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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2014年10月号

2014年10月号 (2014/10/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


蝌蚪機敏小さき音にも皆散りし
蝌蚪生る観測日誌当番制
叱られて兔のつぶらな瞼と会ひぬ
地球儀をかかげる像に春時雨
残る寒さ地蔵の頭巾ま深なり
【猪野ミツエ】
(評:一句目、生まれて二、三日の蝌蚪の塊を見ている。小さき水の音、また風の音にも散る動く小さな生き物である。生まれてしばらくは黒く固まっている。蝌蚪とは俳句用語でそこらの子どもたちはおたまじゃくしと言っている。また、蛙の子とも言う。その銃弾は見ているだけで楽しい。)

小竜巻走り去る畑南瓜蒔く
パウブラジル庭の一樹も芽吹くなり
めぐりくる夫の忌日やジャカランダ
血統書附けて仔馬の売られゆく
【森川玲子】
(評:一句目、ブラジルでは春一番に吹く風また雨は、畑を荒す場合がある。その後に作りやすい南瓜を蒔いたと素直に句にしたのは良い。句はこのようにそのまま作られるのを勧める。二句目、ブラジルに初めてポルトガル人が来た時にパウブラジルは多くあっただろう。ブラジルという国名はパウブラジルから来ている。)

冬ぬくし背中丸出し闊歩して
朝市に生き良き鰯出回りし
生きの良き鰯の刺身夫は好き
朝寒やコーヒーもすぐ冷える里
【矢島みどり】
(評:四句目、ブラジル・サンパウロ近郊は土地によって気温の差が大きい。私の所も気温の差が大きく、朝は毎日寒さを感じる。)

戸開くれば白一色の冬真昼
葉桜をバサッと翔ちし鳥太し
軒つばめ礼拝堂の空気穴
顔じゅうを口に春眠覚めし猫
【伊津野朝民】
(評:四句目、春眠の句。春眠は人間に与えられし季語と思いました。ところがこの句は動物の春眠を句にしたので選者の私も驚いた。しかし、猫や犬もよく見ていたら、確かにある事だろう。俳句として面白い。)

にらまれて事もなつかし念腹忌
百歳の祝のもなか新茶くむ
生涯を墓参叶はず念腹忌
念腹忌句会列席いく度ぞ
【伊津野静】

飛行機雲音無く伸びて芽吹く樹々
溌剌とラジオ体操朝サビア
終戦忌知らぬ戦死の父の顔
種を蒔く器用に動く大きな手
【香山和栄】

荒畑をならし南瓜の種を蒔く
孫達のカヌー遊びや春の海
アメ色にゴムの木の芽の美しき
ジャカランダ散り来て潜る医院の門
【野村康】

園に佇ち今年も仰ぐジャカランダ
父母の無言見ていし終戦日
陸橋に傘の花咲く春の雨
【畠山てるえ】

もう一度訪ひたい国よ花便り
花をぬき小さな庭に南瓜蒔く
風邪に病み日光浴の昨日今日
【原口貴美子】

水に浮く雲を飲む牛牧の冬
この大地永眠の国とす桜らんぼ
冬出水日に日に減りし明け暮す
【山田富子】

着ぶくれて老が見惚れる薄着の娘
踊の輪焚火の櫓を遠巻きに
【小野浮雲生】

訪づれる人なき庭の木守柿
澄み渡る空に黄イッペー枝ひろげ
【玉井須美子】

観光の富士初雪に美しき
御来光見んとて富士に人の列
【三上治子】

畑で働く喜びがある春浅し
小人椰子大玉椰子の芽春浅し
椰子の葉は風邪が大好き初嵐
老いの守る畑美し春浅し
里の山ユーカリ多し春の霧
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


「深泉」の合同歌集の写真(うつしえ)の会員の顔みな若々し
吾木香すすきかるかや秋草のいみじき花野の夕月夜かな
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:二首目、本歌取りの歌。三句を「いみじき」としたので歌が一変した。本歌取りの歌も一生の中に二、三首は有っても良いと思う。)

ブラジルの棋士に選ばれ女の孫はチェスのオリンピックにノルウェへ発つ
太陽が二十二時間照ると言うノルウェーに孫は二十日過ごせり
活けられし平戸ツツジの大輪のうす紅の花白壁に映ゆ
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:日照時間二十二時間とは驚く。真夏になると北極は太陽が頭上を一日中廻っているとか。人間は順応性がすぐれているので、北極圏内でも暮すことが出来る。佳品。)

アパートの庭のツツジが咲き初めて夫と聞きいる春の足音
昼下りポカポカ温い日を浴びてプールの椅子で読書も楽し
冬空の隈なく晴れてビルの上吸い込まれるごと飛行機のゆく
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:アパートの庭に咲いたツツジを老い夫と一緒に見ているのである。夫と聞きいる春の足音、は新鮮。)

鮮やかなプリマベーラの彩りに楽しみを増す朝の散策
イタペチの山に雨雲たれこめて晴るる当てなき冬の日長し
冷えしるき朝を楽寝の枕辺に熱きくず湯を娘は持ちてくる
【スザノ福栄会 原君子】
(評:イタペチの山は涛声。菊治、中村教二、青柳房治等によって詠われた。このたびは原君子によって詠わる。山に雨雲たれこめて晴るる当てなき冬の日長しと詠み納めたので秀歌となった。)

アルバムをめくれば母の後姿(うしろで)のなつかしきかな昨日のごとく
み仏に語りかけつつ香たけば在りし日の母の声きく思い
認知症に効くとうショコラッテ夫と分け互に百まで元気でいたい
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:三首ともよくまとまっている。第一首目、佳品。)

老いし身を熟連会に通っては好きなもの習い心足らえり
我がシチオの境界線に娘らと来てゆくりなく聞くベンテビーの声
狐火の見ゆる山路を居眠りて馭者はボテコで目ざめしと言う
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:何年かぶりで福博村に帰られたのであろう。娘と一緒に境界線に立って聞くベンテビーの声に入植当時を偲んで居られる母娘の姿がおのづと目に浮かぶ。)

二人して散歩より帰り老い夫にみかんのジュースつくるしあわせ
わづかなる買物なれど重くあり独りし帰る夕ぐれの道
角まがればイペーロッショの満開が吾のまなこにとびこんで来た
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:二首目、夕ぐれ、買物をさげて帰る作者の姿がよく分かる。落ちついた詠みぶり。)

日本は暑いあついとさわいでいるが此所サンパウロは日向ぼこする
曾孫の成長ぶりに目を細め幸福そうな夫の毎日
ボタニコが窓から見えるよ深い森小さい子供の遊び場だった
【セントロ桜会 板谷幸子】
(評:ボタニコが窓から見えるよ、と呼びかけて深い森で三句切れにして小さい子供の遊び場だった、と口語で詠ったのが良い。)

日本より届きし姪のプレゼンテ「とらや」の羊羹賞味一年
アルジャへ老人会でお花見に花々人々搗きたての餅買う
何としょう主人は補聴器すぐ外す呼べど返らぬ一方通行
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:アルジャの花見に行き、搗きたての餅を買う。餅はやっぱり杵づきにかぎると思われたにちがいない。)

不自由なく日本食たべ日本の花咲けば花によりゆく幸せ
満員バスの中にて席を譲られぬ日本人は吾一人なり
「ばあちゃんお茶淹れて」と子は甘ゆ声変わりしてゲームにひたる
地球上に戦火の絶えぬ愚かさよ建設は長期、破壊は一瞬
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪江】
(評:戦争の愚かさを詠って秀れている。この通りと言いたい。)

テキパキと認知症老いの看とりする若き看護婦力持ちにて
世話好きで五十の仲人Mさんが老いて日本へ行きたしと言う
特買の安物買いの銭失い中国製は直ぐにいたみぬ
多すぎる薬は病いを重くする医者と薬局グルかと思う
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:どの作品にも明るさとユーモアがあって読者を楽しませる歌と言いたい。「多すぎる薬は病いを重くする」製薬会社は「少しでも多く売らんかな」で一生懸命。)

六十名の知人がわれの誕生日に招いてみんなで祝ってくれた
ワールド杯日伯選手の出る日には落花生とピポカ沢山もらった
準決勝ブラジル選手惨敗で街ひっそりと花火揚がらず
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:期待空しくブラジルチームは敗退。花火の揚がらぬW杯は初めてでガッカリ。)

白牛の群がる牧場の草青く昔栄えし植民地あと
今日ひと日の飲み水の樽かつぐ兄水音立てて畑の道行く
この作が最後の年と例年より棉種多く積みて雨待ちつ
母の死を電話で知った長男は一週間も床に臥したと
菜の花や麦の出穂待つ春の日は雲雀さえずるわがふるさとよ
【ツッパン 上村秀雄】
(評:二首目、一日分の水の入った樽をかついで行く兄。水音立てて畑の道行くと詠まれたので情景が出ている。昔を思い出させる歌。)

大学は経済専攻優秀で孫娘は卒業す努力のたまもの
イタリヤゆ来し男の孫は従兄らと週末をカンポスさくら祭に
念願のミナス見学はひとり旅オーロプレットの歴史気に入り
数かずの思い出残しスキヤキでお別れパーテイ従兄ら三十名
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:お別れパーテイはスキヤキ。話がハズンだことでしょう。)

寒さややゆるむを待ちしか庭先の桜の花はひらきそめたり
リベイラ川の流れに従いて五色の灯篭夜をいろどる
いつよりか欲しと思いし果樹の苗とどきし日にはこころ満たさる
【レジストロ春秋会 小野浮雲】
(評:リベイラ川の灯篭流し。五色の灯篭夜をいろどる、で美しい眺めであったことが解ります。一度行ってみたくなりました。)

地下鉄の入口に立ち友を待つ駅の時計をいくたびも見て
七人兄姉の末に生れし吾なれば四十歳で逝きし母の顔おぼろ
「ありがとう」そのひと言が介護者に何よりうれし笑みもて応う
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:「ありがとう」の犒いの一言が、どんなにか嬉しかったかがよく分かります。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


色気なし食い気ばかりと高笑い
いざ鎌倉老いれば支度くに手間かかり
コンピュータ孫に叱られ習う老
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:コンピューターにチャレンジするお祖父さまの意気込みにエールを送ります。)

被災者の冥福祈る灯籠会
幾山河耐え来し米寿ふり返る
米寿越え白寿目掛けて一歩ずつ
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:米寿おめでとうございます。更にご健康に留意され頑張って下さい。)

大あくびしながらテレビにかじりつき
埃では死なぬと外出症候群
忙しい夢の中でも仕事して
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:多忙中にも積極的に文化活動に尽くしておられる作者。夢の中でも仕事できる若さを頂きます。)

一人っ子大事にされて根性なし
超音響若きも自然難聴に
使い捨てゴミの処理が追いつかず
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:リサイクル管理も行き届かずゴミの山が目立ってきました。)

何事も体験なしで分からない
プラスマイナス人生航路みな同じ
無料券よりも欲しい若返り
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:叶わぬ事と知りながら万人の望むところですね。

花祭り菊人形がすばらしい
女子バレーブラジルチームに金メダル
【セントロ桜会 中山実】
(評:先回と同じ句がありました。客観的に片寄らずご自身の生活など詠まれても良い川柳ができると思います。チャレンジしてみて下さい。)

すぐ消えるあなたの似顔絵砂に書く
半生紀生きて哀しい女の詩
童顔の面影かえらぬ老いの指
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:老いることの哀しさ。童の面影はついぞ返らずですね。)

ただ一語半句求めて迷う日々
求婚はせずに自由に暮らす仲
八十路怖いものなし友が居る
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:良き友は一生の宝。いつも勇気づけてくれます。)

置き場所を忘れて何度も同じ場所
公民が求め続ける世の平和
折れて出るそこから霧が晴れてくる
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:折れまいとする重みに耐えるより折れて出ることで心も軽く安らぐものです。)

補聴器をはずせば雑音なき世界
明日ありと思う心に幸が湧き
ニッコリと挨拶くれた知らぬ人
【サントス厚生ホーム 大矢のぶ子】
(評:上句の「ニッコリ」が佳いですね。いつになく明るい一日となりそうです。)

頼るより頼られる人になりたし
請求書差し出す前に逃げられる
来たか古希わが人生はこれからだ
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:古希はまだまだ若い。その意気込みで頑張って下さい。)

今日も又進む一歩と信じたい
筋書になかった答え求められ
美しい嘘をたまには吐いている
【オザスコ市 平谷伊佐】
(評:美しいとは言えない世の中。たまには美しい嘘でもついてみるのも生きる術かも―。)

プラス思考明日もほどよい風が吹く
定年も時代の波に延びていく
予約など要らぬあの世の広き門
【ソッコロ市 大城戸節子】
(評:これだけは予約無用。いつなんどきでも門戸を開けてくれます。)

長い祝辞脱線したまま続く
うっかりが度重なっていく怖さ
その意気と言われ額ににじむ汗
【パラナバイ市 今立帰】
(評:白羽の矢が立ったからには後には退けません。ファイト。ファイト!)


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