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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2018/12/14)
2010年10月号

2010年10月号 (2010/10/09) 俳句 (選者=栢野桂山)


それぞれに名を持つ雑木サビア鳴く
とびとびに咲く花大根開拓地
どの家も子供の天下子供の日
おもちゃ屋の色の洪水子供の日
【森川玲子】
(評:子供の日(十月十二日)が近くなると、どの雑貨店も所狭しとばかりに、玩具を並び立てるが、それを「色の洪水」と言って、まことに的を射た言葉を探しあてた。)

髭描いて母に甘えるジュニナ祭
一朝の悪夢と溶けて霜柱
いたいけな模擬カザメントジュニナ祭
草枯れて死牛の骨に霜柱
【菅原岩山】
(評:厳しい冬、広野が枯れ果て、その中に死牛の骨が白くちらばり、それに白々と霜柱が立っている。まことに自然は美しい風景も描き出すが、悲惨な景も見せつけるのである。)

笑声上げて手話の娘息白し
赤黒とまこと鮮やかピカソ鴨
アンゴラ鶏生んでみどりや寒卵
パンを焼く日を知って居り竈猫
【佐藤孝子】
(評:かまど猫はパンを焼いた後の、温々した竈に寝て日を過すが、週一度そのパンを焼く日を知っていて、その日は早々とその竈を空けて、其処で寝ているのであろう。)

冬温し心の歌を口ずさむ
寒波の夜人も車も絶えし街
百年の水流此処に祭見る
【彭鄭美智】
(評:「百年の水流」とは、この国に移住したそれぞれの国のその移住史の、百年にわたる水の流れのようなもの――と、理解した作者。そして各国の独特の趣向を凝らした、東洋街での珍しい国々の祭りを見るのである。)

エンジ色の穂草なびかせ脂肪草
総玻璃のビルの真赤に寒夕焼
まだ睡い婢を呼ぶ朝告げ鳥が来て
【木村都由子】
(評:朝告げ鳥とは早くから、よく通る声で鳴くアラポンガか。サビアーはブラジルの国鳥で、柔らかいくぐもった声で早朝から鳴いて、まだ睡い幼い婢を起すのである。)

素心花の並木万開花吹雪
風温む小鳥の声の春告げて
地平まで大地広々耕せる
【杉本鶴代】
(評:ブラジルは日本の二十余倍もある広大な国土なので、遠くの地平線から地平線まで、作付けするのに耕すのである。)

今日一ト日洗濯日和水温む
小魚の浅瀬に群れて水温温む
捨て子猫くわえ親猫戻り来し
【畠山てるえ】
(評:飼猫が三匹もの子猫を産んだ。都会の家ではそれを飼うのはためらうので、やむなく何処かに捨てた。ところが親猫は子猫の匂いを嗅ぎつけるのか、それをくわえて戻って来た。)

芸見せて象の愛嬌園小春
小春日や音立て注ぐ茶の香り
蔓サンジョン恋のくぐり戸からめ咲く
【猪野ミツエ】
(評:小さな裏木戸に蔓サンジョンがからみ付いて花を咲かせたが、これはその家の娘の友人等が、ひそかに逢いに来た、くぐり戸だった。)

桜吹雪受けて踊りの華やげる
幾波乱越えきし夫婦の庭の春
原爆忌六十五年の傷癒えず
【原口貴美子】
(評:コロニアにも原爆の被害者が何人か居られるが、公表はしないようだ。だが六十五年経った今も、その被害者の家系の子は健康でない――という飛語があって、その傷の癒えた古い昔の傷跡を見せるのを憚るようである。)

父の日やそっと遺影にキスする子
熱の有無ひたいを寄せて春の風邪
【野村康】
(評:父の日(八月十二日日曜日)が来たが、お祝いする父はもう居ない。友人等はそれぞれ父の日をお祝いする――ということだが、わが家ではそれが叶わない。残念に思う子は遺影にそっとキスするのである。)

大空の水色に澄む今朝の秋
地蔵盆供物八百屋のごと飾り
【佃千鶴子】
(評:地蔵盆は八月に、石地蔵に花や団子を供える子供中心の行事――と辞書にある。北伯の国境近くに住む作者の昔の想い出であろうか。)

病床で手紙書き次ぐ冬日和
天命を待つ間の余生冬ぬくし
念腹師の名付けし句会「お茶の花」
【大岩和男】

被爆者の叫び無にすな原爆忌
大空を狭しと泳ぐ鯉のぼり
猫死して鼠の天下移民寺
【疋田みよし】

午前二時のリマの空港月冴へて
俳縁の絆はしかと念腹忌
リャマと撮る段々畑たんぽぽ黄
【松崎きそ子】

春の風犬曳くコレンチゆるみがち
アマゾンの旅に誘わる木の芽風
春落暉アパートの窓眩しくて
【寺尾芳子】

万両やダイヤの如き雨雫
新調の地蔵の赤帽庭小春
冬木中日干し煉瓦の美術館
【香山和栄】

哀しみの心やわらぐ春の風
高山に見はるかす景春の旅
散りて行く花ひらひらと春の風
【荘司恵美子】

古辞書にすがり晩学春寒し
父の日や会話少なき男の子
こじんまりそこがわが家や子猫居て
【吉崎貞子】

浜ウルブー日向ぼこ好き屋根屋根に
春隣扇子凛々と詩吟舞ふ
【清水もと子】

絵日傘を飾る市長の応接間
黒人の向ふ鉢巻鮓握る
【風間慧一郎】

父の日や母のへそくり当てに子等
献花献水平和祈願す原爆忌
【小野浮雲生】

腹からのぬくもり楽し鍋料理
花祭日系の腕の見せどころ
【三上治子】

朝夕の寒さ身に染む老となり
国道にそってきれいなお茶の花
【玉置四十華】

朝々のジョキング愉し春の風
足生えて蝌蚪の動きの素早さよ
【青柳房治】

父の日や今亡き父よありがとう
イペー落花隣家のさ庭敷きつめて
【青柳ます】

春めくや咲き溢れたるシンビ蘭
地カナリア住めば都よ吾が里よ
【本広為子】

重ね着て部屋にこもりて冬きびし
こぼれ種生えて咲き満つ黄コスモス
【矢島みどり】

軽やかなショートパンツで春の街
春寒く厚着の主婦の小買物
【遠藤皖子】

子供の日財布はたいてショッピング
一人行く草々そよぐ春の旅
【矢野恵美子】

メイキャプして外出す冬日和
八十五才の女の昼寝許されよ
【山田富子】

慎しんで米寿祝いや春の風
道傍の名無き小草に春の風
【秋元青峯】

水温み人活気づきみな多忙
ホ句詠んで移民長寿や春祭
【軽部孝子】

雑炊やビンゴに当りし茶碗もて
空っ風衿巻ブーツが闊歩する
【野村康】

蜂雀翔つ一閃に藤揺れて
彩もつれ標本の蝶三百種
手をつなぐごと葉を重ね島の椰子
貝塚の崩れ生えたる椰子二本
椰子の水呑みし汗噴く網を引く
島宿の裸コツション水中り
土間に豚遊び家中みな外寝
島に古る一つの井戸に夏重ね
【栢野桂山】


短歌 (選者=梅崎嘉明)


移り来て五十一年過ごしきぬ生きる力と今日も短歌詠む
階段を一足ひとあし踏みしめてかけ声かけつつ上がり下りする
年金の増額通知あるらしと長生きしたるを喜びあえり
【スザノ福栄会 青柳房治】

通勤の朝のメトロの吾が前にモデルのような娘等が佇つ
味競う日本祭の食堂は座る場所なきまでに賑わう
足病みて留守居する夫気にしつつ吾が家への電車待ちおり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

日本の友も仰ぐか七月の今宵の満月吾をも照らす
塩辛の味はこの上なけれども血圧高き吾は気になる
おばさんと私のことを呼ぶ夫よ短歌詠む紳士はもっと慎重に
【スザノ福栄会 青柳ます】

夜の空に瞬く星を仰ぎつつ亡き師を偲ふ八月十五日
天国にわが座のあるやとのらしたる師を思う満天の空仰ぎつつ
【スザノ福栄会 原君子】

農婦とて汚れていても良いものか手袋つけよと買い呉れし姉
鼻すじの低くてずり落つ眼鏡なれど眼鏡屋は黙って修理をなせり
修身で習いし二宮金次郎、薪負いつつも読書すすめし
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

十階の空明けたれば今日もまた煙霧に沈む大都サンパウロ
煤煙に汚れ色褪せし街の樹々芽ぶきおくれて降る雨を待つ
春暑く雨の少なき花園のつつじはいつになく花の小さき
【プ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:煙霧が二首ありましたので、一方を煤煙と変化をつけてみました。ちょっとした工夫で短歌は精彩を放つものです。)

コーヒーの赤き実しごきて袋に詰め夕食あとで便りしたたむ
故里へ便り書かむとペン執ればはるかに聞こゆ里のせせらぎ
今朝もまた散歩に出でて事故もなく帰り来りて幸せ思う
【ツッパン 上村秀雄】
(評:第一首、コーヒーの美を採り、袋につめ、夕食の後で便りしたたむ、と四つの行動を一首にまとめているが、短い詩なのでたくさん盛り込むと感動が散漫になって読者を引き付けることができない。この場合、「コーヒーの赤き実しごき袋に詰め今日の一日の作業は終る」ぐらいにした方が具体的でよくなる。常にそうした工夫を。)

終戦日めぐり来る度思い出すあの日あの時十歳の私
ふる里に一人暮せる姉案じ猛暑の日々をたえよと祈る
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:第一首、よくできています。このように具体的に詠まれるように。)

金柑は今年も豊作かご持ちて黄色なる実をひねもすもぎし
ああ痛い、だんだん痛む左足歩けなくなるか不安がつのる
【ピエダーデ 中易照子】
(評:二首とも作者の生活がにじんでいるので共感が持てます。)

移る世に西郷、龍馬と同様にいまの若者も夢もていどめ
日伯の合同開発になるセラードに夢かけいどみしコチア青年
大事業にかけし同志等ぽつぽつとこの世去りゆく時代は移り
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:難しい素材なので少し手を加えました。もっと身近な日常をとらえる工夫をされたい。)

久しぶりに会いたる友と握手するその手のぬくく力強さよ
贈られし素敵なマフラー薄着なる友の肩にそっとかけやる
六十余年夢の如くに過ぎたれど写真の君は若くほほえむ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:作歌力旺盛で、素顔のよく見える詠風はよい。)

寒き朝道行く人は背をまるめ犬もセータを着て散歩する
海の上色とりどりの帆をあげてヨットは走る水しぶき上げ
【セントロ桜会 板谷幸子】

ここ二、三日真夏のような暑さにてまどろむ頃に起床のベル鳴る
岐阜県の短歌の友より送り来しすばらしき歌集「草笛」春号
【セントロ桜会 大志田良子】

平穏な老後たまわり恙なく今日も暮れゆく夕日見て立つ
一日にせめて一首と思いしに頭の回転にぶき吾はも
【セントロ桜会 上田幸音】

ようやくに寒さが去りてもう九月サンパウロには春のきざしが
山国で育ちし吾ははじめての海におどろくブラジルへの旅に
【セントロ桜会 上岡寿美子】

郊外の歩道は雑草のはびこりて人は車道を気配りて行く
暖かき朝の日背なに日日歩く道の辺の野良犬に声をかけつつ
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:第一首、いつも歩く歩道だが雑草に覆われて通れないので、車の多い車道を行く作者。「気配りて行く」という実感がいい。)

エンシャーダを肩に夕焼空を眺めつつコーヒー園の道帰りし遠き思い出
顔あげて空を仰げば幼な日に姉と仰ぎし彼の日の星が
【セントロ桜会 井本司都子】
(評:九十歳を超えられた作者だが作歌力旺盛。遠い日の思出が鮮明に描かれている。)

吾輩は猫に生れて十二支の中に入れずねずみを恨む
猫族もペットの一種家族らに可愛がられつつ鼠をとらず
【セントロ桜会 鳥越歌子】
(評:第二首、「ペットとか猫用飼料」となっていましたが、少しあいまいなので「猫族もペットの一種」と変えてみました。)

(注:批評の出ていない作品はそれぞれよく詠まれているので、その調子で続けられたい。評のある方々もその時の発想の如何によるもので、いつも悪いわけでないので、続けて努力することで秀作は知らずに詠めるものです。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


勝ち負けの論戦八月十五日
まともには聞けず戦火の日を恨む
地球儀の末期を思わす荒れ模様
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:温暖化防止対策論議など、人間のエゴが続くかぎり無に等しい。)

独立祭小雨の中をパレード行く
若者の熱気小雨にデートする
堅実な女性政治家あってよし
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:男女を問わず誠実な政治家を庶民は望んでいる。)

喜寿なりの歩幅で生きて恙なし
猿年会再会約して友と酌む
わたしにはわたしの歩幅気にしない
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:あなたに合った歩幅が一番美しい。)

ブラジルに孫の代りに臓器置く
認知症なのに忘れぬ想う人
爪塗ってよけい目立った指の節
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:手肌に合ったマニキュアの色を選ぶことが大切です。)

コーラス会口パク上手になりました
羽はえて私の年金どこ行った
春が来て本気になったダイエット
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:春が来て軽装になるとメタボが気になるもの。スマートでいたい心意気がたのもしい。)

人生の最後は笑ってさようなら
不況でも避暑地賑わう摩訶不思議
愛犬が逝って狭庭も広くなり
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:広くなった狭庭に一抹の淋しさが漂う。)

七千万当たったつもりの夢くらべ
たかが川柳なれど川柳にあるドラマ
敬老が軽老になる老い悲し
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:住所も生死も不明のお年寄りが増えていると云う現状が悲しい。)

いつの間に曾孫まごまご十三人
孫増えて名前呼ぶのに首ひねる
おバアちゃん又忘れたのとにらまれる
【セントロ桜会 矢野恵美子】
(評:物忘れは年寄りだけに限らない。年のせいだと自ら思い込んでしまわないように―。)

イッペー祭りさすが国花だ美しい
長寿国大和撫子世界一
つまみ食い孫に見られて分けてやる
【セントロ桜会 中山実】
(評:「ぢいちゃんもつまみ食いするの」「ホレ、分けてやるからだまってなさい。」そんな会話が聞こえてくるようだ。)

民の声なめたら負けよ議員さん
川柳会頭(おつむ)生き生き若返る
敬老会ポ語が増えてちと淋し
【サンパウロ中央老壮会 しんかわ】
(評:敬老会にも二、三世が増えて、ポ語での会話に一抹の淋しさを感じる作者。)

宗教の真理と奥義と伝を聞く
宗教は行きつくところみな同じ
【サンパウロ玉芙蓉会 軽部孝子】
(評:名前は違っても大局的にはみな同じである、と石川導師が話されました。)

寂し日は書道にひたすら心して
良い予感胸に抱いて明日を待つ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:明るい予感の中から明日への希望が生まれる。)

爺にだけ日語で話す孫かわい
おだてられ老体軽々よく動く
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:「お若いですねえ」の一言が年寄りへのパワーとなることもある。)

◎席題「風」 矢野恵美子 出題 (一人一句)

よい川柳作れと風に背を押され【坂口清子】
風に散る桜の花にある風情【中山実】
浮世風やさしく吹いてほしいもの【矢野恵美子】
風向きが変わって俺の出番なし【しんかわ】
風前の日語文芸支え合い【中西笑】
風流を気どって大風邪引きました【鈴木ふみ】
風邪あとの煎茶の味をかみしめる【軽部孝子】
強風に杖しっかりと握りしめ【山田富子】





「現実」

モーと云う牛の声を聞きながら
注文の苗を植えいる
しずかだなあ
平和でいいなあと思いながら
またふと思う
今も世界のどこかで
中東で アフリカで
人と人とが命の奪い合いをしている
悲しい事だけれど これが現実なのだ
ブラジルはいいなあと
ひとりつぶやく
【ナザレー老壮会 波多野敬子】


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