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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2011年12月号

2011年12月号 (2011/12/11) 俳句 (選者=栢野桂山)


捨てられて茶山寂しく下萌ゆる
秋深み想いはつのる来ぬ人に
鍬だこにふるる握手や移民祭
【伊藤桂花】
(評:永年鍬を手にしていると「鍬だこ」が出来て、移民祭で友と握手をしている時、互いにそれに触れてそれぞれの人生を想い合った!)

短夜や夢見る隙もなき妻と
異状天候筍なかなか顔出さず
街をゆく衣装さまざま更衣
【大岩和男】
(評:冬から春にかけて着用した衣や服を取り替えるのが更衣であるが、百姓移民ではそんな隙のないまま街を歩くのである。)

青梅に漬物名人集う店
嫁得意技名物のよもぎ餅
春夏秋冬我が家おでんには飽かず
【彭鄭美智】
(評:この国に古くなると、色々好き嫌いがあっても、我が家は皆一年中おでんが大好き!)

福博村八十周年風香る
田舎家に帰り小鳥の声楽し
薯畑のロテアメントも町となる
【杉本鶴代】
(評:近郷の町でバタタ作りが多かったが、それらの作地がロッテとして売り出され、そして次第に町に変わっていくが、近郷によくある景。)

春の蘭形見となりし友の葬
街路樹の日々に色濃く夏日燦
マネキンに勝る肢体の春着の娘
【松崎きそ子】
(評:街の豪華な店舗のマネキンが街を彩っているが、この頃の娘はそのマネキンに勝る豪勢な服装で闊歩している!)

玲瓏と八十年史祝ぐサビアー
春霖や木葡萄落果庭に積む
街へ出る羊腸の道茅花咲く
【本広為子】
(評:羊腸の道とは、ぐるぐると曲った田舎道の土道を言うが、街へ出るその道には芽花〔サッペの穂〕が白々と田舎の道を華やかにしている。)

よく食べてよく遊ぶ子の日焼顔
パイナップルハワイの島の移民老ゆ
海汚れパラチの浜に貝棲めず
【森川玲子】
(評:昔はきれいな内海と浜辺であったが、町がにぎわうにつれて現在では、貝や蟹まで棲めなくなっているのを哀しむ。)

福博は第二のふるさとイペー咲く
素心花や桜の色に街路染め
ハーフにも納豆好きな孫ひとり
【青柳ます】
(評:ハーフ(混血児)にも好みがあって、この子は納豆や納豆汁が大好き。混血児と納豆という意外な組み合わせが面白い。)

甘え寄る仔馬を親は軽く蹴り
春めきて地蔵供養の鈴の音
セラードの一望千里春めける
【野村康】
(評:評者もミナスの広大なセラードの、一望千里という土地の開拓に関わったことがあるが、それがどこまでも春めいて来たのを思い出す。)

売られ行く仔馬の手づな放さぬ子
春めくや誰にも告げず一人旅
【矢野恵美子】

風の香に熟すを知りてアバカシー
空腹を忘れ毬蹴る日焼の子
味知らぬ己がすすめてビール注ぐ
【畠山てるえ】

咲き誇る椿さみしく眺む老
古希祝い髪に椿をさしてやり
向き合ふて椿の二本咲き初め
【多川富貴子】

夕空を茜に染めて暮るる春
一夜まぶしいほどにイペー咲き
夕もやに眺めリベイラ富士遠き
【小野浮雲生】

春めくや桜に逢える好きな道
元気なら訪日したし燕来る
枡酒に少し頬染め春の宵
【原口貴美子】

母子草若芽七草そろひけり
珈琲園の命とり止め別れ霜
耕牛に付けし日本名ブラジル名
【佐藤孝子】

夏の空ゆっくり動く夏の雲
望郷や黙して歩く桜道
【山田富子】

短夜やねむれぬ窓の月明り
孫たちに一度見せたき灯籠会
芝生這い出て雨好きなかたつむり
【玉置四十華】

伯人等味に馴染みて筍買う
先立ちし子の名の燈籠流しけり
盆近し法被揃えて婦人会
かたくなに日語で通す山笑ふ
【疋田みよし】

竈巣やテニスコートに通ず径
砂浜に腹干すボート陽炎える
カトレアのやさしき色に髪染めて
【猪野ミツエ】

白靴のナツメロ慰問シニア歌手
油田又発見沖は雲の峰
無事に過ぐひと日ひと日や年の暮
【清水もと子】

吾が孫や花の女王よ年暮るる
人生の終りも近し秋の夢
辛き日々忘れさせたる合歓の花
【青柳房治】

雷鳴と同時女の悲鳴聞く
炎天を闊歩す若者街の昼
早朝の小鳥目覚めず夏時間
【村松ゆかり】

春雨や遠路参加の老達者
好天に渋滞の列墓参り
【矢島みどり】

秋晴れに聳える富士の写真撮る
世界一スカイツリーや秋の晴
引き臼も古りて踏まれる遍路道
【寺尾芳子】

老獨り心しめらす朧の夜
夕虹や二つの町を跨ぐ見ゆ
老獨り逝きし妻恋ふ朧の夜
【秋元青峯】

墓苑今花園となり慰霊の日
岩に坐し亡夫と眺めし浜蛍
【香山和栄】

花珈琲年頃となる老後の娘
珈琲の葉の紫餅や星祭
倒木の桝なす中に南瓜蒔く
ニグロの毛てふ草からむ跣足かな
頭の瓶の水こぼさじと虹仰ぐ
どこまでも自由な家風猫の恋
【栢野桂山(桂山句文集より)】


短歌 (選者=藤田朝壽)


会館の改築成りし福博の八十周年活気に満ちて
福博の八十周年祝う日よ鯉幟揚げ太鼓轟く
【スザノ福栄会 青柳房治】

朝顔も夕顔も命短かけれど朝に夕べにパワーくるる
「元気でね又会いましょう」と握手して一期一会の思いは裡に
【スザノ福栄会 原君子】

年金を二人で受くる幸せよ小遣いせがむ心配もなく
広々と増築成りし会館に八十周年祝ぐ鯉幟立つ
【スザノ福栄会 青柳ます】

若々しき現役員の頼もしさ福博村の八十周年
福博の八十周年風薫り老いたる人等の顔の明るきことよ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

林立するビルはかすみて風寒くつばめ飛び交う朝となりたり
老いたれば息子にものを頼むとき思わず敬語つかいていたり
【セントロ桜会 上岡寿美子】

吾が庭に植えし金雀花(えにしだ)黄の花をながく咲かせてくれしを思う
去年(こぞ)の秋野菜畑の片隅に植えしコスモス今年も咲くや
【セントロ桜会 井本司都子】

牛乳をこよなく好む夫にして「ハイ・ママデイラ」とわれはからかう
日中は夏の暑さで診察の帰りに夫とアイスクリームを食ぶ
【セントロ桜会 富樫苓子】

一雨ごとに庭の木立も緑増し夏を呼ぶがに小鳥さえずる
遠近に車の音の絶え間なく生きゆく者の活気みなぎる
【セントロ桜会 上田幸音】

ジャカランダ花咲く季となり闘病の入退院の夫うかびくる
先輩の病後の歌を拝見し悟りの心境に感心したり
【セントロ桜会 鳥越歌子】

しとしとと雨の降る朝声高にビンチビー唄う姿の見えず
病人は常に体重を重視して栄養士の指示に従う
【セントロ桜会 大志田良子】

明けやらぬ東の空に三日月がさも淋しげに浮かんで見える
おはようと挨拶をするブラジル人足どり軽くいつもの道を
【セントロ桜会 板谷幸子】

台風十五号日本列島を直撃す独り居の姉を案じ眠れず
命捨て命助けし消防士の合同慰霊祭に涙止まらず
裏庭に紫アヤメ咲き揃い異国に香るふる里の花
十字路にモデル信号機高く建つ流れるタイマー長蛇の車
身のまわりせわしきままに過ぎゆきて早も今年のお盆迎える
横書きも縦書きも混ぜ日本へ年金受給の證明書送る
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:一聯六首よくまとまっています。特に三首目の「裏庭に」の歌は格調の高い作品です。「うら庭にむらさきアヤメ咲きそろい異国に香るふる里の花」とすれば一首にやわらか味をもたせることが出来ます。ご一考を―。)

晴天に恵まれお盆の墓参り供花胸に抱き家族揃いて
父母逝きて三十余年吾も亦八十路の坂を辿る身となり
連れ添うて六十余年の月日過ぎ卒寿過ぎし夫と生る幸せ
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:家族そろって墓参りするさまが目に浮かぶように詠まれていて佳品。三句は「墓参る」とありましたが、「参る」は現在終止形ですが、下に「供花」とあるので連体形になっているので句切するため「参り」と連体形にしました。こうすることによって「供花胸に抱き」がより生きてくると思います。三首目の五句は「生きる倖せ」とありましたが、「倖」は「こぼれさいわい」です。寿命に神様からいただくのですから「幸」の字を使うように―。)

親子孫三代共に昭和生れ世代違いて合わぬ歯車
切望せし亡父の想いを現在(いま)ぞ知る身を砕きても報いんと誓う
朝日受け今を盛りと咲きたけるむらさきイペー色さわやかに
六十余年暮しし過去をかえりみて今は故郷の土が恋ほしき
浮き草はうきぐさなりの根を持ちて土にはふれず花を咲かしぬ
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:浮き草の歌、類型がなく新鮮。「うき草なりの根をもちて土にはふれず」と詠まれたのは非凡。)

澄み渡りたる大空のごと清らかな心になりたし乞い願わくは
知らぬ間に百歳に近づきたるこの身われながら驚きの目を見張る 
この体で我とは思えぬこの健康すべては神の恵なりけり
【ツッパン 林ヨシエ】
(評:百歳近くになっても健康で暮らせることは神様の恵であると感謝の心をもって生きる作者は幸せな方。)

さし図のみして己れは顔出さず麻薬販売ボロもうけする
米国は戦争原爆仕掛け人他国苦しめ安閑といる
取り締まり厳しくあれど麻薬欲(ほ)る人ら多くて裏くぐり売る
実在の人をモデルにテレビ小説視聴者多く波瀾の人生
売らんかな次ぎつぎと出る流行着ニセ物安価で庶民ら求む
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:麻薬を歌って可。特に三首目、面白くて佳品。)

米沢師の形見となりし大言海いま我が書架に重きをなせり
書架にある大言海をながめつつ米沢先生を吾は偲べり
此のホームのシンボルと聞きし鳳凰樹春の日差しに芽吹きて青し
【藤田朝壽】

(老壮の友の歌友兄姉にはお元気でお過ごしの事とお喜び申し上げます。さて、今年も余す所わずかとなりました。来年も頑張って秀歌をモノせられるようお祈りしております。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


他人同志寄り添い生きて共白髪
無料診療呼ばれてからの列長し
愚痴を言う人に相槌うたず聞き
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:「縁は異なもの味なもの」と言われる所以ですね。)

粋よそい春雨に濡れ大くしゃみ
夫の墓撫でてやさしき彼偲ぶ
夏時間時計合わせど腹合わず
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:「春雨じゃ濡れて参ろう」が仇でした。)

失敗を重ね明日への成功へ
笑い皺あなたの笑顔百万ドル
頑張った褒美のケーキで又太り
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:失敗は成功のもと、失敗は成功の母とも言われます。)

振り返る人生波乱も懐しい
ゆったりと周囲が見える年となり
大小の風に揉まれて今日も無事
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:波乱の多かった人生を振り返りながら、今の幸せを噛みしめる心境がうかがえます。)

みだれてる運命線は我できめ
川柳でわが人生に花咲かせ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:運命線にこだわらず、自ら運命を切り開く心意気にエールを送ります。)

庶民の銭抱いて銀行ストライキ
嘆く世を唄う心に春の風
見て聞いて心ほのかに響く歌
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:局員のスト、行員のスト等、振り回されるのはいつも庶民です。)

共に老い共に笑って老ク連
気兼ねなく日語話して老ク連
地蔵さま叶えて下さいこの願い
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:老ク連は正にお年寄りの楽園。願望を聞いて下さるお地蔵さまもおわします。)

伯人がオハヨウと云い通り過ぎ
年寄りに田舎住まいは極楽地
老人とよばれ振り向く年となり
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:この「オハヨウ」で晴れやかな一日となりそうですね。)

卓球のオヤマ十個の金メダル
卓球のトップ日系鼻たかし
【セントロ桜会 中山実】
(評:十個の金メダルを獲得したオヤマ選手に拍手。言葉を少し入れ替えました。原句と比べてみて下さい。)

一日の疲れ趣味に癒やされる
身の丈に合った暮らしを生きる智恵
忍耐と努力で虹の橋渡る
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:趣味は人生に生き甲斐を与えてくれます。)

◎席題「運」 笑出題
運命を逆手にとって生きてゆく【ふみ】
男運良いも悪いも縁です【ふみ】
運よりも努力で乗り切るこの時勢【笑】
易者さま手相眺めて声が出ず【笑】
運のつき言われて今日まで生きのびた【清子】
運不運考え一つで変わるもの【清子】
運の良さ孝行息子に恵まれて【富子】
運営を誇りに生きて花咲かせ【富子】
長命も幸運今日も生かされる【実】


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