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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2012年2月号

2012年2月号 (2012/02/15) 俳句 (選者=樋口玄海児)


達筆な女性仲間の絵の賀状
鍬初め手頃な鍬を担いで出
全開のシャワーを浴びて初湯とす
【纐纈喜月】
(評:ブラジルの正月は夏で暑いから、湯の代わりに水を浴びる場合もある。)

端居夫句友が来ればよくしゃべり
売れ残り値切られてをり羽抜鶏
水打って墾家住居はみんな土間
【佐藤孝子】
(評:開拓時代の思い出。誰しもそんな思い出があるでしょう。)

風涼し満点の星仰ぎつつ
星涼し老に手を貸すあたたかさ
狸々花真っ赤に咲かせ人嫌い
二日はや常の暮しでありにけり
【山田富美子】

葱坊主嫁がぬままに古稀迎え
【猪野ミツエ】

花椰子や並木の雨を口ずさみ
思い出はおさげのあの娘と蛍狩り
夕虹の立ちて母さん野良帰る
村娘肩組み帰る朧の夜
【畠山てるえ】

大正昭和平成と生き餅をつく
【矢野恵美子】

続く代に年々新た花飾り
伝統を守り更に良い飾り
【三上治子】

二百鉢趣味の花壇に春の風
老いてなお草餅作る寺の衆
【多川富貴子】

陽を受けてひまわりの畑かがやけり
ひまわりの気のあるごとく陽を追ふて
【原口貴美子】

新らしき楔を打ち込み鍬始
初市の並ぶ野菜の水々し
【森川玲子】

初市に集まる顔の輝きて
初市を飛び交う声も新鮮に
【村松ゆかり】

十歳は若く見えます初句会
【秋元青峯】

祖母と孫の連弾に拍手弾き始め
お雑煮をおかわりするはメスチッソ
【野村康】

初日の出心新たに作句せん
【田中保子】

夕蛍イタニヤエンの忘れ汐
タイパスの筍豆腐のごとやはき
想い出は枯れ向日葵の恆河の絵
ひろびろと岩焼長者の夏館
【香山和栄】

祖母作りし牡丹餅なつかしお盆かな
【矢島みどり】

初祝い九十五歳の誕生日
初笑い物真似上手孫二人
【杉本君枝】

引越の荷造り出来て根深汁
父の日や父亡きあとも祝いけり
【玉井須美子】

鍬初め土ほくほくと手に伝う
農初めトマテの伸びに励まされ
【吉崎貞子】

夏の餅おいしくいただき年迎う
【青柳ます】

畑始め孫で賑わうリンゴ採り
【寺尾芳子】

移住して五十五年の年祝う
【青柳房治】

雨降れば寒さがもどるお正月
【杉本鶴代】

髪染めて心機一転初句会
【本広為子】

雨の中父母の墓参や年始め
【古賀マリア】

物忘れ多き日々なり秋深む
【宮腰陽子】

まだ年に負けぬぞと云い初句会
【木村都由子】

里の子の大きな声や初笑
風の出て風に遊ぶや今年竹
【樋口玄海児】

(※大先輩の桂山様が高齢の為、お辞めになりました。その後を不肖、玄海児が継ぐ事になりました。桂山様同様、よろしくお願い致します。)


短歌 (選者=藤田朝壽)


妻の肩借りて日課の二〇〇〇歩を黄バナ・コスモス咲ける道ゆく
白壁にアラマンダ映えくる年を言祝ぐごとく光り輝く
紫陽花もダリアも咲いて八十一歳のブラジルの正月庭よりか来る
あと何度聞けるかと思う除夜の鐘八十一歳の夜半しみじみと聞く
この年を寿ぐごとく咲きいでしテッポウユリ庭を真っ白に咲く
【スザノ福栄会 青柳房治】

移住して良きもあしきも想い出となりて清しき新年迎う
公園の木蔭のベンチにのびのびと温泉リンスの風に吹かかる
ちちははの三十年前の写し絵を時どき出してひとり和めり
【スザノ福栄会 青柳ます】

届きたる賀状に友の個性ありかたみに生きの証を伝う
出張より帰りし孫は日焼けして疲れも見せず早ボーラ蹴る
現世を円き地球に住みながら諍い絶えぬ人の愚かさ
【スザノ福栄会 原君子】

この年の最後となりし短歌会みんなで賑わうたのしき集い
夫にも知人のありて体操会の忘年会にふたりで出ける
体操会の日伯合同の年忘れみんなで楽しむフォークダンスを
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

友が忌の焼香終わり師の法話軣く花火に途切れがちなり
コリンチャン勝ち打ちあぐる花火の音スザノの町をどよもしにけり
象の足の根元は丸く大きくて細長き葉の垂るるやさしさ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

のんびりと新聞読みいる夫にして電話の鳴るよと外の吾を呼ぶ
割箸も市民権を得たるらし異人器用に寿司をはさめり
おぼつかなき娘の箸づかいもさりながら異人のさしみ食すさま見やる
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

百二歳の母がトイレに行くと言うわれ立ちあがり細き手をとる
昭和の歌聴きたしと言う人ありて早速店にナツメロ流す
八十路でも働ける幸かみしめてこころ楽しく今日も店番
健康がまづ第一と朝晩の風呂に浸かりてふくら脛もむ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

家族みな揃いて新年迎えむと恙なき日を共に祈りつ
異郷とは言えど孫等のここ古里すこやかにして皆巣立ちゆく
【セントロ桜会 上田幸音】

元旦は小雨そぼふりくもりいて三日目にようやく初日を拝す
年替わり何ら変わらぬ昨日今日ひたすら願う家族の健康
【セントロ桜会 大志田良子】

紅白も時代の流れにおくれじと肉体美見せ腰ふり歌う
敷島の大和を恋いてこの年齢神に召さればよろこびまいる
【セントロ桜会 鳥越歌子】

年末はほとほと疲れ末の娘の家にさそわれ夜昼眠る
末の娘の住める近くに寺院あり鳴る鐘の音は郷愁を呼ぶ
【セントロ桜会 富樫苓子】

イーリャに渡るバルサに高齢者列に入らず優先的に
年末の暑さに負けて体調くずし楽しいはずが苦し年明け
【セントロ桜会 板谷幸子】

新しき空気いれんと窓少しあけて浮かべる白雲眺む
青空の見ゆる廊下に花たちはつぎつぎ赤き花咲かせおり
【セントロ桜会 井本司都子】

天災の多かりし年去りてゆきこの新年に明るき希望
来る春の美しき季節を希望もて共に迎えん平和なる世を
恙なく家族揃いて年を越す老いし夫婦のこの幸せよ
【プ・アルボレ老壮会 矢島みどり】

同郷の友より年賀の電話来る久しぶりにて聞く熊本弁
夕焼けの窓辺に寄りて歌を詠むわれに至福のこのひと刻は
日本より兄嫁の死亡通知来るなす術もなく呆然と立つ
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:少し手を入れました。吟味して下さい。「夕焼けの」の歌詞情あり。)

末の孫は今年医大に入学す卒業するまで吾は生きたし
還らざる兄をしのびて泣く母の夢見てさめぬ故里に来て
裏山でつくつくぼうし鳴き始む明日は帰伯の名残のひと日
【ツッパン 上村秀雄】
(評:第三首目の歌は自然に生まれてきた歌しみじみとして胸をうつ。何十年ぶりかで訪日し、お別れする日は明日に迫ったのである。ふる里の山川に見入っている時、うら山でつくつくぼうしが鳴き始めたのである。別れを惜しんでくれるかのように―感無量で聴いている作者の姿がおのずと浮かんでくる秀歌。)

汚染せるどろ土盛り上げ公園にためしに植樹芝生も植えぬ
製作せし祭のかざり惜しいけど祈って焼いて神にお返し
酒によいし父母のいさかい愚かなり純真な子らのこころ傷つけ
難聴で仲間はずれの良き友の老化の進み止める術なく
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:第一首目「液上化」とありましたが「液状化」が正しく液状のどろ土では盛り上げようとしても流れてしまうので「汚染せる」としました。他の作品も少し手を入れました。日本での短歌大会にご入選おめでとうございました。お祝い申し上げます。)

去る一月十四日、杉本正氏御夫妻の誕生祝いに招かれて
円卓を囲みて座り歌仲間友の佳き日を祝ぎて語らう
若き日ゆ杉本さんを敬いて今も変らじと文雄の祝辞(大浦文雄氏)
身にしみて歌友と聴きおり小女子の祖父母におくる感謝の言葉
元日気分まだ抜けきらぬ今日にして歌友の誕生を吾らは祝う
歌につながる縁を思い今日ここに誕生祝いのボーロ戴く
【藤田朝壽】
(※老ク連会長を始め、歌友の皆様方よりご丁重な年賀状を戴き有難うございました。厚く御礼申し上げます。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


後押しをされてる言葉と知る感謝
我を張って己の道を見失い
我を折った言葉浮き世の風涼し
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:耳に痛かったあの言葉も、今思えばありがたい言葉であった。)

年寄りの難聴連の珍問答
ばらまいた人気政策世を乱す
その昔贅沢は敵今素敵
【バレットス寿楽会 岩本みずほ】
(評:とてつもない珍問答が聞こえてくるような微笑ましい一句。)

トレードマークの髭を落したルーラさん
家柄が邪魔になってる嫁さがし
交配で良い種作る篤農家
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:こんなにも変わるものかと思う程、髭のないルーラは別人のようだった。早く回復して元のルーラの顔に戻って欲しいもの。)

復興に駆けよう今年昇り竜
初句会皺の笑顔が生き生きと
新年もわたしのペースで行くつもり
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:昇り竜に相応しく立ち上る年となりますように―。)

何もなく家族の顔が揃う幸
暗い世をせめて明るく助け合い
末期高齢者大ボラふきも許されて
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:これに勝る幸せはありません。)

清廉のつもりも後ろ指差され
世を拗ねた訳でもないが心捻くれて
同じ事又繰り返す愚痴を聞く
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:背後から差す指ほど卑怯なものはない。)

年始めあれこれ夢をふくらませ
新年を寿ぐ屠蘇に酔いつぶれ
九十路(ここそじ)も来る健康講演会
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:夢も新たにして前向きの姿勢で―。)

年賀述べあとは国なまり和やかに
音消えて星あるばかり揚花火
雨上がり太陽雲間を射し通す
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:形式ばった年賀の挨拶の後の、くつろいだ雰囲気が漂う。)

金正日逝った北鮮どう変わる
花祭り花の香りに包まれて
大晦日リベルダデの餅を待つ
【セントロ桜会 中山実】
(評:後継指導者、金正恩氏に注目、といったところ―。)

虹つかみ帰郷する夢かなえられ
食欲旺盛百二才の母元気
逝く友にはかなき人生思い知る
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:貴女の人徳と努力の賜物です。)

ポ語習い国際人の仲間入り
旅のどか人の服来て風呂を出る
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:バイリンガルになって又一つ生甲斐が増えました。)

泳ぐ子を泳げぬ姿が見張りする
知らぬ顔するも優しい思いやり
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:「婆ちゃんしっかり見張っててね」。泳ぐ子と泳げぬ婆さんの対照が微笑ましい。)

老いたれど除夜の花火に奮起され
今年又花火さえぎるビルが増え
お目出度がどこにもない年賀状 
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:「さあ、今年も頑張ろうね」。爆音に交じって大空を彩る花火は老い人にも新たなファイトを湧き上がらせてくれる。)

◎席題「感」 富子出題
良書読み感動しばし時忘れ【笑】
感受性だんだん薄れる年となり【笑】
感謝状貰える程の事もせず【余碌】
老船頭感で舵とる流石です【余碌】
感動のひと時心若返る【清子】
感謝する心が人の和を作る【清子】
古日記人の情に感謝して【ふみ】
結婚の感激あれから四十年【ふみ】
恵まれた余生に日々感謝して【富子】
老いの旅思いやる人に感謝して【富子】
寒い夜熱い甘酒ありがとう【実】


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