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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2013年11月号

2013年11月号 (2013/11/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


くせつきし柵抜け牛に草青む
牛のダニ食う鳥ふえて春浅し
一人居の気楽ぐせなる朝寝かな
村おこし山菜其の他蓬餅
【中川千江子】
(評:二句目、牛のダニを食べる鳥はおそらくアヌーであろう。この鳥は動作が鈍く牛の背に止まっては牛のダニなど食べる。牛もそれを待っている様に静かにしている。共存共栄している牛と鳥。世の中うまく出来ている。)

春風に背筋まっすぐ一万歩
低く舞ふ蝶追いかける三輪車
川亘り国道またぎ野火走る
囀を持つ樹に斧打つや木芽山
【森川玲子】
(評:一句目、健康に注意している人皆、姿勢もよく、また歩くのにも注意しているであろう。それでも一万歩は大変でしょう。己の体に合うように歩いて下さい。)

頬被りよく似合ふ娘と立ち話
実か花か知らねど赤し庭うらら
街路樹の皮なき幹や春寒し
蘇る一病冬の雨今日も
【伊津野朝民】
(評:頬被りした娘。ただそれだけの句だが、何となく親しみがある。頬被りが話を弾ませてくれた。老いには有難かった温かみのある句である。)

奥ノロはおうかた白牛牧青む
リベーラの茶摘茶揉みの今いかに
シャボン玉此の空未来に置したし
篁(たかむら)の吹かれもだええし春の風
【佐々木古雪】
(評:三句目、最近進んだ国で空気が汚れて夜の星さえ見えないことを嘆いた句。まだまだブラジルは美しい空気でしょう。その美しい空を未来に残したい気持ち、よく分かります。)

花展に砂漠のバラというを見し
此のあたりケイシヤダ住み蒲枯子
母の日や形見のコート着て句坐に
満月に虹が見事なセッチケーダ
【鈴木美和子】
(評:一句目、花展でふと見ると、変った花に出合った。名を聞いたら、「砂漠のバラ」というので、変わった名だと思い、頭に残ったのがそのまま句になった面白い句である。)

アバカテも栗も実生や樹木の日
異人嫁今じゃおはこよ木の芽和え
飴色もありて艶めく木の芽山
ばあちゃんがカラオケ一等春の風
【野村康】
(評:一句目、アバカテが実生とは知っていたが栗が実生とは知らなかった。しかし、アバカテの実生はあまり美味しいとは思えない。果たして栗は…。)

小走りに走る児を追い青き踏む
春深む薬を頼る身のかなし
見はるかすミナス連山遠霞
焼いて食う足長蜂の子は旨し
【纐纈喜月】

朝日浴び熟年ダンス百千鳥
風光る百年地蔵の赤頭巾
黒母の日肌色違ふ乳兄弟
【香山和栄】

信篤く濯ぎて寡黙黒母の日
横門も開放されて彼岸墓地
五弁なるラッパ裳裾の暮鐘花
【猪野ミツエ】

朝ごとの楽しみ朝顔の数かぞえ
老犬と老婆の端居日暮まで
夕端居犬の年令(とし)など数えけり
【田中保子】

三寒の戻り小雨の日曜日
三寒のカラオケ会の汗粉かな
アツアツのミルクコーヒー寒の朝
【矢島みどり】

春塵や積まれしままの週刊誌
若き等のはずむ歩調へ風光る
ボーロ焼く匂ひが流れ木の芽風
【畔柳道子】

犬猫のをらぬ吾が庭雀の子
野火避けてなれぬ山径下校の子
薄縁くれないもあり木の芽山
【畠山てるえ】

病癒え散歩にハミング春の風
名刹の寺領にやさし春の風
古里を望めば遠く木芽山
【原口貴美子】

大胆に崩るることも白牡丹
せせらぎの音とは心まで涼しかな
夏おでん大根たまごすわっている
【山田富子】

春の風たのしく今日も散歩かな
小鳥の巣今朝もひな鳥にぎやかに
散歩道みわたすかぎり木の芽山
【荒田田鶴子】

古希すぎてそれから夢語る春
紫イペー散り敷く雨の降り歩まず
門少し軋みて開くる霧の中
【長谷川ふみお】

日本に咲かせて見たしジャカランダ
遠目には桜と見ゆる桃イペー
こどもの日ささやかな婆ちゃんの味御飯
【矢島みどり】

車椅子残して逝けり菊枯るる
春告げる雷一つ轟きぬ
食足りて肥満対策山笑う
【清水もと子】

園サビア鳴かぬ日多き淋しさよ
サビアーの録音テープしやがれ声
園サビア春暁の声澄める
【伊津野静】

伏目なる佛間の如来春彼岸
春惜しむ余韻の長し寺の鐘
鴉鳴く春あけぼのの整地畑
【青木駿浪】

囀りの森に囲まれ吾が畑
マンゴの畑に恵みの一番雨
州境や野宿の牛に一番雨
州境の彼の農園草を焼く
山の霧白し石割の花赤し
ジャブチカーバ幹見えぬほど実を付けし
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


老人の忘年会は意気高しマイク手にとり次々唄う
来し方を悔むなかれと妻に言いブラジルに生きて五十五年過ぐ
糧飯(かてめし)を食みて戦後を生きのびし八十四歳の誕生日くる
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:老人といえど九十歳初期の方でも意気軒昂な方が多いのは何といっても有難い。「マイク手にとり次々唄う」がこの作品を生かしている。)

イペランジャは住みよき町かまた一人バス停横に乞食陣どる
ヘリコプター二機が爆音あげて行く不穏な想いに老は駆られる
亡き夫の部屋のカレンダーの「朝青龍」六年経ても取り組みている
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:乞食も風の便りで貰いの多い所は分かると見え、バス停横にまた一人陣どった。縄張り争いも無いようだ。乞食が来るのはイペランジャの豊かな証拠だと作者は割り切って見ている。)

母乳のみで育てし四人の子らはみな家庭をもちてわが近く住む
日本語をあまり話さぬ孫といてもの問えばポ語の返事がかえる
別れには涙も見せず笑顔にて手を振りくれし母はいま亡し
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:母乳のみで育てたと云う事は母親が丈夫であった証拠。四人の子はそれぞれ家庭をもって同じ街で暮している。これだけでも親にとっては幸せである。)

一歳に満たぬ曾孫が欲しきもの手まね身ぶりの仕草で示す
農止めてアパート住まいとなりし友退屈ならずや日々いかにいる
購いし花も良けれど培いし庭の草花活くるは楽し
【スザノ福栄会 原君子】
(評:離農して街でアパート生活に入った友を案じる歌。三句切れにし、一句で日々いかに居ると現在型で止めたので力強い歌となった。)

「夏ですね」吾が臥す部屋の窓あけて娘は風を入れてくるるよ
さずかりし長寿は子供らの喜びと婿はやさしく言いてくるるも
【セントロ桜会 上田幸音】
(評:上田さんは確か九十六歳。病床にあっても欠かすことなく歌を寄せて頂く事は感謝に堪えない。お母さんが長生きしていただくので、皆喜んで居ると婿に言われてどんなにか嬉しかったことでしょう。)

まだ少し夢があるから朝覚めて楽しいことを模索している
今日はまだ帰りが早いまわり道してメルカードで買物をする
【セントロ桜会 井本司都子】
(評:年老いても夢を持たねばならない。夢のない人生は死を待っているに過ぎない。作者は朝目覚め今は読書かそれとも歌を作ろうかといろいろと考えているのだ。)

うから等の起き出る前にコーヒーを淹れてゆっくりひとり味わう
久々に聞く雷の音小気味よくこれが春雷と云うものなるか
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:家族の起き出す前にコーヒーを淹れてゆっくり味わう。私の淹れたコーヒーはやっぱり甘いと満足している作者。)

若き頃は自転車の前後に甥と姪を乗せて通いしをふと思い出す
つつがなく吾の迎えし誕生日シクラメンの花を娘がくるる
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:元気で今年も誕生日を迎える事ができた。お祝いに娘がくれたシクラメンの花をながめて喜びをかみしめている。)

思い出せば悔しさだけが甦えるならぬ堪忍するが堪忍
老の身に明日はあるのかわれ一人考えつづく今日この日頃
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:思い出すとあの時ほど悔しかった事はなかったが、反抗せず黙って過したのはよかったと反省しているのだ。下句既成語だけれどよく効いている。)

単調な打楽の音色うつくしと独り聞きいる午(ひる)のテレビに
熟年の集いに行けば展示せる活花みごとわが足とまる
【セントロ桜会 星井文子】
(評:二首ともよくまとまった歌。)

有明海は海苔の養殖日本一映像に見つつ古里偲ぶ
入試発表有明海に陽は昇る心おどらせ校内に入る
花祭りに買い来し球根アマリリス舌出すごとく鉢に芽吹けり
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:有明海は確か九州にあると思い地図を見ると、大牟田市、柳川市の前にある内海と分かった。工場地帯でないので海水が汚染されていない良質の海苔が採れるのである。テレビで見て久しぶりに古里を偲んでいる。懐かしさで胸がいっぱいになった事と思う。)

四温晴れ今日は軽装でさわやかに街行く人ら足どりかろし
三寒は去り夏日めく四温晴れ木立の小鳥ら囀り高し
昨日はコート今日は袖なし目まぐるし変る気温に老いは戸惑う
老友の転倒骨折入院と聞くだに痛まし三寒の日に
【プ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:ブラジルの三寒四温には老いるに従って堪えがたい。昨日はコート今日は袖なしとは巧みな表現。)

吾が母は盗みをするな嘘つくな正直であれと厳しく育てし
吾が妻は結婚以来健康で六十六年病いを知らず
吾が家は十一人の子福者で落伍者もなく益々栄え
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:母の教えは尊い。儒教教育と教育勅語の賜物と言いたい。それにしても氏は十一の子福者とは驚きである。一家繁昌子孫繁栄善哉善哉。)

初期移民が基礎を築きて百年後日系コロニア益々栄え
コーヒー園牧場を走る汽車の煙り今は見られず電車が通る
父の日はビールで乾杯妻の酌孫子がうたう至福の日なり
再生林の道沿いにある南瓜畑野ウサギが来て花かぢりいる
毎月の「老壮の友」に載る友の秀れし歌を読むときうれし
足の爪切らせば娘の黒髪が目の前にあり白髪まじる
【ツッパン 上村秀雄】
(評:四首目の再生林の歌佳品。南瓜の花を野ウサギが来て食べる。野ウサギにとってカボチャの花は最上の御馳走なのである。ウサギがカボチャの花をかぢって食べているさまが目に見えるようだ。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


東京五輪被災地にも希望湧き
懸命に生きた生涯輝いて
足跡を残し惜しまれ旅立ちし
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:数々の貴重な足跡を残した下さった方でした。謝恩の意を込めてご冥福を祈りましょう。)

人守る自然の破壊は許せない
物上がりなぜに上らぬ給料は
アメリカの経済悪化に世界揺れ
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:債務上限引き上げ問題でオバマ大統領と共和党の対立は深刻化。世界の経済情勢が揺れ始めている。)

ババの呼び名に子守かと聞く孫の友
セルラールメールも持たぬ生き化石
引っ越しに漬け物石もついてくる
【サンパウロ中央老壮会 大塚弥生】
(評:使い慣れた漬け物石はお勝手に欠かせない大切な道具の一つでした。)

七十五才県人会で祝いくれ
敬老会うやまわれている私達
移民船で持ち来しミシンの良き響き
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:暮らしの一端をさりげなく詠んだ佳句。下語の「響き」が秀でている。)

孫娘好きな猫にキッスして
レスリング大和なでしこ金メダル
二〇二〇年東京五輪待ち遠し
【セントロ桜会 中山実】
(評:七年先となる東京オリンピック。見事に達成して欲しいですね。

物乞いにやらぬ心を見すかされ
不況風突然寒さを連れて来る
ブラジルの一角色どる雪景色
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:ブラジルに雪が降ると言っても信じない人もいる。)

◎席題「寒」 鈴木ふみ出題
寒い日に寄り添い温め合う夫婦【清子】
寒い夜は甘酒つくり夫酔わす【清子】
月末はふところ寒く丸く居る【弥生】
天候異常十月になってまだ寒い【実】
宵越しの銭はもたずのすってんてん【実】
芸人のお寒い芸に笑いなし【ふみ】

◎去る九月十五日の第60回全伯川柳大会で、兼題、席題の部で熟年クラブから次の諸氏の作品が見事入選、受賞されました。おめでとうございます。

競っても友情つなぐ五つの輪
バスが来る気ばかり走る脚となり
【五十嵐司】

道ならぬ恋は内緒に胸に秘め
【坂口清子】

結果など目にもくれずに先走り
足跡を歴史に刻み移民老い
内緒よの耳うち更に尾鰭(おひれ)つき
【交告余碌】

迷惑をかけぬつもりのお節介
【藤倉澄湖】

へそくりを内緒に溜めて役に立ち
長生きも足手まといにならぬよう
【彭鄭美智】

長く生き迷惑かけずに終りたい
【新井知里】


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