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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年10月号

2015年10月号 (2015/10/16) 俳句 (選者=樋口玄海児)


この道のこの風が好き山桜
晩年は海べにすみたし星月夜
冬の月魚にも年ありしとや
大きくてまるく浮きゐる冬の月
【山田富子】
(評:一句目。作者は今、町で生活されている。この句は前に過ごされた所の思い出を句にされたものでしょう。俳句的な詩情が溢れよくできています。二句目。魚にも年があるだろうと言っているその通り、一年もの、二年ものと魚によって旨さがあるでしょう。)

蓬摘み餅をつくれとねだる子等
二世妻義父母に仕え畑を打つ
二世妻子等を育てて木藷植う
春日影ほほえむ熟年地蔵尊
【香山和榮】
(評:一、二句目。一世移民に素直にしたがっている句。現在では珍しい百姓の一家。これも昔を思い出しての句のようだが、上手にできている。)

極秘の書守りて迎ふ終戦日
木藷植うファコン使うもなれて来し
頼母子の空掛けて来し山笑ふ
東風吹くや久方ぶりの故郷便り
【猪野ミツエ】
(評:二句目。マンジョカの植え方は慣れてくれば何でもないことである。ブラジルに来ての者には何と面白い植え方と思われたことでしょう。古いマンジョカの木はファコンで二十センチぐらいに切り植える。それが掘る頃にはあのようなマンジョカに太ります。ブラジルに来る前に、ブラジルでは三百六十本のマンジョカを植えれば食っていけると言われた言葉を思い出します。)

子等遊ぶ犬駈ける路地より鳥巣立つ
裏町の人等は親し巣立鳥
イベントに奉仕の娘花リンゴ
お湿りは心潤す春の雨
【畠山てるえ】

老友の元気な姿春うらら
春の雲突き刺す様にアパート建つ
花リンゴ咲いてはなやぐリンゴ村
水張ってキラキラ光る春田かな
【原口貴美子】

葱坊主ハイカラ頭となっていし
九州の地図に似てゐし春の雲
口づさむひばりの歌や花リンゴ
独立祭婦人部隊を先頭に
【三原春風】

眼をつぶるホームの地蔵春うらら
駐車場の自動車の下の猫の恋
花リンゴサンジョアキンへ九十九折
春耕や土くれ叩く孫二人
【森川玲子】

初雷や国民こぞりて雨を待つ
君子蘭葉の隙間より笑顔見せ
綿のごと地球を包む春の雲
【村松ゆかり】

暖冬や老もうす着で町散歩
若者はショツにTシャツ冬ぬくし
ブラジルの淹れ立てコーヒ旨かりし
【矢島みどり】

焼き鯔を買えばファロファ添え呉れし
マンジヨオカ欠かせぬ地方魚料理
イペーロザ咲いて明るし海通り
落葉して頂きのカペーラ姿見せ
【清水もと子】

父の日を祝ふ息子も四十才
秋晴れやリベイラ冨士の美しき
【小野浮雲生】

とつ国に老いて春眠ほしいまま
アラポンガ森の夜明を知らす声
めずらしく鹿の声聞く春の里
春の里移住地の名はアリアンサ
平凡な山の様変え今年竹
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


NHKテレビニュースの桜島三十年前の白煙いずこへ
故里の祭りの賑わい思い出し子供の頃の晴着なつかし
高齢化進む世になり我とても足腰きたえ気力を常に
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:年が進むと足腰、気力みんな大切ですね。お元気で、三首とも整っています。)

週一度夫につきあい散歩するムゼウの顔触れいつも和やか
人に慣れ広場の鳩は逃げもせず吾と並びて歩くやしばし
その昔新婚旅行の名所なるムゼウの庭を今朝も散策
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:ムゼウ〔美術館〕の庭が新婚旅行の名所だったのですね。歌でこうしたことを知って嬉しいです。)

がんこだった今亡き父が父の日に泣いたことなどふと思い出す
メトロ中イケメン青年わたしらに席ゆずりくれほのぼのとせし
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:日常の思いがよく出ています。)

朝ぼらけ名は知らねども暗闇に鳥の囀りリズミカルなり
まだ暗き朝を歩めばビルの上下弦の月は冴え輝きぬ
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:リズムが整ってきましたね。)

冬日和友と連れだち散歩する付き人やさし吾が手とりくる
夜行症の友は夜中に覚め起きて妄想の中をさ迷うという
信仰の深き人なり片時も感謝の祈り絶ゆることなく
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:年を取ると色々な事がありますね。お元気で。)

暖かく母のそばにはいつも父われも老いたし夫婦仲良く
寿司刺身食べつつはずむ父の日の父母は笑顔で見守りおりぬ
おめでとう妹からのこのメール心ぬくもる誕生日なり
【サンパウロ中央老壮会 山城みどり】
(評:このような歌にはこちらが励まされます。とても良い歌ですね。)

奥地では雨も降らねば冬も無し秋から春へ飛びこしたよう
吾妻と六十七年つつがなく過ごす毎日ささえ合いつつ
友は言う終り良ければすべて良し何不足なく暮す毎日
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:一カ所も直さず頂きました。お幸せで何よりです。)

あたたかき朝の日受けて庭の木にインコ姦し群なしうごく
太陽はありがたきかな日々洗う夫の汚す衣ただちに乾く
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:暖かい朝、インコが群なしている庭の光景がよく現れています。)

旧姓で呼び合うたのしさ郷友会おいしいシュラスコ頬ばりながら
幼名で呼び合う友もだんだんと少なくなりて会五十回目
せまり来る短歌の締め切り近ければ宿題のごと考えおりぬ
【サウデ文協老壮会 山田かおる】
(評:自分の一番言いたい事を人に感じさせることは本当にむずかしい事ですね。でも少しの間に上手になっています。)

庭一面歩道を照らす満開のつつじの丈は三メートル越す
夢であれ友はぽっこり天国へ此の世の無常に涙枯れたり
容赦なく老いは加速度迫り来る気を枯らすなと我にムチ打つ
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:迫り来る老に気を枯らせないようムチを打ちましょう。)

英霊の眠れる靖国神社にて献詠の歌いま披講さる
吾が短歌風情なけれどピンボケの写真見るがに思い出のこる
石灯篭の台座につがいの小鳩居てかたえのツツジいま花ざかり
【スザノ福栄会 藤田朝日子】
(評:小鳩とツツジが目に浮かびほんわかします。)

今年また茗荷の花に出合いたり洗いし肌は貴婦人の如
大歩危小歩危御免とつづく駅をすぎ入りゆく高知の町は明るし
秋の日差し傘にさえぎり幾年ぶり詣でし母の墓畔をめぐる
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:幾年振りのお母様のお墓、さぞ喜ばれたことでしょう。)

横になり憩えばすぐに眠りいる吾は近ごろ眠り人形
若き日の自慢話に花が咲き賑やかなるよ老いの集いも
【スザノ福栄会 原君子】
(評:気の合った同志の会は楽しいですね。自慢話を聞きたいです。)

来年は百歳になる友の居て声はずませて歌うカラオケ
立ち合えば一瞬の間に勝負見え白鵬の手足に包帯もなし
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:カラオケも相撲も面白いですね。百歳はえらいですね。)

日本祭り息子夫婦に付き添われ車椅子にて会場めぐる
シクラメンは白き花つけベランダを明るませおり冬の朝あさ
残る日の一日一日を大切に夫と歩める八十路の坂を
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:とても優しい歌ですね。)

なり花の咲きたる日より見守りて今朝とげ痛き胡瓜を千切る
呆けるには早しと思うパイネイラの古木に花の咲くをし見れば
誘われていで湯に向かうバスの旅変わる景色を飽かず見て行く
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:とげ痛き胡瓜を千切るの歌、お上手ですね。)

忘れじと舌に転がし来しポ語が話しかけられ途端に消えし
朝まだき職場に遠き人ならん車庫を出る音かすかに伝え来
昔とは世になき時間子を背負い給餌に励みし鶏舎今なし
【サンパンロ中央老壮会 野村康】
(評:胸をよぎる事がよく現れています。)

雨を待つ乾いた土に大粒のやっと届いた雨の足あと
朝焼けの真赤な空を見上げては今日も待ってる恵みの雨を
夜明け前鳥のさえずり始まりて季節のうつろい声で知らさる
【サンパンロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:今年ほど水不足に困り、水を待っている年はありませんね。それがよく詠まれています。)

休憩の時間となれば園児等は芝生の上を転がり遊ぶ
健康が老いの幸せと新鮮な朝の空気を吸いつつ体操
読経の鐘堂に響きおごそかに先亡移民の忌を修せられる
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:本当に老いの幸せは健康ですね。皆さん、お元気でお過ごし下さいませ。)


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


好きなもの取り過ぎ悔いるキロ食事
国際化島国根性埋めて立つ
政治家の汚職ゲーム終わりなし
【サンパウロ中央老壮会 新井ひとし】
(評:掘る程に汚職の渦は広がるばかり。この渦が埋まるのはまだまだ程遠いようですね。)

句作の灯のんびり余生食って逃げ
吾が齢数えぬままに登る坂
水不足打ち消すような雨の音
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:水飢饉の不安を押し流してくれるような嬉しい雨音。「雨々降れ降れもっと降れ」といったところ。)

つれ合いの文句多くて聞き流す
労わりの心で紡ぐ夫婦愛
労わりの言葉でにごす残業費
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:労わり合い励まし合って、この紡を大切に―。)

労わりの言葉じわじわ身にしみる
明と暗人は心に合わせ持ち
あれこれと文句言うのも愛のうち
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:文句を言ってくれる人があるうちが花だと思って素直に受け止めてほしい。)

人間が恐くて走り出す夜道
憎しみも捨てると愛が甦える
見えぬ愛宝と信じて積んでゆく
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:この愛は尊い。見えずともあなたの心の中の宝となって輝いている。)

晩年は遊ぶ時間が多すぎる
杖がわり嫁にすがってショッピング
文句多くなって子等も成長す
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:何かと文句言うようになったらもう大人ですね。)

ロボット介護労わる言葉もかけて欲し
苦労した祖父母の言葉子や孫に
我が色に染まって夫は老いている
【サンパウロ市 大塚弥生】
(評:亭主関白も老後は妻の色に染められて従順になるもののようですね。)

労せずに入った金に羽がある
労わられ労わり合って共白髪
盛り付けに遊び心も乗せておく
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:紅生姜、パセリ等添えて盛り付けに心配るのも楽しいもの。)

種芋は子芋育てて地にかえる
老いた身に生き方問われ絶句する
詰め甘く勝てる人生負ける人
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:あともう一歩のところで挫折する人が多い。最後の詰めが大事です。)

返事保留になって郵便舞い戻り
地の下に保存されて終了す
夜学行く孫に教える保身術
【オザスコ市 藤重昌子】
(評:一歩外へ出たら帰るまで気の許せない国に住む者にとって大事な心がけです。お祖母さまにかんぱい!!)

卒寿すぎスポーツが出来る老いの幸
ボケ防止と思えばゲートに励み出る
【セントロ桜会 中山実】
(評:ご健康第一にゲートにお励み下さい。)

残り水逃さず引き込む水不足
席三つゆずられためらうありがたさ
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:ありがたいことです。世の中には親切な人がまだたくさんいます。)

もろもろの願いかなえて石の墓
残照へ花の命を抱きながら
【サンパウロ中央老壮会 山田富子】
(評:花の命のはかなさを残照はそれとなく私たちに教えてくれる。)


第六十二回全伯川柳大会兼題成績
課題:「労る(いたわる)」及び自由吟合わせて三句

兼題賞

一位 労りの心薄れる科学の世
【ロンドリーナ市 山崎栄治】

二位 支え合う心が人の和を育て
【ロンドリーナ市 栄森さかえ】

三位 躓いた石が再起のバネとなる
【マウア・ダ・セーラ市 上口一歩】

四位 労りの心届かぬ妻認痴
【ロンドリーナ市 土川好枝】

五位 よく見れば労り欲しい人ばかり
【スザノ市 柿嶋さだ子】

六位 労りのぬくい言葉が和を育て
【ローランジャ市 那須アリセ】

七位 助け合いいたわり合った開拓期
【ソロカバ市 青井万賀】

八位 労りの言葉かけ合い老いの坂
【サンパウロ市 鈴木ふみ】

九位 人の世の宝いたわりおもてなし
【ソロカバ市 青井万賀】

十位 労って上げるつもりのお節介
【サンパウロ市 秋吉寿子】

十位 労られ労ることを忘れがち
【サンパウロ市 新井知里】

兼題特選賞

一位 よく見れば労り欲しい人ばかり
   彩を足す残り少ない地図だけど
   五線譜のリズムに今日も乗れる幸
【スザノ市 柿嶋さだ子】

二位 躓いた石が再起のバネとなり
   使命終え眠る同胞移民墓地
【マウア・ダ・セーラ市 故・上口一歩】


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