移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2012年6月号

2012年6月号 (2012/06/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


リベイラ産の新米てふを頂きし
血葉木の枝に色鳥見失なう
姫菅草咲き満ち明るき木下闇
【木村都自子】
(評:日本人好みの新米、それも身近なリベイラ産。今では日本米が多く出回っいる。それも皆日本の名。何となく日本に住んでいる様な気分。老いし移民の郷愁か。)

チキラ酒で乾杯土人の日を祝ふ
新米もカルネデソールも搗くピロン
生卵きらふ日雇とろろ汁
【佐藤孝子】
(評:私も酒好きで色々の酒を飲んだのだが、チキラ酒には出会ったことはない。土人の作りだした酒、うまい酒だろう。それに酔うてみたくなる。)

野良帰り皮ごと柿を噛り行く
農道にバス停がありねこじゃらし
柿配る渋抜き巧き墾家妻
【纐纈喜月】
(評:少年の時より農仕事に働いた思い出の句だろう。全く何を食べても美味しい少年時代。懐かしい思い出。)

母ある子母なき子にも柿熟るる
柿むいて野良着の似合ふ娘かな
棟木よりガンバの覗く夜なべかな
【栢野桂山】
(評:ガンバは夜行動物。夜になると動きだす。動作は鈍いが近付くと嫌な臭いを出す。私も鶏飼い時代に棟木より小便をかけられた記憶あり。)

秋桜憩いの園の遊歩道
あどけなき歌ふ園児ら花祭
誰がつけし衣被とは優雅な名
【香山和栄】
(評:「憩の園」はブラジルの老人ホーム。何となく寂しい名。その老人たちの遊歩道に秋桜が咲いていた。何となく寂しい名の花である。)

燈下親し太文字俳誌選び読む
風紋の影まだらなる秋涼し
【青木駿浪】

輸出港連なるサイロ殻の秋
大滝の細りむき出し岩寒し
【清水もと子】

思ひ出せぬ花の名ようやくかきつばた
冬日濃し医師を信じてひたすらに
【伊津野静】

葉桜や老の握れる赤ホース
根元朽ち広き風穴冬古木
【伊津野朝民】

列つくる田舎診療所秋の風
熟るる柿日の落ちる時なを赤し
【大橋昭子】

次郎柿御所柿その他よき名持ち
狭き畑父は今年も案山子立て
【森川玲子】

農に育ち農に嫁ぎてごぼう好き
草の花カバンにつけて孫帰る
【青柳ます】

首巻きも七色にして美しき
ホームレス店の軒下定宿に
【杉本鶴代】

母の日や上戸の吾にビンニョ来る
果樹園の端打ち返し大根蒔く
【寺尾芳子】

母の日や船形器にすし刺身
母の日やパパイママイと集い来る
【杉本君枝】

雀の子巣のふちに糞もり上げて
鮮明な工場のひびき今朝の秋
【玉井としを】

母の日の母の面影若かりし
スキヤキ会母の日の一家族
【矢島みどり】

釣人の集まる町の黄コスモス
舗装道出来て人来ず稲雀
【畠山てるえ】

柿の畑守りて遺きし父母思う
子等歌ひ母も歌いて夜なべかな
【原口貴美子】

秋暮るる独りの部屋の広さかな
豊かさや案山子も流行の服を着て
【宮腰陽子】

砂時計さらりと夏が見えにけり
満月や宇宙で働く人がいる
【山田富子】

母の日や希望の国に住む生活
久しかり外出の一歩今朝の秋
【吉崎貞子】

ニグラにもある富士額黒母の日
ごくろう様案山子労ふ火酒一献
【田中保子】

母の日の八十路の妻の化粧映え
【青柳房治】

田の案山子学童写生にすまし顔
【秋元青峯】

馬肥えてくわえ煙草の耕主かな
【矢野恵美子】

急流に形の良い石秋の川
【三上治子】

虹立つと牛の彷徨初まれり
好日や万歳をして貝割菜
土人の日インジオつけし魚の名
今年竹素直に伸びて美しき
混血の増えて行く国土人の日
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


夕焼けの雲海見つつイタペチの黄葉のさかりの山下りゆく
「杖」だけど貴方が持てばステッキね出渋る吾を陽気に誘う
秋の雲真綿のごとくふんわりと引き伸ばされて母の忌がくる
【スザノ福栄会 青柳房治】

健康に恵まれ迎うるダイヤ婚親に家族に友らに感謝す
涙にじむ眼をしばたたきこの夜明けふたりで聴きいる「日本のうた」
抱っこされ相撲見ている赤ちゃんが喜びており手をたたきつつ
【スザノ福栄会 青柳ます】

オートバイと共に倒れし若者に警察官は銃を擬し立つ
この世の美の極地と思うカニバルの絢爛豪華な衣装を見れば
巨大地震の予測によれば高知市は三十四米の津波来るとぞ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

初場所を取り組む力士厳寒に玉なす汗が光りて見ゆる
橋一つここにあればと愚痴りつつ迂回してゆく村の会館へ
カーテンの風のゆらぎをとらえては無心にあそぶ一歳の孫
【スザノ福栄会 原君子】

イタリヤの孫より写真届きたりインターネットで様々なところ
楽しげにイタリヤ名所やスイスの山写して見せる遊学の孫
イタリヤは古代遺跡が数多あり学習の余暇見学すると
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

秋立つを遅しと柿を朝市に求めて遺影の娘に供う
老人会に籍おき励めば生涯を学習で過ごせる喜びにおり
光陰は矢の如しとうカニバルも山車に火を吐く龍と駆け去る
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

百寿翁の祝いの席で卒寿越す我は名指され祝辞を述ぶる
海釣りに友に誘われ行きし倅(こ)が日焼け顔して五日目に帰る
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:百寿翁のお祝いの席で友人代表として祝辞を述べる人は翁につぐ年長者でなければならない。司会が宴席を見渡した所、卒寿を越す纐纈氏がおられたので、氏が名指しされたのである。百寿翁は如何ばかりお喜びになられたことか。)

アパートをとりまく庭はもろもろの木に花が咲き目を楽します
またいつか逢える思いで別れたる田舎の町がなつかしきかな
【セントロ桜会 上岡寿美子】

カーテンに差しそむ朝の光うけ生きる喜び思うひととき
フロール・デ・マイオきれいに開きし朝にして晴れし大空しばし見つむる
【セントロ桜会 井本司都子】

次々と電話かけくる子や友に思わず声上ぐわが誕生日
日によりて綿飴を売る男ありラッパの音に遠き日の立つ
【セントロ桜会 富樫苓子】

仏前に嫁が供えしシクラメン蝶飛ぶごとく優雅に咲けり
真夜中の雷鳴のあと雨となり明くれば水滴グラーデに並ぶ
【セントロ桜会 鳥越歌子】

カニサボテン五月となれば一斉に蕾ふくらみ満開となる
傘寿過ぎおぼろに浮かぶ母の顔五歳のわれを残し世を去る
【セントロ桜会 大志田良子】

何となくまだ実感はないけれどやがて生まれくる曾孫ひた待つ
梳く髪に抜毛が多く目立つ今髪が多くて困った若き日
【セントロ桜会 板谷幸子】

扇風器大安売で買いしまま組立てもせず夏過ぎにけり
昨日夏着、今日は冬着で流感の季節となりて予防の注射
聖経の読誦終えて庭に出づ朝日の光教会に映ゆ
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:一首目、大安売で扇風機を求めたのは良いけれど使いもせずに夏を越してしまった。こんなであったら買はずともよかったのにと淡い後悔の思いが解る歌。下の句がいい。扇風機は扇風器か。)

冬なのにぽかぽか日和に恵まれて住み良き国ぞ此所ブラジルは
四季を詠み短歌を余技とすうれしさよまだまだ頑張る八十路現役
気に入りの嫁に炊かせし赤飯が吾が誕生日を祝いてくるる
初春に新たな人生踏み出す二人の門出を祝いてやりぬ
合同歌集「祖国はるかに」読み了えて日本移民の苦闘を偲ぶ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:作者は台湾生まれの台湾人。合同歌集「祖国はるかに」を読まれて日本移民の苦闘を偲んで戴いた事に深く感謝する。)

幼き日通いし校舎は様がわり近代建築三階建てに
多国籍の移民あたたかく受け入れて資源豊富で平和なブラジル
廃線の駅舎の上の赤き旗選挙終われど今もはためく
花を見るゆとりなかりし子育て中 老後となりて花に親しむ
【ツッパン 上村秀雄】
(評:戦前の移民は日本国策を守って「生めよ殖やせよ」で子沢山であった。俳人寺部すみえさんは十三人、田中友子さんは十一人の子持ちであった。花を見るゆとりもなく家業に励まれた事と思う上村さんも老後になってやっと花に親しむ日を迎えられたのである。一世移民の尊い努力が解る歌。)

去年と今年逝きたる友の多くして吾が身のことも少し気になる
去り逝きし友を偲びつ食堂で句友(とも)の好みしスープを啜る
手に入りし大分県の方言記事読み返すほど楽しさの湧く
【レジストロ春秋会 小野カズオ】
(評:テレビが普及した現在の日本では方言は失われてしまった。作者は大分県の方言の載っている記事を読み懐かしいあまたの方言に心あたたまる思いがして少年時を偲んでいることでしまう。)

何億年水の流れに身をまかせしや角々とれた石のつぶやき
重い石笑われながらバスに乗せ持ちて帰りしイグアスの石
旅の記念に一つ拾ってコレクション暖炉の上に並べ楽しむ
白黒のまざってとがった山の石連峰名山 庭の風景
【サントス伯寿会 三上治子】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


ウェストを全部五センチ広くして
よくもまあ出歩くものと夫の声
空に塔地には瓦礫の祖国かな
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:六三四メートルの高層を誇る東京スカイ・ツリーと被災地の地上を覆う瓦礫の山のアンバランスを風刺する傍ら、下語の「祖国」には作者の複雑な心境が秘められている。秀逸に推させて頂く。)

頼もしい話に裏がありそうな
苦心談又かと思い聞き流す
義理欠いてだんだん高くなる敷居
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:そして―、だんだん疎遠になっていくのです。)

母の日はやっぱり欲しいプレゼント
お互いに耐えて来ました四十年
財布のひも締めて緩めて四十年
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:悲喜こもごも、四十年の歩みを財布は誰よりもよく知っている。)

老いて尚あなたお前と呼べる幸
年とれば金はあっても欲はなし
君の為別れる本音は俺のため
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:そして…ここから男女の深刻なドラマが始まる。)

嘘まぜた話し上手に座が和む
中国製質より安値につられ買い
きりきりと生きた日今は懐しい
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:子育てと生活にキリキリ舞いしながら未来を夢見た頃を振り返る作者。)

月新た連続ドラマに涙して
お尻(いど)だしお腹ひっこめ日々努力
百才の新たな抱負に絶句する
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:えっ この方が百才?あとは下語で―。ユニークな発想と表現法、お見事です。)

貧しくも親子揃って過ごす幸
見栄はらず質素に生きて愚痴もなく
逝きし句友偲びて語る遺族らと
【レジストロ春秋会 小野雲生】
(評:在りし日の句友を偲んで、あれこれと思い出話はつきない。〔中語を少し入れかえました〕)

老坂を登る歩幅に夢を賭け
ふるさとへ向くと日本の事が見え
金融のゆとり移民の夢が燃え
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:ヨーロッパ諸国の金融難を外に、ゆとりのあるこの国の安定感が老移民の夢を潤してくれる。)

天性の脳力活かした成功者
数々の企業育てた人の価値
人材の適用上手で企業成し
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:適材適所に勝れた人材の選択が企業発展につながる。〔少し言葉を入れかえました。参考になさって下さい〕)

花まつり甘茶飲んで手を合わせ
花くばるエスコテイロも花のよう
【セントロ桜会 中山実】
(評:花を抱いた若者達の顔も花のように美しい。)

百寿の母にもあった失敗談
老人でなく朗人でありたいわが余生
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:短い人生を明るく生きようと言う作者にエールを送りたい。)

人情はいいね上げても貰っても
身の自由失う時は友も減り
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:自然の成り行きとは言えやはり寂しい。そこはかとなく人生の哀しさが漂う、深みのある一句である。)

◎席題「少子化」 笑出題
少子化で幼児の姿消えた街【清子】
少子化で人類滅ぶ日いつか来る【清子】
いつからか幼児の泣き声聞けぬ村【笑】
少子化が進めばいつか国亡ぶ【笑】
少子化はどこ吹く風のアフリカ人【ふみ】
少子化で年金いずこも先細り【ふみ】
産児制限中国たった一人だけ【実】


前のページへ / 上へ / 次のページへ

熟年クラブ連合会 :  
Rua. Dr.Siqueira Campos, 134, Liberdade, S?o Paulo, Cep:01509-020, São Paulo, Brasil
Tel: 11-3209-5935, Fax: 11-3208-0981, E-mail: Click here
© Copyright 2019 熟年クラブ連合会. All rights reserved.