移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2014年8月号

2014年8月号 (2014/08/10) 俳句 (選者=樋口玄海児)


瞬いて雨喜べる蟇
快晴や槌音高くけらつつき
厨妻も一句さづかる冬銀河
凍蝶の触角うごく陽射しかな
軍国時代生まれし我等国旗の日
【伊津野静】
(評:一句目こまかい観察が効いている。蟇をよく見ていると動きはあまりない。目耳はじっとしているが、口は動かしている。特に外灯の下などに寄る蟇は口を開けたと思うと早や虫を取っている。蜜蜂の箱上にいる蟇など、蜂が密をためて帰ってくるのを皆食べてしまうと蜜蜂を飼う人より聞いた事を覚えている。三句目、厨妻に句がさずかった喜ばしい。厨仕事のひまに庭に出れば、美しい冬銀河が瞬いて句を授かった。冬銀河に心が洗われた思い。)

仕留めたる鹿肉干せる狩の宿
狩の宿男勝りのおかみ居り
風呂吹きや老妻の腕まだ確か
牛の皮敷いて雑魚寝の狩の宿
会釈せるマスクの人を判じ兼ね
【纐纈喜月】
(評:四句目、狩の句では面白い牛の皮敷いてある狩宿を知らない者同士が雑魚寝。これは当たり前。狩場など想像できるブラジル季題で出来上々。)

黒奴の血誇る農技士奴隷の日
炭焼きの茶粥のうまさ語りけり
移住祭何はなくとも子等育ち
呼吸の合ふ夫婦の振子フェジョン打つ
【猪野ミツエ】
(評:三句目、変わった事を言ってるわけではないが、移住祭に合った句である。俳句は正しく素直に作ることも大事。声を出してこの句を詠んでみたら、この句の良さが分かるでしょう。)

七百人のラジオ体操移民祭
七百人長寿音頭も移民祭
水っぽき冬至粥に入れし南瓜
ポ語会話訥々として木の葉髪
【香山和栄】
(評:一句、二句、日本以外の国でこれだけの人のラジオ体操、また、移民が産んだ長寿音頭。日本の人が見聞したら驚かれるだろう。)

日本の風呂敷に合う頬被り
カザッコもポンチオ風なり田舎町
遠吠えを続ける犬や冬の月
見映えなどてんで構わぬ頬被り
【野村康】

犬の鼻湿りぬるかと秋旱
日向ぼこ夢に故郷の薬師堂
寒桜枝つんつんとして蕾
冬温し庭木の蕾ふくらめる
【伊津野朝民】

冬ぬくしワールドカップ始まりぬ
球場を黄色にうづめ声援者
小春日や句会杖をすがり行く
【矢島みどり】

お日様に育つ冬菜の香りかな
バス揺れて土手も揺れをり脂肪草
庭掃けば乾季埃の目のかゆき
【畠山てるえ】

W杯にブラジル敗る夜の時雨
こくのあるカンナ所の新酒酌む
老閑の寒に強しと自画自賛
湯豆腐や醤油はブラジル櫻印し
【佐々木古雪】

紅イペー古会館を色どりて
ペードロと名を付け祝ふ男の子
青空に大きく広がるパイネイラ
【原口貴美子】

紫の丘の起伏や脂肪草
蟻塚は墓標立つごと枯葎
梢より青き空見ゆ紅イペー
【森川玲子】

冬苺山家の庭の荒れていし
牧の牛泪を留めて大旱り
今日食べる大根抜きに父畑に
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


新進の碧山めざし白鵬が一気に押し出し共に落ちたり
ゴヤベラの坂を下るは四年ぶり新道出来てイペランジャ近し
時おりに映し出さるる四万十川若き日の吾が泳ぎし渕も
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:作者は大の角力好き。力あまって共に落ちたさまが目に見えるように詠われている。)

「おばあちゃん元気でいいね」と孫の声庭のコスモス満開にして
大方の庭木の手入れ終りたり我が家の庭にも正月の来る
豊かなる春の花々かぞえつつめぐるジョキング朝日を浴びて
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:「ばあちゃん」の元気なのを喜んでいる孫の声。庭のコスモスは一家を讃えるがに咲いている。)

五月にはたいてい霜が降りしよと老夫と昔に思いめぐらす
新築のアパートだんだん高くなり日の当たるのがおそくなりゆく
誕生日迎える孫の成長を目を細くして夫は見ている
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:日当たりのよいアパートと自慢していたのに前にビルが建ち始め、日の当たるのがおそくなる。こんな筈ではなかった。都市に住む人の一つのご難と言える。)

ちちははの元気なうちに会いたしと吾は四度の訪日果たす
半世紀を異国に住めど古里は忘れがたくて眼裏に顕つ
日本は三十度とうテレビの前膝に毛布をかけて見ており
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:「樹静かならんと欲すれど風止まず」親孝行は生きているうちに―。)

まだ言葉にならない曾孫食前に両手を合わせ頭を下げる
晩秋の庭に揚羽の舞いくれば春来し思いに心ときめく
忌憚なき歌評を交わし持ち寄りの茶菓子にくつろぐ吾らの歌会
【スザノ福栄会 原君子】
(評:まだ言葉も言えない子が食前に手を合わす。親のしつけのよさ信心篤き家ということが分かる歌。)

通学の思い出もなく年老いてブラジル語さえわきまえざりし
惚けまい呆けまいぞと歌を詠み今日は何曜日かと娘にたしかむる
為政者はチラデンテスを想起せよデモは全伯に広がりてゆく
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:二首目の歌、確かにこの通りと言いたい。私も孫にいつも尋ねている。)

なにもかも忘れて見入る映像のワールドカップに沸く群衆を
スポーツの戦いは清しおのおのの国はこぞってチーム励ます
無惨にも敗れし競技にブラジルの選手と共に涙こぼしぬ
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:ブラジルチームの無惨な敗れ方には声も出なかった。)

久方ぶりに日本館に行きて見る中庭の銀杏黄茶のタペッチ
歩こう会君らの植えし桜の苗生長しるく開花待ちいる
名古屋より父の介護に帰りし娘一年を経てやや疲れ気味
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:父の介護のため日本から帰って来てくれた娘。骨身惜しまず盡してくれた、この日頃疲れが目立つようになったと気づく親心。)

ワールドカップ準決勝まで漕ぎつけてアレマンチームに喫す大敗
老ク連で絵画と書道短歌も習い心の糧となして励みぬ
わが街の只一本のイペーローザ毬咲きしつつ散り始めたり
世界一の規模を誇れるコッパドムンド次ぎにはリオのオリンピック
【サンパウロ中央老壮会 纐纈蹟二】
(評:W杯の歌は作ってみるとなかなか難しい。ブラジルチームの負けっぷりが単的に詠まれている。)

冬ぬくしテラソに咲きしカニサボテン二つ残して終りとなりぬ
体調のすぐれぬ夫を案じつつ食事に気くばる昨日も今日も
朝食の熱い味噌汁のワカメ旨しと頂く香り賞でつつ
国を挙げて声援送る国民の熱き思いのワールドカップ
冬ぬくし久しく休みし吾が会へ夫と出かける心はずませ
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:五首ともよくまとまった作品。この調子をくづさぬようーに。)

ブラジルへ出稼ぐつもりが八十年子孫も増えて今は気楽に
幸せはあなたの心のなかにあり気付かぬ人は一生不幸
ふるさとの蓮華田つづく細道で友とあそびし日をおもい佇つ
開拓者原始の山を伐り開き今ではこの町第二のふる里
【ツッパン 上村秀雄】
(評:三首目の歌佳。蓮華田の中で角力を取って遊んだ少年の頃をゆくりなく想い出しました。)

昨年は卒寿の祝いを盛大に光陰矢の如しまた誕生日
今年は友人たちに招かれて吾が誕生日を祝ってくれし
時間まで吾れには知らせずスルプレエザ会場に着き始めて知りぬ
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:池田氏の誕生日を友人たちが祝ってくれた。持つべきものは良友である。)

近頃は治安が悪くのんびりと散歩も出来ぬ嫌な世の中
五月花今年は季節を忘れずに咲きはじめたり鉢いっぱいに
突然に友は不慮の死をとげし家族の悲哀にもらい泣きする「遅着分」
父母も亡く一人残りし兄も逝き何も出来ない吾ははがゆし
御先祖の仏壇を守る人なくて弟の家にあづけしと聞く
若き頃もてあましいし吾が髪も日ごとぬけおち気になる今は
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:のんびりと散歩も出来なくなったこの頃の治安の悪いこと。作者の嘆きがよく分かる歌。)

W杯今日より始まる往き来する車に見ゆるブラジル小旗
W杯に日本は敗れ早々と帰国はすれどモラルを残す
血の検査検尿血圧異状なし医者の言葉に思わず歓声
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:W杯に敗れた日本チーム。しかし、ブラジル国民に良き印象を残してくれた、と作者の喜び。)

塀ごしに隣家の主婦と娘との談笑つづく日曜の朝
伸びのびと曾孫ら育ちて老い吾をなぐさめ呉るれば生き甲斐のあり
国汚す政治家たちの罪罰いかなる刑が宣告さるるや
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:三首ともよくまとまっていて申し分なし。作者の歌境一段と進歩して居られることが分かりました。第一首目の「塀ごしに」の歌は佳品です。)

六車線の環状道路を往き来する車は時速百二十粁
絶え間なく車は往き来す六車線の環状道路はわが家に近し
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


篤農も三代目となり鍬とらず
冗談と思えど笑って済まされぬ
ワールドカップ愛国心で応援し
駆け登りたるは昔よ男坂
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:登り坂より下り坂が大事。これからは若き日を偲びながらゆっくりと下りましょう。下り坂にもそれなりの収穫があるものです。時々立ち止まって自然の私語を聞くのもまた楽しいものです。)

意地を張る人生遠く住む社会
茶化された言葉の裏をかみしめる
年金を片手に枠を組む余生
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:器用な枠組みの中で生き甲斐を作り出しながら余生を楽しく―。)

ご法話でこくこく居眠り時間(とき)忘れ
太鼓打つ混血児童や移民祭
寿司祭り異人も食べる手巻き寿司
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:和食も好む外国人が増えてきました。これからも益々増えることでしょう。)

助け合い入居者同志なごやかに
人の名が覚えにくくて皆ばあちゃん
毎日が勉強さいごの岸辺まで
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:生涯学習です。ご健康第一にいつまでもお元気で頑張って下さい。)

日本祭り体を使い金使い
捌け口のバスの焼き打ち民貧し
W杯大金使い国荒れる
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:一応無事終了ということですが、これから先の国の情勢が気になるところ。)

無条件降伏と言う筈だった
日本人十二才児ときめつけて
マッカーサ神より威力のご命令
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:終戦時を思い出しました。マッカーサの威力で民主主義国として、日本は大きく変わっていきました。)

ゲートボール最後の玉は上り玉
W杯頭で受けて叩き込む
日本祭り三方良しで喜ばれ
【セントロ桜会 中山実】
(評:第十七回目の日本祭りも「三方良し」のスローガンに添って無事終了。先ずはパラベンスといったところ。)

養国と祖国の応援つかれます
やっとこさゆっくり観戦出来る歳
世界地図とり出し勉強W杯
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:三二ヵ国が参加して行われた第二〇回W杯。色々と勉強になりました。)

弁護士を正義の味方と思う無知
懸命に生きて過去は問わぬ幸
アンケートを信じますかとアンケート
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:アンケートにもスッキリしないものが多々ある。不信な世相を衝いてお見事。)

やる気ありまだまだ若いと自惚れる
春をよぶ人になりたし我が余生
認知症百四才の母に問う
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:百四才で心身共に健やかな素晴らしいお母様。いつまでもお元気で―。)

世渡りに運と度胸がつきまとう
老木となって盆栽値打ち出る
綱わたり休まず続く果てるまで
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:人生は生涯綱渡りのようなもの。明日知れぬ命を抱えながら―。)

友激怒うっかりしてた待ち合わせ
わたし古稀走らなければ成し終えぬ
住みたいね鍵のいらない世の中に
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:万人の望むところですが、世の中は益々物騒になっていくようです。)

若者の汗と涙のW杯
犬とても飼えば愛情子と同じ
我の手につかまり孫の歩き初め
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:目に入れても痛くないお孫さんの手を取って「ハイ、ハイ、ヨチ、ヨチ」気合いを入れながら相好を崩すおばあ様の姿が見えるようです。)

移民ぐせ名前より先県を聞き
南から寒波来襲耳になれ
老クラブ余生に明日の夢をくれ
【インダイアツーバ親和会 早川正満】
(評:熟年層が集い合うクラブには、皆んなの顔に明日への夢があふれています。)

見た目より示して欲しい太っ腹
千恵をかせ貸したらおしまい君がやれ
ちょっと来いちょっとであったためしない
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:上句にただならぬ雰囲気がただよう。ちょっと済まぬ覚悟で出かけた方がよさそう。)


前のページへ / 上へ / 次のページへ

熟年クラブ連合会 :  
Rua. Dr.Siqueira Campos, 134, Liberdade, S?o Paulo, Cep:01509-020, São Paulo, Brasil
Tel: 11-3209-5935, Fax: 11-3208-0981, E-mail: Click here
© Copyright 2019 熟年クラブ連合会. All rights reserved.