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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2011年3月号

2011年3月号 (2011/03/15) 俳句 (選者=栢野桂山)


ものの芽や歩行器自由自在の児
夏めくやがらりと変るショウインド
春の服縞を合せて縫ひ上げし
病む夫に野焼煙りの窓閉じて
【佐藤孝子】
(評:広野を焼く煙曇りの日が続き、窓より吹き入るその煙に病気の夫がむせるので、窓を閉める日が続いた――と言う哀しい想出の句。)

屋上の涼風受けて夏料理
トラクター爆音高く鍬き始む
神棚と達磨さんにも鏡餅
綿羊の群れ居るごとき夏の雲
【野村康】
(評:晴れ切っていたと思った空に、切れ切れの夏雲が現われたが、それが白い綿羊の群れにそっくりだった。)

老移民故里偲べる栗拾ひ
汗知らぬ若人ふえし世を憂ふ
又一人長老逝きて夏淋し
奴隷の遺産フェジョアーダとカルナバル
【大岩和男】
(評:厳粛な四旬節の前に、サンバなど踊って楽しく遊ぼうとして始まったのがカルナバル。それとこの国の名物のフェジョアーダとは、奴隷の遺産として大切にしたい――と言う作者。)

炎天の街を日傘が彩りぬ
スコールや雹を交えて家たたく
初旅はジャカランダ咲く隣国へ
牛肉旨きタンゴの国へ初の旅
【彭鄭美智】
(評:タンゴと言えば、隣国アルゼンチンのブエノスアイレスに興った舞曲で、一八七五年頃に始まったという。その曲も美しいけれど牛肉が美味で、その国へ初旅とは羨ましい限り。)

朝日受け登校楽し新学期
子や孫は初旅一人居の老婆
心改めての記入新日記
何もかも忘れて踊るカルナバル
【玉置四十華】
(評:前にもカルナバルの句があったが、同じく思うさま美味な肉を食べて元気を付け、踊って祝はんとする祝日。リオのそれなどは世界中から見物に来るという。その楽しさを詠んだもの。)

自動車音聞こえず元旦街静か
混血の孫餅好きで雑煮また
田舎町なれど我が里銀河濃し
【疋田みよし】
(評:私の住みなれた町は田舎風なれど、空気が澄んでいて、夜々掛る銀河もどの村や町にもまさって美しい――と胸を張る作者。)

夏時間慣れればこれもまた佳しと
大夕焼河底までも赤く染め
蚕時雨の如き音立て葉切蟻
【木村都由子】
(評:お蚕が桑を食む音を「蚕時雨」と言うが、大軍の列をなして大害をおよぼす葉切蟻。サウーバのその音は、お蚕の食欲そのものと同じだと言う。)

寝正月故郷の炬燵なつかしむ
山の幸たっぷり盛りて母の鮓
水盤の印度素馨(そけい)のふくいくと
【香山和栄】
(評:インド原産の茉莉花〔まつりか〕は素馨とも言うが、それを口の広い水盤に生けて、その佳いかおりを楽しんだ。)

凧上げや吾が後走る孫二人
兄妹手をとり合って新学期
鍬胼胝(くわだこ)は我一代や日向ぼこ
【伊藤桂花】
(評:毎日エンシャーダという鍬を引いていると、両掌に鍬だこができて、始めは鮮血を吹いたりするが、これも我一代限りにしようと思いつつ日向ぼこをする。)

厚き雲すこし崩れて初日の出
街ぬけて海へ飛び去る夏の蝶
頬伝う目薬ぬるき残暑かな
【森川玲子】

家を出て海へ山へとカルナバル
五指満たず減りゆく句会春淋し
誇るべきブラジル文化カルナバル
【小野浮雲生】

ポッカリと満月残る朝ぼらけ
夜明けかと思ふ満月寝屋照らす
折りたたむ桜満開年賀状
【三上治子】

リオ水害人家を呑んで山津波
雹害に水害神の怒りとも
又雨か小鳥も鳴かず曇り空
【矢島みどり】

濁流に壁もぎとられ夏館
豪雨禍に地すべり山の避暑地にも
泥沼に埋もり避暑地の町にまで
【清水もと子】

八十年保ちし臼ぞ餅を搗く
三世が餅搗く吾家お正月
大き家帰省の子等で塞ぎたり
【杉本鶴代】

新築と傘寿を祝ふ春日和
英字漢字自在のワープロ賀状受く
茄子漬の紫すがし味もまた
【青柳房治】

いつの間に時計に追われ夏時間
夏蝶や屋上庭園舞ひ来たる
短夜や夢一つ見て目覚めたり
【遠藤皖子】

姉妹母に手伝い夜濯す
久に訪ふ生家の古りて草いきれ
街美人夏帽かぶり傘もさし
【原口貴美子】

休暇終え日焼の孫等顔揃え
久し振り耕馬励まし畑始め
夕虹を眺めて鼻唄畑帰えり
大空をゆっくり動き夏の雲
【矢野恵美子】

意を決し一人歩き出し夏の山
火取り虫なれて一人も親しけれ
【山田富子】

果樹園に集めてかおる若葉風
【吉崎貞子】

胡瓜刻む豆煮ゆる音に暮れ
親子滝輝き合へる樹海中
腹当や神鳴り腹の老移民
故障せる耕車にからみ花南瓜
衣更へて才色母を越へたる娘
シガーナ女衣更へして神女めける
鶏舎出て極暑の草履埃立て
ユーカリの幹八方に蝉放ち
白足袋の少し汚れてかまど猫
【栢野桂山】


短歌 (選者=梅崎嘉明)


朝夕に拝む仏間の父母の額見つつ亡父の齢に近づく
思い出が重なりあいて遠ざかる八十路の記憶おぼろとなりて
故郷より同窓会の知らせあり異国暮らしの吾には遠し
【スザノ福栄会 青柳房治】

文協の古本市にて古語辞典見出し喜び値は一レアイス
古本市良書が並べる世となりて日本移民も百年を越ゆ
【スザノ福栄会 藤田朝日子】

こぼれ種自然に育ちコスモスの冬の狭庭に華やぎており
還暦より習い始めし短歌にも良き師良き友ありて続くる
半年をつぎつき咲きしペチュニヤの終りの一輪今朝仏前に
【スザノ福栄会 原君子】

日本より友の帰りくるという知らせイッペー花咲く今日の佳き日に
訪日の飛騨の土産の「さるぼぼの卵」珍し歌会に見たり
週一度カラオケ教室に来て歌い紅白に出る元気を貰う
【スザノ福栄会 青柳ます】

カラオケや民謡習いて日本の情緒に触れるを喜びとする
農薬を知らねば町の小鳥どち街路樹の梢に明るく囀る
「白い巨頭」DVDに見つつ人の世の愛憎つぶさに知れり
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

高校の卒業式に夫と立つ育てし孫の日々を顕たせて
慈しみ育てし孫娘大学にパスせしことに肩の荷おろす
四回目のカナダ研修の旅に発つ成長したる孫を見送る
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

夏の朝窓のカーテンに陽がさして今日がはじまるいつもの如く
朝の日にうす桃色の蘭の花まだ咲いているよと元気に告ぐる
【セントロ桜会 井本司都子】

馬に乗りたくみに牛を追いまわす少年もいてのどかなる里
しぼられし残りの乳を力こめ仔牛は親につきてはなれぬ
【セントロ桜会 上岡寿美子】

老いの身もよき師よき歌友(とも)に恵まれて歌詠むことの楽しさ思う
健やかに新年迎うを何よりの幸せと想い生きて来りき
【セントロ桜会 上田幸音】

書き初めの二字を大きく「健康」と新しい年に願いをこめて
筆を持つ手も年ごとにふるえがち趣味を生かして今年もはげむ
【セントロ桜会 大志田良子】

ブラジルの新大統領は女性にてよき政治をと祈る新年
恙なく迎えし新年この年は九十四歳となりたる吾は
【セントロ桜会 鳥越歌子】

娘の住めるあたりはおもに住宅地犬と散歩する人多く見ゆ
二、三日娘の家にいて置きて来し犬をしきりに思い出しおり
【セントロ桜会 富樫苓子】

新年を祝う花火は日本の花火大会を想い出させて
八十三歳の生日を迎え祝いにと島の友よりブリをたまわる
【セントロ桜会 板谷幸子】

窓の雲怪しと見ればたちまちに雷雨となりて舗道をたたく
青空に枝を広げてジャカランダ紫の花いまを盛りに
青々と茹であがりたる枝豆を食べつつ夏の汗流しおり
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:三首ともよく出来ています。この調子で。)

卯の年は吾が干支なり老いたれど明るく生きたし兎のように
水害は遠のきしと思いしに二月に入りてまたも大雨
どんよりと曇りて鉛色の空降らぬうちにとメルカードに急ぐ
【プ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:しっかりとした観察で情景をとらえていて申し分がない。)

あの折の母の励ましにいまがある移住をきめて七十七年
吾も妻も移民の子なり数多なる辛苦に耐えて生きぬきて来し
サントス港より移民列車で一昼夜着きしは奴隷の住みし跡なり
【ツッパン 上村秀雄】
(評:以前の作品に比べて大変進歩されました。この調子で励んで下さい。)

吹雪きつつ雪積む祖国の映像を暑い地球の裏で見ている
青々と眩しき迄の街路樹は睦月の雨に日毎濡れおり
夏時間となりて日永のつづきつつ午後八時半いまだ明るし
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:「地球の裏で見ている」「睦月の雨に濡れおり」「午後八時半いまだ明るき」などの発想がなかなかよろしい。)

強盗におそわれ逃げしバールにて気がつけば手に車の鍵が
口数の少なき男性が入居して一人静かに本にとりくむ
古車の片方なおせばまた別のペッサがいると言われて替える
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:徐々に進歩が見えてきています。続けて頑張って下さい。)

四週間のリハビリ終り帰来し今日はすてきなスキヤキ鍋だ
二週間やっと電話が通じたり家族と共にほっと安心
窓外に知らず住みつく蜂の巣の窓を開ければカーテン襲う
【ピエダーデ 中易照子】
(評:選後評にあまり目を遠されていないようですが、そういうものにも注目すると作品は上達します。)

常夏の国と言わるるブラジルも六月は火をたきあたたまりおり
休みなく朝昼晩と鳴く小鳥姿は見えず声のみ聞こゆ
わが命いつまで保つかわからねど今日すこやかにあるを喜ぶ
【ツッパン 林ヨシエ】
(評:ブラジルもサンパウロ州は寒い時季もあるわけで、その頃に六月と入れてみました。火をたいて暖まっているのだから、寒いはなくてもわかるので略しました。参考まで。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


出稼ぎを移住に替えて住む恩義
幸せは尺度の違い人の影
迎春のブラジル始発の発車ベル
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:二〇一一年新春から始まったジルマ大統領路線。国民の期待した政策路線を走って欲しい。)

これからが思案のしどころ八十路坂
未知の門あの世へ踏み出す第一歩
感受性十人十色の柳楽し
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:顔が違うように感受性もみな違う、それが即川柳だと作者は言っている。)

ラッシュアワー尻力(バック)効かせて入り込む
古稀迎え意外に元気いれる幸
水害の被災者に済まぬビル住まい
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:何と言っても水害は低地域に多い。ビルの上から洪水禍を見る作者の思いが伝わってくる。)

雨降って固まるはずの地が崩れ
お早ようの元気な声が今日の幸
老いたれど女ですもの紅もさす
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:頼もしいですね。紅さす老女に拍手!)

天災が人のエゴを見せつける
一歩退き角立つ事も丸くする
趣味多彩それでも家事は忘れない
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:家事に趣味に忙しむ生き生きとした主婦の姿が見えてくるようです。)

マスコミが嘘をほんとに書き変える
慣れすぎて便利世の中当たり前
ネット熱知らずにだまされ金盗られ
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:インターネットによる犯罪が増えて来ました。要注意ですね。)

いつ見ても冨士の姿は世界一
中国が四海ひとつの和は祝う
中国の竜の舞の素晴らしさ
【セントロ桜会 中山実】
(評:中国の新年行事、竜の舞に魅入る作者。)

恋しても越えてはならぬ男女仲
勝ち負けは真剣に生きた時代です
親殺し子殺し人道狂いだし
【レジストロ春秋会 大岩和男】
(評:倫理観念を失った人間が増えていくことへの恐怖が感じられる。)

近道を知って迷いが深くなる
身についたもったいないで生きた道
定年も実益兼ねた趣味に生き
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:実利ない趣味の多い中で、実益を兼ねた趣味に恵まれた人は幸いです。)

余り米積んで飢えてるおろかさよ
紅の色足してさみしさひたかくし
紅しょうがはでに主役を盛りあげる
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:片隅に彩る紅しょうがが器を引き立てます。)

◎席題「汗」 玲子出題
いい汗をかいてケーキを二個も食べ【ふみ】
八百長に揺れる角界冷い汗【ふみ】
汗流し水もしたたる美女となる【清子】
子育てに家事にと母の愛の汗【清子】
冷房で汗も忙し内と外【玲子】
汗かいて仕上げた料理が見放され【玲子】
作業衣を絞って又着た日もあった【笑】
冷房車一気に汗引き出る笑顔【笑】
汗かいて眠れぬ夜は亡妻(つま)懐う【実】


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