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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2011年9月号

2011年9月号 (2011/09/08) 俳句 (選者=栢野桂山)


母の日や祖母をこよなく慕ふ娘よ
蟹サボテン幾年住みし板の家
百年地蔵の前頭を垂れて五月花
【猪野ミツエ】
(評:老ク連会館の庭に「百年地蔵」がある。その前にある五月花もあたかも何かを願い頭を垂れているように見えたという句。)

寒き夜は火鉢に火おこし玉子酒
ビルの庭日向ぼこする老いし夫
七月の夜空に光る夫婦星  
【杉本鶴代】
(評:二つ並んで仲の良さそうな星を「夫婦星」と言ひ、夫婦喧嘩の後、それを見て悔やんでいる?あるいは来し方を振り返っている?)

窓覆ひ傾く庭木春一番
農道に獣跳び出す野焼きかな
庭木にも好みそれぞれ植木植ふ
【畠山てるえ】
(評:庭木を愛する人は、好みによって松が似合うか、何処が好いか?など色々考える。)

袋持つ媼(おうな)にパイナの風強し
啄木鳥のひとり舞台や枯木立
衿巻を取れば大きな耳なりし
下戸の夫玉子酒にも足もつれ
【寺尾芳子】
(評:いわゆる「福耳」という耳たぶの大きな人がいて、衿巻を取ったらそれが現われて、人々の眼を集めた!)

冬めくや病む子戻りて来し安堵
文盲の多きキロンボ奴隷の日
大病院の院長黒人奴隷の日
【佐藤孝子】
(評:街の巨きな病院の院長さんは黒人である。「奴隷の日」に黒人の歴史に思いを馳せながら…。)

髪刈りて一気に冬を感じけり
熟柿吸ふ老いの白ヒゲ赤く染め
異国にも十七文字や蕪村の忌
【大岩和男】
(評:昔は「俳句」とは言はず「俳諧」と言ったが、それを俳句と命名したのは正岡子規である。そしてそれをブラジルに広めたのは、佐藤念腹先生である。)

春耕の出来ぬ老の身野菜買ふ
この世でも妖怪(ようかい)ばかり冬の夜
柿の色苦心の陶工柿エ門
【藤井梢】
(評:この陶器の職人は、柿の色を出すのに命を削るほど苦心したので、世の人々に「柿右衛門」と名付けられ尊敬された。)

春惜しむ思い抱きて友逝きし
スキヤキ鍋みなで囲んで冬ぬくし
俳句詠み短歌もよみし師を偲ぶ
【小野浮雲生】
(評:俳句作家であるが折々短歌も詠む多才な作家が、今は亡き正岡子規で、「俳諧」を「俳句」と命名したのも彼で、浮雲生さんはそれを詠んだ。)

ナプキンに涙浪曲聴く小春
牧手入れ生ま木の柱芽ぶき初め
【野村康】
(評:牧の柵の柱にちょうど良い間隔に生えていた木をそのまま使った。俳句は物をよく見ると新しい発見がある。)

雨けぶる海岸山脈冬景色
頂きに黒雲被り山眠る
凛と咲く白菊大輪気品あり
【疋田みよし】
(評:白菊の大輪は他の黄菊よりも何処となしに気品を感じる。見慣れた庭先にも何か俳句という自然の滋味がある!)

野火遠く花火の如くきらめきて
イペローザ散り敷く庭に子等嬉々と
牧手入れヒナ連れめんどり飛び出して
【原口貴美子】
(評:人の知らぬ間に草むらに生んだ卵をかえした鶏が、ヒナを連れて飛び出したので、大喜びの主婦。)

鈴の鳴る靴下萌を跳ねて行く
見覚えの亡夫と憩ひし花は葉に
夕ざれば野火あかあかと墾の家
【香山和栄】
(評:開拓時代に建てた家は、家と言っても椰子を割っただけの壁で、大きな隙間から野を焼く明りが洩れて、皆寝付かれなかった。)

桃の花盆栽めける若木かな
山畑を彩る一樹寒ざくら
露甘きヒマラヤ桜に寄る小鳥
【本広為子】

風なきに静かに落ちる枯葉かな
香り佳きマルセロまくらで故郷恋ふ
初なりの蜜柑供えん仏前へ
【玉置四十華】

短日を頭にしかと畑に出る
看取り妻もろ手をかたく寒波の夜
家を出て肌ひき締まる寒波かな
【多川富美子】

この苗の語らぬ命いたわりつ
衣更え裾にじゃれつく仔猫かな
どこからも良く目立ち咲く黄イペー
【秋元青峯】

春来しと童も犬も跳びまわり
子猫抱く孫も子猫のような顔
靴箱の中で子猫はスヤスヤと
【矢野恵美子】

黄金の命極めて花イペー
野焼消え月蒼々と光りつつ
ふるさとに似し花イペーどこえ行こ
【山田富子】

頂きし蘭苗何時ごろ咲くのやら
花イッペわが世の春と咲きほこり
野焼あとワラビ一面顔を出す
【荒田田鶴子】

冬温し老には嬉し日向ぼこ
ピポカはぜ大鍋のふた持ち上げて
願事多々短冊に書き切れず
【矢島みどり】

晩年にして夢多し老の春
妻旅に新米粥のごと炊けて
新米炊く急に大人びたる末娘
頬合せ母娘の別れ霜の朝
パンで拭くビールのこぼれ春の宵
百姓の大飯三度今年米
【栢野桂山】


短歌 (選者=藤田朝壽)


半世紀まといて来たる吾がアダナ悪名なれど何故か親しき
老人クラブで皆勤賞を受けし妻今年で三年目溌剌として
不穏なる火種抱えし日本の震災すでに四ヶ月になる
【スザノ福栄会 青柳房治】

忘れんとすれば忘れず忘れてはならぬ大事を又も忘れる
世の乱れ激しくなりて天候も順調ならず雷雨の多し
子供の日父の日母の日などなくも心和みし吾らの時代
【スザノ福栄会 原君子】

健康を謝しつつ通うアカデミー何時の間にやら七年が過ぐ
通り道車窓より見る吾が友の高処の墓に合掌しゆく
【スザノ福栄会 青柳ます】

民謡の馬子唄ならえば角巻に包まれ乗りし馬橇うかぶ
これが吾の趣味なり繕い物好きで寸暇を惜しみ心足らえり
年はかく過ぎてゆくなり嫁がぬ娘に助けられつつ余生を送る
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

息子等はみな勤めに出てて静かなりもの書く吾に春の風吹く
アパートのベランダに立ちつくづくとスザノの街の発展思う
スザノ平ら霞の中にビル高く教会の塔が低く見ゆなり
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

毎日のテレビニュースは強盗や車の事故で心いたみぬ
昼のごと明るく大きな十五夜の月が昇りぬ山の向こうに
【セントロ桜会 上岡寿美子】

つつがなく今日もおえしと思いつつ仰ぐ大空にあわき夕月
見事なる柿売られていてかたえには回転車にはしゃぐ子供ら
【セントロ桜会 井本司都子】

老いふたり一週間を息子の家に孫もきたりて賑わいており
ジュンジャイの夜空は高く澄みわたり十三夜の月皓々と照らす
【セントロ桜会 鳥越歌子】

パパガイオ朝ごと山荘の椰子の実をついばみに来るむれをつくりて
この寒さに今日もヨットがすいすいと風切り走るイーリヤの海を
【セントロ桜会 板谷幸子】

点眼をしつつ思えり老いたれど本は読みたく目を大切に
この年の寒さは老いの身にしみて出せる冬着に樟脳匂う
【セントロ桜会 上田幸音】

この朝の吹く大風にユーカリの林はなべて揺れにゆれおり
最高の大学試験を一等でパスした女孫に祝電あまた
【セントロ桜会 富樫苓子】

季節来て桜前線倅(こ)は言えり老いても花見に気分転換
リハビリを終えし夫は全身が疲れきってか言葉少し
【セントロ桜会 大志田良子】

良くやった金メダル胸に記者会見ナデシコジャパン世界一なり
庭一面花明かりして見事なり二米のつつじ満開となる
勝ち越し数一位に輝く魁皇関有終の美で断髪式了わる
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:第一首「ナデシコジャパン」を詠って佳作、「良くやった」は効果百パーセントです。二首目は原歌が「庭いっぱい光り輝く花明かり」とありましたが光り輝く花明かりでは、これでもかこれでもかといった感じです。花明かりだけで充分です。三首目の原歌は「長かった力士生活」としてあと一首作ってみて下さい。下句有終の美で引退発表は有終の美で「断髪式了わる」と現在形にすれば力強い歌になります。「一生に二度となき日の小春今日」横綱の断髪式に久保田万太郎が色紙に書いた句です。野村さんの魁皇関の歌を読み、ゆくりなくテレビで見た万太郎の名句を思い出すことが出来ました。)

訪い行きし歴史の町のたたずまい苔むす甍に春の陽ざしが
南州の今を盛りに咲くイペー見事な花を夜のテレビに
【セントロ桜会 星井文子】
(評:二首とも良くまとまった作品。特に一首目の「苔むす甍」は対象を良く見て詠われていて佳作。)

近隣に友の少ないこの町で居心地良くて半世紀住む
水タルをかつげる兄を先頭の後ろ姿(で)浮かぶ香煙のなか
正常に牛のお産の終りたり集りくるウルブに気が立つ親牛
【ツッパン 上村秀雄】
(評:三首目の上の句は「正常に牛のお産も無事に終え」とありましたが、一句が正常とあるので無事は不要な言葉。下句「群がるウルブを親牛狂気」はよりくるウルブに気が立つ親牛としてみましたが、如何でしょうか?)

ひとつずつ朝の仕事をかたづけてラジオ体操に手足を伸ばす
久しぶり今日の日曜日は上天気両手を上げて陽に感謝する
さがし物どこに入れたか見つからない年の故とは思いたくなし
厚生ホームに来し人々ら七夕にかざれるクス玉見てよろこびぬ
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:「動く時体操しながら」の歌は今いち度練り直してみて下さい。手を加えた歌があります。よく吟味して頂くとうれしいです。)

「暁の山雲」と筆ぶとく書き初めし乙女の頃を思い出だせり
運動会運動会と待ちわびて運動会終われば夢のごとしも
風なぎて物の音絶え椰子の葉もザクロも揺るがず秋の夕暮
【ツッパン 林ヨシエ】
(評:素直に詠まれています。少し手を入れましたのでお控えの歌と照らし合わせて見て下さい。)

※ 今度、先輩の梅崎嘉明兄の後を受け継ぎ私が「老壮の友歌壇」の選歌を担当することになりました。就きましては投稿者の皆様方のご愛念とご協力の程を切にお願い申し上げます。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


世の嵐乗り越え希望の灯を仰ぐ
夕焼けの空へ感謝の掌を合わせ
復旧の祈り故国に向けて合掌す
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:被災地の復旧、復興を世界中の人が祈っています。)

どら息子父の日だけは墓そうじ
原発禍食材次々うばわれる
やめそうでやめないドンに代打なし
【サンパウロ中央老壮会 しんかわ】
(評:まだまだ見どころ万点。ご子息へのほのぼのとした愛情が湧いてくるようです。)

皺の顔桜吹雪に美男美女
どの顔も桜下に百万ドルの笑み
汽車を埋め問題隠す支那の国
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:桜吹雪は皺の顔も美男美女に見せてくれます。)

色気まだ世捨て人にはなりきれず
知らぬ振りして居眠り真似ており
話上手聞き上手居てよき出会い
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:五〇、六〇はまだ蕾、七〇、八〇は花ざかり、世捨て人にはまだまだ早すぎます。)

日本にも女性総理あってよし
死ぬまでも着れそう古着買っている
新メトロ出来れば客も模様がえ
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:案外より良い政治が出来るかも――。)

津波孤児瓦礫に小さな手を合わせ
世の進歩速すぎ老いは井戸の底
核々々今日は長崎原爆忌
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:被災孤児達の心の傷が少しでも早く癒えることをひたすら祈るのみです。)

回り道して人生の機微を知り
東北に活気呼び込む夏まつり
新しき曲を覚えて踏む舞台
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:迂回路で拾った機微から豊かな人生が生まれるものです。)

フットボール大和撫子世界一
日本祭緋鯉泳がせ景気づけ
カサビ市長東洋街に桜植え
【セントロ桜会 中山実】
(評:「なでしこジャパン」の初優勝は、東日本の大震災で困難に立ち向かう被災者を勇気づける一大快挙となりました。国民栄誉賞に輝いた所以です。)

蜂鳥に蜜瓶替えて旅に出る
葉桜や散りし恋にも悔はなし
冷奴吾が家に勝るものはなし
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:蜂鳥への優しい思い遣りがうかがえます。)

お陰さままだ川柳が作れます
七夕祭ミスはやっぱり混血嬢
流行の上着帽子がじゃまになり
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:米寿を迎えて益々お元気な治子さん、いつまでも川柳を作り続けられますように――。)

人生のてっぺんで見る花景色
生きること働くことと自覚して
悔いのない余生自分史遺しゆく
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:「人生のてっぺん」に重層感があります。トップ座か終極の時か、いずれにしてもユニークな発想、お見事です。)

◎席題「痛い」 余碌出題
痛くない腹ですドンと受けて立つ【笑】
大津波原発事故の大痛手【笑】
痛む背をなだめて今日もカラオケへ【清子】
痛い目に遇ってさとった世の無情【清子】
喧嘩して負けて痛みを知りました【実】
歳ごとにあちこち痛み増してくる【実】
大津波人の心を痛みつけ【富子】
亡き夫を偲んで心痛む夜【富子】
痛い足かばう余りに又転び【玲子】
他人(ひと)の痛み気にもしないで軽はずみ【玲子】
痛くない腹さぐられて不快なり【余碌】
痛いとこ突かれて怒りこみ上げる【余碌】
ここ痛いあそこ痛いで盛り上り【ふみ】
痛い目にあった失恋思い出に【ふみ】
痛いとこ突かれた会長とぼけ【しんかわ】
痛くない腹さぐられて狸顔【しんかわ】


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