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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2012年8月号

2012年8月号 (2012/08/09) 俳句 (選者=樋口玄海児)


冬の蝶大河こえれず戻り来し
ライバルを師としてはげむ冬ぬくし
涸れ川となるまで飲ます牛の旅
【三原芥】
(評:一句目、ブラジル大河は三K〔キロ〕あるいは五Kはある。冬の蝶はその川幅も知らず飛び立ったが、その大河を越えられずに戻って来たその時の写生句。うまい。)

手話夫婦もめ事らしや息白く
牛宿に謝礼の落伍牛二頭
目印は造花のスイナン墓に挿し
【佐藤孝子】
(評:一句目、耳の悪い夫婦のもめ事を上手に句にした手柄。息白くがぴったり。)

朝市の伯人大根切って見せ
寒つばき親の土地継ぎ畑守る
重ね着て南伯旅に発ちし人
【村松ゆかり】
(評:一句目、ブラジルの朝では色々売ってものを切って客に見せ、ある時は西瓜など一切れ食べてもらい美味しいだろうと言ってサービスをしている。大根など新鮮さを見せている所をうまく句にした。)

室咲きの一鉢抱え退院す
裘着て舟を漕ぐ河案内
パン屑を払えば翔び来寒雀
【纐纈喜月】
(評:一句目、これは今ではフレームで咲かせた冬の花鉢を見舞客と一緒に退院した喜び。)

体操具備はる園に寒雀
リポーターのダブルボタン裘
案内の奉仕の娘裘
【畠山てるえ】
(評:二句目、新聞のリポーターか何かで若い娘の裘が目に付いた。若い人は何を身に付けても良く似合う。それが句になった。)

母の日にもらった首巻き首に巻き
花作り趣味と仕事に生きがいを
【三上治子】
(評:一句目、ブラジルの母の日は寒さを感じる時で子供等は母に首巻きをプレゼントした。親と子の愛美しい。)

体操会休む口実冬の雨
レストラン中迄入り来し寒雀
【原口貴美子】
(評:ブラジルの小鳥は人を怖じない。雀などその一つ。私はレストランに野菜を売ってきましたが鳩や雀は人怖じしない。)

阻む雲なきセラードの冬日和
インジオの岩絵風化す寒夕焼
【栢野桂山】
(評:一句目、私はセラードの空を知らない。一度は行って見たいと思っている。此の句の様な空を見たいと思っている。)

移民祭七十余年の我が歴史
渡伯して七十余年の移住祭
【矢野恵美子】

日溜りの犬の鼻先寒雀
老犬の背なのぬくもり冬の蠅
【森川玲子】

老ゆるにマニアルはなしあずき飯
さわやかに風にさそわれ杖と行く
【山田富子】

子を持たぬ娘の育児論猩々花
枯野行く亡夫振り向かず追いつかず
【田中保子】

思い出の遺品納めて冬支度
飛機で来し移民もありし移住祭
【宮腰陽子】

冬の蠅魔法瓶に止まりたる
衣被みんな昔の事となり
【大橋昭子】

狐火の消えて暗さの水難碑
冬凪ぎて海を見つめる移民像
【青木駿浪】

息白く駈けつけ三杯野のボテコ
日向ぼこいつか軍歌を口遊み
【香山和栄】

冬銀河列車待つ間の山の駅
寒ソッパ浮べる一葉ロウロの香
【清水もと子】

冬銀河明日に迫りし発表会
犬の風邪薬も人と同じとや
【猪野ミツエ】

初日の出パソコン習う誓ひたり
新生姜漬物上手な主婦が買う
【彭鄭美智】

秋めくとつぶやきにけり厨妻
ブラジルの寒さに負けじと寒灸
見上げては犬首かしげ小鳥の巣
【伊津野静】

房のまま落としものありねずみもち
ねずみもち掃きし老には重いほど
【伊津野朝民】

毛皮ショー魅せられて買う裘
胼切れて手が先に知る今日の冷え
【松崎きそ子】

寒満月ビルの谷間を昇り来る
冬の旅大河アマゾン見むと発つ
【杉本鶴代】

桜まつり豊年太鼓で始まりぬ
三寒の夜々温まる木藷汁
【寺尾芳子】

朝焼けや天地を染めて火災めき
朝市で買うデコポンと言う植木
【本広為子】

冬日和慈善バザーは盛況で
冬風邪に鼻水クシャミと落着かず
【矢島みどり】

ケントンが誘いし校歌同窓会
干菜風呂老いの体を温むる
【青柳房治】

ただいまも聞こえず居眠り冬ぬくし
七月やパンダ誕生銀河澄む
【青柳ます】

田舎者と見れば打込むブスカペー
【野村康】

スイナンの咲き美しき一山家
日本の野菜を蒔いて春を待つ
冬の蝶恋するほどに晴れていし
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


老いふたり肩をよせ合いはればれと新幹線より望む富士ヶ嶺
移住者の闘志燃やししこの大地古りては遠き思い出となる
朝なさな妻の肩借りアカデミアに通えり老いの身養なわん為
転倒や風邪引くことが敵なりと言いくれし友も逝きて一年
【スザノ福栄会 青柳房治】

桔梗の種子蒔きたることを忘れいし鉢に草かとまごうひと本
寿司屋にて一席設け帰日する知人を招き名残りを惜しむ
休まんと思いしカラオケに参加して満場の拍手に和みて帰る
【スザノ福栄会 青柳ます】

高々と木棉の花咲く友の家女童も背の伸びたると聞く
骨折の両手を首に吊りし日を思いて独りの笑いとまらず
習いごとに旅にと気ままに暮せども共に語ろう人なき空しさ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

平凡に日々を過ごせる幸せをしみじみ思う米寿迎えて
「藤波」とう言葉にうなづき見とれおり咲き揃いたる息子の庭の藤
心臓の健康講座が始まると孫も娘も急ぎ吾を呼ぶ
【スザノ福栄会 原君子】

訪日を目の前にして怪我をせる母を気づかい子らかけつけぬ
六十年共に暮らしし妹を不慮の怪我にて不憫に思う
義妹と苦楽を分かち合いて来し長き歳月思うこの頃
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

カロッサひくブーロを知らぬ子サッペ刈りを知らぬ友の子話しがはずむ
親子ほども齢の違う妹が吾を遊山にいつも連れ出す
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

はらからが集いて元気でありし頃コーヒーの花は白く咲きいき
桜咲く四月ラプラタ丸に乗りブラジルに来しは昭和二年なりき
【セントロ桜会 上岡寿美子】

母の日のプレゼントなる胡蝶蘭四ヶ月たちて再び咲けり
小雨降る暗き朝(あした)は呼びかわす小鳥の声も人声もせず
【セントロ桜会 井本司都子】

植えてより幾年を経つイペーロッショ蕾いできてわれは声あぐ
もう雁は飛ばなくなれど先ず空を見上げてわれの一日はじまる
【セントロ桜会 富樫苓子】

さわさわと街路樹ゆする風のあり起きるにに早し午前五時半
よおやくに病もいえて平穏の老後をおくる嬉しさのあり
【セントロ桜会 上田幸音】

臥す前はわりとおしゃれな夫はいま自由に動けず文句言わぬ
ビルの上残月くっきり顔を見せ吾らの体操じっと見ている
【セントロ桜会 大志田良子】

日本の兄妹は逝きふるさとの絆うすらぎ吾も老いたり
乙女の頃憧れていし宝塚歌劇訪日して観しが感動うすし
【セントロ桜会 鳥越歌子】

曾孫が無心に眠るその顔をあきることなく見ている吾は
白内障来週手術と告げられて少し不安で眠られぬ夜
【セントロ桜会 板谷幸子】

知り人が来るとかならず側に来て吠えて尾をふる吾が愛犬は
老壮誌の短歌読み終へ思ひ居りわが怠慢のつづきしことを
【ツッパン 堤博志】
(評:何事に限らず続けることが大切です。頑張って下さい。)

混血の孫たち吾が家を訪れて箸を上手にやきそばを食う
週三日夜学の師とし六年間無料奉仕の過ぎし日偲ぶ
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】

寒波来熱きふかし藷ふるまわれ笑顔こぼるるカラオケ会員
五月花さかりも過ぎて二つ三つ遅れ咲きたる花の侘しさ
小春日に誘われ出かけし小買物日差しポカポカ歩を伸ばしけり
【プ・アルボレ老壮会 矢島みどり】

奈良見物修学で旅行しましたと卒寿の翁なつかしみ言う
二、三世祖先の教えうけ継ぎて伯国社会に貢献をなす
大臣に裁判官が加担して汚職の多きを嘆く大統領
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:汚職の多いブラジルの政治家、裁判官が共謀とは全く驚きです。文臣銭を愛せずの政治家が出て欲しいです。)

七月の日の短さよもう暮れる孫らにうれしい冬休み来て
近代化自転車漕ぎし土道も鋪道となりて自動車絶えず
買物をルックに背負いスーパー出る矢野夫妻は共に九十歳
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】

移民より伸しあがりたる我が世代育てし子らはブラジル国籍
松籟の音をききつつ神殿に鈴を鳴らすは五十年ぶり
しとしとと降りつづく雨空見上げ早く晴れてと只ねがうのみ
【ツッパン 上村秀雄】

降りつづくこの長雨のうっとしさ心も滅入る老いのわが身は
思いがけく孫帰り来てうれしかり笑顔やさしくわれに向かいぬ
只の三日居て帰り行くサンパウロへ孫はこの次ぎいつ来れるやら
【ツッパン 林ヨシエ】
(評:三首目、お孫さん他所へ遊びに行かずおばあちゃんに会いたくて帰って来られたのです。感心なお孫さんです。褒めて上げて下さい。ナタールにはプレゼントを持って帰られる事必ずです。)

年ごとに賑わい著(しる)し七夕の踊りを人の肩ごしに見る
杖ひかず付き添い要らずこの年も七夕祭に来てたのしめり
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


気を太く持てば人生尚楽し
集い合う笑顔が長寿の秘訣です
昔はね美人じゃったと白寿祖母
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:軽妙、洒脱、川柳の要素が巧みに発揮された一句。秀逸に頂く。)

農夫には定年もなしゴミもなし
農夫の手紫外線をもはねかえす
老友を毎月一人野辺送り
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:櫛の歯が欠けるように、老友達が次々と消えて逝く寂しさ。「野辺送り」に人生の重層感が漂う。)

同性を男の目で見る八十路
大金を当てても途方にくれる老い
放射能いつまで続くぬかるみぞ
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:恐怖のぬかるみである。それをまだ作り続ける人智が問われる。)

カタカナ語戦前移民に分からない
お座なりの慰めなれど感謝する
誤解され弱腰蹴られた思いする
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:好意的な行動に反した誤解を受けた時の心境。下語の表現法の妙技を頂く。)

星まつり不況のせいか少なめに
歌謡曲昭和の歌がピンとくる
離党族が又々作る新政党
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:政党争いで明け暮れている日本政界の現状が思い遣られる。)

日本の技術を見たりスカイ・ツリー
夢に見た目醒めの一句したためる
人生の散りぎわ桜の花に見る
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:桜花のように散って逝けたら―。万人が望むところです。)

百四年パーマ坊主でポ語法話
悔しさも笑ってごまかす歳となり
未亡人にセウ・マリードと間抜け詐欺
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:未亡人であったことが幸いでした。)

リベルダーデ暇をつぶすにいいところ
移民の日ジョージ羽藤にありがとう
【セントロ桜会 中山実】
(評:毎年の六月十八日が「移民の日」に制定されたのは、聖州議のジョージ羽藤氏の尽力に依るものだと言われている。)

だまされた振りして孫をだましてる
スカイ・ツリー富士より高いと外人客
【サンパウロ中央老壮会 しんかわ】
(評:スカイ・ツリーをふと見上げた外人ツーリストには富士より高く映ったのかも―。)

食べ過ぎが敵だと知って目が覚める
ジーンズをわざと破いて若づくり
老ク連競うことなく笑い合い
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:笑いが一番。笑い合い助け合う老ク連は老人のパラダイス。)

残照の嶺々燃やし神眠る
異境地で日本文化の灯をともす
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:二句目少し添削しました。参考になさって下さい。)

甘き夢見て大金を騙される
孫のキス次は僕だよと夫の声
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:和やかな家庭の雰囲気が伝わってきます。)

人材を上手に使う大企業
脳力を充分活かせる大企業
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:企業家にとって優秀な人材は貴重な存在です。)

◎席題「入れ墨」 余碌出題
ところ変れば娘の入れ墨美しい【しんかわ】
政治家は入れ墨やくざと同輩か【しんかわ】
インジヨの入れ墨まったく個性的【笑】
自慢気に入れ墨見せる可愛い娘【笑】
入れ墨で恋する想い伝えおり【清子】
入れ墨をしたばっかりに失業す【清子】
入れ墨もモードのひとつと割りきる娘【ふみ】
入れ墨を全身に入れカラいばり【ふみ】
生涯の飾りか入れ墨全身に【余碌】
入れ墨を芸術的に見る人も【余碌】
ブラジルは入れ墨ばやり娘まで【実】
入れ墨が邪魔で入社ことわられ【富子】


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