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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2014年5月号

2014年5月号 (2014/05/13) 俳句 (選者=樋口玄海児)


植え進む苗一直線鰯雲
遠くより行商の声鯖いわし
雨もなく流水細まり花ジンジャ
照り付ける秋の太陽バスを待つ
【森川玲子】
(評:一句目、レタス苗植えたる人は糸も引かず一直線に出来上がったその出来栄えは素晴らしい。この一直線、十日もすれば緑の畑と化ける見事な美しさ。百姓の喜びがよく分かる。)

外出着戻りて干すや夕化粧
打たんとす吾にかまえし油虫
伯人女の膝割りロングサイア盆踊り
日本着の吾娘とは知らざり盆踊り
【三原春風】
(評:四句目、家にいる時は目立たなかった娘。盆踊りに日本着でいるのに気付き、驚いた。誰でも子供の成長の早さには驚くものである。)

旅戻りフェイラの熟柿に秋を知る
花祭り幼な釈迦座す花御堂
稚児行列リベルダーデの風物詩
御仏は平和の使者よ花祭り
【矢島みどり】
(評:日本では釈迦の誕生日に合わせ、四月に行われる行事。ブラジルもそれにちなんで四月に行われる。三句目、ブラジル日本人町の花祭りの様子の句。)

明け星の月の輝きより強く
神鏡の如くに浮かぶ朧月
シュバオーロジョンデバーロの巣が先に
【長谷川ふみお】
(評:三句目、ブラジル季題が二つ。それも名詞が二つ。何でもない句であるが、現物を見た作者は感動したことでしょう。その花の美しさに。また、そのあたり、騒がしいジョンデバーロの巣に詩を感じたことでしょう。)

テレビ見る画面に野鹿走り出る
落花生豆腐を作りこころみん
出来上る新落花の豆腐かな
【荒田田鶴子】
(評:落花生の豆腐と聞いただけで驚き。私も食べたことありません。どのような味でしょうか。美味しいと思います。珍しい句。新しいことが詠まれた俳句、お待ちしています。)

夢の中我つつみおる花縮砂
夕暮やつぶやいてみるうそ寒と
満月や友と語りて秋惜しむ
【今井はるみ】

仲秋や気候異変をなげく老
槌立てきつつき日和と言ふべかり
立ち飲みのカフェこそよこれ秋の庭
【伊津野静】

新旧のビルの百態秋暑し
喚声の中を撲たるユダ人形
カラカラ飛ぶ帽子真深かに畑仕事
喜月画く墨絵の富士の秋扇
【野村康】

地球儀の青き大洋夜の秋
月見草人恋ふ如く開きそめ
星飛ぶや地球の果てに住む我ら
【山田富子】

秋日濃し縹渺として雷の句碑
信濃恋ふ歌碑建つ園の水澄める
提灯型のスタンド点しホ句の秋
【香山和栄】

急逝の妹悲しや秋の墓
政治家をユダにかさねて打ちにけり
カラカラ―バッタを退治喜ばれ
【原口貴美子】

広き野を惜しみ飛び交う赤蜻蛉
アルファッセの畑を荒す親子鹿
パイネイラ見よとばかりに咲いていし
【宇野博】

ユダを打つ少女も眉をつりあげて
馬耕する人に従き行くカラカラ
椰子丸太並べし湿地ジンジャ咲く
【纐纈喜月】

過疎村のまばらに灯る夜長の灯
葉の小舟流し遊ぶ子竹の春
花縮砂逆さまに立つ道しるべ
【畠山てるえ】

リベイラ富士に夕焼の陽は沈み行く
楽しみのプラン次次秋来たる
小鳥寄る庭の枯木にバナナ下げ
【小野浮雲】

皮むいて呉れし筍瑞々し
来客に半裸を詫びて一農夫
爽やかに今日日曜日至福なる
【青木駿浪】

秋日和杖先に当たる捨てコップ
句帳手に園のベンチの露拭いて
蘇える雷禍の一樹パイネイラ
【伊津野朝民】

仲秋や白寿の句友にはげまされ
詩歌の日や牛飼長者として知られ
それぞれに音の異なるケラつつき
穴まどい世渡り下手な吾に似て
ケラ谺ひびく温泉プールかな
【猪野ミツエ】

大旱や畑に生れし一ドラマ
美しき虚子忌の町の秋の晴
見合結婚残る移住地星月夜
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


帰り来てうれしきことのあるらしく孫娘のハミング部屋より聞こゆ
いま吾の足となりいる車椅子いずこへ行くにもうれしさの湧く
包み紙伸ばして歌を書き記し評し合いつつ老いゆく吾ら
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:足の不自由な作者、車椅子の有難さを身に染みて感じている佳作。)

かもしかの如く駆け来て乙女子はバスにとびのりサンキュウと言う
朝夕にバスにて通うバルエの山のなだりはクワレズマ一色
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:よく見かける風景「かも鹿のごとく」と詠ったのは寺尾さんだけ。)

足痛の治療に今日も通い行くヒジオテラピーアは老人多し
長崎へ研修受けに娘の発ちて孫とふたりのさびしき夕飯
大夕立雹をともない土砂降りの上がれば急に秋の気配す
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:二首目、娘は日本へ研修のため行った孫とふたりで夕飯を摂るさびしさがよく詠めている。)

返り咲く葵の花にまつわりて黄の蝶二つ遠くへゆかず
ふるさとに帰りし吾を金木犀は香りをはなちて迎へてくれぬ
咲きそめてほのかにゆるる夕顔のその清しさに眼うばわる
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:一首目「遠くへゆかず」で詩情のある作品となった。)

気づかいて孫の買いくれし杖なれど突かず出歩くまだ大丈夫
「ばあちゃんは大丈夫よ」と気負えども孫らは笑みつつ気づかいくるる
大好きな大河ドラマも芸能も難聴となり遠のきてゆく
【スザノ福栄会 原君子】
(評:孫が買ってくれた杖を突かずに出歩く作者。まだ大丈夫と自分の心に言い聞かせているのがいい。)

寝冷えせぬようにと妻の着せくるるシーツ撥ねのけい寝いる吾に
この夏は何十年ぶりの極暑にてランニングーと半ズボンで過ごす
クーラーが効きすぎたのか冷えびえと妻は気づかいシーツ着せ掛く
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:今年の夏の暑さと夫を気づかう夫人の優しさがしみじみと伝わってくる三首とも佳作。)

森出でてまばらな林過ぎんとす日のあたる道赤とんぼとぶ
己(おの)が身に似たれる思いこの夏の嵐は大事な植木鉢倒し
トロッチの電話かかりて名を云わずその手は古いだまされないよ
公害に汚れし髪を洗いおり手にさらさらと風の如きもの
落ちしばかりの花手にとればかすかにも匂いのありて優しかりけり
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:第一首目、詩情ある作品。五首目、花の名前が欲しかった。)

散策に出で来し街なかパイネーラ今年は長く咲きて華やぐ
朝市に柿は出盛り朝夕の涼しくなりて空すみわたる
日本とブラジルの距離ちぢめたし便りは秒でとどく世の中
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:三種とも良くまとまっている。二首目、涼しくなりて空すみわたるは上句に対してぴったりと言いたい。)

今度こそ最後の墓参と張り切って友は日本へ旅立ちにけり
恙無く今日の一日も終わりと思えば目につく開き得ぬバラ
窓開くれば高層ビルのみ目に映る前に住みたるインダイツーバ恋おし
気にかけし友を見舞いて手をとれば吾が名を呼びて早なみだする
かえるとき右手さしのべまた来てと力なき手で吾が手をにぎる
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:五首とも難なく詠めている。特に第一首目は張り切って日本へ旅立った友の姿が目に浮かぶように詠まれていて佳作となった。)

只今とかえればいつも「お帰り」とむかえてくれし兄は達者か
頑固さは時どき頭にくるけれど子供と思へと娘に言わる
この頃は朝の散歩もままならず日毎に足のおとろえ覚ゆ
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:三首目、老いは足から来るとか。無理してでも散歩することです。私も同じです。)

すんなりと横綱鶴竜誕生しモンゴル力士に「綱」みな取られ
春一番吹いて日本に春が来た桜前線列島北上す
秋夜長夜半に目覚めて歌作る初期は指折りかぞえたりしが
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:日本力士の横綱誕生は単なる夢に終わった。またもやモンゴルに「綱」を取られた失望のほどがよく分かる。)

ベンチにて読みいし頁にはさみたる嫩葉(わくらば)の栞りは今もそのまま
草笛に吹いて悲しき軍歌かな征きて還らぬ三つ上の叔父
往きかえり小瓶の水を飲みながら老い身いたわり熟連会に
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:三首ともよくまとまった作品。特に二首目の歌に心打たれた「草笛に吹いて悲しき軍歌かな」がいい。)

老妻も亡姑(はは)に似て来しこの日ごろ勿体ないが口癖になり
露の身の不治の病を気にかけず趣味の友等と朗らかに生く
離農して年久しかる我なれど播種・収穫の気象気にする
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:久しぶりの投稿、作者はご病気であった由、ご自愛下さい。三首とも言うことなし。特に三首目の歌はわが意を得たりの感あり。)

ファゼンダに配耕されて明くる朝井のクランクの音に目ざめぬ
大正生まれの吾は激動の昭和過ぎ平成のみ代に生くる幸せ
頑張って土地買い足して吾がつくりし牧場に草食む牛の群見る
移民どきの苦労話は我言わず戦火くぐりし友の語るを
【ツッパン 上村秀雄】
(評:第一首目、回想の歌。渡伯して配耕され熟睡の夢を井のクランクの音に破られた。初めて聞く音に少しビックリされたかも。渡伯時の歌も作っておかれた方がよいと思います。)

ブラジルの暑さを後にし飛機の旅ひと夜明くれば氷雨降る国 
末娘夫婦の企画一族六〇名の親睦旅行は無料サービス
海外旅行は初めての人多く雪ふる山にて雪とたわむれ
ゆきとどく九日間の宿泊の室よし食よし景色また佳し
イタリヤの風物カメラに皆撮りて楽しき旅を我等終えたり
【プラッサ・ダ・アルボレー老壮会 矢島みどり】

「故郷の友を憶いて」
我よりも一学年下の頼光君義勇軍となりて満州へ行く
満州の曠野を開拓する友に現地召集銃とりて起つ
昨日まで畑打ちし手に銃とりて露兵と戦い友は負傷す
満州の曠野を拓き有畜農の夢は破れて身は浮虜となる
終戦即浮虜となりたる吾が友は連行されぬソ連兵士に
連行中落伍者出ればソ連士官拳銃とりて射殺し戻る
落伍すれば射殺の運命が待っている何がなんでも歩かねばならぬ
背嚢の中なる不要と思う物すてて身丈の杖つき歩む
負傷せし身に背嚢は重いけれど落伍は死なり必死に歩む
戦傷の足の痛みに耐えながら杖つき歩む友が目に顕つ
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


それぞれに自分のペースで生きてゆく
芸術も食欲共に欲が出る
待つということも大事と教えられ
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:「待てば海路の日和あり」と言われる所以です。)

雨季入りを忘れ旱の大曠野
山積みの郵便残してスト終わる
趣味抱いて励まし貰う柳友と棲む
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:お互いの趣味を大切に励まし合える人と棲める。本当に幸せですね。)

エプロンを外して今日は女性の日
黄粉(きなこ)餅思わず故郷を思い出す
定年で肩の重荷を子に譲り
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:ご定年おめでとうございます。やっと肩の荷が下りましたね。)

雛人形年中飾られかわいそう
人は人自分は自分と悟る歳
体重計こわくて乗れぬ秋となり
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:食欲の秋です。体重計とにらめっこしながらコントロールして下さい。)

古新聞リサイクルされて生き返る
野菜屋で重宝がられる古新聞
古新聞ガラス磨きにも役に立ち
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:古新聞も使い用で色々と役立つものですね。)

実感す自転車操業青田売り
生徒より先生お手上げ老ク連
手おくれと思いつ学ぶポ語会話
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:生涯学習です。頑張って下さい。)

耐えてきた移民根性の底力
足弱の老妻口はまだ達者
スタートは同じで大きな貧富の差
死神に見放されてか回復し
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:ご回復おめでとうございます。今後ともご養生専一にご長寿を祈ります。)

今はなき愛を記した伝言板
天国の師に見守られ我愚稿
走ってるつもりの足が笑ってる
【サンパウロ鶴亀会 宇野博】
(評:「それでも走っていると思っているのかい。もっともっと走れよ」。足を擬人化した佳作。)

ダイエットグラムで痩せてキロで増え
改札の通せん坊で目を覚まし
女性の日バラ一輪に励まされ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:この一輪のバラは幸福の泉にも等しい。一時的であっても芯から幸せに渡らせてくれる。)

人柄が滲み出る文捨てられず
胸のうち文にしたのはその昔
かくれんぼするのがうまい福の神
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:容易に姿を見せてくれぬ福の神は実に隠れ上手である。)

日本料理世界一の位置にあり
大降雨来そうな雷鳴雲走る
東洋街店舗に日系の顔がない
【セントロ桜会 中山実】
(評:日系人は買い物客だけで日系人の店舗はほとんど見られなくなった。)

パソコンを使い使われ日々忙し
爽やかに今日も生きたし背を伸ばす
おかげさま医学の進歩に助けられ
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:ご主人様の早期ご回復を祈ります。)

感当たり嬉しい時は神信じ
夢を追う思慮は頑固なマイペース
一か八当てるつもりの種を蒔く
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:勝(すぐ)れた決断力が頼もしい。)

気が付けば乗せられて居し口車
痩せたしと思えど食欲旺盛で
針一本さしたつもりがいなされる
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:さすが相手は一枚上でした。)

卑怯です置いてけぼりの影法師
半世紀生きて悲しい女の詩
残照へ花の命を抱きながら
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:暮れなずむまで抱きしめていたい花の命ですね。)

老の虚栄ぎっくり腰の返礼が
して貰う老後は老ける諺が
生き甲斐はすること有りて日が暮れる
【インダイアツーバ親和会 早川正満】


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