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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年9月号

2015年9月号 (2015/09/15) 俳句 (選者=樋口玄海児)


文学を捨てしに非ず炭を焼く
粗壁の一間でありし炭を焼く
ほうれん草母は一家の栄養士
うどん食い競技もありし梅見かな
石の相いよいよ尖りて冬の滝
【猪野ミツエ】
(評:一句、二句目、若い時はいろいろ仕事に夢があったが、今は炭を焼いている。文学を捨てたわけではなく、山で静かに文学の本を読み、若い時の夢を追い続けると言っているようだ。この先を見たい。)

風光る海原を背に移民像
帽に鳩止まりて東風の移民像
松根油掘る女学生終戦忌
終戦忌軍服縫ひし十四才
【香山和榮】
(評:一句、二句目、サントスは多くの移民が着いた。港の風景を上手に写生した句。私等移民にはサントスは思い出の港で、忘れられない港。評者もよく行きました。五十年前はまだサントスの海は美しく、海水浴、釣りなど楽しんでいた海です。句は東風の吹いている港の感じが出ています。また、今年は海上自衛隊も来てサントスは多くの人が行ったと言っています。)

病む友の手を取り歩く春の朝
餅やいて昼のカフェや冬温し
雨上り移民祭も盛り上り
祖母おればボタ餅作り移民祭
【矢島みどり】
(評:一句目、近くに住んでおられる親友でしょうか。春の朝の散歩、病んでおられた友も散歩できるぐらい元気になられた。温かい気持ちの句。)

連山を木魂(こだま)返して山笑ふ
連山は墨絵の如き山笑ふ
去り難き余情を胸に白椿
種袋天に透して音ありき
【青木駿浪】

公園の桜とつつじ競い咲く
水洟をすすりて子供等鬼ごっこ
時雨虹立ちてうれしや結婚式
【原口貴美子】

声は何処ビルの屋上ベンチビイ
冬温し愛犬ファシオンカミニャーダ
冬日和ペット犬めかして浜行進
【清水もと子】

燃えさしの木の火を散らすジュニナ祭
読めば直ぐ疲れて病む目冬の虫
汗かいてある椎茸返せば裏に虫
【小野浮雲生】

スイナンや楽の一団広場埋め
帰り咲くプリマベーラの門くぐり
冴ゆる夜の吾が靴音に怯えけり
【畠山てるえ】

冬の日や陽に当たれよと子の電話
遠方にスモッグの層棚引ける
優勝のサッカーチームや時雨中
【村松ゆかり】

はるか見るサントス街道冬の滝
春の朝野鳩に飯粒おいてやる
耳に程良きジャトの高さ春の空
【三原春風】

轡つけ馬の居眠り冬日中
赤子抱きくしゃみこらえる苦しさよ
咳の子の額に手を置く若きパパ
【森川玲子】

カンピーナスは奥地の出口冬の晴
霧晴れてイツーの石山美しく
ノルチスターのお伽話や道焚火
キリストの泪の花に女客
一声も二声も良し初サビア
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


母の日に娘に貰いし蘭の花十五年ぶり蕾ふくらむ
秋深き紅葉の山に霜降りて赤き葉の縁白くふちどる
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:よく整っています。ふくらんだ蕾はさぞうれしかったことでしょう。)

世の中は成るようにして成って来たこれから先も成る様になるか
はなやかな神戸の船出勇ましく五色のテープ風にはためく
【ツッパン 上村秀雄】
(評:あの船出の光景は誰にも忘れられない光景ですね。懐しいです。)

NHKニュースは流す熱中症祖国は猛暑死亡者もありと
この日はと忘れてならぬメモをしてその紙いずこ置き忘れたり
唄にある上を向いては歩けない特に歩道は足もと注意
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:この国はなんにつけても反対ですね。足もとは特に注意ですね。楽しい歌です。)

トロントの水泳競技にブラジルの旗が上がりて金メダル増す
トロントのバレーのチームはアメリカの知恵に負けたり次回に期待
日本人なれど応援真夜中にブラジル勝てと瞳をこらす
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:真夜中にブラジルに応援する気持ち、いい歌ですね。)

昼食に魚おいしく頂いて名前聞いたらチラピヤという
食後には暑い時には果物は冷やしたスイカ一番旨し
今年は七十名の知人らに吾が誕生日祝ってもらった
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:いつもながら明るくて楽しい歌ですね。)

小雨降る冬の寒さに着ぶくれて電灯たよりに作歌の夜更け
寒き日は熱き汁粉の差入れに団子丸める楽しき一刻
父の日に集う子等待つ老夫いま九十六才健やかなりき
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:ご夫婦健やかで長寿、父の日が待たれますね。)

空色の表紙に冴ゆる黒き文字「光源都市」はわれらの歌集
先人もよろこびいまさん「光源都市」第七集の世に出でし日を
サンパウロ歌会われらの待望の「光源都市」第七集成る
【スザノ福栄会 藤田朝日子】
(評:われらの歌集が実ったよろこびがよく表れています。)

老いたればほしいものなど何もなしふたりの元気が何より幸せ
ソファにてテレビを見つつ足を上げ元気元気と歩くたいそう
ナンバーワンの詩を詠むことは無理なれどふたりでいつまでも続けたい短歌
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:お二人でつむぐ短歌最高です。)

いつまでも寒さつづけど春の使者訪い来し思いす沖縄ざくらに
青空に旋回しつつはげ鷹は下界見下ろし何探しいる
渾身の力で開かぬ瓶の蓋孫は手品の如く開けたり
【スザノ福栄会 原君子】
(評:本当に老いはさまざまなことに出てきますね。孫さんの手品ありがたいことですね。)

春兆す山の棘をかき分けて母とぜんまい摘みし遠き日
アテネより娘の土産のさざれ石古代の海の潮騒が顕つ
身をよせるベランダの隅の日向ぼこポンカン一つ手に転ばせて
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:ポンカン一つ手に転ばせての日向ぼこ上手です。)

スザノの町高層ビル増え近代都市十年たったらどんなになるか
ベランダに立ちて眺めるスザノの町思い出多い第二のふるさと
旅先で街見えくれば教会の尖塔夫とふたりでさがす
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:スザノの町への愛がよく出ています。)

生きること未だまだ楽し手術後の一年感謝の日々を暮らしつ
向き合いて白き飯食う幸せを手術後に汝がしみじみと言う
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:仲の良いご夫婦、羨ましい限りです。)

台所修理をすれば裏住い生活乱れ穏やかならず
騒音とほこりの中で四十日まだかまだかと山鳩が鳴く
家修理ならしならしてやっと出来ありがたきかな老いの楽園
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:さぞ大変だったでしょう。でも楽園になり楽しいことでしょう。)

嫁ぎ来し私と一緒に来しミシン七十年経ちいまだよき音
カンポスで桜の下にねころがり青い空と桜仰ぎぬ
突然に贈りくれたるこの歌集その友情に一気に読みぬ
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:一気に読まれた歌集、贈られた方もさぞよろこばれていることでしょう。)

日光浴カルシューム吸収うながすと医師のことばを思いつ歩く
ベルサイユ公園モデルに造りしとムゼウの緑に憩える幸せ
車窓より見上げる空にいわし雲水不足のこと不安がつのる
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:日光浴の大切なこと、上手に詠まれています。三首ともよく出来ています。)

朝ごとのメトロの中の靴や靴いろいろあれど同じものなし
この頃の心地よい陽に誘われて散歩がてらの昼食となる
冬の朝満月西にはりついて街は静かに明けてゆきたり
【サンパンロ中央老壮会 武田伹仁子】
(評:独特の個性のある詠みぶりに感心します。)

満開のツツジのピンクのその向こう雲一つなく空が広がる
一年振りに帰伯せし子の問いかけはいつも変らず「夕飯なあに」
終戦にちなむ番組流れると父母に聞きし光景思う
【サンパンロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:二首目、息子さんへのなんともいえない愛情が表われていていいですね。)

冬ぬくし練習艦の甲板に女性隊員凛々しき姿
舞台では「日本の心」を歌ってる日本語だけでは解らぬ心
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


心血をそそぎ己の道を行く
句作の火もえて感謝の恩返し
運不運かついで人生ひた走る
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:かついでひた走るのみ。神ならぬ人の行く道は唯一それに等しい。)

腹空けば何でもうまいB級グルメ
天高く中性脂肪ふえて杖
国守るリーダ出でよブラジルに
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:去る十六日に三度目となる反政府デモ〔マニフェスタソン〕が行われた。一方ではジウマ大統領擁護のための集会が行われるなど、国守る真摯な政治家の出現はまだまだ程遠いようです。)

シュラスコとビールで祝う父の日を
郷土食食べてなつかし母の味
婦人部が大活躍の郷土食
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:今回の日本祭りでも各県人会婦人部の活躍が目立っていました。)

大好きな花と団子に満ち足りて
前頭葉使いきったる今日の句座
愚かさを重ねて人類どこへ行く
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:愚を愚とせずもっぱら科学を追い続ける人類の行く末を示唆してお見事。)

眠る間のいびきがショーとは味気ない
海に来て自然に足が走り出す
桜散り昔の恋を思い出す
【サンパウロ中央老壮会 与那覇博一】
(評:桜が散るようにはかなく散っていった初恋人の思い出でしょうか。)

三十三キリストの天国行きは早すぎた
ブラジルサンバ今じゃ日本で大はやり
日本祭り聖市名物世界一
【セントロ桜会 中山実】
(評:資金難で存続が危ぶまれているけれど、出来れば継続していってほしいもの。)

花吹雪わたしもいつかひとひらに
長所にも短所にもなれる人の好さ
書き直す事増え歳を知らされる
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:辞書を手に老化現象を意識しながら何度も書き直していく。それも老化防止の一つだと割り切って頑張りましょう。)

見栄を捨て肩書きはずしボランティア
胸あつし杖もつ人に助けられ
逃げるより背負えば気持ち晴れてくる
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:難関も心を決めて背負ってしまうと明るくなるもの――。)

聴いている振りして欠伸かみ殺す
のどの奥まで見せてする欠伸
しつこいと言われてはっと口つぐむ
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:余り執拗にまつわられると嫌気がさすもの。素直に熟考できるセンスを持ちたいもの。)

趣味ありて貧乏ぐらしも気にならず
ガスの火を止めてゆっくり電話受け
ほどほどに叱ってすます反抗期
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:余り立てつかずに「そうか」「そうか」と聞き流すのが無難です。)

目を細めしっかり噛んだ亡母憶う
広い土間杖はいらんと言った亡母
そよ風ときれいな空気に惚れた旅
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:旅行好きな美智さん。これからもお元気で旅行を楽しまれますように――。)

徳という姿かたちの無い宝
友悼む宿題多く残された
悼むけど涙をふいて歩こうよ
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:いつまでも立ち止っていないで前向きの姿勢で――。逝った人も天上界からエールを送っています。)

永別の言葉を詠んで句作締め
晴天に恵まれ友の追悼式
老人をみんなで囲む温かさ
【オザスコ市 井上風車】
(評:老人への思い遣りが伝わってきます。)

大切に保管しすぎて場所忘れ
保養なら我が家に勝る所なし
手鍋さげてもそんな時代もありました。
【オザスコ市 おちば光子】
(評:現代では通用しない、死語に等しくなりました。)

保存食若者あまり好まない
支え合い生き来し日々を懐しむ
保育器で育った孫も花嫁に
【オザスコ市 太田孝江】
(評:お孫さんの花嫁姿に見惚れるお祖母さまの顔が浮かぶようです。)

◎席題「呆け」 ふみ出題
インフレで呆ける暇なし金勘定【博】
ボケるとは頭の中が錆びること【博】
川柳をたくさん作ってボケ防止【清子】
呆けぬうち出来たら逝きたいあの世へと【清子】
息子から呆けたと言われ腹を立て【実】
卒寿過ぎまだまだ呆けていぬつもり【実】
まだまだと思えど始まる呆けの道【ふみ】
幸不幸呆けてしまえば分からない【ふみ】


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