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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2014年4月号

2014年4月号 (2014/04/12) 俳句 (選者=樋口玄海児)


新(あら)山の見事なキヤボ一パルマ
ただ今へお帰りと言うパパガイオ
パパガイオよく喋る日は雨近し
南十字夫の口癖ラバウル談
凶作に次男の出稼ぎ定まりたる
【猪野ミツエ】
(評:一句目、ブラジルでは新山での第一作は何を作っても良く出来る。ブラジルの土地は肥沃である。特に石山裾の土地は良い。このような土地の百姓は面白いでしょう。第二句目、日本人に飼われているパパガイオは日本語を覚え、「おはよう」「おかえり」を喋る様になった。飼っている人の喜びが出ている。この様な写生句、気持ちが良い。)

ブラジルに無き懐かしき吾亦紅(われもこう)
枝ゆれて尾羽の長さや鋏鳥
十字星移民と言うは寂しき語
おひたしか甘味噌和えか若きキヤボ
枝移りする柔軟に鋏鳥
【伊津野静】
(評:一句目、私はよく知らないが吾亦紅ブラジルには無いらしい。日本では目にするしまた、句にも詠まれている。面白い名の花である。ブラジルに長く住まれても忘れられない花の名。出来上がりが良い。四句目、日本でオクラと呼んでいる九州では畑レンコン。美味しくよく食べる果菜。食べ方は色々あるらしく、家庭によって違う。いずれにしても美味しい食べ物である。句も嫌みがないのが良い。)

捨て蓆(むしろ)めくれば蚯蚓(みみず)目覚めけり
夕涼みランニングシャツ脱いでをり
苔の花街路樹古りし我老ひし
柴田錬三郎の時代小説夜の秋
【伊津野朝民】
(評:第一句目、ブラジルは一年中蚯蚓の活動できる国である。蓆をめくれば一杯の蚯蚓が生活していて朝民さんが驚いた一句。写生俳句の見本。)

バラと麦の穂手に誰待つや女性の日
時計なき待合室の秋の暮るる
乗りつぎて一泊三日秋の旅
夕月の光集めて夕化粧
【三原春風】
(評:一句目、バラと麦の穂、たまに見かける風景。どこかの国の縁起の良い習慣だろうか。私は知らないがおそらくアラブ辺りの習慣だろう。それにしてもバラ麦の穂の花束を手に誰かを待っているのは美しい。その一瞬をとらえた句。見事な出来。)

カピバーラ弟十四でテッポー持つ
スザノへもメトロ欲しやパイネイラ
露の世を老をはげます熟連会
サンボードロモ世界を揺るがすカーニバル
【野村康】
(評:一句目、カピバラ猟。付いて来た弟はまだ十四歳。ブラジルらしい俳句。日本の人には驚きでしょう。少年の気持ちをよく表している句。二句目、ブラジルはメトロその他が遅れている。メトロだけでも早く開通してもらいたい願い。今年はコッパ、二年後はオリンピック、ブラジル国民の願いである。)

休日の浜に獲りたて鰯買う
先生は同じ年とや夜学生
カピバーラ知らずに食べる峡の旅
【森川玲子】
(評:二句目、ブラジル夜学、私もポ語夜学に通ったが、先生は若い女の先生であった。その頃を思い出しています。ユーモアであり、面白い句。)

貯金おろす如き余命や老の秋
街路樹の柳に欲しき流れかな
ジュキア路の花茣蓙土産の丸く巻き
【佐々木古雪】

誰がために揺れ惑ひしか吾亦紅
懐かしき故郷偲ぶ黄葉(もみじ)かな
秋茄子の甘みかみしめ故郷偲ぶ
【宇野博】

人見れば水に潜りてカピバーラ
抗議デモ荒れるこの頃秋曇り
宵闇に目指す町の灯見へて来し
【畠山てるえ】

自然愛す秋の日伯児童画展
人懐っこき駝鳥列組み丘の牧
秋鯖やまこと字のごと青き肌
【香山和栄】

クワレヅマウォーキング道の折り返し
秋の夜のカポエイラ闘技のベリンバウ
ボンベイロの網で捕らわれカピバーラ
【纐纈喜月】

鳥帰る真っ赤な竿成しクバトンに
カルナバルセーナ賛歌の大行進
優勝すセーラ賛歌やサンバ踏む
【清水もと子】

登り行くカンポス列車クワレズマ
秋曇り今日も雨の逃げにけり
クワレズマ高原の街色どりて
【原口貴美子】

気をゆるめ正月の月夢多し
初夢や思った通りの夢なりし
雑煮食ふ一家揃った顔ぶれで
【秋元青峯】

秋曇り私の好きな日和です
身のこなしますます鈍く老の夏
秋の書や指しびれても書きつづけ
【山田富子】

大アクビ広がる空に夏来る
木蓮に夕暮れ早し山の里
こんもりと新緑の萌え太る山
【今井はるみ】

アマゾンは遠しサンパウロ大旱
椰子の葉の遊びぐせある夏の果て
大西洋に烏賊釣り舟の出るは出るは
大西洋の烏賊釣り舟に誘はるる
大旱の空を仰いで呟ける
美しく月を育てて国広し
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


見はるかす春の夕べの空の色ふるさと遠く子を育て来し
刺激なき山峡に住み初夏の雷雨過ぎれば木々みどり増す
握りあう手の温かみさえなつかしくピポッカ爆ぜて香る街角
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:風土色のある歌。「ピポッカ爆ぜて香る街角」は巧みな表現。青柳君の代表作の一つと言いたい。)

「安宅の関」浜の小石を取り出だし父母と旅せしかの春偲ぶ
今年まだ手取りぐらいと気負いしが臼より餅をとり上げがたし
金婚も卒寿も過ぎたり加速度を増しつつ来向かう老いの時間は
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:安宅の関は源義経の受難?の関。悲運の義経を偲ぶよすがに拾った小石を取り出してかつての日、父母と旅した事を思い出しているのだ。安宅の関を地図で見ると、海岸にある。弁慶に打たれた鋳杖の痛さに義経は耐えながら歩いたに違いない。)

お正月義妹の家にみな集い昔話に花を咲かせり
発展すスザノの町を眺めつつ過ぎし昔を語る老い夫
吾が一生は家族のおかげとただ感謝良かりし事のみ思わるる今
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:八十年前のスザノは淋しい町であったことと思う。今、スザノ市は聖市の衛生都市として、発展に次ぐ発展。新駅の落成も今年中に行われる、そして環状道路もまた。)

学校の教務で来れぬとう婿にインターネットでフェリースナタール
ブラジルで働き儲けて帰るよと別れし母の齢を過ぎぬ
カラオケ位はいつも出渋る夫なれど歌会は休まず四十余年を
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:カラオケには何だかんだと言って出渋る夫も短歌の日は自分から先になってせかす。四十年間休まずとは、皆勤賞をあげます。)

ナタールより新年欠けて咲きつづく庭華やかに百日紅の花
大ざっぱな性分なれど百日紅の花期をたがえぬ婿の剪定
卓上の孫の残せし棒飴をしゃぶればかえる吾の幼な日
【スザノ福栄会 原君子】
(評:捨てるのは勿体ないので孫の残して帰った棒飴をしゃぶると、幼な日に帰ると詠われたが、たしかにその通りと言いたい。)

歌詠むは心のセラピー勤め娘の帰り待つ間を手帳に綴る(セラピー=療法・治療)
ポ語独習「テニヲハ」らしきに行き当たり独りフムフムうなづくわたし
子育て時よく用いたるアロエの葉孫子に聞かすその薬効を
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:昭和三十二、三年ごろの「主婦と生活」誌にアロエの薬効が書いてあった。それから邦人間でアロエを盛んに用いるようになったと記憶する。私の家でも子育て中、アロエでどれほど助かったか知れない。庭に一本は植えておかれるようにお勧めする。)

もの言わずなりたる病夫の胸の上に血を吸いし蚊がとび立てずいる
病み夫の身体ふきいる吾が手許を猫は見ておりかたえに座り
朝五時に起きねば家事の捗らず夏の朝顔咲くは未だし
バラの棘に傷つきし手の甲なおりしにレモン採りて又もや棘に
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:私は一度だけたらふく血を吸った蚊を見た事がある。身が重くて飛び立てないでよたよた歩いているのだ。病人の血を吸った憎らしい蚊はチリ紙でつまむとよい。よくまとまった歌。ご主人の介護、大変でしょう。頑張って下さい。)

亡き孫のタッサ智恵美のソフトボールに三百余名の少女ら集う
心配せし雨も降らずに勝敗を競いし少女らの笑顔明るし
再会を約して別れを惜しみつつ思い出胸に帰る少女ら
夏時間終わりて夜分の長くなりゆっくりペンとる吾となりたり
雨不足で貯水湖の水位下がりゆく節水節電をテレビは報ず
【プ・ダ・アルボレー老壮会 矢島みどり】
(評:第一首目「タッサ・チエミのソフトボール」とカタカナ語が多すぎるので「智恵美」としました。お孫さんの追悼競技だと思いました。それにしても三百余名の集まりとは如何に盛大であったかがよく解ります。後の「心配せし」「再会を約して」よく詠めています。)

牛乳にレモンを少し搾りこみ即席のヨグルトで暑さをしのぐ
井本さん九十四歳おめでとう祝いてなつかしの唱歌うたいぬ
幾年も経ちて吾子らの幼な友の便りとどきて甦(かえ)る思い出
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:井本さんを詠って佳品。何よりも詠み出しが良い。)

人生に苦労はつきもの吾れ今の苦難は精神力で乗り切る
父母よりも長生きしている吾が人生これから先は趣味の生活
海外の相撲ファンは国技館映るテレビが土俵ひとしく
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:第一首目、作者の気魄(きはく)に打たれた。精神力で乗り切る句またがりの歌、瞠目(どうもく)した一首。)

久々に雨の降る音聞きながら心に何か安らぎ覚ゆ
病室の窓に雨音聞いている早く吾が家に帰りたくって
病室の窓すれすれに飛機はとぶ吾の思いを運んでおくれ
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:病室で雨音を聞きながら、吾が家に帰りたい思いが素直に詠めている。)

パーマして家路を急ぐ汗出でて幾たび水飲む今日は四〇度
カルナバルは恵の雨を連れてきた大地潤し皆生き返る
ウォーキング了えて朝のコーヒー飲むこの幸せを二人で感謝す
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:幸せは一寸したことにある。ウォーキングの後、夫と二人で飲むコーヒーのうまさ。)

連休の娘と連れ立ち歩む妻ともに笑顔で幸せに満ち
若き日に「諸行無常」と聞きしかど意味も解せずこの齢で知る
大正に生まれて昭和平成と時代は変れど我れ移民の子
【ツッパン 上村秀雄】
(評:連休で久しぶりに帰った娘と歩んでいる妻を見て幸せを感じている。「ともに笑顔で」がこの歌の要。)

二〇一三(平成二十五)年度「心豊かに歌う全国ふれあい短歌大会」 主催・宮崎県社会福祉協会

吾が子の名も忘れし夫が故国にて雪遊びせし友の名を言う
【入選 小野寺郁子】

このホームに歌詠む友が三人居て隔月に訪う吾も老いたり
月々に老壮の友とサ紙歌壇の選歌に励み老ゆるを知らず
【入選 藤田朝壽】


◇今月の川柳欄は、選者の柿嶋さだ子先生のご主人が先月十二日、尿道疾患のため急逝された為、お休みと致します。故柿嶋昭三様のご逝去を心よりお悔やみ申し上げます。


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