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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2010年2月号

2010年2月号 (2010/02/15) 俳句 (選者=栢野桂山)


息を吐く大口開けて牛蛙
斧疵が瘤となりたる大夏木
カランカにしたき瘤ある大夏木
【纐纈喜月】
(評:サンフランシスコ河を就航する船の舳先には人間と獣の合子のようなカランカを魔除けに付けている。或る風流人が瘤のある夏木を見付けて、そのカランカにしたいと思った。)

桃の花ピンクの風の包む里
春水湧き此処よりはじまるチエテ河
下萌に触れて親山羊乳こぼす
【佐藤孝子】
(評:庭先に何処そこへ行く道に萌え出る草の芽。それに触れて張り切った山羊の乳房から白い乳がその下萌に零れ次いだ。自然豊かなこの国の生きとし生けるものの歓びの歌。)

満願日十字架かつぎ行く祭
砂浜に古る椰子葉葺浜ボテコ
海の女神に供物乗せ漕ぐイエマンジア
【木村都由子】
(評:イエマンジアは海の女神を祀る祭。昔、娘に連れられてウバツーバの海辺で新年を迎えた時、花で飾られた御輿を担ぎ、十余人の男がどんどん海に這入って行くのを見たのを想い出した。)

舗装路に張り出す夏のレストラン
芽接ぎする胡瓜に賭けし一代記
【青柳房治】
(評:瓜類に芽接ぎする時は強靭な南瓜が良いが、瓜類では頑丈な南瓜に芽接ぎすることに一代を賭けた男の一代記とは?何か興味をそそられるような句。)

日曜日お腹空くまで朝寝坊
夫婦喧嘩のドラマ消す春の宵
【野村康】
(評:誰もが心をゆるめる春の宵。テレビを観ていると夫婦喧嘩が始まった。皆が楽しむべき春の宵に夫婦喧嘩でもあるまいと、仲の良い二人がそのテレビを消した。)

遥か見ゆ霞むリベイラ富士の山
大いなるバナナの房に小鳥の巣
【矢萩秀子】
(評:バナナの房が大きく育って切り時と思い、鉈(なた)を手に近づくと、何と房の上に小鳥が巣を掛けて、雛が口を開けて餌を待っている!このバナナの房を切るのは雛が可哀想と、切るのを止めることにした。)

涼気呼ぶ料亭前の作り滝
杖を突く人に朝蔭ゆずり行く
【寺尾芳子】
(評:涼しい朝蔭の径を、杖を頼りによちよち来る老人に出会った。この人一人で大丈夫であろうかと、他人事ながら案じつつ道をゆずった。優しい心遣いを詠んで心の温まる句。)

碇泊の船より歓声除夜花火
赤富士の絵団扇当たるビンゴとて
【清水もと子】
(評:秋の始めの夜明「真っ赤に見えるのが赤富士。それを描いた絵団扇が当たるビンゴとは、何という豪華なこと。)

孤独の日バラの香りに酔ひ知れて
一つの恋星となりゆく春哀し
【山田富子】

夏木立照る日曇る日くり返す
地蔵菩薩両手合わせて夏木蔭
【軽部孝子】

崩れ朽つ隣る墓にも供花分つ
風音にふと泣き止みて雨蛙
【森川玲子】

訪日す我等移民は先づ墓参
怖くあり可笑しくもある蟇の顔
【秋元青峯】

受け取りて大筍によろめきぬ
立て札はホテルファゼンダ夏木立
【畠山てるえ】

朝寝坊して誰に気兼ねの無き余生
狐火の如ちらちらと野火遠し
【矢野恵美子】

イサー捕らえ酒の肴の佃煮に
体力つけ流行風邪など怖くなし
【三上治子】

舞ひ来る屋上庭園春の蝶
朝寝坊して老いの生気のよみがえり
【遠藤皖子】

熱湯を吹き出す蛇口に夏に入る
徳利椰子しなやかに受け夏嵐
【大岩和男】

張り切って仕事始めの職場へと
雨の音葉ずれの音や昼寝覚
【宇佐見テル子】

子を呼べば谺霞みて亡母の声
傘ささぬ人の行き来や春の雨
【青柳ます】

朝蔭に杖を休めてサビア聴く
アマゾニア緑の地獄と詠まれたる
【本広為子】

退職し太平楽の朝寝夫
腹時計なかなか馴染めぬ夏時間
【原口貴美子】

水平線近々見ゆる初夏の朝
さみどりの新茶をとろり淹れる朝
【彭鄭美智】

農に生きイッペー咲く地を愛しきし
難聴に初蝉きて齢かぞへ
【藤井梢】

停電や月の明りで遊ぶ孫
新鮮なマラクジャジュース美味しかり
【玉置四十華】

爺ちゃんの裸で過す夏来る
風落ちて日の昇り来る暑さかな
【伊藤桂花】

商店街の駐車に悩む年の暮
夏待たず日々の酷暑の四十度
【小野浮雲生】

菊人形一役買って花祭
リベイラ河に灯篭流す原爆忌
【疋田みよし】

鳩くぐる園の木漏日冬日向
霊園の境界長き竹の秋
【伊津野朝民】

風吹いて木の葉あつめる庭の隅
雨の中時を惜しんで河童達
うずまいて庭に散りしく木の葉かな
【井出香哉】

文化の日詩吟剣舞のビデオ見て
名画鑑賞父母健に文化の日
【軽部孝子】

皆旅に独りの朝寝ほしいまま
マネキンの軽装揃う夏隣
【畠山てるえ】

アトリエといふも地下室聖樹立て
園丁の忘れ箒に忘れ霜
痩牛に追い討ちかけて秋旱
一椀の菜飯菜汁に寿(いのちなが)
酔ふほどに気の合ふ女雛の酒
独り遊びの子に目やり草刈女
胸高き娘日雇いコーヒー採り
亀鳴いて月蝕あとも沼暗し
山笑ふポ語の石切唄流れ
園児描く画紙はみ出して二重虹
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


大学生の孫が書きくれし日本語賀寿のことばが花束に映ゆ
生まれたる国より長きブラジルに二〇一〇年の初日寿ぐ
繁忙に過ぎゆく日々の明け暮れに早やめぐり来ぬ二〇一〇年
【スザノ福栄会 青柳ます】
塩を糖を抑えて尚も生きんとす何を目当てとするにあらねど
いつまでも続く通院か再びを山桜咲く季節となりぬ
年金の十三か月分受け取りて豊かな気分で豚肉を買う
【スザノ福栄会 青柳房治】
亡き友の法事に招ばれ在りし日を偲ぶ縁の有難きかな
この夜も月の光に匂いけむ夫と見たりしザボンの花は
うっすらと雪の積もりし赤鉄橋おもむき変わる四万十の川
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
老ク連より聖市観光に繰り出して東京見物の思いにひたる
行くわれに一人歩きは危いと卒寿の友はさりげなく言う
老ク連に趣味の教室数多あり宝の山に踏み入る心地す
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
村道の湖底に沈むを惜しむ声福博村の遠くなりゆく
古老逝き三世四世の世とならばいかなる村となりゆくものか
住みなれて七十八年過ごしたる古りたる家に残る痕跡
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
援協のチャリティショウに計らずも友は席とり待ちいてくれし
例会の作品ようやくまとまりて何はなくても夕餉のうまし
【スザノ福栄会 原君子】
(評:寺尾さんの作品、一首目字余りで若干訂正。二首目「匂いいん」は「匂いけむ」としました。野村さんの作品、二首目字足らずですから初句を補足しました。福栄会の皆さんは流石にベテランで良い作品ですね。)

人生は一人一人が己が道険しき難所も避けて通れぬ
初雨に真白きコーヒーの咲きし昔今はカンナの畑が続く
故郷の父母今は亡く再会も果せず墓前に香を焚きおり
【ツッパン 上村秀雄】
(評:一首目四句と五句を入れ替えました。二首目は少し言葉を変えてみました。ご参考までに。)

バス停に並ぶ顔ぶれ入れ替り雑踏の中今年も終る
宇宙より若田さんのメッセージ我が家も歓喜の声援上ぐる
明けましておめでとうと屠蘇うけて雑煮も食ぶる混血の孫
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:新年らしい作品となりました。)

枝豆も茘枝やミニトマト店頭ににぎわう顧客も顔顔
見上ぐれば茘枝たわわに色づきて今年も豊作植えし人の功
水害や崖崩れなど様々な悪しき事のみ起る昨今
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:春らしき素材をうまくまとめました。)

山百合が家の廻りを美しく飾りてくるる自然の不思議
誘われて車椅子にて海辺に行けば新たな気概湧きくる
新年を祝いて渚に佇めば打寄す波に心洗わる
【ピエダーデ 中易照子】
(評:三首共添削してみました。原作と比較してみて下さい。)

誠情恥認知努百歳万歳の記事を読み孫に伝える難しさ思う
七歳の孫の挨拶が身につくよう祖母の教ゆる「おはよう」「おかえり」
この頃は教え身につき挨拶も上手にできて我はうれしき
【ナザレー老壮会 波多野敬子】
(評:幼い頃から身に付けさせることが大事ですから立派な大人に成長なさることでしょう。)

昼食後しばし身を横たえ憩うれば窓の風鈴やさしくゆるる
この風鈴の素敵な音は南部鉄旅した折の思い出の品
【セントロ桜会 板谷幸子】

わが編みし古きセーターは色褪せて毛羽たちたれど暖かきかな
紅白の若き歌手らのあたらしき歌には老いの頭ふるなり
【セントロ桜会 上岡寿美子】

新年を言祝ぐ花火とどろきて二〇一〇年明けんとす
たどり来し九十四年の歳月をよくも生きしと雑煮で祝う
【セントロ桜会 上田幸音】

歳古れば人が恋しくなるものか孫の帰りをひたすらに待つ
子や孫の写真を見つつ正月を独り静かにすごすこの年
【セントロ桜会 井本司都子】

若き日は朝星夜星で働きしよくぞ今日まで生命たもちし
久弥逝き水の江去りぬ同時代を生きたる人の訃報が続く
【セントロ桜会 梅崎嘉明】

ばあちゃんの朝顔咲いたと入院中娘が持ち来ぬカメラに納め
大輪の紫十個赤も咲く早く退院はげましくるる
【セントロ桜会 鳥越歌子】

元旦に初日の出をば拝んと窓を開くれば生憎くもり
書初めに今年は「夢」と大文字で二〇一〇年かなえてくれむ
【セントロ桜会 大志田良子】

涙腺を患いて日々鬱陶し末の娘海へと誘いてくるる
久々に来し海なれど気は晴れずぼんやりとするこの二、三日を
【セントロ桜会 富樫苓子】

プライアで甲羅干す娘の肌の色赤く染まりて産毛の光る
暑い日は秋を待ち侘び寒い日は夏が待たれる人のわがまま
夏嵐あたり一面靄がたち空も灰色海も灰色
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】
(評:情景は良く出ていますが、作者の心情を入れたらもっと良い作品になります。)

愛犬は主人好みにしつけられ上品な犬に育てられたり
感謝なく同じ暮らしでありながら不平不満で病持ちおり
傷つけた己の言葉は忘れても言われたことは忘れかねおり
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:三首共良い作品となりました。)

年金で暮らす我が掌に今もなお昔の鍬のマメぞ残れり
晴れ渡る青空しばらく見られずも今朝は晴れ晴れ日の出たのしむ
生涯を鍬に馴染みし老いたるも今なお趣味に土を耕す
しまい孫の誕生日には賑やかに孫子曾孫も集いて拍手
避暑地より夜が明くれば水害の荒々しさに天災怖し
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:一首目言葉の順序を変えてみました。よくまとめられました。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


平和史の一歩ひもとく原始林
錦衣帰郷移民昿野に夢を追い
身も知らぬ異国の土地を買う移民
夢を追い移民明日への絵を描く
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

兄弟に虎年いなくてちと淋し
虎年に似合わず優しい友がいる
屑籠になり友の愚痴聴いている
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:友人が吐き出す愚痴三昧を静かに聞いている作者の思い遣り。上語の表現が秀れています。)

トラの子をオレオレ詐欺にぶんどられ
美女なれど虎年生まれと恐れられ
万人の願いが馳せる初日の出
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:今年こそは良き年であれと、初日を拝む人は数知れず。ユニークな発想ですね。)

ブスだから笑顔でいよと母が言う
もう無理と膝がガクガク嗤ってる
ぬいぐるみ縁起かついで白虎買う
大水害新年祝う気も失せる
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:新年早々に各地を襲った大水害に胸がいたみました。)

虎年に因んで寅男と命名す
新政権前途多難の民主党
富を得て晩年孤独とは哀し
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:「趣味があり余生生き生き生きてます」という句がありました。趣味を持つ事は老後の生甲斐の一つとなるものです。)

虎の年映画の寅さん思い出す
虎の巻欲しいと思う川柳会
挑戦は生きてる証老いて尚
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:人生の生甲斐はチャレンジ精神にあるといわれます。多彩な趣味にチャレンジされている作者にエールを送ります。)

健康に恵まれ感謝の初日明け
虎の年やさしい寅であって欲し
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:万人が望むところですね。)

昼寝覚め夢見心地覚めやらず
みょうが食い納豆食べてボケ知らず
スーパーのきゅうり真っ直ぐ味気なし
【セントロ桜会 森川玲子】
(評:自然の形が一番ですね。)

虎の子を抱いて楽しき夢路かな
今日明日を風に任せて我が余生
幾山河越えて浮世を九十年
【セントロ桜会 矢野恵美子】
(評:ご健康専一に益々お元気で――。)

少子化にせめて虎の子育てたい
来伯は叶わず寅さん天国へ
生きている証の賀状又も減り
良き友を財産と知る歳となり
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:良き友は一生の宝。大事にしたいものですね。)

大トラも子トラもいけないドライバー
虎の尾を踏んだつまりがねずみの尾
碗二つ一人飲む日も用意する
【峰村やす子】
(評:亡きご主人を偲んでの作品でしょうか。碗二つに感動しました。)

異国でも元旦の餅欠かせない
伯人が仏葬に感動せしと言う
カトリコの友を焼香で野辺おくり
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:分かり易くするために若干言葉を入れ替えました。ご参考になさって下さい。)

愛あればいつか花咲き実を結ぶ
財なくも女房が飯を炊いてくれ
夫婦舟無事五十九の橋渡る
【アルジャー親和会 近行博】
(評:ダイア婚まであと一歩。ご健勝を祈ります。)

張り子の虎一人前にも首を振る
新年の誓いは又も来年に
新妻がいつの間にやら虎になり
【サンパウロ中央老壮会 しんかわ】
(評:川柳の妙味が巧く活かされました。)

思い出いっぱい残して寅さん永遠の旅
虎生まれ町に出て来て牙がとれ
【セントロ桜会 中山実】
(評:虎千里の移民根生も、町住まいとなって温和しい虎になりました。)

カラオケも聞こえる川柳初句会
いのししが虎に勝ちたく身がまえる
【ニッケイ新聞記者 渡辺親枝(特別参加)】
(評:虎年にまけぬよう頑張って下さい。ますますのご活躍を祈ります。)

趣味豊か誌上なじみの有名人
未婚でも五人目の子の父となり
初対面新聞コラムの有名人
【三上治子】


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