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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年4月号

2013年4月号 (2013/04/11) 俳句 (選者=樋口玄海児)


貯水池に水のふくれて星月夜
郵便の届かぬ里やパイネイラ
盛況なる老人講座むかご飯
老いの手にぶどうの房の余りたる
【森川玲子】
(評:二句目。最近、ブラジルの田舎でも郵便局はたいがいある。しかし、ブラジル国は広いので、この句のような村もあるであろう。四句目。ぶどうの房が重かった句。手に余る大きさを表現した新しい句。)

旅先の体調も良し今朝の秋
カンナバル観に来て伯国(ここ)に住みたしと
蓑虫の蓑重たげや今日も雨
背伸びして見張りカピバラとぼけ貎
【猪野ミツエ】
(評:一句目。久しぶりの旅。気分も気候も上々。しかも今朝の秋の季題も良く出ている。二句目。日本からの旅人だろう。カーニバルを観ての感想でブラジルが好きになった若い人ではないだろうか。カーニバルの句では、意表を突いた面白い句。)

男坂ばかりの街路秋暑し
鰯より鯛安かりし頃思ふ
果樹園の自然農法とや秋の草
皮むくや小しぶきあがる大づいき
【三原芥】
(評:二句目。昔ブラジルではあまり鯛の人気が良くなく、リオでは全く買う人が無かったと話で聞いたことがある。その話を句にした人事句として面白い。)

夏時間終り夏日の昨日今日
鉢植えの蘭の莟もふくらみて
秋暑し夕餉は冷し麦ですます
朝市に熟柿出初めてにぎやかに
【矢島みどり】
(評:一句目。季節のはっきりしないブラジルでは、夏時間が終ってもまだ暑さが続く時がある。特に今年は夏が少なかったようだ。)

チエテ河百年前は澄みいしと
洪水の残して行きし水も澄み
冬晴の陽と呼ぶカーテンさっと開け
パイナ飛ぶ無限の広さほしいまま
【湯田南山子】
(評:一句目。百年前はサンパウロの人口も少なく、チエテ河沿いの家もまばらで工場もなかった。チエテの始まりは、サンパウロよりリオ近くで百キロ余りのサレゾポリスの山より流れ出る水で、句のように百年前は美しい水であったであろう。)

秋めきて星降る如く澄みし空
酔いし身を馬に委せて星月夜
降りたちて速跳び歩きツカーノ
餌を乞いて屋根に飼われるツカーノ
【纐纈喜月】
(評:二句目。評者はまだ田舎に住んでいるが、町はずれのボテコへ寄ると、馬乗り男等がピンガを飲んでるのを見ることができる。しかも、どんな酔っても帰りは馬任せで全く良い国だ。昔のアメリカ映画を見ているようで、ブラジルはまだまだ面白い句ができると思う。)

吠え猿の群る森の上星月夜
大刀魚はなますに限ると教わりし
餅搗きを祝って晦日二万人
茅の輪くぐりお祓い受けて大晦日 
【野村康】
(評:一句目。私の近くの森でも群猿が出ていますが、ポケット猿で手に入るぐらいです。人間に馴れやすく、口笛で呼ぶと人が手に持つバナナなどを食べに来るそうです。)

新涼や硯の墨の匂ふ朝
新涼や白き敷布は風を呼ぶ
積み上げし屋号鮮やか葡萄箱
【青木駿浪】
(評:三句目。作者は、五、六年来病妻を看病しておられ、その毎日の生活を句にしている。敷布に風が出て来た。それを白い敷布が風を呼んだと見えたこの表現は新しい佳句。)

夕映えの森や遠目にパイネイラ
パイネイラここより二筋別れ道
大刀魚を釣りし話がはずみをり
秋めくやいよいよつのる忘れ癖
【畔柳道子】

角帽投げ巣立つ若人秋高し
角帽に惜別の歌卒業す
解禁の鰯に集ふ朝の市
【松崎きそ子】

朝顔と孫の笑顔のえ靨かな
バス停に大きな陰やカンナ燃ゆ
一雷に灯りの消えし一山家
【高尾ケン一】

アマゾンの牛魚の句旅土産
暑さなを今年の一月今日終る
花コンロン青葉がくれに赤々と
【佐々木古雪】

趣味に生き暑さに負けぬ老日課
街掃除人夫の顔の玉の汗
夏休み暑さを避けて旅に発つ
【小野浮雲生】

ラジオ体操八十路を忘れ今朝の秋
雛流す七つの海に続く川
斬新な着物スタイルサンバ山車
【香山和栄】

呼ぶ度に返事する猫夕端居
下戸が造る女王花のバッチーダ
薄紅葉古里の山恋しけれ
【田中保子】

星月夜自然を愛す娘の瞳
心の間ひらけば美しい星月夜
半世紀生きて楽しい星月夜
【山田富子】

秋めきて袋小路に人散歩
来る年も咲けよと残る菊を刈る
海なりの窓に語らふ星月夜
【畠山てるえ】

側に居て誰かが欲しい星月夜
大刀魚を捌く俎板銀のしみ
残菊やあの香と姿過去の夢
【栢野桂山】

秋めくや孫の手を取り童歌
ホカホカと栗めし匂う母匂う
窓ぎわに残菊の香や町の夜
【矢野恵美子】

山歩き途中に蛇に蜘蛛にあい
虫を食べ家守の這える壁白し
【三上治子】

星月夜過去のロマンも愛ほしく
パイネイラ尋ねる人の道しるべ
【秋元青峯】

残り菊小さく咲いて庭淋し
兄弟で競って食べる栗ダンゴ
【原口貴美子】

掌にのせる柚子の香りや遠き青春
柚子香る故郷恋うて老いてなほ
【玉井須美子】

大西洋の大刀魚釣りに誘はれる
大刀魚釣り十人乗りの船出して
カピバラの肉売る馬車や夏の朝
大西洋の大刀魚人の丈ほどに
スコールの通りし山の美しさ
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


仕事やめ漸く短歌ひとすじの境涯となり八十路を歩む
朝の日に胡瓜の苗床整然と風にそよぎて定植を待つ
【スザノ福栄会 青柳房治】

石楠花のあふれ咲きたる今年の樹いただきし君に見せたく思う
馬子唄でも出そうな景色鞍付けし馬を引きゆく老いし邦人
七回忌修せし安堵か明け方の夢に来し夫が遠く手を振る
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

ふるさとの友より届く毛筆で書かれし色紙傘寿を祝ぎて
ふるさとの妹よりの初電話共に元気を喜び合えり
移転せしアパートの向かいはメルカード杖ひく夫と朝の買物
【スザノ福栄会 青柳ます】

会場の飾りとお客に驚きて笑顔忘るる誕生日の曾孫
照り降りの続く幾日ぞコスモスは茎の細きにゆれつつ咲けり
誕生日迎えし曾孫は体力も歩みも確か吾をおどろかす
【スザノ福栄会 原君子】

友達の家族と行きしニューヨーク今年は大雪孫を案じぬ
日本に来て始めての重労働は今年の雪掻き娘の頼り
肩ならべテレービに見入る幸せよ歴史の好きな夫に合わせて
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

叔母逝きて和語を解せぬ従弟妹らと疎遠に過ぐるも術なき事か
邦字紙にレジストロの記事載りたれば昔の「海興」思わるるなり
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

混雑する車列をぬいて走り行くバイクの人よ無事であれかし
その昔は野菜畑でありしというブタンタン区はビル林立す
【セントロ桜会 上岡寿美子】

子や孫に守られ病床に臥すわれは感謝の思いに胸にきざみて
春雨に街路の並木緑まし小鳥の声もさわやかに聞こゆ
【セントロ桜会 上田幸音】

いつの日かしまい忘れし筆入れはふとしたはずみに現われてきし
大空に浮かぶ白雲ゆっくりと動きてゐたり窓より見れば
【セントロ桜会 井本司都子】

何事も疲れやすくなりし吾わびしきものよ老ゆるというは
午後三時暗闇となり雷のとどろきたちまち豪雨となりぬ
【セントロ桜会 富樫苓子】

夢などはめったに見ることなき吾がゆうべ見し夢思い出しおり
自分史を短歌でつづった梅崎さんさすが吾が師と感動しきり
【セントロ桜会 大志田良子】

カーニバル百花繚乱年に一度夜っぴて踊る若き群衆
ようやくに夏の季節になりたるも豪雨のありて各所に被害
【セントロ桜会 鳥越歌子】

どの木にも大きいマンガさがりいて風もないのに日すがら落ちる
携帯にいまだに馴れぬわたくしは鈴が鳴れども取り出しもせず
【セントロ桜会 板谷幸子】

頂きし歌集を今日も読みており著者の面影目裏に顕つ
この集(しゅう)をくりかえし読み学ばなん短歌でつづった君の自分史
夏時間終れど残暑まだ厳しひたすらに待つ馬肥ゆる秋
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:大先輩・梅崎嘉明氏の「短歌で綴った自分史」を熱心に読んでおられる野村さんお姿がおのづと目に浮かんでくる歌。梅崎短歌は日本の一流結社誌「歩道」に掲載された歌で、安心して読むことができ、短歌を学ばれる方にとっては何よりの参考書です。)

開拓時椰子壁をもる隣の家のランプの灯明り目ざして訪えり
それぞれに苦労多かりし移民妻今日は老クで和気あいあいと
美しく老いよと師よりさとされき心がけでもままにはならず
うぐいすの鳴く声すれば起き出でて襖(ふすむ)を開けて梅の木を見る
【ツッパン 上村秀雄】
(評:二首目の歌、佳、よくまとまっていて胸をうつ歌。戦前移住者の妻は苦労が多かった。今日老クの集いで和気あいあいとして楽しく過ごせる喜びは金銭では購うことができない。)

ファゼンダに九ヶ月ぶりに帰りたり犬ら尾をふり吾を迎うる
ファゼンダの空気は清く騒音もなくて安眠出来る仕合わせ
孫たちはカァミニョネーテとオートバイ馬に乗るのは日雇い人だけ
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:三首とも素直に詠めていて好感の持てる作品。一首の中に片假名語を三つ入れないこと。しかし、どうしても使わなければならない場合もあります。
 パラグワイとアルゼンチンとブラジルを分かち三叉(さんさ)なづ河は濁れり 梅崎嘉明
この作品はコロニアの名歌の一つですが、片假名語が三つ入っています。漢字では書き表わす事が難しいこのような場合は問題ナシです。)

合同歌集読めば読むほどうた人らのそれぞれの生き方勉強になる
体操会新年の集いの合唱の声被災地にとどかぬものか
年明けて心新たに感謝する元気になりし夫と過せて
老いたれど体操に励み良く歩きますます健康日びを楽しく
カーニバルのブラジル名物のCDを友に贈りたし発売を待つ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:三首目、佳。健康をとりもどした夫と共に新年を迎える作者。感謝の念は健康につながる。)

兎料理食べさす早目に来て欲しと早目に行けば三羽を屠る役にて
会社より派遣をされてカナダに孫は妻子を連れてゆくらし
同郷の孤独で逝きし友の詩に人の情に感謝とありき
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】

聖なる地のガンジス河も汚染せり豚の死骸が今朝は流れ来
日本食見かけだおしのものまねで食材泣かせのチャランポラン
【サントス伯寿会 三上治子】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


横文字は何度聞いてもすぐ忘れ
朝寝して天下泰平今極楽
医者の言どこ吹く風の百才翁
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:威風矍鑠とした翁の姿が巧みに描写された。)

生意気な口きく幼な顔をして
騙しても得るところなし粗大ゴミ
今の世に古き経験役立たず
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:科学の著しい進歩に、古き良き時代は押し流されて行く。)

善と悪からむ企業のむずかしさ
大企業国際的に伸し上がる
お歳暮と賄賂微妙な別れ道
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:どちらにしても相手の思い遣りを善意に受け入れることが望ましい。)

定職への未練もなくて知る余生
年金を片手の余生に馴らされて
勤勉の二字を背負って来た移民
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:勤勉の文字を除けて移民史は語れない。)

駆け足で過ぎる早さよ老いの歳
何よりも五体元気が宝です
物忘れメモする事で予防する
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:あの時にメモして置けばよかったのに、と悔まれる事もあるもの。忘れぬうちにメモしておく心がけが大事ですね。)

カルナバル過ぎても残暑立ち去らず
大都会集中豪雨に機能マヒ
震災の傷痕深む二年(ふたとせ)忌
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:被災地の復興が遅々として進まない中での二年忌となりました。今尚、苦境に立つ大多数の被災者の事を思うと心がいたみますね。)

手から手へ眠るひまなし初孫よ
惜し気なく変化見せる孫の顔
総理職前歴あって板につき
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:総理としての経験をもつ安倍総理への国民の期待は大きい。)

心の窓開くと視野が広くなる
砂に描く好きな似顔が風に消え
風だより過去への慕情わいてくる
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:風だよりは過去を甦らせてくれる。)

水野龍移民の父の名を残し
世界一太い草鞋を浅草で
日本の新幹線は日本一
【セントロ桜会 中山実】
(評:プラス面での世界一は、大いに歓迎ですね。)

切り捨てた風が記憶の底で吹く
見栄っぱり財布に寒い風が吹く
悲しみを無言で語る電話口
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:思わず胸せまる一句。声なき声に深い悲しみが伝わってくる。)

メッキ利いたメダル今も光ってる
誰も見ない風に人間踊らされ
憂き悩みみんな忘れて旅に出る
【サンパウロ中央老壮会 峰村やす子】
(評:憂さ晴らしに出かけた旅先で平常の自分にかえれたら幸いです。)

吹きだまり作って風は通り過ぎ
子の電話くじけちゃ駄目と活をくれ
もう着ない服の始末がまだ出来ず
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:そのうちに、そのうちにで、延び延びになってしまう事が多い。)

温泉にひたる心地の熟年会
こそばゆし熟年などと言われても
ゆずられて嬉し悲しの座席です
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:「やっぱりわたし年なんだわ」―。人様の好意にふと、己れの立場を意識させられた時、微妙な心境をさりげなく詠んでお見事。)

◎席題「孫」 中西笑出題
お姑さん嫁に勝っても孫に負け【清子】
孫見れば頑固爺も好々爺【清子】
孫娘大学卒業と言う便り【実】
この年でやっと一人の孫が出来【富子】
そして又一人の孫が出来そうな【富子】
三つ児の孫嬉しいような困るよな【ふみ】
孫帰りホッと一息昼寝する【ふみ】
おにぎりが日本料理と女孫【笑】
面倒を支えてくれる孫二人【笑】


シルバー川柳


若作り席をゆずられムダを知り
【津村信之・東京・71歳】
中身より字の大きさで選ぶ本
【西村嘉浩・神奈川・71歳】
できました老人会の青年部
【後藤順・岐阜・51歳】
名が出ない「あれ」「これ」「それ」で用を足す
【柴田紀子・愛知・51歳】
ご無沙汰を故人がつなぐ葬儀場
【中山邦夫・広島・69歳】
介護してふたたび芽生える夫婦愛
【西村健二・三重・31歳】
助手席の妻は昔の上司並み
【松川靖・埼玉・74歳】
恋かなと思っていたら不整脈
【高木眞秀・福岡・75歳】
(社団法人 全国有料老人ホーム協会「シルバー川柳」より)


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