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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2011年4月号

2011年4月号 (2011/04/08) 俳句 (選者=栢野桂山)


素直な句平明な句を念腹忌
師の句碑にみ魂のごとくモルフ蝶
二日目の妻の宴の寡目に春愁ふ
芽起しの一喝となり初の雷
【青木駿浪】
(評:一喝とは厳しい父親などが一声で叱りつけることだが、今年の春は寒さが厳しく、木の芽や花の芽が遅いので、それを叱るように鳴った。)

迎へ火も送り火もなき国の盆
軍艦鳥まんじともえの空中戦
優雅なる軍艦鳥がギャングとは
【湯田南山子】
(評:軍艦鳥は全長が一メートル余り、翼は大きく雄は真っ黒で喉袋があり、雌は胸のみが白く空中から魚を奪い取る海のギャング。)

それぞれの彩異なれる物芽かな
ものの芽にとどきて仔連れ山羊の綱
珈琲咲く耕地の中の飛行場
【佐藤孝子】
(評:大きなコーヒーの耕地の中には、広い飛行場など備えた一国をなすものもあり、珈琲の花の咲く頃には空港に待機する飛機の中まで匂った。)

糸通す目鏡を替へて縫初
一ト雨の過ぎし街路樹夜の秋
万緑や傘広げたるパラナ松
【中川千江子】
(評:万緑は野山が全目緑になること。その中に緑を広げたような影をなす美しいパラナ松。)

ひきがえる八百長角力に待った掛け
南瓜植え飢えをしのぎし今昔
勾玉(まがたま)めく木の実の飾り首に掛け
【香山和栄】
(評:勾玉とはともえ形のみどりの水晶。宝石などで作られた太古の装身具で、お祭りなどの用具。)

流燈や亡き父母恋し亡夫(つま)恋し
遠目にもリベーラ富士の夕霞
揚花火太古の星となりて散り
【木村都由子】
(評:ジュニナ祭などの子持ちの待つお祭りに欠かせない景物の一つで花火、ボンバ、ブスカペーなどあり、それが太古の星のように散りゆくさまは美しい。)

印刷機どこか不機嫌春寒し
宙吊りの電線工事春寒し
小夜更けて街の灯めける残り野火
【永田美知子】
(評:焼け残った方々の野火が、夜になるとまるで街の灯のように明るく賑やかになる、田舎の風景。)

短夜や夢ちぐはぐに眼覚めたる
若葉路歩めば青春思ひ出す
若葉雨胸にしとしと降りそそぐ
【矢野恵美子】
(評:若葉雨の頃は何となく哀愁に誘われるような感じがあり、老若男女その胸に沁み入るように降りそそぐ。)

夢の中祖父母等と居て明易し
蹴球の子等散りじりに雷はげし
若葉雨恋の二人の頬なでて
【原口貴美子】
(評:珍しく再び「若葉雨」の句が出た。その頃の初夏は若い恋の季節。その二人の頬をなでて行く―。)

老ひて尚生涯学習火取虫
その昔楊貴妃好みし茘枝(レイシ)熟れ
【遠藤皖子】
(評:茘枝の果肉は美味。中国の昔の楊貴妃は、王様の寵愛をきわめ、遠くの南洋から取り寄せた―という伝説がある。)

うす紅を刷きて白菊成り過ぎ
臨月の腹ゆさぶりてサンバ踏む
酔ひし身を馬に委せて月の道
【纐纈喜月】

疲れし身癒さる思ひ若葉風
侘しさに時の長さや夏時間
事ありて眠れぬままに明易し
【荘司恵美子】

門前の灯火夜通し火蛾吹雪
お日様がかくれ夏蝶舞ふ野山
こつこつと踏む石畳夏深し
【畠山てるえ】

八十年住みし吾が家の星月夜
田舎家に帰路を急げり星月夜
街歩む若者半裸なる残暑
【杉本鶴代】

入学の記念の松や若緑
夏蝶や杣道通う学童等
【野村康】

黄コスモス風雨に耐へて強く咲き
朝夕べ冷気身にしむ昨日今日
【矢島みどり】

猫の眼にみどり写して草若葉
頬伝ふ目薬ぬるき残暑かな
【森川玲子】

明易し皆外出して家広く
外出の身軽な支度夏の朝
【山田富子】

ゴヤバ熟れ見目うるわしきツカーノ来
クワレズマ湖底に沈む村染めて
【本広為子】

愛ほしき肩に止まりし夏の蝶
釣り堀りの竿の先端夏の蝶
【秋元青峯】

孫子等の無事を願ひて星まつり
岩の塔へ登りて見上ぐ星月夜
【青柳ます】

クワレズマ咲ける二月を移民とし
海岸の街華やかにミモザ咲く
【青柳房治】

持ち寄りの栗飯人気一人じめ
椰子の葉を見上げ親しむ星月夜
【野村康】

夏時間無き農作業なつかしむ
果樹園に集まり香る若葉風
【吉崎貞子】

大鍋で炊きし日つづく小芋汁
わがさそり座を娘と探す星月夜
【寺尾芳子】

椅子に花飾りて母の日の映画
花の絵に蝶と蜂来て干布団
ダリア園見し眼に極彩色の夢
ダリア「お雪さん」とや園巡る
富士登山して来しとかや四月馬鹿
茄子汁に焼け火酒にまた舌もつれ
炭竈を囲り駝鳥の恋荒し
髪濡れて心ずたずた時雨寒
舵取ってマリア十八牡蠣打女
へだたりし心戻らぬ湯ざめかな
【栢野桂山】


短歌 (選者=梅崎嘉明)


八十歳頭に白髪いただきて平成二十三年まずは乾杯
シャッキリと背筋を伸ばし真っ白な帽子をかぶりてサア出発だ
草花は秋呼ぶごとく咲きいでて朝な夕なの風冷えてきぬ
【スザノ福栄会 青柳房治】

現身を支えてくるるコルセット窮屈なれど愚痴もこぼせず
短歌の添削の朱筆見る度に心弾ます傘寿すぎても
物忘れひどくなりしも戦時下のつましき生活沁みて忘れず
【スザノ福栄会 原君子】

いとけなく山道行きし乙女子の小さきヒールの足跡つづく
在りし日のままのかんぱせいましばしお棺の中で短歌を詠みませ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

カラオケに民謡ならいて日本の情緒に触るるを悦びとする
椰子の葉のキラキラゆれて陽を返す朝の湖面を見惚れていたり
車輪とは何を指すかと問う吾娘にルーペたよりに辞書をくりおり
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

娘等の居ないアパートは味気なく夫と吾とは仔犬と話す
夕立の過ぎて涼しきアパートに軒の風鈴さわやかに鳴る
日曜のアパートのプールは賑やかに夏の一と日の子らのはしゃぎ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

唐突に雷鳴とどろき大粒の雨降りくれば子犬のさわぐ
年重ね花の手入れもおろそかになれど万両は紅あざやかに
【セントロ桜会 上田幸音】

屈託に疲れて空を見上ぐるに雁は飛ぶ飛ぶひたすらに飛ぶ
カルナバール今年は遅くはじまりて季はたがわず秋めきてきぬ
【セントロ桜会 富樫苓子】

娘の孫もこない日にはアルバムを繰りつつ昔を思い出しいる
子等の写真は末っ子が三歳の頃のもの眼細めてまぶしげな顔
【セントロ桜会 井本司都子】

大丈夫と強がり言いて二人きりのこの心細さを如何に過ごさん
木犀の花散る朝の散歩道昨夜の雨の激しさを知る
【セントロ桜会 板谷幸子】

広大なUSP大学を見下ろして二十五階のベランダにいる
いただきし歌集手にとり昼寝する時間も忘れ読んでしまいぬ
【セントロ桜会 上岡寿美子】

お見舞いに頂きし白き胡蝶蘭一月あまり咲き続きおり
買い物を終えて重さに休みいるに見知らぬ青年が助けてくるる
【セントロ桜会 大志田良子】

移住してコロノ時代の苦労をば逢いて語らう涙うかべて
新聞が取りもちし縁にて「七十五年」前の幼友と再会したり
【セントロ桜会 鳥越歌子】

あと幾年生くか知らねど喜寿となりパソコン習う心きおいて
贈られし二冊の著書に幸せな友と知りたり賀状を送る
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

伸びすぎしパーマ気になり秋帽子さっとかぶりて街に出でたつ
二つ三つ雷の鳴りしが二階より見れば音なく雨の降りいる
さ庭辺の紫朝顔一輪が今朝は淋しく雨に打たるる
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:さ庭辺が最初にあるので下の「花壇」は不要。また一輪だけ咲いたので淋しく、としてみた。)

親睦の昼食会に招かれて古き梅酒でまずは乾杯
それほどの塵はなけれど毎朝の習慣として庭先を掃く
年毎にうからの増えたこの年は百名となり逢えばかしまし
老二人ひっそり暮らすわが家にも正月となれば訪問者多し
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:沢山の投稿でしたが佳作四首を拾いました。この調子で頑張って下さい。)

日照り日の少なき故か百日紅花の乏しく早や散り急ぐ
雨季明けと思いていしにまたしても黒雲雷雨大荒れとなる
連日の午後の大雨いかにせんメルカードの買い出しは朝にすませる
【プ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:第一首、「花の乏しく早や散り急ぐ」よくとらえた佳作。他の二首もいい。)

永らえて帰還兵に戦の秘話を聞く早く逝きたる友等は知らず
スイッチを入れれば祖国が目の前に谷のせせらき鶯の声
公園に古きバンカのいまもなお残りいて老いし店主が憩う
【ツッパン 上村秀雄】
(評:二首目、「谷のせせらき鶯の声」はよくとらえている。徐々に上達されている。)

夜行バスで同郷の友が訪ねて来た語って笑って目に涙
アマゾンに挑んだ貴女は強かった夫の亡きあとの一家を支えて
心さらけ熊本弁で話す友この親しさの身に沁みて嬉し
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:口語で詠まれているが、これはこれとして一種の魅力がある。さらに深みが加わると申し分がない。)

父上が記念に植えし一位の木数珠に作りて嬉しく使う
常夏の国にたがわずこの暑さ真夜を扇風機かけて寝につく
【ピエダーデ 中易照子】
(評:自分の思っていることを自分よがりに書くのでなく、自分の思いを第三者にわかってもらうようにいつも工夫しましょう。)

さし昇る朝日の如くさわやかな心となりて日日を生きたし
夏たけて眞昼をしげく鳴く蝉に夢やぶられてしぶしぶ起きる
【ツッパン 林ヨシエ】
(評:「さし昇る朝日の如く」という表現は上等。)

雨の中釣をする人威勢よく竿の糸をば遠くへ投げる
今頃は雪と仲よく遊べるかスイスへ旅立ちし友思い出す
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】
(評:新人のようですが、よく出来ています。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


支えられ上り切りたる八十路坂
一言居士今好好爺杖をつき
詩心育てて老いの生き甲斐に
顕彰碑人を泣かせし過去隠れ
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:「勝てば官軍」で不穏な過去は風評の侭で、碑に埋れていくことへの不信感がたくみに表現されました。)

移民とは頑張ることと心決め
雪もよし炎天もよし闊歩する
配る当てあって嬉しやみやげ買う
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:配る人達一人一人の顔を思い浮かべながら、土産を買う作者の優しい思いが伝わってきます。)

歳数は忘れて集う老いの幸
弾む心農夫の汗は知っている
嘘でない己の顔を見る鏡
虚を突かれ嘘と言う字を読み返す
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:嘘への反省心が下句でより深くなりました。)

労働者ロボットに仕事うばわれる
自然界目には見えない神の業
政界の汚職上には上があり
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:政治とカネで政界はいつも揺らいでいます。)

七七忌日語挨拶胸に沁み
活躍せし彼女のミサの空青し
間一髪豪雨と競争勝ちました
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:見る見る覆ってくる黒い雨雲に追われるように小走りで急ぐ作者の息づかい、そして安堵感。上句「間一髪」の表現、お見事です。)

春秋の叙勲安売りセールめき
人生の極楽めざす坂の道
おしゃれして鏡の自分を笑ってる
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:下句に重層感がある。なぜ笑っているのか、ご想像に任せます、といったところ。)

東洋街住めば都で四十年
食欲の秋芸術習得あと回し
カルナバル阿呆で見てる四日間
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:どこのチャンネルもカルナバル一色。飽きたと思いながらもつい見てしまう。阿呆めいた四日間でした。)

パソコンで人生決める今世代
老い仲間お国言葉でうまが合い
八百長相撲回しゆるめて四つに組む
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:国技と言われる角界の堕落を憂う相撲ファンは多い。)

サンパウロ大雨降る度泥沼と化し
準二世泣きつつ鍬を引いた日も
カルナバルバイバイチームに旗上がる
【セントロ桜会 中山実】
(評:「音楽」をテーマにしたバイバイチームが栄冠を獲得。チームもファンも歓喜に沸いた。)

老いどきの顔も輝くカーニバル
無料バス駆使して毎日何処へ行く
雨地震自然の猛威に人弱し
【セントロ桜会 坂口清子】
(評:不可抗力とは言え、今回の東北関東の地震と巨大な津波による被災は悲惨過ぎました。早期復興を祈りましょう。)

足して二で割ったあたりにある平和
離れたい日もあるだろ影法師
手を振って留守と言わせる電話口
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:意に添わぬ電話を切る。こんな手もあるのです。)

吟味して賭けた数字が又はずれ
見込まれた孫の守りはお手のもの
めりはりのある会長でたのもしい
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:整然とけじめをつけて行く会長さんに拍手。)


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