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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年1月号

2015年1月号 (2015/01/16) 俳句 (選者=樋口玄海児)


サングラスかけチンピラの如見られ
口髭にビールの泡つけ父機嫌
九州場所古武士のやうな大力士
虫干しや尋常小学校の通知簿も
【香山和栄】
(評:一句目、サングラスと言えば光線よけに使う眼鏡。ブラジルでは天気の良い日は冬でも使う人がある。特に女の人が使う。使う人は良いと思っているかも知れないが、見る人はどう見ても良くは見えないのが普通。そこでこの句、良い言葉でないチンピラと句にしたところでサングラスの句が出来上がった面白い句。)

雪を見ぬ地に五十年クリスマス
酒も出る女ばかりの忘年会
隣り家も静まりかえる夏の昼
めずらしや大阪橋に蓮(はちす)売り
【森川玲子】
(評:一句目、雪の降らない地、ブラジル・サンパウロから北の州移民として来られ、一度も日本に行かれず老いられたという句であるが、この五十年、長かった。今ではテレビなどで雪の国の写真など映しているが、そのテレビなど見るたび、一度は雪降る国を見たい夢があるように思える句。特に最近のテレビは美しく映している。それを見るたび日本を思い出すのでだろう。この句の場合、雪を見ぬ地となっていますので、雪国を知らない人かも知れない。私もテレビを見ながら雪降る景色は美しいなと思っています。)

もうすぐ朝陽が昇る白イッペー
白イッペーあの世の妻に届けたや
朽ち株に光る夜明けの蛍かな
暁闇の蛍は光るままに死す
【長谷川ふみお】
(評:朝日の昇る五分前ぐらいでしょうか。畑あるいは庭先で見る白イッペーは美しい。近郊では白イッペーは少なくサンロッケあたりで見られるかも知れない。白い美しい花を日の昇る前に見た瞬間は言葉にするのは難しい。)

切り西瓜皮の薄きを選び買う
抱きつきし人抱き返す灯涼し
完熟の庭桃持ちて妻見舞ふ
美丈夫の大きなピアス風涼し
【三原春風】

持ち寄りの料理いろいろクリスマス
一年の憂さを忘れて忘年会
墓参り今年は姉の初盆か
蝉のなくお宮の木々や夏来る
【原口貴美子】

渡り来る立夏の風の輝きて
我が影をゆっくり踏んで夏の朝
浮んでは消ゆる一句やシャボン玉
故郷は遠くなりけり移民の日
【山田富子】

妻カラオケ亭主マージャン町師走
夏の川赤き流れのリベイラかな
コレステロール癒さんと炊く韮の粥
雲の峰移民の妻の夢多し
【野村康】

チラピアの刺身肴に釣自慢
睡蓮の花閉じる頃子等帰る
網焼きの塩味旨きマンジューバ
鸚哥芭蕉小さき庭のはなやげる
【畠山てるえ】

モレーナ美女多しブラジル黒人の日
北航クルーザ待つサングラス大家族
大峠下る山腹放射霧
放射霧右側にセーラ無事下山
【清水もと子】

頂きし手製の句帳ホ句の秋
頂きし句帳に記す春のホ句
行く春やかつてはリオに在りし句友
人がらのにじむ句帳やホ句の秋
【伊津野静】

鉢の蘭小さく咲ける葉の陰に
春眠の覚めて耳鳴りギリギリと
佳句一つ無く百歳の春のゆく
春旱り空ぼんやりと老ひの目に
【伊津野朝民】

マ州にてチラピア刺身いただきし
夏休み孫達あつまり楽しそう
初盆の揃いて参る父の墓
【荒田田鶴子】

爽やかや初夏の日差しに身も軽く
久々の降雨に庭木も生き返り
日本で咲かせて見たしジャカランダ
【矢島みどり】

ダイバー等海底清掃とりくんで
日本の海美しく雪の降る
【三上治子】

老いし移民雪降る国を恋うており
畑日永おやつの欲しき午後三時
夏の月山を離れて太かりし
西瓜切る九人子供皆育つ
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


切り株に太きひこばえ出でて来ぬ藤は日成らず葉をひろげたり
藤のひこばえ生くる命のたくましくその葉の色は紅葉のごと
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:二首とお写生歌である。「藤は日ならず」に作者の感動がある。)

日本の町はキレイと皆言へど芥や紙片誰も捨てなく
日本は野菜の畑が道端にあれども誰れも盗む人なし
道端に野菜ならべて無人店自動車停めて買って行く人
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:道端の無人店。いつでもお金は余分にある。不足することはない「日本の良さ」。)

日本の小包みにスミレの種子もあり友の心ばせ有難く受く
夏の陽にあぶら照りせるゴム林に吾は見ほるる旅遠く来て
機内サービスのおやつを配るも義務的なアエロモッサの固き表情
ビバルディの「春」は心をほぐすなりくり返し聞きそのメロディーを
諦めと云うを知らなき幼児が「おとうちゃん」とひと言よびて只泣く
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】

なに気なく窓より仰ぐ残月に半世紀前の思い出たたす
チクタクと時計の針は進みゆき今年も残りはあと一ヶ月
季のきてイペーの花の咲きさかる国花黄イペー目にあざやけし
【セントロ桜会 大志田良子】

良き先輩良き友どちに恵まれしああなつかしき青年時代
耐えぬれば不自由とても明日がある自然はひとしく光あたうる
離れ住む親子の心は一つなり老いても尚も心かわらじ
【レジストロ春秋会 小野浮雲】

早朝の神想観におくれまじ今日から始まるサマータイム
いく年も狂うことなく盆に咲く紅白の鈴蘭鉢いっぱいに
女性議員二人の辞任は痛かった上り下りの「マ坂」も人生
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】

この年も老人会の忘年会なつかしき友らと肩を抱きあう
卒寿過ぎ気丈なる友多かりき食事一緒に春のひと時
来年も又逢いましょうと元気良く共に幸せ祈りて別れ
義弟の米寿の祝いの贈り物は憩いの園へ日本米と襁褓(むつき)なり
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】

竹棚に糸瓜が三つぶら下がり吾がうら庭の点景となる
八十年以来の旱りと古老言う雨量少なき年暮れんとす
【藤田朝壽】
 今年も余すところ僅かとなりました。歌友の皆様方には佳きナタールと佳き新年をお迎え下さるようお祈り申し上げます。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


水不足汚水たまるも使えない
不足して分かる水のありがたさ
認知症看取るヘルパーの声高く
色々の趣味が老いを忘れさせ
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:卒寿を越されて尚、趣味を生き甲斐とされる作者にエールを送ります。ご健康には充分留意されますように―。)

本筋に余談を入れて口達者
余念なく話を聞くのも生きる術
一年の早さ余生が走り出す
痛烈な批判正義の声を聞く
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:的を得た正論には思わず拍手したくなりますね。)

盆参り帰省ラッシュに乗り合わせ
亡き父母の笑顔偲びて墓洗う
敬老会乾杯ふるえる老婆の手
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:老いた移民妻の分厚い手が浮かんできます。)

見過ごしは出来ぬと老いが顔利かし
未練なく譲り渡して気楽な身
幸せは隠さず話せる友がいる
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:真の友と言える人です。いつまでも大事に付き合われますように―。)

聖書読めと師の声がする晩年に
教育に心すれば良き国に
清貧の乙女の努力にノーベル賞
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:世界中の子どもが学校に行けるようにと教育の権利を訴えたパキスタンのマララさん。世界中の子どもに勇気を与えてくれました。)

イドーゾと呼ばれ我かと鏡みる
胸あつし杖もつ人に助けられ
ご無沙汰を年賀ひとつで穴埋めす
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:賀状のやりとりが出来るのは健在のしるし。互いに思い出して貰うだけでも嬉しいもの。)

叶えたい夢のひとつはまだ内緒
古希などはどこ吹く風とひた走る
名刺など要らぬ証の分厚い手
【オザスコ市 平谷伊佐】
(評:分厚い手が名刺代わり。堂々と差し出して下さい。)

迷惑をかけぬつもりのお節介
口滑り波紋ひろがる内緒ごと
ここだけの話だんだん尾鰭(ひれ)つき
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:尾鰭をつけて泳ぎ回るから要注意。「人の口に戸は立てられぬ」とはよく言ったもの。)

お陰さま一年の幸ただ感謝
来る年も全身全霊尽くしたい
もちつもたれつ今年も無事に暮れました
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:新年も良き年でありますように―。)

ゲートボール紅白試合も又楽し
水道管破れまるで噴水だ
東洋祭今年も盛大素晴らしい
【セントロ桜会 中山実】
(評:リベルダーデの名物行事としてすっかり定着した東洋祭り。今年も大勢の市民を楽しませてくれました。)

親の夢はずして伸びのび子等巣立ち
枯れ葉まで我が頬たたいて夏の風
へそくりの紐ゆるめられ子の笑顔
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:お母さんのへそくりの紐、まだまだゆるみそう―。)

失くしたと思った眼鏡ケース中
年ですね暮れの25街で道迷い
忘年会レッスン重ねた持ち歌で
【サンパウロ中央老壮会 新井知里】
(評:持ち歌で自信たっぷり。割れるような拍手が聞こえてきます。)

シルバー川柳
素っぴんに隣の犬が後退さり 【須田無知子】(男/岐阜/78才/無職)
補聴器をはめた途端に嫁、無口 【佐野由美子】(女/三重/44才/保育士)
LED絶対見てやる切れるとこ 【石井かおり】(女/大分/53才/自営業)
糖尿病甘い生活記憶なし 【日比野勉】(男/岐阜/73才/無職)
新聞を電車で読むのはオレ一人 【西村忠士】(男/長野/71才/無職)
妻乱心オレにもほしい自衛権 【畑和利】(男/北海道/49才/自営業)
同時期にシュウカツをする孫と爺 【口笛太郎】(男/愛知/50才/会社員)
遺産分け位牌受け取る人はなし 【西田勲】(男/北海道/77才/無職)
ケアマネをもてなしあとで寝込む祖母 【角森玲子】(女/島根/46才/自営業)
叱った子に今は優しく手をひかれ 【大原美枝子】(女/神奈川/90才/無職)
脳ボケにSTOP細胞ないかしら 【穴見貴幸】(男/埼玉県/65才/無職)
(社)全国有料老人ホーム協会ホームページより


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