊
【清水もと子】

晴天に恵まれ灯篭流しかな
そよ風を送る便利な椰子団扇
【三上治子】

椰子林に白く残れる朝夕夜
天寿までの道けわしき露時雨
【林田てる女】

粋な作りの門構へ竹の秋
もう少しもう少しとて馬棚直し
【伊津野静】

電動鋸唸り倒さる大夏木
羽搏くも羽根無き素振り羽抜鶏
【名越つぎ代】

鳥帰る帰伯うながす子に電話
タンボール風呂すぐぬるく遠蛙
【佐藤孝子】

老若の春の集いや辰年会
春うらら笑顔の集い辰年会
【古谷綱雄】

ゆるやかに流る燈篭三千個
短夜やたまに逢ふ娘と時惜しみ
【矢萩秀子】

青首の効能延べて大根売り
押しつぶれそうに動ける雲の峰
【伊藤桂花】

ひっそりと目立たず咲いてお茶の花
出稼ぎの親の抱く孫初旅に
【疋田みよし】

白蓮や仏縁ふかき移民寺
身を清め注連飾綯ふ老移民
【風間慧一郎】

雨去りて虹立ちて日の暮れにけり
快適な夜空に轟く花火祭
【小野浮雲生】

レジストロ名物銀筋マンジューバ
万年も生きるかごきぶりヒゲ長し
【大岩和男】

ブタンタンの森深く吹く風涼し
白百合の一輪句座をなごませて
【杉本鶴代】

朝市の音なく逃げる蟹一尾
抱きしめて春の夜風の別離かな
【青柳ます】

茄子漬けの美味しい季節来りけり
母送る野辺に群れ咲く彼岸花
【青柳房治】

同郷の友がきに会う念腹忌
潔子忌に供う秘蔵の花一つ
【本広為子】

夏めくや甚平型の服見付け
パルマ供へ由緒ある墓拝みけり
【寺尾芳子】

子沢山何より苦手雨季深む
我が余生夏時間など無関係
【詠人知らず】

純白に伸びてパト咲くアマリリス
若く伸び緑の濃ゆき竹の春
【詠人知らず】

汐さびのして黒がねの島新樹
春泥に写るネオンも田舎町
垣越しに神父の助言バラを継ぐ
水飲みし腹鳴りて恥ず耕女
帰伯して疲れなき娘の年用意
姉妹の童心載せてシャボン玉
狐顔して妻療へし風邪かな
蟹遊ぶ忘れ潮ある岩畳
孫の夢静かに揺するハンモック
囀りに合す口笛インカの娘
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


口切ればいつも戦争を語りしが宮嶋翁の一回忌済む
関切って吹き出るような暑さ去り後に雨雨今日もまた雨
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:二首共良い仕上りでした。)

芝居では千両役者の上村氏短歌の道でも素晴しき人
静かなる朝のひととき椰子の葉を風わたりゆく音のみ聞こゆ
【ツッパン寿会 林ヨシエ】
(評:一首目の結句と二首目の歌意を汲み添削しました。参考までに原作と比較されたし。)

州道のこの地あたりがその昔棉摘みしかの植民地のあと
先輩の友の元気に支えられ今日の老クで再会が楽しみ
しとしとと降る雨音を床に聞き昨日は蒔き終えし畠目に浮かぶ
【ツッパン寿会 上村秀雄】
(評:農に生きる姿が如実に表現されています。)

天候に左右されるか足重く情けないけど頑張れないと
浮かれます叩く太鼓に身も軽く踊りたいけど車椅子のわれ
嵐来て根こそぎ倒す大木に側を通りて首すくむ我
【ピエダーデ寿会 中易照子】
(評:三首共良くまとめられました。次回も頑張りましょう。)

食欲があるゆえ心配御無用と気負いて言えど疼き止まらず
髭を剃る電気カミソリの心地好さ表彰受ける秋の朝に
年金で暮らす華やかさ望めねど故郷の友より手紙の届く
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:無難な一連の作品でした。)

何あげてもおいしいおいしと食べる母神の給いし命尊とし
訪なえば暫く無沙汰の我が顔をまじまじ見詰むる百三歳の母
年一度訪う父の墓碑撫でにつつ娘に語る父の思い出
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:三首共良い仕上りです。長寿の家系ですね。)

今朝急ぎ来て見れば早萎みいて月下美人は残り香もなし
畑より摘み取りて来し莢豌豆炒めて彩よし味もこよなし
盆の日の墓前に賑わう一族あり地下の御霊も喜びいまさん
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:流石にうまくまとめられました。次回も期待します。)

ベンテヴィー声張りあげて鳴く朝故郷の田植の頃思い出す
人の手に渡りし土地にアセローラ真赤に熟れて小鳥飛び交う
この人と同じ運命を生きるとて渡りし伯国に悔いなき生活
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:情景鮮明で良い作品でした。)

約束の人は来らず苛苛と待つ間の長し暑きバス停
侮りし風邪におかされ終夜咳き込み明かす胸痛きまで
【スザノ福栄会 原君子】
(評:二首共良いまとまりです。風邪は万病の元と言いますから早く良くなって下さい。)

新聞の天気予報に濯ぎ物抱えて気を揉む留守守る我
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:日頃様々な事を学んでおられる姿が表現されてたのもしいですね。)

久しぶり波打ち際の砂浜を素足で歩むは心地良きかな
椅子に座し潮騒の音聞きながらしばしまどろめば来し方の夢
ランターナ垣根に生えて花盛りあまたの蝶がたわむれており
【サントアマーロ青空会 竹内千賀子】
(評:三首目は添削しましたが、良い作品を寄せられました。)

アメリカの人種差別に泣く二世二つの祖国の物語り読む
戦争で虐げられし日系のジャップジャップと目の敵なりし
盆が来ても墓参かなわぬ身となれどホームで供養のありがたきかな
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:少し添削した所もありますが、良い作品でした。)

ピッタンガ道一面に落ちており滑るを恐れ遠廻りする
夕焼けで真赤に染まる春の空は雨が近いと祖母言っていた
【セントロ桜会 板谷幸子】

突然の体の変化に入院し子等の手筈に危険を脱す
九十二歳マルカパッソの手術うけ百まで生きると介護師は言う
【セントロ桜会 鳥越歌子】

大木の黄金藤は咲き盛り夏の陽射しに光りかがやく
灌木にからまり咲ける野朝顔の濃き紫は眼に鮮やけし
【セントロ桜会 富樫苓子】

雲一つなき空の下繁りあう木立は風に揺れ止まぬなり
ためらわず十字を切りて祈ること歳月ながしブラジル暮し
【セントロ桜会 上岡寿美子

不景気と云われおれども年末となりて街頭人で賑わう
この年も残り日わずかジングルベルの鳴りて電飾は街を彩る
【セントロ桜会 梅崎嘉明】

いく年か詠みたる短歌もようやくに整理の済みてペンを置きたり
いつお呼びがありてもよろしき年なれど日々知恵がつく曾孫愛しも
【セントロ桜会 上田幸音】

朝々を電話にて交わす挨拶の声にて始まる今日の一日
また一つ年かさぬるを思いつつ夕べの空を仰ぎていたり
【セントロ桜会 井本司都子】

恙なく今日も一日も終わりしと日記帳開けば早や師走なり
去年の暮れ入れし義歯まだ合わず一年過ぎても通いつづける
【セントロ桜会 大志田良子】

幼孫の競泳参加を応援す町のプールは初めてのこと
三歳児「浮袋」に掴まり足動かして二十五米完泳したり
【セントロ桜会 藤田あや子】
(評:上田さんの一首目は、リズムを整えるため若干言葉を変更しました。藤田さんの一首目は字足らずで結句の変更。二首目は助詞の追加。夫々熱心に作歌に励んでおられる姿が目に浮かびます。今年も元気で続けて行きましょう。)

皮下脂肪とる気で始めしウォーキング四十日目に二キロ減りたり
千株のアバカンサスの咲き揃いうす紫のそよ風にゆれ
雨季激し崖崩れせるニュース観て命落しし人を悼みぬ
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:三首共素材が身近なもので情景鮮明に表現されています。三首目の「命落せし」は「落しし」となります。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


借金を返済終えた日の感謝
川柳に岐路あり己の胸に問う
後輩の育ち嬉しく後を押す
師走風人の心をかき立てる
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

明暗を分けて人生たそがれる
味よりも量に苦心の母の知恵
解らない新語横文字腹を立て
年末の洪水庶民立ち往生
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】

饒舌の讃辞の裏にひそむもの
スポーツの特技で就職難を抜け
不可能を可能にせよと言われても
ウォーキング汗で流す皮下脂肪
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

酌む酒に亡夫の笑顔浮かぶ夜
忘年会まだ健康で祝う幸
新年も一心不乱生きるのみ
姥ざくら川柳でハート若返る
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

痩せギスのモデルがもてる新時代
目をつむりサッと捨てなきゃ片付かぬ
歩けども棒に当たらず師走入り
若くいる人ほど笑顔絶やさない
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】

核家族その最果てに孤老あり
出稼ぎの跡終えコロニア転換期
妻見舞う老夫は背中さするのみ
メールのみですと書信断られ
【インダイアツーバ親和会 早川正満】

以心伝心夫唱婦随の絆かな
うっかりと歩けぬ世相流れ弾
天災は天の怒りかも知れず
雷鳴は陰と陽とのからみ合う
【アルジャー親和会 近行博】

ブラジルは世界の天国戦火なし
ポ語言えぬ口もて食べるフェイジョアーダ
新婚の時代わたしもありました
何はとも新年老いも若返る
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

ボタン押すただそれだけの恐ろしさ
糠漬けの好きな亭主の妻で終え
【鈴木静子】

新米は米だけでよし窓際族
新年の日記の言葉はみな同じ
【峰村やす子】

人格をみとめるやさしい人が好き
呆けあつかい人の心がよく解り
聞き直し何でもないとボカされる
【サントス伯寿会 三上治子】

本ものの味は知らねど郷土食
家族愛日毎うすれる血のうすさ
寿司食いねえ石松もどき郷土食
【レジストロ春秋会 大岩和男】

◎投句者の皆さまへ
 三ヶ月程前に右手首を傷め、一時良くなりましたが、最近後遺症が出て、思うように文字が書けませず、今回は選評を省かせていただきました。添削されたご自身の作品をご参考になさって下さい。次回への皆様からのご投句をお待ちしています。


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