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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年10月号

2013年10月号 (2013/10/12) 俳句 (選者=樋口玄海児)


我が人生今が一番チャンチャンコ
西よりの雲ひろがりて寒夕焼
毛皮着る綿よりかるくなりたくて
沈丁花帰りはいつも暗くなる
先に行く人待ちくるる春の風
【山田富子】
(評:この作者は九十歳近いのではないだろうか。その上、足が少し不自由であるが、気が若く明るい。その気分からこの句が出来上がったと思う。卒寿近くで今が人生最高と言っている。仏教の言葉で言えば、悟りの境地。今の人生を大事にしてください。)

早蕨は灰被りして黒き野に
買い主の知らぬ焼野に蕨がり
早蕨に湿りの雨の届きたり
イペー咲く学校へ子を送る母
【高尾ケン一】
(評:一句目、一番蕨(わらび)はまだ小さい。その上、乾季の続く野では野火の通りし後だろうか、灰被った蕨。日本人である彼はそれを取る。初蕨はやはり新鮮である。四句目、八月にイペー咲く学校へ子を送る母。このような句は何でもない句であるが、なかなかできない自然の姿をそのまま句にした良さがある。)

吾が頭より毬の大きな七変化
黄ばみたるパルミット椰子の葉春旱り
句仇のアマゾン吟詠流石なり
紫より白が旨しとブド摘む
【三原春風】
(評:一句目、ブラジルでは大きなアジサイはあまり見ないが、人の頭より大きな七変化。見た瞬間できたベテランの句。)

停電で夜の寒さの増しにけり
合格の声が寒を忘れけり
友が来て冬のサーラを賑やかに
コーヒー飲み干して四温の街に出る
【畔柳道子】
(評:二句目、合格の声で寒さが一変した人の気の変わりを捉えた一句。良くできている。四句目、これも気持ちを表してできた句。その時の動きを作る句は難しいが、出来上がると面白い。)

牛の群れ牧に拡がる草若葉
研ぐ流れ鍬鎌斧や水温む
一腹の仔豚あそべる春の泥
日本語で仔犬を叱り春うらら
【森川玲子】
(評:一句目、広い牧に数百の牛が散って行く姿をよく写生されている。しかも、草若葉の牧にである。季がよく出ている。)

一と雨に馬の嘶き草若葉
茗荷竹日毎見に行く伸び具合
韮摘みて一人の昼の玉子とじ
ポ語言えば日語で返事街のどか
【畠山てるえ】
(評:一句目、気持ちの良い写生句。乾季中、久しぶりの雨に馬も喜び嘶いた。牧も良い雨であったろう。三句目、一人昼飯、韮摘んで簡単にすましたところを句にした手柄は見事。)

並木道花ユーカリの香のほのか
書展観て何やら楽し春の風
はだか木に造花一輪春の風
【伊津野静】

動かねば寒しと腰を叩きつつ
風穴を開けてラッタの中焚火
冬の蘭貧しき庭の花化粧
【伊津野朝民】

強東風にしろがね色の拓士眉
安穏にお西お東鐘おぼろ
熟年の音楽体操囀れる
【香山和栄】

料理人福神漬に春野菜
干野菜甘味もまして別料理
玉子みそぢいちゃん好物木の芽和
【三上治子】

大粒の星の宿りて木芽時
花鳥諷詠讃える余生朝寝して
逆さまの漢字のシャツやカーナバル
【栢野桂山】

素心花の花待ち顔の庭なりし
少女期を思い出させる月おぼろ
おぼろ月亡き父母に語りかけ
【矢野恵美子】

別れ霜畑を見に行く老ひし父
朧月今夜は美し町景色
茗荷竹今日は酢味噌でいただこう
【荒田田鶴子】

春愁やお見合しても嫁がぬ娘
仲人の謡の特訓春の宵
茗荷竹漬しを肴に佳句生まる
【野村康】

蜂鳥の番で来たりヒヤシンス
春蘭展一きわ目を引く胡蝶蘭
大声で子等の遊びや草若葉
【原口貴美子】

三寒の戻りの来し空あおぎけり
元気良きベンテビーや今日は晴
うすれ行く目を労わり青き踏む
【矢島みどり】

老妻と手をつなぎ行く坂の道
夏めけばアイスの店に人並ぶ
【佐川のり】

兵士の日祖国の護り双肩に
国旗着てブラジル人は意気高し
鳥が啼く樹を伐るなよとみどりの日
【田中保子】

車前草の鞭の太さに驚かれ
畑乾季夜に働く蟻増えし
百姓に迷いが多し畑乾季
茗荷竹刺身のツマに添えてあり
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


老いの身がかく祝わるる敬老日ありがたきかな今日のうたげは
大学了え就職せし孫初給にてわれに歌帳を買いてくれたり
柿の穂を接ぎて余生の夢捨てず八十三歳一歩踏み出す
【スザノ福栄会 青柳房治】

目に見えて日の長くなりうれしさに伸びし庭木の剪定をなす
野沢菜漬郷土祭りで買って来て塩のかげんを賞めていただく
とつぜんにウズラ鳴きたりわが庭におとづれて来しつがいのまらうど
【スザノ福栄会 寺尾芳子】

月に一度散髪に行く老い夫と寿司屋によりてサシミいただく
ブラジルの魁聖五勝の大角力朝のテレビに拍手を送る
アロエはくすりいらずと人の言う出ものはれもの何にでも塗る
【スザノ福栄会 青柳ます】

母のこと家のことなど弟妹と語ればなつかし昔おもわる
いつしかに母の忌日がめぐり来て親族集う冬の一日
金婚式旧い知人の祝宴は可愛ゆき孫らの集いて賑わう
【スザノ福栄会 杉本鶴代】

昼寝せる孫に添い寝のひと時も子守の役目と婿は安らぐ
この寒さ予想外にて友案じ電話かければ「今日はカラオケ」
いただきし友の料理の名を忘れクスクス笑ってふと思い出す
【スザノ福栄会 原君子】

脚病めば場内の広さを思い出で諦めたりき日本祭りを
はやりなら嗤いもならず若き等の顔のピアスに吐息の出づる
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

病み臥せる吾のカーマの脇に寝る犬は時どき顔あげて見る
臥す部屋の窓のガラス戸音たてて雨のくるらし緑葉ゆるる
【セントロ桜会 上田幸音】

吾が影を踏みつつ歩む朝の道日は昇れどもまだまだ寒し
赤々と南天の実はひとり居の広きサーラに輝き添える
【セントロ桜会 井本司都子】

英国へ留学をする内孫の門出を祝い健康を祈る
御先祖の五十年忌はめでたきと亡母は言いいし家族で修す
【セントロ桜会 富樫苓子】

ブラジルに移り住みつき半世紀東北生まれもこの冬寒し
夫臥して月日は逝きて早三年看取りぐらしも板につきたり
【セントロ桜会 大志田良子】

とまどえる横断歩道を車とめ渡してくれたやさしい青年
年老いて吾がみずからの体臭に在りし日の祖母よみがえりくる
【セントロ桜会 板谷幸子】

欠かすなくラジオ体操に参加して今日も一日をさわやかにあり
溌剌とリベルダーデ音頭おどる輪にブラジル娘も幾人かいる
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

竹と紙で作りし傘を思い出す日本踊りも和洋折衷
啼き交すサビアの声の甲高く繁殖期なればひたすらにして
よりよきは遠き道なり習いそめし書道に心を致す毎日
【セントロ桜会 寺田雪江】

終戦の日わたしは十歳分散教育で児童仲間と藁草履あむ
九条もデモクラシーも学びし日は遠く六十八回の終戦日来たる
星空に留学の孫を祈るなりイングランドに慣れたとメール
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:終戦の日、学友らと共に自分の履く草履を作っていたとは何とも痛ましい。このような事は二度とあってはならない。)

待ちかねし今日の佳き日よ胸熱く孫の花嫁の入場を待つ
純白の花嫁衣装に身を包み女のしあわせ今入場す
愛深き父母に恵まれ新カップル永久に幸あれ父母のごとくに
三寒のもどりて寒き昨日今日かさね着をして作歌に励む
【プ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:孫は子よりも可愛いと言う。孫の結婚式の会場に入場する花嫁を見て祖母の喜びは如何ばかりか―。)

誕生日卒寿の祝い子供らが祝いてくるる今日のよろこび
会場はブラジル銀行のクルービで招待客は満ち溢れたり
ダイヤ婚六年前に盛大に二年前には米寿の祝いを
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:誕生日を祝う。それも伯銀のクルービで催されたとは何とも豪儀である。シュラスコ用の牛は何頭屠られたか。バレットス市の名士をはじめ、知人はひとしく氏の誕生日を心から祝われたことと思う。氏の幅広い活躍のほどが解る歌。)

ガラス窓越しに見えくる起重機は大型のビル建設途上
ブラジルは地震の無い国古い家に不平も言わず住む人多し
黒人系港で働く仕事あり子らも明るく元気で育つ
降霜のなきサントスも風冷たく軽くてぬくい上衣身に付く
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:三首目の歌、サントスの港で働く黒人は沖仲士なのであろう。自分の身に合った職場で働けるということは何よりの幸せである。父親が働くお蔭で子供らも明るく育つことができるのだ。作者はあたたかい目でみているのだ。)

サンパウロの冬空晴れて和太鼓の音いさましき日本祭
亡き妻の写真を胸のポケットに日本まつりのコーナー見てゆく
日本まつり了えて安堵すサンパウロ今日は朝より雨となりたり
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


無口ゆえ腹の据わりし人に見え
感情を抑え相手の機嫌とる
長生きの兆しと難聴慰める
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】

大相撲外人力士で場を飾る
移民祭草分け移民の顔が減り
趣味に汗ながす余生にある至福
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】

総入れ歯やっと馴染んで食文化
鍬の先まとう野鳥のひな拾う
趣味の会いずこも多い寡婦の花
【インダイアツーバ親和会 早川正満】

不況風塵芥街路に吹き溜り
川柳一すじ己が心の道しるべ
煙り立つ火元探している噂
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】

役に立つうちは品にもある命
呆けぬうち迎えが欲しい老いごころ
仕事遅れみんな政治のせいにする
【サントス伯寿会 三上治子】

ほどほどの元気で長生きしてみたい
短足の父に息子の長い足
東京に決まりし五輪に湧く故国
一抹の不安も残るオリンピック
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】

サッカー国さすが見事な足さばき
凡人も長生きすれば表彰台
移り来て苦楽七坂共白髪
【サンパウロ中央老壮会 しんかわ】

ぴったりのジーンズ脚腰きつかろう
足の爪切るにお腹がじゃまになり
長く生き日本の行く末見つめたい
【サンパウロ中央老壮会 上原玲子】

健康過信足腰一挙に弱くなり
百までも生きてと孫等の応援歌
無病息災そんな長生きしたいもの
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】

長生きも足手まといにならぬよう
心身を軽く人生歩みたい
和菓子食べお茶飲むだけの女性の会
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】

頼もしい話し相手は同世代
命ある限り笑顔で生きていく
長生きの遺伝子もらい祖に感謝
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】

足跡を歴史に刻み移民老い
長寿の秘訣きく耳そば立てる
素足から大地のパワー吸い上げる
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】

大自然愛するものを裏切らず
生き方の上手を母に見るめぐみ
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】

痛む足庇いつ登る老いの坂
長生きがそろそろ気になる周囲の目
ペットにも保険をかける世となりぬ
【サンパウロ中央老壮会 峰村やす子】

ブラジルのシルバ柔道で金メダル
ボクシング山中選手が世界一(バンタム級)
亀田兄弟ボクシング王者で名を上げる
【セントロ桜会 中山実】


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