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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2012年12月号

2012年12月号 (2012/12/13) 俳句 (選者=樋口玄海児)


喜雨止みて埃の匂い立つ野かな
喜雨来しと電話の声の弾みをり
チプアナの花降る園の遊歩道
途切れたる話を繋ぐ胡瓜もみ
【畠山てるえ】
(評:二句目。久しぶりの雨。今では町でも雨が長く降らないと空気が濁り、何となく息苦しくなる。そのような時、待望の雨に声の弾んだ電話を受けた瞬間。「喜雨」とは元は農村の季語だったが、ブラジルでは乾季の後の喜雨でも通用する。)

韮の香のまだ手に匂う床の中
百歳の恩師寿ぐ教師の日
釣り人の居るらし春の闇うごく
【松崎きそ子】
(評:日本にも「教師の日」があるのか知らないが、ブラジルでは十月十二日になっている。この句は日本語教師のようである。しかし、百歳で健康でいられるとはお目出度いことである。)

ホ句客のゴヤバもぎたてかじりつき
裏の戸の蟇追い出せば夏の月
見舞返し文添えてあり春便り
【大橋昭子】
(評:一句目。ホ句の仲間とゴヤバ畑を見て、その一つをかじりついたところを句にした気持ちの良い健康的な句。)

水晶山の春泥踏みて念腹忌
マアちゃんと呼ばれ家守り潔子の忌
陽炎へる砂に埋もれし浜の村
【香山和栄】
(評:二句目。念腹先生の奥さんがマアちゃんと呼ばれていたとは知らなかった。私もよく念腹家にいったが、句にした場合はこのように美しい句になった。)

小さな家の小さき倖せ胡瓜もみ
童画めく大きな朝日仏桑花
春眠の双子二つの夢見しや
【栢野桂山】

親しさに厨の主婦と胡瓜もむ
火酒提げて隣より来し喜雨休み
観光の島巡る馬車仏桑花
【纐纈喜月】

夏の雨杖持つ人に腕かして
誇るかにさらす太股半ズボン
吾庭の花椰子眺めバーに酌む
【三原芥】

サッカー戦夏めく夜空を明るくす
胡瓜もみ母の遺愛の藍の皿
桑の實や瞼に浮かぶ山河あり
【畔柳道子】

ハイビスカス海岸の街明るす
遊覧船船尾をかざる夜光虫
石筍の形いろいろ滴りて
【原口貴美子】

貯水池を楽しく叩き喜雨来る
みんなみの鎮魂の島仏桑花
豚小屋に蝙蝠除けの灯がともり
【森川玲子】

墓参道昼を灯して花売れる
洗いたる墓にゆっくり香の煙
主老ひ庭雑草の満ちて花
【伊津野朝民】

八重に添い一と重やさしき鳳仙花
味噌汁の実にする程のユーカリ茸
ユーカリ茸椰子茸も又美味しかり
【伊津野静】

過疎村の牛見櫓につばめ来る
終わりなき淋しさ彩の水中花
黒板に孫の落書き夏休み
【青木駿浪】

今年又恙な夫と墓参せる
娘や孫に連れられうれし墓参り
【矢島みどり】

黒人はスポーツ強し黒人の日
ブラジルや趣味持つ人に明易し
【三上治子】

句座に枇杷持ち来し友今臥すと
晩酌の一杯待つ間の胡瓜もみ
【野村康】

太陽と同じ明るさミニトマテ
酸っぱさのこれぞ本物夏蜜柑
【山田富子】

趣味あまた持つが生き甲斐老の春
日本着つけし黒人や盆踊り
【小野浮雲生】

春時雨パーマのセット濡れ惜しみ
鉢ほじるひそむ寄り来しピンチピウ
【失名】

朝サビア森の夜明の歌なりし
水晶山に小鳥が多し小鳥の日
猿も棲む鹿も棲む山初嵐
登る陽に苦瓜一番二番花
犬の仔に春一番の雷よ
春雷に犬の仔十匹生れたる
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


老い二人かたみに空気のごとくなり語ることなく一日を過ごす
添い寝して「てんてんてまり」と歌いやれば眠りゆく孫のくちびるうごく
倒れしは倒れしままに咲き満ちてコスモスの花ゆうべ明るし
【スザノ福栄会 青柳房治】

橋の上より眺むる向いの荒滝のしぶきは霧となりておそい来
大河の上に架かる回廊のごとき橋行けどもつきずあきて帰り来
薄みどり透きつつ文旦煮つまりて飴の糸ひく菓子となりたり
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
〔「文旦」=ザボン 朱攣・香攣「柚ノ最モ佳ナルを文旦ト曰フ 原産ハ中国カモ知レナイ 中国最古の詩集詩経(三千年前)に柚ハ詠ワレテイル〕

なかなかに思うようには歩けねど面倒みつつ行く老いわれら
千秋楽を明日にひかえて土俵上全力発揮の日馬富士関
料亭に行けば朝けに帰る君老いて夫婦橋手をとりて行く
【スザノ福栄会 青柳ます】

苦労してまとめし短歌は駄作にて思わぬ歌が入賞となる
伯人の庭にひと本の日本松手入れてあれどぎこちなさ目立つ
短歌にて初めて知りしセロシアの花種いただき蒔く季を待つ
【スザノ福栄会 原君子】

金剛寺の谷口導師みまかりて我より若しと夫は嘆けり
久しぶりに村の友らに出会いけり谷口導師の四十九日に
春来しと思えば真夏ブラジルの気候の変化は老い身にきびし
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

日の丸の旗で送られ国出でし人の安ろうイペランジヤホーム
窓外の木々をゆすりて二ヶ月も雨なし今日の風しめりもつ
ショキショキと仔豚を呼んで餌やりし母が夕んべの夢にたちくる
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

国々が経済悪化に四苦八苦企業が次ぎつぎ消えてゆくとう
さりげなく互いに気づかう美しさ終の住処(か)よ我らのホーム
満ちたらいすべておまかせ気も楽に笑顔のたえぬホームの生活
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:瀟洒な建物、清潔で明るい室、食事はカロリー満点。いたわり合って暮らす入居者。作者の心から感謝しておられることが良く解る。)

年重ね寝たり起きたりの日々なれど短歌詠むこころ今に忘れず
仰ぎ見る空は一点の雲もなく庭の木立の緑ましゆく
【セントロ桜会 上田幸音】

ようやくに二歳となりし曾孫はソファに上がりはしゃぎて笑う
澄みとおる空ながめいてふと気づく庭の小鳥もさえずりはじむ
【セントロ桜会 井本司都子】

御先祖の合同供養に参加して両家の灯篭の流るるを見る
温泉郷サンタバルバラの公園になつかしく聞く蝉の合唱
【セントロ桜会 大志田良子】

風のなき夕べはらはら散り敷きて紫イペーの絨毯となる
夕まけてビルの窓々灯ともりて帰りし人らのくつろぎの時
【セントロ桜会 鳥越歌子】

末娘こころつかいて父親の誕生祝いに外食誘う
英国に二階のバスがあると聞く乗りてロンドン見物したし
【セントロ桜会 富樫苓子】

白内障の左右の手術無事に終えまた頑張れると勇気わきくる
フリージヤの花香りたつこの夕べ幼きころの故郷を思う
【セントロ桜会 板谷幸子】

日本へ出稼ぎに行くと言う倅(こ)らよ食うに困らねば行くにおよばず
大学を卒えたる息子(こ)らの出稼ぎに我は極力反対をせり
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:人生は長い。一時の金儲けに走ってはいけないと諭す親心。)

夏日射すお盆供養の教会で信徒一斉に聖教読誦す
わずかなれど日本年金有難し次回受給の手続き急ぐ
日に二粒週に一粒二種類を一年飲めと骨の医者言う
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:三首ともよくまとまっています。特に二首目佳。)

早春の寒き朝(あした)を軍警の朝礼の声きびしく聞こゆ
アカシヤの花ほろほろと散り敷きてのどかに春は移りゆくらし
【セントロ桜会 星井文子】
(評:二首とも良くまとまっています。但し、第一首の「朝に軍警の朝礼」は「軍警の訓辞の声が」としたらと思いました。)

末の孫今年医大に入学せり卒業するまでわが命あれ
その昔農家をささえた耕馬たち太った馬は一家の自慢
土砂降りの雨が夜明けの軒たたく枯れし牧場も今日は潤う
【ツッパン 上村秀雄】

移住良しと恩師は励まし十二年後に吾が業績を見に来給えり
健康と成功を祈り乾杯す師弟の絆永久に変らじ
百三歳の母が手伝いに来し日ありかの日おもえは唯ありがたし
わが余生一家の健康見てくらす日々をたのしく笑顔で生きる
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

知らぬ間に百歳となり吾ながらおどろきているこの長生きに
この年でわれとは思えぬこの健康神のめぐみと感謝で生きる
【ツッパン 林ヨシエ】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


投票権持たぬ身遠く聞く選挙
子や孫が育ち曾孫の立て役者
選評を貰い燃え立つ灯に向かう
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:意に叶った選評は作者の励みとなるもの。益々のご健康とご健吟を祈ります。)

ぜいたくに慣れて若者平和ボケ
身についた努力は父母のおくり物
根性もうすれスポーツ弱くなり
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:世界一を誇ったブラジルのサッカーも、だんだん心細くなりました。)

オヤ、マアと旅の途中で夏時間
七夕祭短冊だけは読めるのに
かたくなにポ語覚えず半世紀
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:ポ語を覚えないまま半世紀を乗り越えて来られた作者の努力と忍耐にエールをおくります。)

知った振りした放言に迷わされ
辞書ひいてすぐに忘れる年となり
疑問すこし残れど納得することに
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:「まあ、まあ」で納めることも処世術のひとつですね。)

帰化をしてどこが故郷となるのやら
生涯を大地にたくして豆を蒔く
幻想を持つから幻滅させられる
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:幻滅を前提とした上で、大それた幻想は持たないように――。〔下語の言葉を変えました。参考になさって下さい〕)

人間の金欠癌は直らない
ミス世界大和撫子トップの座
レスリング大和撫子世界一
【セントロ桜会 中山実】
(評:二〇一四年のサッカー・ワールドカップにも期待したいですね。)

世の平和祈って流す灯篭会
句の友が今日又一人天国へ
ソロバンは要らぬ年金ありがたい
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:定められた年金の金額に合わせて――。)

譲り合う心が世界の平和よぶ
久しぶり笑顔あふれて集う柳友(とも)
やわらかい言葉の中にある皮肉
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:相手の言葉に皮肉が感じられた時のショックは大きい。それまでの交際にしこりを来たすことにもなり兼ねません。)

旅の味舌にレシピ刻み込み
不器用に生きてすべては自分流
食べ残し出来ぬ律儀な老いの箸
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:旧世代にとって「もったいない」の言葉は生きつづける。)

嫁の知恵ふるさと料理で腕を上げ
甘えん坊八十路でも母に甘えたい
百三歳の母八十路の吾れへの愛深む
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:幾つになっても母の愛の灯は消え去ることはありませんね。)

失せし物宝に等しいものばかり
美しい姿を見せる活火山
大地震太平の世に活入れる
【サンパウロ中央老壮会 峰村やす子】
(評:試練と受けとめて起ち上がってほしいですね。)

◎席題「愚痴」 余碌出題
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東洋街犬糞踏んで今日も愚痴【実】
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