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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2014年7月号

2014年7月号 (2014/07/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


寒菊に祝はれて泣く老婆かな
句作して我も励むや健康の日
苦しさを紛らす夜長深呼吸
母の日や重荷となりし我が齢
母の日の笑顔をつくる我老いし
幼な等の割るが楽しみチョコ玉子
【伊津野静】
(評:白寿に近い静さんの作品。頭は少しも老いてなく、美しい俳句。また、若々しい句は見事。いつまでも老いられず投句をお願い致します。二句目、我も励むや健康の日などの句も、老いて若者に負けない気持ちはさすが。句が年に合った句で出来上がりも上々です。)

オサゲ付けの帽子で来たるジニイナ祭
紅イペー毎日せはしき蜂雀
長旅のバスに持ち込むパイナ枕
移民寺梟住むイペロシオゥ
新米のおにぎりに手が伸ぶ二人かな
新米や心正して盛る仏
【野村康】
(評:四句目、新米でおにぎりと聞いただけで手が出そう。以前のブラジル産の日本米は握り飯にしてもあまり美味しくなかった。しかし、最近の日本米は日本と変わらず美味しい。ブラジルに住んでいても日本に住んでいる気持ちになれる新米のありがたさ、長生きのありがたさ。)

産みの母育ての母持つ母の日よ
鳩襲来雨降る如く糞こぼし
鎌ぐせのそれぞれにある刈田
どの家も近うなりたる刈田径
習慣の早起き勤行健康の日
【猪野ミツエ】
(評:五句目、習慣とは慣れれば何でもないことだ。此の句には健康の日と入っているので、新しく生き返っている。この新しい季語、私は今まで知らなかった。良いブラジルの新しい季題になるでしょう。句も上手にできています。)

ブラジルに炭焼長者となりにけり
ブラジル国歌やっと歌えて木の葉髪
凍星や森閑としてビル襖
七百人の長寿音頭も移民祭
【香山和栄】
(評:二句目。私もこの句のように五〇年余りブラジル生活ですが、ブラジル国歌が歌えない。ブラジル国歌が長いということもあるが、世界一長い国歌ではないでしょうか。木の葉髪の季題が良く使われている佳句。)

一つ一つ取る術はなし藪虱
新米で炊き上りたる五目飯
高々と立てて草分け神の旗
妻と娘の味の違いや鮓料理
女性好くビンニョケンテやケルメッセ
寒鰡を砂堀り焚火で蒸し焼きす
【纐纈喜月】
(評:五句目、この女性の他は皆ポルトガル語。そのポ語をうまく五七五にまとめた句。立派なブラジルならではの句。)

秋立つやガラスのビールに色動く
七転び八起百まで移民の日
水に浮く雲を飲む牛牧の秋
秋おでん大根たまごすわってる
【山田富子】
(評:三句目、この句は面白い。水に浮く雲を飲んでいる牛を上手に写生している。このような句は、その場を見ていないとできない佳句。)

老どちの俳諧健康ホ句の秋
踏み減りし石段秋日に光り居り
どの木とてなく風の落葉色紅く
短日の墓参終ればたそがれる
【佐々木古雪】

聖体祭飾るタペッテ冬時雨
初冬やレシフェあたりはいまだ夏
ピタイヤかまぼこの如秋の皿
【清水もと子】

日の昇りふくろうの声遠ざかり
携帯の電波届かず山眠る
街路樹のひときわ高く紅イペー
【森川玲子】

母の日のボーロを母娘して切りぬ
六月の満月仰ぎ偲ぶ移民
きりもなき落葉なれど掃きつづけ
【小野浮雲生】

紅色の五月花部屋を明るくす
咳く夫に熱き味噌汁韮入れて
小雨冷え冬の前ぶれサンパウロ
【矢島みどり】

話声笑えるやうなる健康の日
古写真みんな楽しみ冬ぬくし
あの人も手をとり合って冬ぬくし
【三上治子】

過疎村の小さなカペーラ秋夕焼
万葉の吊橋揺れて水の秋
流星の尾長かりしパラナ河
【青木駿浪】

鯉のぼり海風荒きビルの上
掌に余る程の大柿重かりし
雄蜂てう情報無人機大豆畑
【清水もと子】

初期移民母の日知らず働いて
車窓より入りリベイラの風涼し
餅搗機ありての餅買う若き母
【小野浮雲生】

添へし木もかしげる庭の冬つつじ
寒夕やけ半袖男大股に
寒の水花々の根に少しづつ
【伊津野朝民】

ピニョン落つ今日一日の予定無く
ピニョン熟る古希過ぎて人恋ふ心
山茶花の落下明りに夜明かな
【長谷川ふみを】

ブラジルやマンジョウカ入れ冬至粥
マンゴウや悪戯好きな小鳥来し
大冬日イツウの都市を呑み込みし
ピラニヤの刺身を食べて旅中ば
岩山のイツウの冬日大きかり
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


朝あさに来鳴く雀の声もなく時雨止まざるしづかな山荘
アバカテの重きを手にもち山荘を歩めばしぐれの匂いも染みん
音もなく時雨るる朝の足長蜂ぬれて動かずレモンの古木に
終日を時雨は止まず暮れてゆく面影顕たすこの静けさに
【セントロ桜会 寺田雪恵】
(評:時雨の日の寂しさがよく詠まれている。三首目の足長蜂「ぬれて動かず」で朝寒がよく分かる佳品。)

百歳を目標にして生き抜けと励ましくるる温かき文
移り来て七十五年経しブラジルに日語話せぬ孫らに囲まれ
孫曾孫日語わからぬ者ばかり妻とわれとのあやしげなポ語
人々の邪魔にならぬよう気をつかい杖つき歩道をゆっくり歩む
受取りし新札最初に透し見て釣出すカイシャの伯人娘
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:五首とも良くまとまった歌。二首目の「妻とわれとのあやしげなポ語」はいい。)

坂の上のパイネイラの若木に花が咲き紅の色鮮しく見ゆ
琵琶を抱く弁財天のめぐりには妙なる調べ流るると思う
八十年身を支えくれしこの前歯丹念に包み小箱にしまう
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:若木のパイネイラに咲く花は色冴えて一段と美しい。「紅の色鮮しく見ゆ」で状景がよく分かる。)

真向かいの高層ビルの基礎工事終わりて朝から鎚の音する
子らはみな勤めに出でぬアパートに夫と語らう過ぎし日のこと
山畑に日の沈むまで働きし過ぎ去りなつかし夢のごとくに
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:初期移民妻の哀歓が詠まれている。「日の沈むまで」は動かすことのできない言葉。佳品といいたい。)

青空を眺めて夫と日向ぼこ福博例会の歌評しつつ
娘の家を訪ねてくるる友ありて昔話に花を咲かせり
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:同じ趣味に生きる喜びが端的に詠まれている。)

テレビにて予期せぬ大事な一言を忘れてならじと慌ててメモする
細ごまと気遣いくるる家族らに老いのひと日が安らかにある
吾が庭に植えて三十年の百日紅年末年始を華やぎて咲く
【スザノ福栄会 原君子】
(評:年末年始の固い言葉がここではよく生かされている。)

ナツメロを歌えば昔の偲ぶばるる気さくな叔父と浜辺にあそびき
ブラジルはアテーアマニャンの国とかやコッパドムンド旬日にせまる
吾の米寿祝いて呉れたり妹等いづれも父母より長生の顔
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:米寿を祝ってくれた妹たち。父母よりも長生きの顔で作者は安心と同時にうれしさ一入なのである。)

足腰の痛む吾をばいたわれる妻には苦労かけしと思う
貧しきは貧しきなりの幸せを求めて今日は花の苗買う
年毎に花の種類の増す狭庭に趣味もつ老のささやかな幸
ぢいちゃんわれ幼き孫らに囲まれてピポッカ爆かす秋の日ぐれに
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:孫たちに囲まれてピポッカ炒るぢいちゃんの喜びが素直に詠まれている。)

今朝もまた広場に集う鳩の群れ寒さもいとはず餌求めおり
逝きし友の四十九日忌は過ぎて天国のくらし如何ばかりかと
義妹より送られしカード音楽入りボタンを押すとやさしきメロデー
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:音楽入りのカードを貰った喜び。メロデーに聴き入る作者の望郷のひととき。)

若き日の思い出多き故郷に我が住む土地は寸土もあらず
訪日もこれが最後よ新幹線の窓より望む霊峰富士を
先祖の墓地に一きわ高き兄の墓碑陸軍歩兵伍長勲七等
三月はまだまだ寒し訪日しコタツに入るは半世紀ぶり
土地もとめ吾も地主で人並みに働きし植民の頃なつかしき
【ツッパン 上村秀雄】
(評:第一首目、日本に帰って来ても吾が住む土地は寸土も無いと感じた作者は一日も早くブラジルへ帰りたい思いがしたことであろう。)

待ちまちし保養の温泉たのしかり朝湯にゆらぐ月のすがしさ
萩の花こぼるる里の父祖の墓ひと目見せたきブラジルの子らに
【スザノ福栄会 青柳房治】

次ぎつぎと賞品もらって来る孫を婆ちゃん褒め役今日運動会
母の日に可憐な花よチュリップ開花待たずに命尽きたり
突風来て落ち葉舞い散り雨となる雨量少なく寒波到来
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】

六月はW杯がブラジルで大形の最新テレビを買ってもらった
バレットス市へ若者達が勉強に昼食会に吾れら招(よ)ばれる
吾が夫婦多くの人に愛されて今の幸せ感謝のくらし
【バレットス寿楽会 池田正勝】

手を引いて育てし孫に手を引かれ今大学生今年卒業
一葉の母の写真を手に取れば幼く別れし母の笑顔が
四十名の同級生は戦場に同窓会にはわづか九名
【ツッパン 上村秀雄】

干ふとんパタパタ叩き感動す日に照らされて踊るホコリを
目に見えぬホコリがキラキラ光に踊るキラキラ舞い落ちる
流行は男のふんどしカラフルに身体に楽と男も女も
暑い夏からだにらくと大流行笑いこみあげシースのふんどし
世話好きで五十歳の仲人Mさんも晩年は日本へ行きたいと言う
テレビ見て感動もなくただ眺め新聞も本も読まずに吾は居眠る
【サントス伯寿会 三上治子】

※お願い:歌稿には必ずお名前を書き入れて下さい。「桜の花入りの歌稿三首」の方、今一度ご面倒でも再投稿をお願いします。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


神仏へ命冥加の日へ感謝
二つある故郷抱いて移民燃え
W杯身近かに応援出来る幸
W杯世界の夢は燃えている
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:プロテストによるデモ、諸設備の遅れ等、難題をかかえての開幕であったが、先ずはスムーズなすべり出しで毎日の試合に世界中が湧いている。)

おしゃべりも頭の体操なりと聞く
親しげにいたわりくれる人に合い
年とれば勿体ないが口癖に
曾孫等に話す童話怪しポ語
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:あやしげなポ語でも日本の童話を聞かせたいお祖父さまの思い遣りは、童話に重なっていつまでも心に残ることでしょう。)

会長逝きしレジストロ文協しずまりぬ
浅学の句作辞書に手を引かれ
車間距離保って余生あせらない
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:いつの場合も車間距離を保つ心がけが肝要。)

お守りを持たせ後は神まかせ
女だてら言った時代は過ぎました
半世紀ポ語覚えず日向ぼこ
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:「日向ぼこ」に複雑な心の動きがあって面白い一句。)

きらわれる覚悟一本筋通す
真実の無償の愛に涙する
近道を知って迷いが深くなる
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:知らない方がよかった近道でした。)

美しい老母の笑顔で気が晴れる
今日あるは皆んなのお陰ありがとう
一日一善目指して今日も生き
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:いつも変わらぬ作者の温かい思いやりに頭が下がります。)

小春日にほっと一息腰伸ばす
W杯無事終了を祈るのみ
日本豪雨此方日照りの天仰ぐ
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:豪雨による水禍、日照りによる断水。下句に作者のこもごもの思いが秘められている。)

時計塔出来てリベルダーデ活気増し
ブラジルよチャンピオンなれるかW杯
日本チーム負けて無念の涙のむ
【セントロ桜会 中山実】
(評:第一試合でコートジボワールに逆転負けした日本チーム。残念でした。)

見せかけの居眠りしながら美女見つめ
わが頬をたたく枯れ葉や冬の風
雑草も踏まれるばかりじゃ芽が出ない
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:自然の恵みがなければ根強い雑草も枯れてしまう。人もまた同様である。)

水害のTV観ながら又断水
杖つけば足三本と孫笑う
W杯難題つんで発車する
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:無事、終着を祈るのみ―。)

入れ墨の元祖はインジョかも知れぬ
入れ墨はヤクザばかりは過去のこと
入れ墨は今じゃモーダと言う世代
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:日本のヤクザの象徴と言われた入れ墨が一般に流行されようとは思いもよらないことだった。)

まだ動く手足に感謝して眠る
子の電話くじけちゃ駄目と活くれる
前後左右気にして歩けと言う世相
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:何処に居ても安心出来ない物騒な時代となりました。)


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