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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年3月号

2013年3月号 (2013/03/15) 俳句 (選者=樋口玄海児)


移住地に五人となりし初句会
口せぐの大和魂暑に耐えて
冷房や声のつぶれし大昼寝
来て嬉帰りて嬉し三日かな
【佐々木古雪】
(評:一句目、外国での句会。移民盛んなる頃は新しい人が増えにぎやかであった句会。移民百年を過ぎると、新しい移民も来ず、日本文化も落目。二世三世は日本文化はつがず俳人も減るばかり。古い俳人の嘆き。二句目 冷房や声のつぶれし大昼寝、人間年をとると何にかと落度が出る。これはしかたないでしょう。老いてまず出るのが物忘れ。これが第一に出て冷房に長昼寝、物忘れにご注意。)

弾む披講新顔増えし初句会
買初にすかし見されし新紙幣
鍬始せし記父の農日記
逃げ水を追ふてパラナへ婚の旅
【野村康】
(評:二句目、私も新しい紙幣に出会った時この様にすかし見られ良い気持ちになれなかった。あまりに新紙幣にが変るの早いブラジル。三句目、新婚旅行それもパラナ、世界一の滝を見に行かれ、その広大な土地の逃げ水を追っての旅。)

韓国の歌手の人気やカルナバル
旅行者もムシラ背負いサンバ踏む
秋出水愛車は水に見えずなり
赤児今跳び出る腹やサンバ踏む
【寺尾芳子】
(評:二句目、サンバ好きな国民、リックサック背に楽しげにサンバを踏んでいる町中でも、バスを待ちながらでも。四句目、臨月腹の女も楽しそに踊っていた。元気な赤ちゃんが生まれるだろう。)

寄付名あるベンチに憩ふ山丹花
州境の河のうねりや夏深し
ミニ流行り細く小さく海水着
空腹を忘れ遊ぶ子夏の海
【畠山てるえ】
(評:三句目、女も男も海水着は小さくなるばかり。昔の人間には想像も出来ない。目のやり場もないくらい。評者古い人間です。)

雨期明けずそのまま秋の立ちにけり
誰がつけし神父のふぐりとは無礼
日本着の老妻と撮る初写真
七十億の生きざま死にざま秋の風
【三原芥】
(評:二句目、日本にも犬ふぐりと云う草がある。日本の句会に出た時、女の方が「なんといやな名でしょう」と云っていました。植物の名などある時は考えの及ばない名を聞く時がある。たとえば蛇という字も虫へんはどうですかね。)

ウルブーの牛骨つつくく早牧
ピタンガの結ばぬ落ちて春早
太陽げに明るさ広げ鳳凰樹
にわとりもあひるも駈けて喜雨の庭
【中川千江子】
(評:三句目、カンピーナスより北へ行けば鳳凰樹がさかんである。特にカンピーナス大学都市はすばらしい。ブラジル名をフランボーヤンといい大学都市にぴったりの花。この句も出来上々。)

山丹花咲くあの家と教えらる
犬が居て猫居てわが家昼暑し
椰子の葉が騒いで雨を呼んでをり
【畔柳道子】
(評:山丹花私知ないが、名前から来る想像ではアマゾン名みたい。しかし調子が良く出来ている。見たい花である。)

花の毬葉の上に置き山丹花
電線にドレミの音符夏つばめ
水着付け恥ずかしそうな老二人
【森川玲子】
(評:一句目、葉の上におく花他に色々ある。たとえばアジサイなど。しかし葉を脇役にした山丹花の句は立派。花の名前がおもしろい俳句。新しい事を追うのが良い。)

ベンテビ軒に啼き今日もはじまりぬ
春愁やテニハ抜けたる後遺症
退屈な犬と婆との日永かな
【田中保子】
(評:一句目、最近脳梗塞を患い休んでいられた。今月は此のなな様元気句を投句されました。句の様に新しい人生が始まっています。今後も毎月の投句をお待ちいたします。)

忍と夢墨蹟の大鵬逝く睦月
耳しひにも響く打楽器カルナバル
斬新な着物スタイルサンバ踏む
カルナバル気分も吹跳ぶ核実験
【香山和栄】

ホームバある応接間初句会
一寸おしゃれしてでかけます初句会
御佛の教えにはじまる初暦
【猪野ミツエ】

ブラジの首都へと向ふ花野道
ミニラジオ鳴らして研屋片蔭に
秋鯖の美味き朝飯に皆揃ふ
【松崎きそ子】

珍しと云われ山丹花の黄色
抱かれ行く幼児も海水着を着せて
屠蘇として口に合うのは火酒なりし
【纐纈喜月】

カルナバール日本の衣装艶やかな
山丹花子育のごと大事にし
水着の娘さんうれしく父さん連れ歩く
【原口貴美子】

目も馴れたビキニ姿の夏の海
美男美女この世の淨土カーナバル
老妻も胸張り写す海水着
【秋山青峯】

山丹花咲けば孤独も和わらぎぬ
【吉崎貞子】

たのしみの集いの句会金魚草
ブラジル中揺がすごとくサンバ団
【吉崎貞子】

女等の和語佳き夏の放日機
棟上げの餅乱れ飛ぶ山丹花
流れる死魚啄むられ来べ河極暑
【栢野桂山】

日雇いに誘はれ耕主暑気払ひ
夏の園タンクめくもの座すは何
バラの庭瓦作煉りの犬の子屋
【伊津野朝民】

蓑虫の可愛い貌を出しおりし
蓑虫の蓑にちんばの足二つ
蓑虫に学ばんことの何々ぞ
【伊津野静】

暗くして大地へ走る稲光り
遠雷に大人しくなる妻の犬
工業地広がる山や秋の蝉
【高尾ケン一】

波音には明け行夜く島暑し
島の宿風豊かなる夏の空
【山田富子】

鹿なきし山は今なし工業地
立秋や一月の暑さうその如
【杉本鶴代】

若き日を思い出させる海水着
厨にて孫の悲鳴や油虫
【矢野恵美子】

出稼子時差を超え来し初電話
快方を喜ぶ頁日記果つ
【青木駿浪】

サンパウロを洗ひしの空夏の雨
スコールや竹林の風椰子の風
枇杷熟るなんと子供の多き国
マンゴウの花に子供の一人増え
生卵すすり暑さに耐えており
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


新春のカラオケ大会優勝を目指して妻の声はずみたり
春来れば秘めし力が動くのかさくら大樹の艶めくを知る
【スザノ福栄会 青柳房治】

宇和島の牛鬼行列今日なるか恐れし日あり大写しに見す
筆くわえ足指に挟みて画かれし花のカレンダ古りても掛けおく
ブラジルに老いて悔いなし「文協」のカルナバールに一夜踊りき
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

人々のお世話になりて八十路超え二人で趣味の短歌会に行く
妹が送りてくれし日本着に手も通さずに正月が過ぐ
ふりかえれば楽しきことのみ浮かびくる苦労を苦労とおもわず生きて
【スザノ福寿会 青柳ます】

わが家のめぐりビル建ち年越しの花火は見えず音のみを聞く
ビルが陰で見えぬ花火はあきらめて世界の花火をTVにて観る
忌禅なく意見を述べしさわやかな元婦人会長の逝去を悼む
【スザノ福栄会 原君子】

猫の愛きまわる時に娘の顎を噛みて甘える頬ずりされて
草や花に先祖帰りと言うがあり詩吟を習う妹を見る
ガスかつぐ漢(おとこ)辟昜して佇てり子を生みし犬の猛り吠えゆれば
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

わが家ほど良きものはなしゆうゆうと手足のばして言うことはなし
娘とともに医院¥の椅子に座して待つに時間はたたぬ待つということ
【セントロ桜会 上岡寿美子】

新春の二月の風はぬくめども病の吾はまだ春と遠し
樹の上でベンテービの鳴く声を見上げて仔犬しきりに吠える
【セントロ桜会 上田幸音】

夏休みとなりし校庭子供らの影ひとつなく今日も暮れゆく
紅ふかき石榴の花ちる庭を訪ねることなく日は過ぎてゆく
【セントロ桜会 井本司都子】

夏なれど朝夕寒き日のつづき咳とくしゃみがしきりに出ずる
いづもより早き今年のカニバールと思えど藤の葉は黄ばみたり
【セントロ桜会 富樫苓子】

早朝の歩道の隅にみどりの芽ここにも生きる植物のあり
今朝みれば早何センチみどりの芽のびていじらしタンポポ和毛
【セントロ桜会 大志田良子】

白き髪染めむときめて鏡面にむかえば戸惑う化粧せぬ顔
和服をば着ることもなく仕舞いいしが友に譲りていまは安堵す
【セントロ桜会 鳥越歌子】

古里の花火大会思い出すイ―リャべーラの元日の夜
双眼鏡あればと思う豪華船 船首の国旗が小さく見ゆる
【セントロ桜会 板谷幸子】

ファゼンダの巻き上げ井戸は音きしみ隣は今朝も水早く汲む
真夜中にふと目を覚ます風たちて窓にしきりに稲妻走る
訪日し戦時下の話し聞く夜よ移民の苦労は秘めて語らず
【ツパン 上村秀雄】
(評:巻き上げ井戸、奥地の入植の頃を思い出させる歌。私の家の井戸は深さ三十二米でクランクで巻き上げるのに六十五回もかかったが井戸の水は最高であった。)

初日の出こころつつしみ拝むとき祖国を想う切なきまでに
卒寿でも老ク、文協、カラオケなど他の役もする我の生き甲斐
邦字紙がくれば早速目を通し日本の政治を独り批判す
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:初日の出を拝むのは東洋人の中でも日本人だけかも知れない。崇高な精神をつちかう事が出来る。)

未来ある大学生達パーテイで火災に倒る有毒ガスに
数百名の学生が出口もとむれど次ぎつぎ倒る有害ガスに
一瞬に愛し子亡くしし親たちの嘆き想いてこの夜ねむれず
新しき年を迎えて変りなき友の笑顔が何よりうれし
今年も亦恙なき日々過ごしたし老いゆく身には欲は無用よ
【プ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:一瞬の間に何百名の大学生を失った大惨事。このようなことは二度とあってはならない。)

十一人のうから車に分乗し来たりて祝うわが誕生日
強盗にいためつけられし義妹も声は出ねども明るい笑顔
うれしさは幼ない子供のふるまいや家族(うから)の心づかいに涙す
恋人を連れて来し孫人前もはばから抱きしめ頬ずりをする
ボーロ切る祖母を讃えてパラベンス九十歳の吾が誕生日
【サントス白寿会 三上治子】
(評:三上さんのお喜びが目に見えるようです。)

橋流し国道こわし大荒の雨季上がらずに早も秋立つ
猫き上げし風景の絵は物たらず額をながめて溜息をつく
お元気ね歳より若く見えますよお世辞と知れど悪い気はせず
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:いつもこのとながら三首ともよくまとまった作品。二首目、三首目の歌秀れています。)

ポプラ咲く街を行きつつ思い出すわが故郷の学舎の春
紫蘇の香に思い出たどる故郷の晩夏の夕餉若き日の母
【セントロ桜会 星井文子】
(評:作者は紫蘇の香によって故郷での少女の頃を思いだしている。晩夏の夕餉と四句切れにし、五句で起こして夕詞止めにして優れた歌となった。)

出稼ぎの娘の元へ行く老夫婦流離いくたび見送りて佇つ
舞初めに友の「女将」の所作のよさあでやかに舞うのれん一代
朝あさに主人と歩くスポーツ場友と出会うを楽しみにして
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:三首目第一句が毎早朝となっていましたが、言葉が固いので朝あさと直しました。ご参考まで)

哀悼
「老壮の友」の歌友。林ヨシエ様が、昨年暮れ、百一歳の天寿を全うされて永眠されました此所に、謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り致します。合掌。(選者=藤田朝壽)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


懐旧の情ある八十路振り返る
急ぎ足老いの歩幅がままならず
父と来た異国が祖となる国となり
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:十年以内での錦衣帰郷を夢に見て来た異国、それが遂に第二の祖国になりました。)

成功を励ます言葉の裏に辣
生涯を捻くれ耐えている孤独
無器用も少し保身の役に立ち
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:無器用を常套語にした逃げ道もあります。)

頷いてシンバー川柳に大笑い
今年こそ光る一句を目指したい
今年又姉の温みの包み来る
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:心温まる一句。お姉様の想い遣り、ありがたいですね。)

前日にはきちんとメトロの切符切れ
見えないと言いつつゲームは高特点(デイーサービスでの風景)
一家中動く人形にてんてこ舞い
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:初孫に振り回されていると言う作者、中語の動く人形。目がはなせませんね。)

旅づかれ寝つく歳とはこれいかに
熟年と老人も嫌会に座す
ひたすらに今年も.励と心決め
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:心新たに今年も頑張ってください。)

野良犬の縋る(すがる)目に負け拾い来る
譲り合う心があれば波立たず
やわらかい言葉の中にある皮肉
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:やわらかい言葉の中にちらつく皮肉は殊更人の心を傷つけるもの。)

月きを待つ淋しさ抱いて帰る道
旅に来て海を間近に見る夏日
流れ行く雲を雲追う夏の日よ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:追いつ追われつ止どまる事のない雲の動きがうまく描写されました。)

ゲートボール最後の玉は上り玉
竜の舞い中国意気を盛り上げる
流石リオ世界に誇れるカー二バル
【セントロ桜会 中山実】
(評:世界に誇って余りあり、といったところ。)

忘れたいことは忘れぬ記憶力
金を出す時だけ外交胸を張り
暖房器よりも一言温かった
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:暖房器は外部を、心ある言葉は内部を温めてくれる。)

もったいないが住みつきみんな使い切る
忘れること出来て苦しみかるくなる
年の功人使うこともうまくなる
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:年の功を活かして万事スムースに―。)

沖縄の基地に多し黒人兵
子沢山養鶏家業うってつけ
それぞれに分坦家業繁栄す
【サントス白寿会 三上治子】
(評:適材適所、作業の仕分けの良さが事業繁栄につながる。)

忘れじの君の写りし水中花
優き悩みみんな忘れて旅に出る
灼熱の恋も月日が忘れさせ
【サンパウロ中央老壮会 峰村やす子】
(評:命を掛けた程の恋もいつか月日がわすれさせてくれる。)

花より団子食事も良かった花祭り
八十路入り子等に引退すすめられ
旅に出てブラジルの良さ身に沁みる
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭実智】
(評:外国を旅した人からよく聞く「ブラジルの良さ」ありがたいですね。)

「熟年」
熟年の姿勢が光るいぶし銀
熟年とよんで老化に活性化
青春の面影集う熟年会
熟年と書けば消えそな顔の皺
熟年で始めた趣味に箔がつき
熟年の集いの一人でいる安堵
【柿嶋さだ子】


シルバー川柳

クラス会 食後は薬の 説明会
【渡辺克己・千葉県・75歳】
入場料 顔見て即座に 割り引かれ
【赤羽慶正・京都・71歳】
探しもの やっと探して 置き忘れ
【原峻一郎・佐賀県・80歳】
カード増え 暗証番号 裏に書き
【石田るみ子・兵庫県・59歳】
腰よりも 口につけたい 万歩計
【鈴木隆周・東京都・67歳】
老いの恋 惚れる惚けるも 同じ文字 
【池田又昭・埼玉県・70歳】
立ちあがり 用事忘れて また坐る
【渋谷史恵・宮城県・37歳】
場を察知 呆けたふりして なごませる
【池田くるみ・茨城県・71歳】
無農薬 こだわりながら 薬漬け
【中谷弘吉・大阪府・65歳】
留守電に ゆっくりしゃべれと どなる父
【土田美智子・奈良県・58歳】
何回も 話したはずだが 「初耳だ!」
【井上榮子・東京都・73歳】
(社団法人全国有料老人ホーム協会「シルバー川柳」より)


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