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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年5月号

2015年5月号 (2015/05/17) 俳句 (選者=樋口玄海児)


まなうらに喜月の被講菊日和
遠山にかがやく黄色アレルイヤ
聖堂の時計十二時アレルイヤ
湯気の立つ堆肥の山に秋の蝶
裏木戸に来りと大声菊根分
【森川玲子】
(評:一句目、喜月さんがとうとう帰らぬ人となった。喜月さんは何をやってもすぐ引き受けてくれて、また何でも器用な人であった。皆にも好かれて年を取らないようで面白く、また物をよく知っていて何の話もできる人であった。惜しい人を老人会は亡くした。喜月さん、深悼します。)

いじらしき減量の孫馬肥ゆる
秋彼岸祖母の巾着なつかしき
反抗期の孫を守る破目鰯雲
初嵐今結ひ付けし蘭憂う
惚け母の口ずさむ和歌詩歌の日
【猪野ミツエ】
(評:一句目、これは孫娘であろう。娘も十歳を過ぎれば娘らしくなっていく。その過程で娘の気持ちの表れ。おばあちゃん、分かってよ。)

さわやかな秋の早朝一歩き
家事はなれ静かな余生秋の日和
老体の友と歩くも楽しけれ
四月より心入れかえ新入生
【矢島みどり】
(評:三句目、老人をいたわる気持ちがよく出ている。このように何でもないことを句にすることも良い勉強になられるでしょう。)

チーズ売りの馬車引く馬も肥へにけり
新米や一汁一菜で過ごす日々
アレルイヤの日和も予報通りかな
老いてなを食事が楽し食の秋
【畠山てるえ】
(評:一句目、私の所でもミナスチーズなど売っているカリーニョ(車)など見かけます。それが田舎では馬車で売り歩くとは、ブラジルはまだ田舎の田舎ですね。それでも馬車で売り歩く方が田舎のチーズと信用してくれることでしょう。馬の足音だけでも秋が来たことが分かります。ブラジルの句として上出来です。)

卓の書に秋日の洩る昼下り
豊の秋父が遺せし農日記
乳牛にナツメロ聞かせ牧の秋
万象の大地しきりに紅葉せり
【青木駿浪】
(評:三句目、乳牛にやさしい音楽を聞かせるとは。良く聞く話です。牛でもやさしい楽を流してやった方が乳の出も良くなるでしょう。)

秋麗の街に二千の徒走競技
さわやかや急がず見送る徒走競技
伯人の日語さわやかフィジオテラピア
水の日やあれこれ節やく教えられ
【清水もと子】
(評:水の日、おそらくブラジルの乾季の五月頃ではないでしょうか。選者も分かりませんが、珍しい季ですから新しい句や珍しい句ができることを信じます。)

生きて来し九十年を秋の逝く
風鈴はしづむ心をなごやかに
雨止り透き通る色秋の空
秋ショールかけて町行く冬を見し
【山田富子】

木沓蘭昔の欧州偲ばれし
久方のドライブの目にアレルイヤ
身に沁むや冷たき色の新メトロ
一人居の夜の窓辺に破芭蕉
【村松ゆかり】

露の身のUTIを出る君を送る
秋鯖の姿寿司とて頭立て
倒れ木に沿うて逃げゆく穴まどい
パスコアの月は卵価も高値にて
【野村康】

向う三軒空家となりぬ秋の暮
陽あれば秋風寒き日のつづき
風あれど動かぬ雲や秋高し
おかずなしで新米平らぐ三杯目
【三原春風】

能筆の句友(とも)みまかりし秋深む
数珠繰ればあるかなきかの秋の風
矍鑠と百歳のホ句詠む詩歌の日
草原に子等乗せ走る裸馬も肥え
【香山和栄】

卓上に菊の花活け家は秋
秋空や天地を分つリベイラ富士
体操の眞只中に秋の風
【小野浮雲生】

中天にオリオン座あり夜の新樹
ヒヤシンス追憶淋し岩山つぐ
ヒヤシンス牧主の友の忌を修す
【青木駿浪】

菜園の秋蝶どれも大きかり
これからは朝霧の畑具割菜
虫の庭裸足の好きな孫二人
竹の子の好きで長生きせし移民
【樋口玄海児】


短歌 (選者=新井知里)


吾が庭のドリアン生れし葉がくれの獣のような実を仰ぎ見る
デザートのドリアン皿に子供らと匙ですくいて笑みうかべ食ぶ
南国の果物なればドリアンは芳香の強く果肉は甘し
【スザノ福栄会 藤田朝日子】
(評:ドリアンを獣のような実とは藤田さん、アッパレです。)

けんかするたねもなくなり老い夫とテレビ見ており言葉少なに
老い夫と二人で暮らすベランダに青空に向き咲けるアジサイ
朝帰りしても信じていし夫は八十路越えわれの意のまま
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:ますさんの正直な歌に拍手です。いいですね。)

雨降らず野菜作りも水不足無駄は出来ないフェイラの買い物
アパートも水が足りなくルア売りの水を買いきて間に合わせおり
秋風がふいて涼しい休日は自転車に乗る人声高に行く
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:涼しくなった秋の様子がよく出ています。自転車が効いています。)

幾度も橋くぐりゆくサッパ船イタコを語るアヤメ船頭
年金のでた夜の二人は腕組んで老いの歌でもともに歌おう
ふと出づるハミングの声柔らかし惚ける日がいつか来るやも知れず
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:イタコ船の歌、情景が見えます。日本の風景が懐かしくなります。)

友逝きて幾年を経し鮮やかに笑顔顕たせて咲くクワレズマ
歌会にて若き友らと交わればパワーもらいて老いも華やぐ
吾が命いつまで支えてくれるやらいとも小さき心臓のくすり
【スザノ福栄会 原君子】
(評:クワレズマに笑顔が重なる逝った友にほろりとしました。)

晴れた日の高台下れば町なかにクワレズマ咲く空は鰯雲
近寄れば幹の蜩なき止んでつぶて飛ばせしこと惜しみけり
豪雨来て町村たちまち湖と化しそれでも聖市まだ水不足
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:本当に何故こんなに水不足なのでしょう。)

紙袋にサンゴ八ツ手の種子ためてそのはじく音待つはたのしみ
年若き詠歌の師よりいただきぬボケ封じとう地蔵のお守り
何事も思う程にははかどらず明日にのばして今日も暮れゆく
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:サンゴ八ツ手の種子、どんな音か気になります。)

父母の家売れしと便より受取りて日本がさらに遠くなりたり
還暦を過ぎて始めし習い事はじをかくのも必要かなと
指を折り短歌を初めて作るとき頭の中の言葉さがして
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:還暦すぎ初めての習い事、ういういしい歌です。たのしみにしています。)

吾が妻は結婚いらい健康で休むことなく働き続け
働らけばおなかの胎児ふとらずにお産の時はいつも安産
昔からお産の時はコトワザに小さく産んで大きく育て
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:お産のこと、今さらながら良く分かりました。)

コンピューター技術の進歩すばらしき共に笑顔で会話たのしむ
今朝もまた広場に集うハトの群空腹なるか争いつばむ
伏してより早やくも五年過ぎ行きて病夫は四月誕生迎う
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:長いご看病大変ですね。お大事に。)

秋雨の上がれば空の晴れて来る秋立つ風のここちよきかな
露の世を生きて八十の誕生日ポ語も覚えず生きられる国
故里のNHKで見るのど自慢熊本弁に有明の海
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:故里への懐かしさがよく出ています。)

その昔となりどうしの幼な友幾十年ぶり話は尽きぬ
友の忌に読経聴きつつ思い出は席共にせし板壁校舎
そびえたつピッコデジャラグワのふもとにて友に囲まれ米寿の佳き日
【サウデ文協老壮部 山田かおる】
(評:米寿の友への寿ぎが出て気持のよい歌です。)

吾病みて昨日につづく今日の友窓辺に白き花置いて見る
道ばたの空地に生えしマモンの木花咲き実のる日待ちて通りぬ
【サンパンロ中央老壮会 武田倶仁子】
(評:マモンの実の成る日を待つ気持ワクワクします。)

日本よりダリヤの球根運びくれ今園内に花咲き誇る
知らぬこと知る喜ろこびを伝えたり新中学生の日本の孫に
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:お孫さんとの会話が手にとるように解り楽しいです。)

いやな事あと廻しにせし幾日が過ぎてミシンに油さしおり
猛暑去り降りて地下水かさ増せば甘露となりて心にしみる
夫逝きて辞書が残りし秋の夜は心ふる里に行きし頃かな
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:さあ、ミシンに油をさしてと元気になられた気持がよく詠まれています。)

時折は荒き言葉もかけし妻予期せぬ茶うけほのぼのとせり
荒馬をけしかけ耕した赤土に一望只々落花生茂る
妙齢の女性に席をゆずられて移り来し方の不満も失せり
【サンパウロ中央老壮会 遠藤永観】
(評:デリケートな男性の気持、勉強になりました。)

コーヒーで栄えし町も牛の町時代は流れてサトウキビ畠
朝歩き始めて早くも六周年年にはひるまず今も自信が
財を成し成さぬ一生人生は人それぞれに生涯を終え
【ツッパン 上村秀雄】
(評:コーヒーで栄え今はサトウキビ。短歌で歴史が解ります。)

吾が夫の九十五才の誕生日友人親族集い祝いぬ
招待客皆にこやかに祝いくれ今日の良き日を迎う喜び
人生の波風越えて今此処に健やかに生きる幸せに感謝
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:ご夫妻とも健やかに生き、あやかりたいです。)

大家族支えし友の米寿の宴園の小鳥も囀ずりており
【新井知里】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


あと何年余生数えて予定立て
怒らずに笑っていれば医者いらず
何もかも値上がり家計四苦八苦
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:上らぬものは給料だけ。財政の貧しさと超インフレで庶民の生活は苦しくなるばかり――。)

いただきます御馳走さまも良き言葉
実直に大地に根ざし生きて来し
モラル無き政界財界民貧し
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:政界財界は堕落の一途。ペトロブラスのラバジャット作戦で汚職の渦は広まるばかり――。)

マチュピッツインカの民の夢の跡
国滅ぶ貧困汚職のてんこ盛り
ドル高は便乗値上げの言い訳に
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:言い訳では脱せない財政の行きづまりをどう切り抜けるのか。厳しい先行きが予想されます。)

梅を見て桜見る頃恋おわる
気分よく一レアルショップで無駄づかい
給料日袋も夢も風に舞う
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:想定になかったインフレ高に庶民の夢は益々遠のいて行く。)

雷鳴に土砂降り来そうで皆急ぐ
雨降って地固まらず土砂くずれ
土砂降りで大川となる都市砂漠
【セントロ桜会 中山実】
(評:毎年のことで驚くにあたらないと、市民はもう割り切っている。)

子や孫が育ち故郷となる異国
移り来て故郷はるか柳友と住む
作付けて農夫の夢は秋を呼ぶ
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:農夫はひたすら秋の穫り入れに夢をかける。)

水不足電料値上げに耐える民
政治家の汚職に勝る罪はない
地下もぐる芋虫肥り芋細り
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:地下にもぐる芋虫を汚職政治家に例えて見ると風刺万点といったところ。)

返信も電話ですます筆不精
不況にも土の恵みのある強み
余生にもびっしりつまる予定表
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:予定はいっぱいあった方がいい。その一つ一つをこなす努力が呆け防止につながるのです。)

進む道自分で選び悔はない
年齢は問わず通れる黄泉の道
親の義務子に植えつける道徳心 
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:その義務も果たせない親が増えた事が暴力、殺人等の要因の一つとなっているようです。)

寡婦の道見事守った母恋し
老母逝き再び会える術もなく
白寿越しし亡母を手本に吾も生く
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:亡きお母様へのあなたの思いを天上界からお母様はきっと見守って下さっています。)

◎席題「喜び」 博出題
やせたねと言われ喜色満面に【ふみ】
慈善バザーボランティアして喜ばれ【ふみ】
プレゼント孫の喜ぶ顔見たく【清子】
人生は悲喜こもごもの積み重ね【清子】
何よりも曾孫の誕生喜ばしい【実】
卒寿すぎ曾孫の顔が見れる幸【実】
優勝の歓喜の中に涙あり【博】
喜びは家族の健康家繁盛【博】

故 纐纈蹟二様(柳号交告余碌)へ
―追悼吟―
賜わりし絵画に師の影浮かべ見て【さだ子】
余碌様思い出いっぱいありがとう【さだ子】
安らかにいと安らかに憩いませ【さだ子】
―遺句―
見過ごしは出来ず重い腰を上げ【余碌】
下手なポ語で曾孫に聞かす鬼退治【余碌】
他所事と思いし津波の報に哭く【余碌】
求められ手先器用が物を云い【余碌】
善行は人に語らずひた隠し【余碌】
充分にやる気も底に力なし【余碌】
未練なく譲り渡した身の軽さ【余碌】
大文字書きおろしたり一線に【余碌】


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