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     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2018/12/14)
2010年3月号

2010年3月号 (2010/03/08) 俳句 (選者=栢野桂山)


イエマンジャーの祭り飾りし舟の数
開拓碑念腹句碑と新樹中
竹秋やこの道行けば師の旧居
【佐藤孝子】
(評:イエマンジャーは大晦日に白い服を着て、水の女神を祀るために篭に花や香水をのせ、ローソクを灯して海や河に流す祭り。その舟が次第にふえて、人々の祭り気分はいよいよ最高潮に達した。)

文化の日古事語る祖父生き生きと
髪に差し針砥ぐ大正妻なりし
割箸の音も目出度き雑煮かな
【前橋光子】
(評:割箸は使いすての白木製の箸。日本で三が日の朝々、神仏に供えた餅を一家こぞっていただき新年を祝う。それを裂く時の箸の音も、お目出度いと思う女らしい心使いを詠んだ句。)

初茶の湯作法心得ずも席に
カノア浮べ恋囁ける月の夜
リベイラのマンジューバ減りゆく淋し
【疋田みよし】
(評:リベイラ河はレジストロからイグアッペにそそぐ聖州最大の河で、マンジューバが捕れる唯一の河。地方の名物のマンジューバが年々減ってゆくことを嘆くのである。)

水中花いのちの水を得て開く
上陸のカンカン帽の新移民
駝鳥駆け牧場に詩情育ちつつ
【菅原岩山】
(評:奥地では最近牛馬に代って駝鳥を飼う牧をよく見かける。これは食用ではあるが、通りがかりに見るかぎり駝鳥の駆ける牧場は、詩情が豊かだと見惚れるのである。)

預りし小犬と散歩朝涼し
水害に地震大雪地球病む
【矢島みどり】
(評:故郷の日本は度々地震、大雪、その上水害にもおそわれる。この異常さは正にこの地球が病んでいるとしか思われない――と言う。このような重大で複雑なことを、十七字にまとめた句。)

ブラジルに移住嬉しき喜寿の春
百歳の慈母に甘えて喜寿の春
【彭鄭美智】
(評:作者の母は百歳の高齢、最近故郷の台湾を訪ねてこの慈母に甘えて来たが、この時作者は喜寿、七十七歳だった。地球の表と裏〔どちらが表か裏とはよく解らないが〕に住んでいるこの高齢の母と娘との交流は珍しく、またお目出度いこととお祝い申し上げる。)

生き延びし証の孫の数増えて
草いきれ吸ひ健康に田舎の子
【矢野恵美子】
(評:この句の通り、年々孫の数が殖えるのは長生きの証。〔評者の孫はみな成年で、曾孫が六人居るが正に長生きの証〕どうかこの作者も大勢のお孫さんも元気であることを祈る。)

初乗りにさしのべ呉るる掌温かし
母の味の西瓜の漬物なつかしき
【吉崎貞子】
(評:この句を見て、新移民時代にコーヒー園に自生していた若い野西瓜を取って来て、この句の通り漬物にしたり、ただの塩汁の実にしたのを啜ったことを思い出して、まだ若かった評者の母が懐しかった。)

新年や大正生れの吾も老ひ
四世代揃う新年迎へけり
夕虹や老いても夫婦夢追ふて
【遠藤皖子】

立て札は若芝踏むな入るなと
野遊びに釣道具まで持ち来たる
カンテラに来て這ふ火蛾の目光る
老いの身も寝るには惜しき春の宵
【纐纈喜月】

張り切って仕事始めの職場へと
老いてなお夢あり虹の橋仰ぐ
勤め終へ春宵の街ショッピンへ
【宇佐美テル子】

消え残る五輪のマーク除夜花火
仏前に一輪初咲き白桔梗
【香山和栄】

茅の輪くぐり異人等喜々と年を越す
七色の虹背なの子をよろこばす
旅疲れ夢の短かき昼寝して
【秋元青峯】

滴りを筧に受けて佗住居
ウインクの頬よせ合ってコッコ吸ふ
わだかまり捨てて忌に行く街薄暑
シグナルは赤炎天の杖の人
【猪野ミツエ】

百歳翁の告別式や暖かし
姉の賀状九十歳とは見えずして
【青柳房治】

初鶏や沼では高鳴くサラクーラ
草引くや跳び出す小さき蛙の子
【本広為子】

コッコ椰子並木耕主邸の道
老の手に取ってもとっても庭の草
【杉本鶴代】

暑き夜のテレビに映る富士の雪
喜寿祝ぐと孫の日本語あたたかし
【青柳ます】

デコポンの玉頂きに鏡餅
シュベーロの最中に電話の御慶とは
【寺尾芳子】

膝の痛み癒やしごころの昼寝かな
若水で淹れしコーヒー戴けり
【野村康】

ビルの谷間よりの初日を拝みけり
早々雪の日本より着く年賀状
【木村都由子】

満月の空に轟く除夜花火
年明けが出水と化した観光地
【小野浮雲生】

車止め焼山跡の蕨取る
面白く目が先々にわらび取り
【三上治子】

地図になき浜の細径草いきれ
路地うらの静けき昼寝ほしいまま
【畠山てるえ】

陽が当り菊人形の生きいきと
生きのびてあれこれ終えて三尺寝
【軽部孝子】

ガゼタ紙の塔天を刺す春うらら
立春の空天国はどの辺り
【山田富子】

ほら穴の女神の頭上滴れる
黄金藤園の噴水温みきし
【岡村静子】

受け継ぎて父の農園鍬始め
庭職人まだ終らぬに三尺寝
【原口貴美子】

草相撲応援席の草いきれ
目隠しを少しづらして西瓜割
【森川玲子】

胡麻塩の我が初髪をとみこう見
尼向けて雷雨の牧場潔し
【伊津野静】

挿木すと剪りし庭木の一枝そふ
【伊津野朝民】

散るもあり蕾もあまた黄金藤
雨上り夜更けの庭に初蛙
【矢萩秀子】

書初の寅の一字の筆力
親と子の日語たのしく新茶注ぐ
【風間慧一郎】

賀状来る虎が睨んでゐる絵かな
後継ぎの児童減りゆく拝賀式
【大岩和男】

ピラセーマ済む安らぎに河流れ
移住地の興亡のあと山笑ふ
消えてゆく熱帯雨林百千鳥
大夕焼天の壁画として仰ぐ
春川に添ひ七曲り通学路
ウルブーに似たる羽抜けの地鶏駈け
掃除下手なる幼き婢蝿生る
凶作の畑悲しめる種案山子
春窮の男やもめの鍋洗ふ
地虫出てガタガタゆるむ石畳
【栢野桂山】


短歌 (選者=渡辺光)


グラマードはヨーロッパ移民が築きしとう観光の街百年の偉業見る
紫陽花の咲き満つ道を山に沿い行く旅遠しグラマードの街
ブラジルにこんな良き都市ありしとは嬉しくなりしグラマードの旅
【中央老壮会 彭鄭美智】

起床して朝の陽射しを眺めつつ今日も元気に老いを生き抜く
愛想なき店主の応対眺めつつ欲しき物をも買わず去り行く
鍬にぎり汗を流した思い出をなつかしみつつ年金暮らし
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】

真夜中の激しき雷雨に起されて水害の地の人等を案ず
雨の日も夫とこもりてテレビ視るささやかな倖せ身に余るなり
降る雨に外出もならず老いの身は古きアルバム取り出して見る
【矢島みどり】

母親に見送られ乗る施設車に未だ手を振る精薄の子は
手作りで見た目悪いが味は良い般若経唱え寄せたる豆腐
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】

幼な頃母の作りし味噌汁で家族は無言の朝餉なつかし
バラの花その美しさの美事さに次も咲けよと追肥施す
戦争は文明の母と語り聞く実に戦争は文明開化
【ツッパン 上村秀雄】

若き日に師の補作せし稗搗節唄えば亡き師の面輪顕ちくる
吾の帰る時刻知るがの街路樹の百日紅に声かけ通る
養国にありて三味線尺八の音色に親しみ民謡習う
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

今年は息子も孫も餅搗きて年寄いたわりくれる正月
八キロの餅を搗きつつ孫達の歓声響く古りたる家に
ブラジリアとバウルーより来し甥達と揃いて祝うクリスマスの宴
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

四十余年ぶりの同窓会より帰りし娘変わらぬ友の声音を真似る
八十歳の年を迎うる餅搗の手取りに力の限り尽せり
夕暮れの蜜柑の花の匂う畑霧の中より貨車行く響き
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

戴きし君子蘭の花燃ゆる緋を人にも見せんと店頭に出す
ややゆとり持ちたる孫が蜜柑二つバックに入れて入試に向かう
ゆるみたる入歯を鳴らしいることもわびしかりける夜半に目覚めて
【スザノ福栄会 青柳房治】

坂道の五十メートル往復を五回続けるミニウォーキング
子の年を吾らが春と乾杯せし友は逝きたり長病みもせず
【スザノ福栄会 原君子】

散髪の予約時間を気にしつつ久に会いたる友と語らう
連れ添いて五十七年お互いにいたわりあいの日々を過しつ
血圧の高き夫を気遣いて好きな餅さえしばらく焼かず
【スザノ福栄会 青柳ます】

汗拭きて雑煮で祝うも幾年かテレビは祖国の積雪報ず
わずかなるお年玉にも頭下げる曾孫の仕草のいじらしきかな
【セントロ桜会 上田幸音】

午前九時部屋にさし込む夏の陽に帽子かぶりてテレビ見ている
夜更けまで読む小説が面白く読みつづければ目がかすむなり
【セントロ桜会 上岡寿美子】

若木なれど枝いっぱいに花かかげ黄金藤は真夏の庭に
雷のまたも鳴り出し黒雲はにわかにたちて豪雨もたらす
【セントロ桜会 藤田あや子】

孫娘は伯人の友に白御飯と梅干し添えてもてなしており
バウルーより訪れし夫の甥夫婦ジョークとばして談笑つづく
【セントロ桜会 富樫苓子】

恙なく新年迎え幸せと思いいしに夫は体調くずす
気の強き夫なりしが病み臥して気弱となれりを見つつかなしき
【セントロ桜会 大志田良子】

年変わり早や一月も終わりたり日の過ぎゆくは走馬の如し
夏の日の午後ともなれば雷の轟きて日ぐせの雨となりたり
【セントロ桜会 井本司都子】

もう二度と来ることなきと思いいし誘われて来し海はやさしき
久々に訪れきたる海の家過ぎし日本の浜辺を思う
【セントロ桜会 板谷幸子】

夜となれば角のバールの明々と近所の人等の集りどころ
窓ゆ見る夏の樹木の盛り上り午後吹く風のさゆらぎいたり
【セントロ桜会 鳥越歌子】

自分では若き気持ちで生きおれど御老体と言われ戸惑う
我が書きし随筆よしと電話あり心明るく事務所に向う
【セントロ桜会 梅崎嘉明】

地球儀の埃払いて廻し見る地震禍多き大和島国
大鉢に植えて育てし花ベイジョまぶしきまでに陽をあつめ咲く
混ぜ合わす絵貝に思う色の出ず白一色に塗るが無難か
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】

週に一度の椰子の葉陰の散歩道涼しき風が我が頬をなず
炎天下に洗濯物の良く乾き今日の一日心明るし
【サントアマーロ青空会 竹内千賀子】

久々に話したきこと沢山にあれど難聴の吾はもどかし
愛し合い恋にもだえる若人よ恋愛は昔も今も変らず
【サントス伯寿会 三上治子】

※ 私儀、体調を崩し療養中でしたが、検査の結果、今後も治療に専念する様指示されましたので、誠に申し訳ない事ですが、来月号(四月)からは梅崎嘉明氏に依頼する事になりました。梅崎氏は大先輩ですから皆様方も良く御存知と思いますが、プロフィールを簡単にご紹介致します。
 氏は奈良県の出身で、一九二三年生。一九三二年渡伯。奈良県人会長、ブラジル日系文学会代表を歴任され、現在も小説、短歌の選者として、各サークルで活躍されております。
 皆様の尚一層の投句を希望してやみません。(渡辺光)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


天災で済まぬ所へ人が住む
口論の気まずさ流す水
豪雨禍の惨状農夫の夢が消え
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:天災とは言え、この惨状は余りにも傷まし過ぎます。)

欲得を遠くに登る八十路坂
人災に天災地災も世のさだめ
逆縁の葬にわが齢かえり見る
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:若年者の葬を悼む作者の思いが、巧みに表現されました。)

未練すて故郷は近くにつくりたい
怒るまい怒りは老いの惚けはじめ
老いの身に孫の日本語応援歌
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:「頼もしい孫だ、もっと長生きして孫の話し相手になりたい」と意気込む作者にエールを送ります。)

会う度に親しさ増す川柳会
人は人我は我が道ひたすらに
生き延びた証孫の数が増え
【セントロ桜会 矢野恵美子】
(評:沢山のお孫さんに囲まれて、いつまでもお元気で―。ご健勝を祈ります。)

温暖化自然は大雪用意する
衣食住足りで礼節疎くなる
ちゃん呼びの親しさ腰が曲がっても
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:幼名で呼び合える友は一生の宝。大切にして下さい。)

川柳が縁で親しい友が出来
カラオケとダンスで伸ばす老いの腰
百薬に勝る笑いの長寿法
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:長寿者にはいつも笑顔の人が多い。「笑いの門には福来る」と言われる所以ですね。)

カルナバルサンバ踊って夜が明ける
長いもの巻かれてみたが締め出され
【セントロ桜会 中山実】
(評:迂闊にも巻かれぬように―。良く纏まっています。)

富はなしされど楽しい日々がある
眠れぬ夜思いは故郷(くに)に馳せてゆく
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】

自分史に書けない秘話が二つ三つ
乗り換える勇気をもらうアドバイス
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】

宗教に人生躓くこともある
運逃がし茨の道の半世紀
【アルジャー親和会 近行博】

ため息が起点となった今の幸
価値観の違いされど大事に親思う
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

肉親の眠る異郷をふるさとに
ナツメロで親しい友をなつかしむ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】

長生きも天地の恵みあればこそ
調和する家族が秘訣長寿法
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】

子沢山家計助ける大きい子
子沢山子等助け合い苦にならず
【サントス伯寿会 三上治子】

(小評:近行さん、野村さん、軽部さん、山田さんの作品、少し言葉を入れ替えて分かり易くしました。原句と比べて見てご参考になさって下さい。次回も頑張って下さい。)


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