移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年5月号

2013年5月号 (2013/05/12) 俳句 (選者=樋口玄海児)


庭の草毟りをりしが鍬買ひ来
庭用とておもちゃの様な除草鍬
新ピンガ吟行句会一回目
公園の古木に宿る草の花
【サンパウロ 伊津野朝民】
(評:一年中暖かい国で森の木と云わず公園などの木にも宿り草が生え花を付け公園を賑やかにしてくれる。またそこに住む人も散歩する人もさまざまの服装でブラジルの公園の散歩も楽しい。)

埋葬の土の重さよ秋時雨
拍子木で送る埋葬車秋時雨
耳しいの老の草笛涼新た
まわし飲む夜の淑女のピンガ漬け
【サンパウロ 三原芥】
(評:一句目木陰一号より投句されていた星子さん。去る三月、百歳で天国に召された。ブラジルの俳壇から惜しい人を亡くした。アーメン。)

振り返る移民の俳史椿寿の忌
郊外の各駅停車木朝顔
横向きに短冊置く婢秋深し
木朝顔スザノ旧道つづら折れ
【スザノ 畠山てるえ】
(評:私の所にも木陰一号からあり、その一号から目を通してつくづく感じることは虚子先生の激励の言葉が多く出ていることである。その虚子忌を椿寿の忌ともいい、虚子先生は椿が好きであった。先生が残した椿の句は何百とある。)

ビスコイト紅茶で過ごす聖金曜
町の灯に弓矢など売り土人の日
新月を待ちて竹伐る五千本
受難日の鉤にかからぬ魚の群
【サンパウロ 森川玲子】
(評:一句目聖金曜をビスコイトで過ごし面白い句が出来、おそらく日本では出来ないだろう。竹伐る句も面白い。トマトを植えるためだろう。それにしても本数が多いブラジルならではと思う。また竹は新月に伐れば腐らないと云われている。)

ミナス路の見渡すかぎりミーリョ畑
青ミーリヨ街道沿いは盗られけり
勇壮に棒もて踊る土人の日
蟷螂の悲しき定め夫を食う
【サンパウロ 原口貴美子】
(評:三句目土人の踊り、テレビでは見たことがあるが、目の前で見たことはない。これもブラジルではの句であろう。全身を土人的な色で塗り踊る姿は一度は見てみたいと思う。)

山刀の廃止に泣きし土人の日
念腹は祟ぬる師なり虚子祀る
カラオケの楽洩る門の木朝顔
玉蜀黍湯気が客呼ぶ駅の前
【サンパウロ 野村康】
(評:一句目山刀(ファッコン)ブラジルの山に住む者は皆、ファコンを腰にぶら下げて山を歩く。それが廃止となった理由は分からないが山に住む人、土人等には変な令である。それに土人の日、土人が泣いたとは句が新しい。)

ミイリョ畑に錆をこぼして捨て耕車
幸せの小さき音立て茹でミイリョ
才覚なき農自笑してミイリョ蒔く
百年の貫禄見せてパイネイラ
【サンパウロ 栢野桂山】

知られずに叢に太りしパルマ咲く
水澄むや影に驚く稚魚見えて
花アロエ鉢割るほどに根を張りし
針ねずみ来て青ミーリョ食い荒す
【モジ・ダス・クルゼイロ 村上士郎】

陽に干せば匂いかすかに菊枕
立ち像を寝かせてありける受難節
異人僧巧みな日語秋彼岸
蟻塚に入り込むつもりの穴まどひ
【サンパウロ 纐纈喜月】

月下して歎声湧きたつ月のリオ
昔より甘藷所の新酒酌む
猿めにも法あり紅葉の山に殖ゆ
【バウル 佐々木古雪】

水澄みて空の青さに昼の月
木洩れ日に遊ぶ色鳥日の匂ひ
折鶴の舞ひて爽やか童画展
【青木駿浪】

拾い来しクチアを飼いし少女の日
お隣の屋根猫の子育ちおり
セッカフロール金粉振りし引き出物
【サンパウロ 伊津野静】

花魁とも呼び妖艶な彼岸花
衛兵の馬肥え蹄の音高し
馬肥えて乗る衛兵の小さく見ゆ
【サンパウロ 猪野ミツエ】

薄紅葉古里の山々恋しかり
活ける手をのぞく掃除婦鬼芒
鉄の街裾広がりに鰯雲
【サンパウロ 田中保子】

百歳の天寿全う秋の葬
新調の地蔵の頭巾に散る一と葉
流し雛七つの海へ続く川
【サンパウロ 香山和栄】

珍しやジヤタイの蜂のの分封とは
町の子は蜂にさされて泣きにけり
初秋や子育て楽なブラジルは
【サントス 三上治子】

じっくりと見上げておりぬ木朝顔
秋高しこよなく愛す杖持つ手
町の辻湯気立ちのぼる茄ミーリョ
【サンパウロ 吉崎貞子】

冷やかや残り少なの髪を梳く
秋灯や長き便りを書き終えし
秋深き路となりたり犬と行く
【サンパウロ 畔柳道子】

冷やかな豆腐細目に掌に
茹でミーリョ少年時代の食べ競べ
一番のり診察室の冷やかに
【サンパウロ 秋元青峯】

百年の風化に耐えて生きて行く
鰯雲地平の果もミーリョ畑
一日を使ひ果して秋くるる
【サンパウロ 山田富子】

朝市のバンカに熟柿大安売り
老いて今熟柿を好む夫婦かな
【サンパウロ 矢島みどり】

無学の子働く国の花煙草
ブラジルの女早熟女性の日
勝組の流されし島秋の声
煙茸ふんで驚く狩りの犬
【樋口玄海児】

※ 選を終えて
今月は面白い句が多くあった。ブラジル季題が特に良かった。ブラジルに何十年も住んでおられるからブラジル季題は新しい句が出来る。なるべくブラジル季題で投句される事を望む。また投句数も十句ほどは欲しく選者としてお願い致します。


短歌 (選者=藤田朝壽)


豊かなる秋の花ばな数えつつ巡るジョキング幼稚園ぞい
サンバ踏み股をくぐらせタンバリン打っては跳ねて夜の明け知らず
【スザノ福栄会 青柳房治】

只一度ヘソの諸切って取り上げしコロノの赤子はいづこに生きる
遠目にも盛り上がり見ゆるパイネーラ紅き精もつ樹木豊けし
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

ギュッと目をつむりてパットと開くこと繰り返しして「まなこ体操」
おとなしくワープロ打ってる老いし夫駆け出すことき午年生れ
【スザノ福栄会 青柳ます】

頂きしダリヤ祭りの案内状娘と話し合い行くと決めたり
簡単で便利なものと改めて団扇の風に涼を楽しむ
【スザノ福栄会 原君子】

アメリカのコングレッソに行く娘孫と婿とをお供につれて
社命帯び日本の本社に行く婿を娘と見送るガルーリョス空港
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

サンパウロ市は市政四百五十九年東京は何年かしらと娘と語る
梅雨に堪え病いに勝ちし友見たしせめて電話で喜び告げん
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

フランポヤンかくも見事に咲くものか花をみあげてあきることなし
真向いのカンタレーラは遠かすみわがヴェランダに吹く風涼し
【セントロ桜会 上岡寿美子】

ガラス窓越しに見ゆる秋空すみわたり四月咲く花かおり豊けし
秋雨の止みたるあとの庭の辺につがいの蝶々たわむれてとぶ
【セントロ桜会 上田幸音】

「おばあちゃん気をつけてね」と帰りゆくわが背に孫は声かけくるる
菜の花の上に広がる大空はさえぎるものなくどこまでも青
【セントロ桜会 井本司都子】

九十歳に近き夫が二回目の手術なりせばひたすら祈る
老い夫の二度目の手術無事終えて医師は笑顔で親指立てる
【セントロ桜会 富樫苓子】

この年は天候不順がつづきいて老いんぼ健康管理にとまどう
季節感うすきブラジルの朝市に柿出はじめて初秋を知る
【セントロ桜会 鳥越歌子】

朝五時の枕時計のベルの音に起こされ今日の一日はじまる
初盆をむかえし友の仏壇におかれし写真はかの日の笑顔
【セントロ桜会 大志田良子】

身はたとえ異国の土になろうとも心は古里伊勢志摩にあり
道の辺の雑草のなか露草が色鮮やかにむれ咲きている
【セントロ桜会 板谷幸子】

貧しきはレストランにお願いし残飯で暮らし支えいるとぞ
期限間近きスーバ食品の安売りに貧しき人ら集まりてくる
入墨の元はインジオか現代は若き男女や子供までとは
耳かざり鼻やホッペタ・おへそまで安価なおしゃれで大流行なり
入墨はヤクザがすると思いしに今は若きらしてはばからず
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:最近は入墨が大流行である。私は昭和九年の渡伯だが、昔は入墨した人は見かけなかった。今は若きらして憚らずで、何とも嘆かわしい。)

月曜日の朝は同志で神想観、終われば庭で体操をする
赤々とどのバンカにも柿並べフエーラは秋はおとづれて来ぬ
老ふたりムーロ塗りかえ孫子待つ宵待草の花も咲き初む
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:神想観と詠まれてあるから生長の家の信者であることが解る。神想観が終って庭でみんなと元気溌剌とする体操にかぎりなき喜びがある。)

夫は九十三歳健やかなこの佳き日に孫子つどいて祝いくれたり
若き日の病苦も今は夢のごと九十三歳祝わる幸せ
歌好きでカラオケ会で若きらと楽しくすごす週末を待つ
カラオケへの送迎は嫁と娘にてやさしき子らに支えられ生く
【プ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:歌を詠みカラオケもやられる作者。カラオケへの送り迎えは嫁さんと娘さんが交替に。幸せな老後を送っておられることが解ります。老いてはかく有りたきもの。)

今もなお「もったいない」がぬけきれず子らの生活を見るたび思う
過ぎ去りし苦労を妻と話すとき今の幸せ身に沁みおもう
ブラジルに移住すすめし母上よ戦火に遭わず命ながらう
【ツッパン 上村秀雄】
(評:三首目佳品。若しあの時、反対して日本にとどまっていたなら恐らく戦地で悲惨なおもいをしたであろう。或いは戦死したかもしれない。此所ブラジルの地で子孫繁栄の基をつくることができたのは、母のお陰であると作者は感謝しているのである。)

豊作にめぐまれ此の地子らの国未来ゆたかになれと祈りぬ
故郷の肥後の山川眼裏に消えることなく老ゆるさみしさ
【セントロ桜会 星井文子】
(評:豊穣の地ブラジルは子らのふるさと、そして未来ゆたかになれと祈る作者は愛国の人。)

結婚して六十六年経ちにけりどこへ行くにもおしどり夫婦
日本への観光旅行四回も老後のふたりいつまで生きる
訪日し霊峰富士を仰ぐとき日本人たる喜びあふる
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:おしどり夫婦の喜びが単的に詠まれていて佳品。)

振り向かず糸もて走る子の後ろ凧少しづつ揚りそめたり
二百回磨りたる墨を真新しき筆にたっぷりつけて構えり
牛飼いの隣家は遠し草きざむモトールの音がこの朝きこゆ
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:凧揚げの少年をよく見ている。臨場感があって佳品。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


不器用で心足らずが世を拗ねる
認知症昔のことを繰り返し
まだ俺が胸を張れども無視される
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:過ぎた自己顕示は程々に―。後味の悪さと空虚さが残るだけ―。)

原点に戻ると母の顔が見え
生涯を賭けて一句へ挑む夢
見聞の広さで歩む詩の道
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:見聞を広め視野を深めることから話は生まれるもの。)

知る人の偉業新聞切り抜いて
リサイクルで見事な机が出来上り
リサイクルオリジナルより美しく
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:使い捨て時代からリサイクルへと時代は移り変わって行く―。)

ブラジルの威信をかけて呼ぶ五輪
集い来て友の訃報に静まる座
朝市の値上がり出るは金と愚痴
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:トマト一キロ十レアル、玉葱四レアルと、食材の一挙の値上がりは庶民を驚かせた。)

レクリェーション熟年達の若き顔
秋晴れの顔も晴れやか受賞式
原発の又の難問綱渡り
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:原発による難問は次から次へと後を絶たない。下五の表現、お見事。)

これからが思案しどころ八十路
老醜の字面見つめて小半日
深き恩今にして詫ぶ父母の墓
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:老いる程に父母への思いは深まってゆく―。)

今宵又思いははるか父母のこと
曲線美しばし見とれる老女かな
気い付けよ自分に何度も言い聞かせ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:転倒が後遺症となる場合が多い。足元には充分に気を付けて―。)

景勝地パラナピアカーバは霧の町
自転車道快走楽し日曜日
九州大卒えた孫へおめでとう
【セントロ桜会 中山実】
(評:学部、大学院合わせて約五千人の九州大学(福岡)の卒業式がいつかのサ紙に発表されていた。「九州大学出身であることに誇りを持ち、圧倒的な存在感を発揮してほしい」といった学長の言葉が印象的であった。)

見栄っぱり財布に寒い風が吹く
したたかな隣国ばかり日本領
好きですと言えずあけとく車間距離
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:この車間距離いつまで続くのだろうか。多分に危険性をともなう距離のようである。)

夏時間終わって得した一時間
悪防ぐ得策あれど口つぐむ
得々と駄弁で人を煙(けむ)に巻き
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:この手の話術に巻かれないように、要注意。)

使うことが大事ですよとポ語教師
熟ク連ありて幸せ足弾む
死ぬための延命治療で生かされる
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:死を前提とした延命治療の虚しさがただよう。)

いつまでもこの侭でほし可愛い子
悪いけど夫亡くして春が来た
停電中点いたら困ると眠られず
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】
(評:目が覚めてみたら家中の電気が点いていたということもあって、中々眠りにつけない。)

◎席題「熟年」 中西笑出題
熟年とよばれて見てもピンと来ず【実】
海女(あま)の母熟年なれど潜り見せ【余碌】
熟年と云われ抵抗まだ残る【余碌】
熟年と言えど中味まだ未熟【ふみ】
家事に趣味熟年なんと忙しい【ふみ】
熟年とよばれ鏡の顔見つめ【清子】
お前俺熟年過ぎて共白髪【清子】
熟年を過ぎて今老年とよばれ【富子】
熟年とよばれて嬉し高齢者【富子】
熟年の定義それぞれまだ若い【笑】
還暦を通り熟年の歩は確か【笑】


シルバー川柳(社団法人 全国有料老人ホーム協会「シルバー川柳」より)


早送りしたい女房の愚痴小言
【沢登清一郎・山梨・62歳】
自己紹介趣味と病気をひとつずつ
【北川賢二・大阪・52歳】
老い二人集金人にお茶を出す
【木村とし代・茨城・72歳】
良い医者を待合室で教えられ
【土方昭光・東京・76歳】
へそくりの場所を忘れて妻に聞く
【岡部美穂・東京・29歳】
景色よりトイレが気になる観光地
【坂本眞理子・埼玉・59歳】
老一人家電ブザーに返事をし
【森下悦夫・兵庫・73歳】
「こないだ」五十年前の話する
【大森千穂・大阪・43歳】
年重ねくしゃみするのも命がけ
【近郷元信・東京・23歳】


前のページへ / 上へ / 次のページへ

熟年クラブ連合会 :  
Rua. Dr.Siqueira Campos, 134, Liberdade, S?o Paulo, Cep:01509-020, São Paulo, Brasil
Tel: 11-3209-5935, Fax: 11-3208-0981, E-mail: Click here
© Copyright 2024 熟年クラブ連合会. All rights reserved.