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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年2月号

2015年2月号 (2015/02/15) 俳句 (選者=樋口玄海児)


若水で今朝の薬をいただきし
爪先でツツツーと進む初稽古
夏至の夕俳句の宿題片付けし
墾の夜星空涼しマクコ鳴く
大好きな池崎のマルカの初暦
【野村康】
(評:一句目、西式健康法の一つに朝、コップ一杯の水を飲む。また寝る前にコップ一杯の水を飲む習慣を勧めている。若水で薬を飲むのは良いことであり、その上、このように良い句が出来たら本当にお目出度い。新年の句としてまったくお目出度い。)

冷汁の意外と旨し雑煮餅
露の世に逢える老妻週一度
読み始めは三百五十頁ホトトギス
鰯売りアンダマルシャの愛馬にて
打つよりは逃げるが早し夏の蝿
【三原春風】
(評:四句目、今の人は馬の歩きを知らない人が多いでしょう。この句、鰯売りの馬車の馬の歩きを言い表した句である。アンダマルシャ走らないで、小走りに歩く馬の歩きを現した。馬の歩きを句にした俳句。季は鰯で秋であるが、今でもこのような鰯売りがどこかにおれば、懐かしい。)

行く年を運動不足嘆くのみ
牧牛のまどろみをりし夏至の空
乗り初めはルース駅まで無料パス
薄荷飴口にころがり涼しさよ
【森川玲子】
(評:行く年を運動不足嘆くのみ、ある程度、年を取るとどうしても運動不足はある。それには理由はあるが、年を取ると一番に立ち上がるのが大儀であること。それを上手に句にしている。毎日の生活の中に生まれることを句に出来た事は上出来。毎日の出来事が五七五になっているからだろう。)

スコールや並木も街も一色に
イガポー航く吠え猿の声鳥の声
ハードルを一つ超す度風薫る
風薫る視界三百六十度
滴りを十五数えて視野広げ
【伊野ミツエ】

灼熱の国で古里の雪を恋ふ
闘病の一年乗り越え年おしむ
星涼し久しぶりの雨の後
アマゾンの極暑をさけて聖州へ
【原口貴美子】

この大地永眠の地とす桜咲く
自分史の書き続けおり夏の夜
帰化しても祖国を憂ひ老の夏
卒寿や老いたる話はやめにして
【山田富子】

彼岸花暑に寒さか二度も咲き
毬三つ花花数増えて彼岸花
雛三羽育てアララは初夏の園
【清水もと子】

除夜の鐘花火に消えてしまいたる
パウリスタ大通り人人人の除夜花火
逝く年も倖せなりし吾がブラジル
急かずに休まず歩く吾が生活
【矢島みどり】

母子羊寄り添うクラブのカレンダー
飄々と阿弥陀被りに椰子帽子
縁起物のたたき酢牛蒡おせち食ぶ
【香山和栄】

夏至来たる昼の暑さにくたばれる
夕立ですこし涼しい夜の風
雷で雨が降る夜は涼しくて
【荒田田鶴子】

水不足それに追打ちこの極暑
卒寿し作句のペンも重くなり
今年こそ頑張ろ日誌の年頭詩
【秋元青峯】

山百合の群落続く回り道
終点は学徒の町や駅涼し
駅出れば店早や閉まり夏至の町
【畠山てるえ】

ゆとりある余生に恵まれ年明かす
共白髪仲睦まじく忘年会
孫曾孫集まって賑うクリスマス
【小野治雲生】

十六夜の庭を守は犬二匹
元日や蝶舞ふ庭をもつ移民
十六夜や隣の遠き植民地
山の鳥畑の鳥や初日出
鋏鳥同じ空につばくらめ
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


皴の手がますますしわに此の頃は黒くなったり染みになったり
その昔手鍋さげわが妻が今も達者で小まめに動く
テレビでは子供の時間「新幹線」映されているNHKに
【スザノ福栄会 青柳房治】

珍しやセードロの樹かと幹を撫で友は見上げて確かにと言う
花よりも葉の模様めで培える葵は寒き庭にいきおう
特攻隊に憧れ征きし従兄にてあどけさ残るうつしゑを見る
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:セードロの木を見た驚きと喜びが詠われている。セードロは庭木にしてもよい木。)

アパートの屋上に季節の花さけば小鳥きて鳴く春日ぬくとし
十三人の子等は巣立ちてその息子らが大学に行く齢となれり
老いたれば大事にだいじにしてくれる日々が過ぎおり温かき日々
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:だいじにだいじにの繰り返しがよく効いている。日々の繰り返しもいい。)

二十余の蕾をつけてランひらく年の初めの吾の楽しみ
ご先祖の石碑のめぐりに雨つゆを宿して咲けるつゆ草の花
母と別れし日は夢のごと半世紀住むブラジルを吾は愛せり
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:二十余のつぼみをつけたラン。年の初めの喜びは大きい。ランは四君子の一つ。)

年末に二人の曾孫生まれるとうこの喜びに心うきたつ
枝先を撓ませながらゆったりと風にまかせてゆらぐ百日紅
テレビにて今見し料理に魅せられし娘はいそいそと料理の仕度
【スザノ福栄会 原君子】
(評:料理好きな娘、テレビを見ていて何かヒントを得たのである。今夜はどんな料理を食べさせてくれるか。)

午睡する蚕の夢は如何なる「羽化登仙」か上り桑やる
ハーフにして日語を話す青年の確かな発音うなずきて聞く
娘も姪も還暦迎うる年となりそぞろに思う吾が「終活」のこと
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:混血の青年が淀みなく日語を話す。その発音の正確さに感心してうなずきながら聞いている。)

老人会の忘年会に出席しなつかしき友と肩を抱きあう
子や孫に送られて来し友だちが杖を頼りに近づきてくる
卒寿過ぎ気丈なる友の幾人と食事楽しむ春のひととき
来年もまた会いましょうと手を握る共に笑顔で心もかろく
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:老人会の忘年会の楽しかったことが巧みに詠まれている。共に笑顔で心もかろく別れてゆく。)

寿会の六百人が受講する生長の家練成道場
毎日のスケジューるこなす忙しさ心身ともに我再生す
宝蔵神社に拍手打って祈願する終着駅まで夫婦の無事を
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:受講者六百人とはオドロキである。イビウナの生長の家の練成道場には伯人達も多く集まり修養する。)

長生きし苦労のあとが身に染めど日本人らしさ失わずいる
訪れる子等は立派な社会人自宅で看取れずホームに預け
やりとげた仕事を子等が受けつぎて吾はホームに身を生かさるる
認知症の人をホームで日ごと見て明日はわが身かなりたくはなし
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:ホームでの三上さんのツブヤキが聞こえます。元気で頑張って下さい。)

バレットスの南米一のペオン祭この催しは不景気知らず
日本でトイレに行けば歌がある外へこぼすな松茸のつゆ
ブラジルの選手が試合に出る日には親子そろって共に観戦
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:池田さんのペオン祭の歌を読むたびに、どうしても一度観に行きたい思いに駆られます。)

会員の少なくなりてやむを得ず「ジャバクワラ歌会」幕を閉じたり
西田さん開沼さんに南仙子にぎやかなりし「ジャバクワラ歌会」は
梅崎さんの事務所にもはや集うなくなれど楽しき思い出のこる
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:ジャバクワラ歌会も終に幕を閉じた。盛んなりし往時を想へば感無量。)

同級生の多くは国に還るなく戦地で果てしと聞くが悲しさ
同級生は四十二名、生存者わずか九名戦(いくさ)は惨(むご)し
四十年経て入植地に立ち寄れば見渡すかぎりの牧場となる
あの作を最後に町へ移りたり農道具みな人にゆずりて
この年でまだ杖いらず歩けるが、吾の幸せ父母に感謝す
【ツッパン 上村秀雄】
(評:第二の故里であった入植地、四十年経って行ってみれば牧場となって昔の面影はどこにもない。茫然自失。)

今朝もまた広場に集う鳩の群れ師走の餌を待つかのように
新年といえども我が家に変わりなし昨日のつづきをなす如くいる
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:二首目、この気持ちよく分かります。年始廻りなどしなくなった。)

〔頌春〕
 明けましておめでとうございます。熟年クラブ会長をはじめ、歌友の皆様方より新年の御祝詞を頂き、誠に有難う御座いました。
 本年も何卒宜しくお願い申し上げますと共に歌友の皆様方の御健康と御健詠をお祈り申し上げます。(藤田朝壽)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


どしゃ降りの雨に自然の怒り見る
趣味多彩ボケ防止にと駆け回る
水不足大洪水に無く市民
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:世の中は思うように行かないものですね。)

人類のエゴ平和は遠くなるばかり
めでたやな大黒恵比須の初暦
フランスのテロ許すまじの大行進
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:フランスの風刺週刊紙「シャルリブド」の編集長を含む十七名のテロによる犠牲者への追悼と表現の自由。テロ反対を訴えた抗議大行進が行われた。全仏では三百七十万人が参加したという。)

雑煮まで出る年末餅つき会
ゲートボール船頭多くて負けました
都会では乞食も時間励行か
【セントロ桜会 中山実】
(評:今朝も早くから同じ場所に来ている乞食たち。実際に見た人にしか出来ない川柳。佳作として頂きます。)

常識も世代違えば非常識
よく言うよ金は天下で回りっぱなし
年明ける目標新たに歩きます
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:前向きの心意気にエールを送ります。今年も頑張って下さい。)

数を打ち過ぎて鉄砲底をつき
下手なポ語で曾孫に聞かす鬼退治
善行は人に語らず胸に秘め
【サンパウロ中央老壮会 交告余碌】
(評:見上げた行為です。人様にひけらかしては善行ではなくなります。)

考えることもう何もない畑を打つ
川柳の一筋道に吾が居る
蒼空に真白き雲を見る平和
待ちわびた雨を喜び畑躍る
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:旱魃にあえいでいた畑に青さが甦る光景が目に見えるようです。)

定年後サンデー毎日あくび出る
言うまいと思えど今日のこの暑さ
【サンパウロ中央老壮会 角谷丸太】
(評:地球温暖化の兆しでしょうか。今年の暑さは例年より平均二度ほど高いとか。)

ブラジルに慣れてきたのか腹ぶとり
サウダーデ紅白聞いて涙そーそー
和の群れに誇りを抱いて夢育て
【サンパウロ中央老壮会 与那覇博一】
(評:和のない所に夢は育たない。上句の「和の群れ」がきいています。)

干し上がった湖水ゴミの山と化し
難聴で話出来ぬが読書出来
余分な物みんなに上げて身軽にし
【サントス伯寿会 三上治子】
(評:身軽は即心の軽さにつながる。身も心も軽く余生を楽しく過ごして下さい。)

目に見えぬ被爆未来は不透明
丁寧に生きよう限りある命
痛いとこ突かれてからの人嫌い
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:突いた人の顔見る毎に思わずそっぽを向いてしまう。)

子育てが終わって淋し秋の風
飽食の皿に残るは糖尿病
今朝の靴出発点の音軽し
【オザスコ市 平谷伊佐】
(評:生き生きと楽しい一日となりそうです。)

何食わぬ顔して列にもぐり込む
お返しに頭が痛い年の暮れ
新春の犬はあくびしてよく眠り
【パラナバイ市 今立帰】
(評:すーすーとよく眠る犬がなんとも心にくい。人間様もかくありたい?)

◎席題「新年」 与那覇博一出題

年新た世界平和の夢育て
新暦羊の親子睦まじく
【鈴木ふみ】

新年を子孫集いて祝う幸
初暦羊の顔のあどけなさ
【坂口清子】

川柳会新年句会で盛り上がる
新年のどしゃ降り地固めなって欲し
【山田富子】

食べるにはもったいないよな羊肉
【中山実】

めでたくもないけど人並み御節喰(は)む
【角谷丸太】

メール時代今は懐かし年賀状
白いシャツ新たな気持ちで海に出る
【与那覇博一】





「平和」
風が 悲しそうに 吹きすぎる
何が そんなに 悲しいの
生きているものは みんな 悲しいのよ

風が すすり泣くように 吹きすぎる
何か 云いたいことが あるの
そんなに 窓を ゆすらないで

あなたの ように 世界中を 旅すると
悲しいことや 泣きたいことや
訴えたいことが いっぱい あるでしょうね

ほら みなさんも耳を澄ましてごらんなさい
風の声が 聞こえるでしょう
「平和は何処に行ったの」って
【サンパウロ鶴亀会 井出香哉】

「新日系人」
黒髪に青い目の娘がコンニチワと挨拶した
コンニチワ、日本語上手だね
私三世です
そしてミスチッソ(混血)です
パパが日系二世です
そう言う美しい娘の顔に何かしら
愁いの感じあり 君は美しい
そしてオリエンタルの香りがする
ありがとう、でもパパのパレンチ(親戚)
私とママに冷たいです
それは日系社会から広い移民社会に
出ききっていないからだよ
おじさんの子どもの時と比べれば
良くなっている
ほら、おじさんだって
君から逃げなかっただろう
そうね、おじさん、オリエンタルの香りがすると言ってくれたものね
そうだよ、君のような日系人が
これから増えるんだからがんばれよ
うん、がんばる


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