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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年8月号

2013年8月号 (2013/08/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


色鳥に狭庭賑はふ昨日今日
老いし今侍ることなし椿寿の忌
衿巻に埋もれる笑顔白寿翁
九十九を祝はれ揚揚燗熱く
祝はれて意気揚揚と燗熱く
【伊津野静】
(評:この句五句。夫の九十九、いわば白寿の祝の句。朝民さん、私からもおめでとう。夫婦して白寿とは本当におめでたい。私のところに毎月欠かさず投句される。しかも、句が立派。これからも一年でも長生きをされて一移民のモデルになってもらいたい。)

茎曲がり花重そうに冬のバラ
切りし枝そのままに庭冬ざるる
冬ざるる広からぬ庭雑然と
白寿者の並ぶ舞台や冬ぬくし
冬ぬくし車椅子に読む表彰状
【伊津野朝民】
(評:三句、四句。白寿翁の表彰の様子が良く出た句。ブラジル移民も今は日本と同じく長生きになったと思う。生活が良くなった一つに医学の進歩があり、すべて良くなっている。ブラジルに長生きしてよかったと思える時代がそこに来ています。)

あれやこれイベント多き冬の日々
冬服を粋に装う娘たち
いかめしき瘤の出ている大冬木
犇きて重なり開く水芭蕉
温暖の国に住む幸冬うらら
【清水照子】
(評:二句目、老人から見たら今の若い者はと言いたくなるような服を着こなしている。これは娘ばかりでなく男の子もしかり。しかし、これがよく見ると様になっていない。日本の秋葉原に行ったらもっとひどく、日本人の体に合わない気がしてならない。)

天高しブラジル選手と国歌唄う
秋熱しインジオも参加抗議デモ
ほうれん草水栽培とか歯に優し
豊作や大豆カミニオン渋滞す
【清水もと子】
(評:三句目、ほうれん草の水耕栽培は聞いたことがない。ブラジルで早くも出ているのだろうか。私も一度食べてみたいものだ。)

熟年の恋清々し返り花
ムクインに中年夫婦の秘話珍話
冬至風呂初曾孫と卒寿翁
朝市に葉の美しき大根買ふ
【三原芥】
(評:一句目、返り花季とて面白い。また熟年の恋が私は知らないが返り花が時季外れの花で、狂い花とも云う。熟年の恋によく合う季語ではないだろうか。日本の俳句に「今の世も女男よ西鶴忌」という句もある。)

パパガイオ亡妻(つま)の言葉忘れずに
大粒を上に箱詰め冬いちご
リモン酒に酔うて寝(いね)たる老の風邪
日本の県ほどの耕地を甘蔗刈り
【佐々木古雪】
(評:四句目、ブラジルは広い国を思わせる句。アマゾン川の出口にあるマラジョー島は、日本の小さな県の大きさぐらいだと云われている。また、パンタナールは雨季には日本の県がすっぽり入る大きさになると云う。大きいことは素晴らしい。)

春の朝歌を流して洗車かな
玄関を洗い終えれば霧晴れし
ダム渡る遊覧船に春の蝶
ランニング一キロ伸ばし春隣り
【高尾けん一】

七夕に生れし息子髭生やし
凩や煮込みうどんの湯気飛ばす
ひとり居に犬の遠吠え虎落笛
【森川玲子】

母の日や明治の母に心置き
信念を崩さず春の夢ならん
明易しこれからの事考えし
【山田富子】

叔母姪にして同じ歳日向ぼこ
花鳥諷詠讃える余生日向ぼこ
牧場より木の芽風来る日向ぼこ
【栢野桂山】

手土産の手提に匂ふリンゴの香
歯切れ良き音立て孫のリンゴ食ぶ
オーブンを出る寒鯔の油鳴き
【松崎きそ子】

移住地や桜の花の返り咲き
七夕や乙女の願い多かりし
木莵や置物の如つくねんと
【秋元青峯】

落人の里の静けさ虎落笛
風呂吹の旨さに酒を過しけり
七夕に留学願ふ母娘して
【原口貴美子】

風呂吹きの大根煮る香や隣りまで
狂い掻くムクインつけ来し犬洗う
ケントンに隠し焼酎の味覚え
【野村康】

草の実をつけて牡猫戻りけり
カラオケのレッスン好調冬うらら
読み終えし耳がとらえし虎落笛
【畔柳道子】

朝冷えの木立に小鳥の声少な
寒き夜や煮込みうどんを夫所望
降りつづく夏思わせる冬の雨
【矢島みどり】

ウルブー舞ふ野のファベーラの診療所
頬被尻端折の似合ふ人
喜寿傘寿も交るコーラス冬うらら
【香山和栄】

ブラジルの春の旅先で見る黒人画
黒人の祭典老若カルナバル
永住し共に踊るやカルナバル
【三上治子】

風呂吹や馳走でありし開拓期
ビル建ちて窓まだ付かず虎落笛
虎落笛塀に巡らす電気線
【畠山てるえ】

シネマ館ピポカを買って恋みのる
パステスのよく売れメーデー集合所
日当ぼこ毛玉ひろいつ恙なし
【猪野ミツエ】

朝寒し読経の声くぐもりる
女王花の競演夢見つ秋肥やり
サントスに散骨せよと秋彼岸
【田中保子】

白菜蒔こか大根蒔こか迷いけり
天下知る如く話す人豊の秋
ユーカリの倒れ木に垂る冬苺
物騒な世に冬苺の花は白
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


腰伸ばし昭和の唄を口ずさむ今日も暮れゆく西空そめて
母の日に娘より届きし大輪のカトレア豊かに居間を彩る
カラオケの媼の民謡しみじみと聞きてしばらく拍手がやまず
【スザノ福栄会 青柳房治】

訪いきたる友がたずぬる庭の花思い出せない昨日聞きし名を
いっせいに咲きし黄色の鮮やかさ丘のなだりは新渡戸菊にて
群立ちて咲く酔蝶花のピンク水面に映りゆれる花かげ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

吾れ死なば廃品となる品々を後生大事としまいて居りぬ
今日はもう朔日なのかと驚きぬ日々の疾さについてはゆけず
卒寿まで杖に頼らず過ごししを謝しつつ今日の歌会に出づる
【スザノ福栄会 原君子】

寒々と冬の風吹く夕にて歌友(とも)の訃を聞き心しずみぬ
五日前笑って語りし友なるに突如の訃報に心みだるる
【セントロ桜会 上田幸音】

うら若き母に抱かるる幼子にしばし夢見るまだなき曾孫を
一人逝きまた一人去る歌の友こころもとなき吾らの歌会
【セントロ桜会 富樫苓子】

上岡さんの死亡の知らせに驚きぬあんなに元気な人が信じられない
耳そこに蝉のささやき残りいて木に乾きつつ落つる骸(なきがら)
【セントロ桜会 井本司都子】

名の知らぬ歩道の隅に紅き花手折りて帰る一輪ざしに
朝市に居並ぶ種々の果物の中に鮮やかな季節呼ぶ柿
【セントロ桜会 大志田良子】

独り住む友は一日に何回も今日は何日かとたずねくるあわれ
人はみな悲しさ持ちて生きてゆく老いてきたればなおさらの事
【セントロ桜会 板谷幸子】

皇太子御結婚記念二十周年のテレビなつかしパレードを見る
皇太子と美智子さまテニスの交流に忘れかねたる愛のめばえが
再三のプロポーズに美智子さまお悩みの末ことわられしと
お二人の愛の家庭が伝統をやぶりて新たな皇室づくり
【サントス伯寿会 三上治子】

戦なく天災もなき美(うま)し国に移住せしこと父母に感謝す
漬物を卸して歩く小母さんは割烹着姿でいつも清潔
シュシュ芽吹きカボチア座れる厨にて母の水仕はいつもゆっくり
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:第一首目の歌、準二世共通の思いの歌であり、ブラジル国を讃えて余すところがない。父母に感謝する想いが一首の中にこもっている。)

寡婦となりし三人の姉妹鉢植えに花など咲かせひっそりと住む
腕の良き洋服仕立屋年老いてひと苦労して針に糸通す
セン・アルコル缶のビールを飲む友は病いに勝てずピンガ止めしと
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:三人の姉妹がそろいも揃って夫を亡くされたとは、今は花を育てて生き甲斐としておられるさまがよくわかる。)

式典前祭り囃子の笛太鼓ふる里ここに今日移住祭
ほれぼれと聴衆酔わす平田歌手「島んちゅの宝」に拍手万雷
歌手唄い会場は沸き踊る生徒孫も跳ねるよソーランソーラン
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:三首目の歌、面白く詠まれていて、お孫さんの跳ねて踊っておられるさまがよくわかる。)

父母の念願だった里帰り実現出来ず我らが果す
訪日し父母の位牌の供をして我ら夫婦は旅をつづける
里帰り生まれし家に来て見ればイトコは家を建てかえており
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:父母が果せなかった訪日を実現した喜び。「父母の位牌の供をして」に孝心篤き池田氏の面目躍如たるものがある。)

待ちかねし雨をともない冬来たる重ね着すれば老い身重たし
外は雨家にこもれる日曜日老夫は机に書(ふみ)読みており
寒き夜は早目に熱き雑炊を夫婦で食(とう)べこころも温もる
南部都市この寒空に大洪水被災者に送る古着集める
【プ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:三首目佳。寒い冬の夜は熱い雑炊を食べて早寝するのが年老いた者には一番良い方法である。)

「旅の縁」三日のつきあい老ク会名残は尽きぬ故里のぬくもり
身延山岩水おちて谷間の小川せせらぎ流れゆく見る
この心いかに伝えむその昔(かみ)の恩師の行方誰も知らなく
ドラの音きこえてくるよわが耳に今もかすかに補聴器のおくで
苦労した笑って語れる友が居て今の幸せしみじみ思う
【ツッパン 上村秀雄】
(評:訪日して恩師の消息を訊いても誰も知らないと云う。そして行方も。氏の落膽のほどが察せられる。)

〔哀悼:「老壮の友」歌友上岡寿美子様(九十二歳)、六月二十八日逝去。此所に謹んで哀悼の意を表します。〕


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


お互いの主張譲らず物別れ
少しずつ譲れば世の中丸くなる
短冊にありがとうの文字爽やかに
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:心のこもった「ありがとう」の文字をのせた短冊が風に鳴っているようだ。爽やかな一句である。)

袈裟とれば僧侶も只の人となり
乾杯の前置き長いと嫌われる
力量が同じ相手と親しまれ
デモ騒ぎ世界に治安を疑われ
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:W杯、オリンピックの開催を控えるブラジルの乱雑な治安に、世界の不安な目が集まる。)

思い出す乗合自動車という時代
油断なり老いは突然姿消す
飲食が病いのもととなる平和
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:そう言えば粗衣粗食の時代に丈夫な人が多かったようですね。)

二、三世におはぎは無理にすすめない
サッカー戦夫と分かれる胸の内
若づくりそれでも席をゆずられる
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:席をゆずって上げるところまではゆかなかったようですね。それでいいのです。)

友の智恵かりてまとも世が開け
師の声を励みに句作の歩を刻む
抵抗を妥協に変えれば世は平和
価値観の違いを貰う銭の音
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:価値観の違いで銭の音もさまざまです。)

老いの身にひしひし迫る金づまり
ひとつずつけずり老いの身軽くする
足るを知りホーム暮らしに感謝して
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:いつに変わらぬ作者の穏和な姿勢に感動しました。心身ともに軽くしてご健康第一にお過ごし下さいますように―。)

奇跡です津波のあとに松一本
徳利なで今夜も酌んでる一人酒
万緑を浴びにひっそり旅にたつ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:大自然は孤独をも温かく包んでくれる。)

県連の日本祭りも国際化
笠戸丸海を渡って一〇五年
コンフェデ杯ブラジル世界のチャンピオン
【セントロ桜会 中山実】
(評:来年のW杯でも優勝して欲しいもの。)

吾が人生忍耐努力で今日があり
そよ風ときれいな空気に惚れた旅
浜辺風われを至福に誘い入れ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:青い海原と浜風は人々に活気を与えてくれる。)

散り急ぐ花びらに問う明日のこと
逝ってまで戒名というランク付け
昭和史の深き闇生き活かされる
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:戦時中の苦しい体験が、海外での困難を乗り越えさせてくれました。)

忘れること出来て苦しみ軽くなる
もの忘れ行ったり来たり家の中
吹きだまり作って風は通り過ぎ
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:吹きだまりから起ち上げてくれる追い風が必ず来ることを信じて―。)

素顔消す宣伝過多の化粧品
化粧など知らぬ素顔の美しさ
持ちたきは花の素顔の美しさ
【サンパウロ中央老壮会 峰村やす子】
(評:人それぞれに美しい花を持っているもの―。自意識にとらわれず、自らの花の美しさを発揮したいもの―。)


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