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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年9月号

2013年9月号 (2013/09/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


点々と峡に家あり花リッシャ
神の嶺連なる眺め山笑ふ
野火遠く野面を炎走りゆく
鳥籠を移す小枝も芽吹きたる
【青木駿浪】
(評:一句目、リッシャの花は川の流れに添って咲く。リッシャの木は水分が好きなのであろう。また、貧しい民は水の近くに住む。昔はボンバ(ポンプ)が無く、水の近くに住むのが便利だった。今でもその習慣が残る田舎町の風景をうまく描写できている。)

寒夕焼卒寿もうすぐ頑張ろう
ひこばえをかき分け取り出す野良弁当
父の日や遺影カリスに火酒みたし
吾が人生今が最高チャンチャンコ
【野村康】
(評:一句目、句の出来上がりが面白い。この人は毎日巡回る一日を楽しく待ち、また楽しく過ごしておられるように思われる。卒寿を待ちながら毎日毎日を今日が最高と思う。このような気持ちを誰でも持ちたいものである。このような句は選者もうれしいです。)

寒夕焼薄れし後の一番星
腰かけし石のぬくもり冬日濃し
立ち上りたる冬波の蒼く透く
【山田富子】
(評:二句目、腰かけた石が温かかっただけの句であるが、何でもないことを句にした手柄。)

国ぶりの大らかメーデー日和かな
南吹く根性すえて体操に
木の葉髪似たよな愚痴をこぼし合ひ
【猪野ミツエ】

お茶飲みに四温を待って繰り出しぬ
ガラス越しにキスし合って恋人の日
木枯しや店閉じ北へ帰るという
【田中保子】

落葉掃く九十九才の日課なり
寒椿蕾ころころ箒先
よろけては箒で支え落葉掃く
【伊津野朝民】

猪口の縁いささか光り灯
蘭の秋大輪に見し憂いかな
ジャカランダ落花を踏んで行く香り
【伊津野静】

寒紅やあの娘の目元凛として
ちゃんちゃんこ着てはしゃぎおり異人嫁
スーパーで久しの出逢い日脚伸ぶ
【秋元青峯】

カラオケに寒紅つけていそいそと
ちゃんちゃんこ寒にまけてなるものか
帰り道やはり淋し寒夕焼
【荒田田鶴子】

目覚めよくベッドの体操四温かな
寒紅を少し濃くさし老人会
日脚伸ぶ一冊読める文庫本
【森川玲子】

こちら町向かふ連山寒夕焼
下町の御近所親しねずみもち
寄り道の歩行専用日脚伸ぶ
【畠山てるえ】

野沢菜漬弓場の甘味噌あれば足り
ポ語会話八十路の学習うららかに
校庭を耕やし男爵薯植えし
【香山和栄】

雨予報外れ幸せ日本祭
祭終え寒波南部に雪降らせ
寒さにもめげず老等はカラオケえ
【矢島みどり】

日脚伸ぶ閑びと達の立ち話
日脚伸ぶやらねばならぬ事多し
ジャズミン茶作れそうなるねずみもち
【纐纈喜月】

何鳥ぞ蟻塚に立つ霧の朝
結婚を速がぬ娘柿紅葉
鉄道は昔のままよ柿紅葉
【高尾けん一】

富士の山世界の遺産仲間入り
いただきに雪のせ富士は美しき
七夕や願ひいっぱいたんざくに
【三上治子】

イツー路石山多し冬日大
尾を立てて猫の闊歩や園うらら
コーヒ道路大豆道路冬日大
犬猫も長生きの世や日脚伸ぶ
春隣り鹿の親仔の住む森に
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


この冬は逝きし人多し吾がめぐりの知人も幾人か天界にあり
歩巾また小さくなりし吾が歩み舗道の凸凹いたく気になる
好々爺も水ぱなの出る年となり孫の作りし昼飯を食う
【スザノ福栄会 青柳房治】

ブラジルに六十年住み日本に応援するかと子の声きびし
朝寒むのポルトン近き潦水(にわたずみ)浴ぶ小鳥を首ちぢめ見る
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

ぜいたくも節約もせぬ暮らしにて月々の年金有難く受く
朝五時過ぎ後架に行くがきまりにて便秘も下痢もこの頃知らず
ブラジルに移住してより六十年この七月は結婚記念日
【スザノ福栄会 青柳ます】

あれこれと健康療法耳にしてためしてガッテン卒寿迎うる
朝起きの苦手な吾はカーマにて自己流体操約二十分
留守居して娘にも話せぬしくじりを短歌に詠みて独りほほ笑む
【スザノ福栄会 原君子】

サントスの厚生ホーム訪れて船あそびまでして帰りたり
その昔は九十九折道今はこの長きトンネルくぐれば港
年毎にサントス港も変りきて出船入船なつかしく見る
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

脚病めばバスの乗り降りに人手かる老いたる我は只に感謝す
「大地の子」をDVDに視つつ終戦時の邦人の苦労忍ばる
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

ながらえる命尊く喜ぶも友逝きし知らせに心乱るる
寝床にて祖国のニュース聞きおれば夜と昼まちがえ子らに笑わる
【セントロ桜会 上田幸音】

ブラジルの冬には稀なる寒さ来てちまたの人々着ぶくれており
女にはのがれられない水仕事寒さにめげず二の腕まくる
【セントロ桜会 富樫苓子】

夕焼けに染まりて空は暮れてゆく明日という日のあるを約して
七つ八つ蕾をつけてカニサボテン珍しき花を咲かせてくれむ
【セントロ桜会 井本司都子】

突然の上岡さんの訃報聞きおどろき悲しみ呆然として
過ぎし日の忘れられない悔しさがまたよみがえり今宵眠れず
【セントロ桜会 板谷幸子】

祖国ではどこでも見かける地蔵様熟連会の庭隅に在り
冬が来て熟連会の地蔵さん赤き帽子で寒さを凌ぐ
【セントロ桜会 大志田良子】

白鵬の全勝を阻みし稀勢の里こたびは負け越しすべてご破算
三寒を凌ぎ四温の来るを待つ大陸性気候と思いて暮らす
朝ぼらけ南十字がまだ見えるスポーツセンターを主人と歩く
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:夫とふたりで運動のため散歩していると南十字星が光って見える。「まだ見えるスポーツセンターを主人と歩く」と詠みおさめたので味わいの深い作品となった。)

金子さん大事な辞典をお借りしたお蔭で短歌を出せる喜び
年老いて頭つかえばボケないと会員はげまし例会続ける
半生は仕事子育てひまがなく文協老クいまだ現役
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:ものを書く時、辞典は机上に欠かすことはできない。その辞典を友人から借りて歌をまとめることができたのである。口語短歌佳品といいたい。)

邦人のまれなる街に茶托あり思い出に買う旅のつれづれ
潮風にハイビスカスの花の色鮮やかに咲くマセイオの旅
【セントロ桜会 星井文子】
(評:二首ともよくまとまった作品。一首目、田舎町で思いがけなく求めた茶托はいまも愛用されていることでしょう。「思い出に買う旅のつれづれ」で詩情の深い作品となった。)

気がかりし雨の予報も外れたり日本祭り盛大に終わる
郷土食それぞれ食べたく思えども身の不自由にそれも叶わず
祭り終え寒波は雨をともないて南部は雪降り銀世界という
寒波来仕舞いし布団とり出せば去年の夏陽のぬくもりのあり
外は雨重ね着の老の身いたわりてお雑煮つくり夫と食(とう)べぬ
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:第一首目、日本祭の日は誰しも天候のことを心配する。雨の予報が外れたお蔭で今年の日本祭りも盛大のうちに終わることができた。まずは目出度し、目出度しである。)

サントスの夜汽車に乗って一昼夜着いた耕地はモヂアナ終点
あこがれのブラジル国の大耕地イタリア移民があまた居たりき
神戸港見おくる歌に送られて別れのあの日が移民の花道
戦争に征かずにこの地で生き伸びて同窓会で戦地談きく
【ツッパン 上村秀雄】

ブラジルの国旗が示す「秩序と進歩」為政者達は肝に銘ぜよ
自然環境年ごとわるく天災も多くなりしとこの頃おもう
【レジストロ春秋会 小野浮雲】

貧乏も努力と勤勉倹約で追い拂いたる昔を思う
ボロ布も使われている間は使命あり昔も結構ゆたかな暮らし
ホームレスきびしい寒波雨の冷え苦しみのがれあの世への旅
うらない師顔にあらわる人のさが見てうらなえり当たるも八卦
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:寒波来て今月は残念ながら低調です。このことは三上さんだけでなく、多くの歌詠み人も同様で暖かくなって来たら佳い歌が作れます。頑張って下さい。いつも歌稿によせてご消息をお知らせいただき嬉しく思っております。お体にお気を付けられてお暮らし下さい。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


揺るぎない心を育ててくれた国
働ける汗に感謝できる幸
パパ迎え無事でと祈る国の性
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:ユースデー〔世界青年の日〕が三五〇万余の巡礼者の中で無事に終了されたことは何よりであった。パパ・フランシスコの人徳の顕れとの見方も多い。)

足かせにならぬ長生き百までも
長生きはしたくないよと医者通い
幸せは金では買えず足で買う
【サンパウロ鶴亀会 宇野博】
(評:老化現象は足からと言われる。下語の表現力お見事です。)

コロニアはみなツーツよ大家族
ごくろうさんその一言に癒やされる
子育ての頃の写真はやせていた
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:ゆるがせぬ未来に向かって心身ともに燃えていた時代でした。)

忘れてはならぬ祖国の原爆忌
父の日の孝行息子に夫笑顔
八月や祖国はヒートアイランド
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:今夏の日本の猛暑は厳しい。四十度を超える地点もあって、熱中症患者も1万人を超えるという。)

ボランティア大事な人生つみ重ね
もういいよ迎えに来てよと祈る老い
子沢山上から順ぐり親助け
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:沢山の子供を育てた甲斐がありました。幸せな老後を過ごされますように―。)

廻りくどい話半ばで嫌気さし
見て見ない振りして気持ち落ちつかず
見過ごしは出来ぬと老いが顔利かせ
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:この時こそ年の功の見せどころ。老いの顔が物言う時である。)

着ぶくれて心静かに温める
冬しぐれ心身ともに冬しぐれ
手を合わすだけで心の和み知る
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:少し言葉を入れ替えました。参考になさって下さい。)

メキシコは世界一のデブの国
模範です卒寿すぎで惚けぬ人
長寿者増えて年金先細る
【セントロ桜会 中山実】
(評:少子高齢化による年金の減少は免れない。)

孤独死は話相手のない暮らし
旅をする度に最後と又出かけ
トップの座部下の我慢が支えてる
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】

野良犬の住みつくまでのしたたかさ
いつまでも若いつもりが裏目に出
変革の時代にふさわし新法王
【サンパウロ中央老壮会 峰村やす子】

孫の相手言葉通ぜぬもどかしさ
相手には左右されない自我を持ち
めんどう見よくて世話役うってつけ
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】

人生は人をやさしく生かすこと
語らいの相手の笑顔疲れ取り
夫素顔わたしも素顔でよい夫婦
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

◎席題「泳ぐ」 宇野博出題
政界を後ろで操り泳ぐ奴【ふみ】
浮き沈み人生航路泳ぎ切る【ふみ】
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