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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年8月号

2015年8月号 (2015/08/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


ブラジルは飢へを気にせず木藷掘る
木藷汁家族ぬくもる顔となり
スイナンやパルケ賑はう定休日
山家みな灯の消へてをり虎落笛
お新香にご飯で足りるおでん鍋
【畠山てるえ】
(評:一句目、これは土民の話ではないでしょうか。日本人であれば、今はこのような生活はないと思いますが、入植当時の思い出として句ができています。今から五十年の前の話のようです。二句目、ブラジルではよく公園には赤いスイナンが植えられている。その赤いスイナンの公園が賑やかになったと句は出来上がっている。田舎の公園でも町の公園でも良いが、ブラジルの公園を明るくした句である。)

巻上る大豆埃りよ輸出港
サイロより流れる大豆待つ船に
アボブラの餌を乞う豚の声日暮れ
アボブラの色良き菓子やジュニナ祭
アボブラを楽器の如く肩にかけ
【清水もと子】
(評:四句目、アボブラの菓子ジュニナ祭に出た風景が良く出ている。子供等は喜んで食べてたでしょうね。五句目、ブラジルの農産物は皆大きいが、アボブラもその一つ。それを楽器のように肩にかけて運んでいる景をよく出している。)

老友と散歩も楽し冬日和
同居の娘気付かい呉れる寒さかな
日だまりに寄り合う雀等冬日和
冬来る煮込みうどんの旨さかな
【矢島みどり】
(評:四句目、ブラジルの冬は昼間は暖かですが、夜になると急に寒くなる。そのような夜は温かい食事が良く、またほしくなる。老いが近くなると特にそれを感じる。)

マンジョッカ料理教わり移民初期
二世三世となり祝ふ移民祭
海際の街道色どる花スイナン
冬休み祖父母の供で温泉へ
【原口貴美子】

誰れ彼と再会嬉し移民祭
マンジョッカを薪割るごとく切り分ける
冬帽子鏡の中に老いの顔
青空にスイナンの赤突き刺さる
【森川玲子】

月光を浴びながら帰途満足す
歩ける云うが嬉しく冬の町
冬のふぐさしみびくびく吟味する
【山田富子】

虎落笛荒野をまたぐ高圧線
痛み止めになる枇杷の葉のピンガ漬
恋人の日珊瑚のネクタイピン贈り
冬日和模様替せし隠居部屋
【香山和榮】

陽の恵み膝にすりこみ日向ぼこ
肩寄せてイペーローザの落花浴ぶ
回転ずし娘と向き合ふて冬ぬくし
愛人の日王冠かけし恋想ふ
【猪野ミツエ】

一睡のあとの夜長をどうしよう
落葉踏む移民二世も九十才
冬ぬくし入院の友見舞う午後
【小野浮雲生】

虫好きな小鳥畑に来るは来るは
嫌われている芋虫にも過去ありし
ミナス州へ通じる径の今年竹
風あれば風を友とし今年竹
冬去の日フェジョンアーダのうまかりし
ノルチスターのお伽話や径焚火
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


スマートフォン楽しそうなりおしゃべりがどんな場所でもおかまいなしで
認知症自分の家がわからなく道行く人に尋ねてみても
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:どちらもユーモアのある楽しい歌ですね。)

冬日和Tシャツブーツの若者ら街を行きたり颯爽として
移民祭おわりて亡き父母偲びいし今日も一日暮れてゆきたり
「老壮の友」着かぬいらだち今日も又寒きひと日が暮れて行きたり
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:「老壮の友」を待っていて下さる気持ちありがたく思います。)

ブラジルに移り住み過ぎ半世紀東北生まれも寒さ身にしむ
季節来て紫あざやかイッペーがビルの谷間に美わし見ゆる
織姫と彦星さまの逢える日が今年目前七夕まつり 
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:サンパウロの寒さ、行事が良く詠まれていて情緒があります。)

八月は夫逝きし月サントスに上陸の日も八月だった
七夕祭りリベルダーデで踊りいて老の願いの短冊むすぶ
芸能祭日頃の励み甲斐ありて入選うれし友と抱き合う
【サウーデ文協老壮部 山田かおる】
(評:入選のよろこびが伝わってきて良い歌です。)

朝の町初冬の風の寒き中マンジョカ売りは声高に行く
青空にイペーロッショの花盛り何とあでやか国家の花は
ふる里は大雨避難警防区NHKにくぎ付けとなる
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:NHKを観られる国になりありがたいですね。)

岐阜県に嫁入してる吾が娘親子三人里帰りする
二回目は孫は小学子供等と言葉わからず手まね足まね
十年ぶり孫は立派な大学生ブラジル好きで又来るという
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:今回は続きものを三首楽しい孫さんとの情景。こちらまで嬉しくなります。)

リハビリに手摺に頼りて階段を上がりする今日の始まり
サッカーの試合に土で汚れたる七歳の孫のユニホーム洗う
娘と孫の来るとの電話枝豆を青々と茹でひたすらに待つ
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:「枝豆を青々と茹でひたすらに待つ」。いいですね。胸にぐんと来ます。)

曾孫らの名前を違えず覚えるも卒寿の吾の呆け防止なり
すこやかに生れて育つ曾孫は四ヵ月過ぎれば重くて抱けず
勝越しを決める一戦魁聖に拳握りて吾も立ち上がる
【スザノ福栄会 原君子】
(評:魁聖はわがブラジルの星ですね。私も毎朝応援しています。)

足わるき夫を乗せて車椅子押しつつ秋の公園をゆく
カラオケでもらいしトロフィは下手はへたなりにわたしの宝
たまりたる二十余りのトロフィーはどこへもやらず部屋で眺むる
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:沢山のトロフィーは宝ですね。もっと増やして下さい。)

冬らしき寒さ続きてアパートでゆっくり出来る身贅沢と思う
再診の医者の診立てはまだまだと言われてがっかり骨折れし身は
今日ひと日無事に過ごせし幸せを感謝で頂く夕餉のおいしさ
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:無事で過ごせること、これより他にありませんね。よく詠まれています。)

どんよりと空はくもりてこの朝のユーカリ林黒ずみて見ゆ
印字打つ友はたのもし誤字ひとつ出したくなしと言いて励めり
靄こむるユーカリ疎林あかるみて水銀色の朝日が昇る
【スザノ福栄会 藤田朝壽】
(評:朝の情景が良く表れています。)

永雨降る待ちに待ちたる雨なれど寒さこたえる八十路の我が身
秋風に夕空晴れて枯葉ころころ急ぐ家路に夕餉の香り
【サンパウロ中央老壮会 武田伹仁子】
(評:待ちに待った後の雨なのに寒さはこたえますね。今年の風邪は特別ですので気をつけて下さい。)

家事すみて夕暮時に庭に出る銀木犀の香りほのかに
一年の留学終えて帰国する息子の部屋を整えて待つ
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:一日のほっとした瞬間に気がつかれた銀木犀の香り、よく伝わってきます。)

疎ましきことは捨ておき退院後花咲く庭を楽しく巡る
何時果てん生命を想い新聞の死亡通知の年に目が行く
八十路すぎたる吾に百までと毛糸編む娘に心温もる
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:退院なされた御様子おめでとうございます。娘さんのためにも長生きなさって下さい。)

逆境を与えることで芽が出るとキノコの講師きびしく話す
冷蔵庫で冷やさる目にも遭いながらキノコ芽を出すそのいとしさよ
みやげにとイナゴの佃煮いただきて食めばたちまち幼にかえる
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


皆違う物差し持って生きてゆく
生き残りかけてギリシャの大芝居
生活苦に拍車を掛ける物価高
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:それぞれが持つ物差しによって人の生き方も変わるもの。人それぞれの人生を物差しに託してさらりと詠み上げた一句。お見事です。)

万人の願い短冊笹に揺れ
相次いで愛犬逝きて庭広し
インフレー不況も関せず年金者
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:織女星と牽牛星に万人の願いが届きますように―。)

そっくりと指されて恥かく投稿句
早朝の散歩楽しや哲学の時
日向ぼこ川柳ひねって呆け防止
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:川柳や俳句は十七音字の短い語句での作句ですので類想、類似句によく出会います。あくまでも自分の創作だと言い切れるものなら別に恥じることはありません。余り気にすると作句も思うようにできなくなる。類似、類想句を避けるためには常に新しさを求め、ユニークな作品を心がけるようにしましょう。)

かなしみを言えばロボットおじぎする
ぼろぼろと期待のはしから消える夢
やわらかく包めば小鳥掌から逃げ
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:かなしみが通じたのかロボットがおじぎをしてくれた。錯覚図にしても心温まる一句です。)

さすがです大統領の住む家御殿なみ
動物園で初めて生きたパンダ見る
地上だけど宇宙船にも乗ってみる(ワシントン観光記)
【セントロ桜会 中山実】
(評:素晴らしい観光ができてよかったですね。それもこれも健康あってのこと。健康第一にこれからも頑張ってください。)

移民史の原始の森は消えたまま
原点に戻れと故郷の友が呼ぶ
原点に戻れば己の道が見え
自分史にならぬ言葉を書きつらね
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:開拓移民の夢と汗とともに広大な原始林が消えてしまった。夢の跡を見るのみで、あの鬱蒼とした原始林を私達は再び見ることはできない。自然界のスケールの変遷を詠んだユニークなこの一句に感動しました。今回の特選句としていただきます。)

三世代鍋を囲んだ笑い声
腹立ちを壁に聞かせて一人言
浅学の句作辞書に手を引かれ
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:三世代の笑い声が聞こえてくるようです。三世代揃って鍋を囲む大団欒に惜しみない拍手を贈ります。)

引っ越しも知らず庭の木春を告げ
数知れぬ引っ越し最後はあの世行き
父親の目から見る彼みなアウト
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:一抹の寂しさと春の歓びをミックスした佳吟です。上句「引っ越し」と下句「春を告げ」の表現力、お見事です。)

老いる程頭の切り替え難しい
重責を果たしてようやくアポゼンタ
きつい坂ゆっくりだけど登り切る
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:「三つ児の魂百まで」とはよく言ったものですね。)

眼鏡なしで書けば読めない文字となり
インフレーに二レアルも金と皺のばす
インフレーに栗まんじゅうも痩せて来る
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:初めてのご投句のようですが、三句ともよくまとまっています。川柳の基本を心得ておられるようですので期待しています。次回の投句をお待ちしています。)

あれこれと言う人も居て会があり
久し振り握手をしたが名が出ない
百才を目標に今朝もウオーキング
【イタペチ万寿会 檀定則】
(評:多数の発言があって会は成り立つもの。大いに発言してください。)

※たくさんのご投句の中から佳作三句を選ばせていただきました。百才を目標にしてこれからも頑張ってください。次回のご投句をお待ちいています。

◎席題「残る」 ふみ出題
生きてきた証も残さず死んで行き【博】
生き残り諸行無常の響きあり【博】
大から小になってもシャープ生き残り【清子】
残らずに出来れば皆と死にたいな【清子】
お陰さま事故にあっても生き残り【実】
卒寿すぎまだ残ってる生きている【実】
千年の名作今も生き残り【ふみ】
拷問に耐えて獄中に生き残り【ふみ】


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