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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2010年6月号

2010年6月号 (2010/06/05) 俳句 (選者=栢野桂山)


逆立もまた雅やか黒金魚
春秋や北欧移民の入植地
芒野やパラグアイ攻めの古戦場
しろがね葦タンゴの国へ続きけり
【菅原岩山】
(評:ブエノスアイレスに興った舞曲がタンゴなので、アルゼンチンを「タンゴの国」と言うようになった。稲科の穂の白い「しろがね葦」の茂った道は、そのアルゼンチンに続くのでそれを詠んで佳句となった。)

新米の和食たのしき今日の膳
日雇女爪真赤なる花カンナ
懐かしき土の匂ひや大根蒔く
【吉崎貞子】
(評:故郷での百姓を止めて久しくなるが、老後職を止めて久々に鍬を手に大根を蒔いた。その時にかすかな土の匂いがして懐かしく思った。)

慈母のごと卒寿の園長女性の日
予後の夫はや踏青の話など
恍惚は他人ごとならず老の秋
【松崎きそ子】
(評:恍惚は呆け老人を言うが、誰でも年を取るとそのボケ老人になるかも知れぬ――と言う危機感があり、それを他人ごとでないと思いつつ、日を送るのであろう。)

木沓蘭履いて踊るか花の精
パラナ行脚の話を今も立子の忌
むらさき似合う優雅な方よ立子の忌
【木村都由子】
(評:訪伯してパラナまで行脚された虚子の次女の星野立子。俳誌『玉藻』を創刊して瑞々しい句は、我々の心を打ってやまないが、紫が似合う優雅な人であった。)

ジャスミンの香りにひかれ坂のぼる
何もないのにつまづいて街残暑
密書めくベンチの上の落し文
【岡村静子】
(評:落し文は昆虫が落葉を筒状に巻いたのを言う。それを手にして見ていると、何んとなく密書めいたものと想われる――という、まことに優雅な句。)

新涼や夫の遺せしチョッキ着て
造花嫌いな亡夫に供ふ菊大花
稲妻の遠くにあるは美しき
【佐藤孝子】
(評:遠くの地の果に明滅する稲妻は、さまざまな美しいものを連想させて美しい――と詠み、この言葉の尠ないのがすっきりとした句となった。)

種子採りしあとの南瓜を子等と食べ
秋咲きの山茶花供う虚子忌かな
【寺内芳子】
(評:椿の花に似てそれより淋しく、白、紅、濃紅と色々あり、この国では虚子忌句会に捧ぐ花として、その写真の前にかざった。)

新米の入荷知らせの幟立つ
菜畑の鹿の跫音禁猟期
【森川玲子】
(評:ブラジル歳時記に無いので、評者はこの国の禁猟期は何時かは知らないが、それを鹿は知っているかのように、菜畑に来て草より美味の菜っ葉を食べ荒し、その跫跡を残して去った。)

櫓太鼓踊るカボクロ堂に入り
採りし種子散薬のごと包み呉れ
【野村康】
(評:色々な野菜の種子を、それぞれに分けて紙に包んだが、それはまるで日頃用いる生薬のようであった。)

母の日ややっぱり料理はお母さん
三日月やダーマダノイテの匂ふ道
訃報手に新月の道一人行く
【原口貴美子】

ふるさとの秋は山から来ると言う
夜露ふみ星をながめて帰り道
【山田富子】

豊作の新米供へ神棚に
新米と大書の立て板店頭に
【秋元青峯】

柿食ぶや古里の味かみしめて
胸一杯オゾンを吸うて秋の浜
【遠藤皖子】

朝寒や日当り追って闊歩の子
置物の鹿を見るたび故郷恋ふ
【宇佐見テル子】

怒りたるあとの昂ぶり花カンナ
南瓜植えて戦さの日々を生き残り
【角田めぐみ】

頂きに雲ぽっかりと山粧ふ
夢ヶ浜のしぶき綾なす秋入日
【畠山てるえ】

朝寒や急ぎ歩けるミニサイヤ
新米の中食のあと玉子酒
【軽部孝子】

頬杖でしばし雲追ふ窓の秋
花祭母に抱かれて稚児機嫌
【香山和栄】

夜業して育てし子等も今は親
夜学の子夜業の灯ともる我家へと
【矢野恵美子】

極楽を夢に見るよな大花野
旅立ちの地図広げたる秋灯下
【荘司恵美子】

癒ゆまでの静臥や宵のちちろ鳴く
新刊書ひもとく縁に花の雨
【前橋光子】

秋日和崩れて今日も雨となる
柔らかき陽差しの心地秋日和
【矢島みどり】

鹿の皮タツペにしては主あぐら
ブラッシング朝夕されて馬肥ゆる
【野村康】

朝空やさざなみめきて鰯雲
草梅で日の丸弁当作りし日
【矢萩秀子】

店内に多彩なチョコ下げ復活祭
それぞれに語る古里イッペ咲く
【小野浮雲生】

愚痴話先ずはパモニア食べてから
先ず安堵三百余株マンジョカ植え
【風間慧一郎】

ケルメッセ空揚げマンジョカよく売れて
マンジョカありてこの地に子等育ち
【藤井梢】

待ってゐる孫にパモニアお土産に
自転車で家までマンジョカ売りの来る
【玉置四十華】

果実落つ音一つして秋を知る
看取り呉る妻ある幸や老の秋
【大岩和男】

逝きし友送りし夕べつつじ咲き
青芝を転げる子等に陽の恵み
【斉藤しづ子】

三日ぶり青空のぞく陽の恵み
店いっぱい手頃なチョコ玉子を飾る
【三上治子】

紫蘇の実に小鳥群がる候となる
潅仏会可愛いい稚子に孫の顔
【杉本鶴代】

捨て猫の眼(マナコ)可愛いや秋の風
チラデンテス忌と合せ忘れぬ虚子忌かな
【青柳ます】

祝宴の会場ゆるがす秋の雷
入植祭の映画完成祝賀会
【本広為子】

菊膾丈夫な頃の母思う
生きることまだまだ楽し小鳥来て
【青柳房治】

子を負へる田螺(タニシ)すがりて布袋草
ロバの仔の遠鳴き止みしもがり笛
着ぶくれて大勢の子の誰か怪我
髪濡れて心ずたずた時雨寒
雑炊に箸賑はしく大家族
教師妻白墨荒れの夜業の手
蜂雀翔つ一閃に百合揺れて
寒流の黒汐に乗り来し鯨
舵取ってマリア十八二児の母
かみ当てし殻に涙し牡蠣(カキ)料理
【栢野桂山】


短歌 (選者=梅崎嘉明)


夏草の伸びたる空き地乗り捨ての車一台傾きてあり
朝市に野菜売りしている吾に客の来ぬときは手帳に歌書く
残されし吾が終の日を見る如し日溜まりに干す古き地下足袋
【スザノ福栄会 青柳房治】

福博村を巣立ちし子等も帰り来て昔を偲ぶ村の歴史に
歴史展久しぶりなる友たちと話はつきず今日の集いに
福博村七十五年の歴史展セーデにおいて映写されたり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

渡伯して五十一年かかさずに故郷の友より賀状が届く
故郷より久々の電話何事かと思えば弟の訃報を伝う
故郷に喜寿を迎えし同窓の友に送らんイペー押し花
【スザノ福栄会 青柳ます】

友の墓参ついに叶わず仏前にコスモス活けて秋を告げたり
「何時くるの桜の花が待ってる」と友のメールに心浮き立つ
コスモスを活けし食卓に柿を盛り家族それぞれ秋を味わう
【スザノ福栄会 原君子】

傘さして杖曳く難儀に耐えながら国籍の講演を聴きに行きたり
わけありて二重国籍を持つメリットを講演で知りて心落ちつく
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

早朝の冷気身にしむ並木道人影もなく秋深まりぬ
アパートの出窓に小さき五月花多数のつぼみ着けし母の日
息子逝きて十余年過ぐ母の日に呉れし五月花年毎に咲く
【プ・アルボレ老壮会 矢島みどり】

老いたれど母恋う思い限りなし追憶あらたに母の日来る
共白髪励まし合いてジョギングスポーツ場の朝日を浴びて
もういらぬさんざ使った扇風機仕舞いし部屋に初秋の風
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】

吾がルーツいま書かねばと思いたちとつとつ書けば幼時たちくる
訪日し育ちし村を尋ねしが生家はきえてあと形もなく
【セントロ桜会 鳥越歌子】

つたなくも好きな短歌を詠みつづけ残り少なき日日励む
たえまなく囀ずる小鳥に愛犬のヨグシヤは首をかしげいぶかる
【セントロ桜会 上田幸音】

かぎりある生命いとしみひたむきに今日の仕事は今日片付ける
変りゆく時代を共に歩み来て五十年ぶりに逢いし友の名覚えず
【セントロ桜会 大志田良子】

真むかいの壁に朝の日輝けば今日一日をつつがなくあれ
私には七十代はもう来ない白きつつじに向きてつぶやく
【セントロ桜会 井本司都子】

学ぶこと多くあります歌の会車椅子なる歌友も交えて
暑き日のつづきて家事に励みおり流るる汗の目に入りて沁む
【セントロ桜会 富樫苓子】

聴覚は大丈夫なりと思いいしにテレビの音を上げるこの頃
スモッグにうす曇りして大都市のここサンパウロには冬の日ぬくし
【セントロ桜会 上岡寿美子】

朝の日を入らんと窓を開けたれば木の葉の舞いて囀ずり聞こゆ
朝の日は机上せましと射しこみて広げし紙片をまぶしく照らす
【セントロ桜会 藤田あや子】

亡き母に似るという吾を恋い遠くより姪は尋ね来にけり
淋しさを残して姪の帰りたる後でギックリ腰となりたり
【セントロ桜会 板谷幸子】

ポンドーセにサラメケイジョをもはさみ込み飽食の世の子供は太る
若き頃やれずに過ぎし手仕事をゆっくりじっくり取り組んでいし
ノロノロの老人など待っておれぬとかさっさと片付け帰り行きたり
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:面白くまとめてありますが、これを乗りこえてもう少し高度なものを目指しましょう。)

枝伸びて屋根まで茂るザクロの木に赤き実なりて鳥がついばむ
孫たちと思い出の海ペルイベへ来て遊びおり守られながら
リハビリで会いたる人と仲良しになりて治療の辛さを語る
【ピエダーデ 中易照子】
(評:自分の言いたいことを中心にして、いつ、どこで、何をした、と言うように具体的にまとめる工夫をしましょう。)

競い咲く庭の花々眺めつつ明日は散りゆく生命を思う
バラの香のほのかに流れくる縁側に座して涼とる夕べ一時
思いこめて便りしたため投函す一週間後に故郷に着くべし
【ツッパン 上村秀雄】
(評:歌歴の新しい方のようで、いま一歩という所です。何事も一朝一夕に上達するものでないので気永に続けられるように。)

冬の日は部屋の奥まで射しこみて昼寝の吾に暖かく照る
健診を受ければ背低くなり腹太り他に異状はなしと言わるる
いささかの不安も持たずににこやかに山崎飛行士は宇宙へと発つ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:この度は素材が新鮮。この調子で進まれるように。)

澄みとおる大空に浮ける白雲の静かに流るる東をさして
澄み渡る大空眺めつつ吾が心開放されし思いに歩く
【ツッパン 林ヨシエ】
(評:第一首、原作は「雲一つなき大空に白雲が走る」となっていましたが、雲一つない大空だったら白雲もあってはおかしい。自分の思っていることを中心に無駄な言葉をはぶくよう工夫しましょう。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


休耕の土地へ居座るセンテーラ
干拓の小作で泣いて来た移民
干拓の苦労忘れて住む昿野
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:少年期を過ごされた故郷の回顧作ですね。干拓での苦労がうかがえます。)

不景気の波さえ及ばぬ貧困層
母の日の大鍋出番孫の味
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:孫子揃って祝う母の日は、平素出番のない大鍋が大活躍。孫たちの味をととのえてくれます。)

母の日は父さんちょっぴり影薄し
人の欲地球も自然も破壊する
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:「核よりも恐い地球温暖化」そんな川柳がありました。)

日光と星の光りに孤独耐え
夢に見る父母恋し秋わびし
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:秋のわびしさが伝わって来ます。)

平日のお茶会はずむ女性軍
大花火とり除きたいビルばかり
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:折角の大花火もビルの林立に邪魔されて――。中句が活きています。)

お茶会も煎茶で賑やか男性軍
青春の晴れやか知事の講演会
【セントロ桜会 軽部孝子】
(評:森田健作千葉県知事の素晴らしかった講演会が思い出されます。)

化粧してコーヒもいだ手マイクもち
夫逝きカラオケダンス今老春
【サンパウロ中央老壮会 新川一男】
(評:そう言えばどこの趣味の会にも女性軍が目立ちますね。)

沖縄の水族館は海の中
金要らぬ自然の空気に生かされる
【セントロ桜会 中山実】
(評:自然の恵みを大切にしたいものですね。)

日語共存幸せいっぱい老人会
妻快癒杖置き忘れ苦笑い
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:杖を忘れる程のご回復、良かったですね。)

◎席題「福」佳作

自助努力福祉ない民たくましい
福相のわりにけちして嫌われる
【中西笑】

福々しい笑顔あふれる川柳会
不景気はどこ吹く風の福笑い
【坂口清子】

もてもてのお多福娘今日も行く
貧のくせ人一倍の福相だ
【新川一男】

福は内やらぬブラジル盗賊(ぞく)が来る
幸福(しあわせ)に遠く介護に尽くす姉
【上原玲子】

至福いっぱいはずむ句会や女性軍
至福です母の日花に包まれて
【軽部孝子】

幸福は先ず健康に心して
息子二人いてくれ余生至福です
【山田富子】

何よりの幸福健康祝われる
老体は歩けるだけで幸福だ
【中山実】

◎お知らせ=次の句会は来る六月十五日、午後一時からです。皆様のご参加をお待ちしています。





「私の人生」

カラスが柿の木に止まっている
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる
一発目は木に当たり
二発目は枝を飛ばし
三発目は青い実を転がした
そこでカラスがバカァと鳴いた

下手な鉄砲もいつかは当たる
四発目は空を撃ち
五発目は不発となった
どうしたら当たるの?
教えてよ
そこでカラスはアホゥと鳴いて
私の頭に糞をして
飛び去った

私の人生 こんなもの
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】


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