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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年11月号

2015年11月号 (2015/11/15) 俳句 (選者=樋口玄海児)


疲れ目を休める窓に蝶の舞い
春雨や一人昼餉の品増やし
お湿りに庭木生き生き蜂鳥来
アグリヨンを昨日はサラダ今日汁に
【畠山てるえ】
(評:一句目、一日の疲れで、ふと目を窓にやったら、春の蝶が恋して二羽が戯れている。それを見たら、目の疲れが取れた。その一瞬を句にした手柄。良い句になった。)

日足伸ぶ日々太りおり木綿の実
囀りを双眼鏡が捉えたる
少年は囀り捉え微笑める
囀りの枝捜す鳥園のどか
【清水もと子】
(評:一句目、パイナの太りを毎日見ておられるもと子さん。私も毎日見ておりますが、気が付きませんでした。これから気を付けましょう。)

豚去勢ついでに接木もしてゆけり
墓地参道桑の実大きく黒く熟れ
独立祭孫軍人を憧れる
顔半分黄色緑に独立祭
【猪野ミツエ】
(評:一句目、この句はブラジルの田舎の句。私も昔は豚を飼っていましたが、去勢の時は近くのカボクロにやってもらいました。その人は去勢好きでやってくれた。ブラジルの田舎の句として面白い。二句目はブラジルの二世、三世になると、まだ小さい孫など軍人に憧れるのでしょう。ブラジル移民の流れに驚く移民一世のよくできた佳句。)

遠望のイピランガ丘春の虹
移民史に輝く歳時記牛童子忌 
泥棒よけのガンソも飼ひて木藷植え
潔子の忌紫似合ひ懐しき
【香山和栄】
(評:一句目、遠くから見たイピランガ公園に春の虹が立った。春の虹の季がよく出ている。三句目、これはブラジルの田舎で見られたことを句にされた田舎訪問の授かりもの。)

夢の浜手つなぎ歩きおぼろの夜
スザノ地の日本タンポポ持ち帰る
弾丸の如吾がほほかすめ団子蜂
吾れ生まれし日一日違い瓢骨忌
【三原春風】
(評:二句目、今ではブラジル中に日本人がおりますが、ひと昔前は日本人は少なく、移住地のみだったと思います。その日本人が住んでいた場所またその後には日本にある草花や庭の木などが残っており、訪れた折に持ち帰った句。持ち帰ったものには花ばかりでなく、食べ物もあったでしょう。例えば蓬、からし菜など。日本人好みの花、食べ物など、楽しい訪問でした。)

牧守りの句集再読春を待つ
友吹きし角笛壁に春惜しむ
角笛の艶を失い岩山忌
【青木駿浪】
(評:三句目、移民一代で万の牛飼いになられた岩山さんの思い出の句集また角笛の句。彼の句集は私も二冊頂いている。思い出の句集である。)

春の昼小猿顔出す椰子の森
市営墓地誰れ彼れと会う墓参り
手巻寿司ぎょうざも手作り子供の日
バス停に遠のく新居春愁ふ
【森川玲子】

南風師墓地に淋しくサビア鳴く
悲しみも過ぎて花もて墓参り
老二人庭の花愛で春惜しむ
【原口貴美子】

昨日Tシャツ今日はマフラー春寒し
降りつづく雨に着ぶくれ老二人
寒戻る病院に老人多かりし
【矢島みどり】

囀りの声の広がる国広し
持ち味の声を発して畑サビア
一声も二声も良し畑サビア
ブラジルは明日の国よ春の星
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


バレットスペオン祭りは盛大で国際的に有名になり
ペオン祭不況の年でも伯人はお祭好きで百万人も
ペオン祭荒馬よりか近頃は荒牛に乗る人多くなり
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:そのペオン祭を見てみたくなるほど表現がお上手です。男らしいお祭りのようですね。)

雨上がり夏と思える日差し受け杖を頼りに用足しに行く
冬日より一足とびに初夏来たり晴れ渡る空に白き雲浮かぶ
朝日浴び久方ぶりに友と行く憂き世の憂さをしばし忘れて
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:憂き世の憂さを忘れるような外出。それも友と初夏はいいですね。いつも早く投稿され、嬉しく思います。)

人生は苦楽がともにつきものと吾もたがわず頑張り通す
誕生日うれしいようなわびさしもまじえて今日は九十才なり
幾たびか死線を乗り越えその度に神仏の助け感謝あるのみ
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:卒寿まで頑張られておめでとうございます。まだまだ頑張られて下さい。)

白鵬の連敗休場どうなるか力士も人の子揺れる秋場所
照の富士決定戦までよくやった負けても拍手鶴龍優勝
裏庭に濃い紫のアヤメ咲く昭和が見えるふる里みえる
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:相撲は楽しいですね。アヤメの紫の花は本当に日本を感じますね。

達筆な春の書道展友と見る生花も添え映えし書に酔ふ
おめでとう老壮の友誌五〇〇号小さいけれど大きな役目
春のひと日初出席の短歌大会見知らぬ人とも友となりうれし
【サウデ文協老壮会 山田かおる】
(評:あちこちの行事に出席され感心します。二首目の「小さいけれど大きな役目」お上手です。)

濃淡の緑葉の面が日差しうけ無数の星のごとく燦く
落ち葉掃くひたすらに掃く早朝の風ゆるやかに頬をなでゆく
掃き寄せる落葉かたはし吹き飛ばす人困らせる風のいたずら
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:よく観察されていますね。三首目の風邪のいたずら、面白いです。)

オレオレ詐欺国が違えど電話くる同じ手口に騙されまいと
七十才呆けたら大変ぬりえ買うぬりえの本を少女のように
父の日に頑固だったな父の顔泣いた日もありふと思い出す
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:呆けたら大変ですね。ぬりえは夢がありいいですね。オレオレ詐欺も怖いですね。)

街路樹の古き大木根元より切られて去りて今日が命日
クッピンに穴を開けられ大木は細かく切られトラックに乗る
街路樹が切られ我家に光射し明るくなりて温とくなりぬ
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:三首とも物語り風でたのしいです。)

どっさりと頂きし蕨遠くよりその志こころにしみる
手に重き蕨頂き友達を思い浮かべり分け合う春を
アクぬいていますと蕨さし出せばもう春ですねと笑顔の友は
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:どの歌もいいですね。わらびを見ると春を感じますね。)

遠雷の音ききたり窓近く咲くストレリチアの鎮もりふかし
はからずも次男の嫁が海苔巻をたづさえて来ぬこの日曜日
絶え間なく自動車は往来す大川の音聞く思い環状道路
【スザノ福栄会 藤田朝嘉】
(評:一種目の歌、さすがですね。)

手術あとアンチビオチコの過剰から呼吸困難におそわれしわれ
バス待てばゴミ収集車が先に来て人夫らはリッショ取りに走れり
物の値があがれば冬と相俟って朝市まわる財布も寒し
【サンパウロ中央老壮会 野村康】

売りし家に久方ぶりに吾は来ぬ植木も庭も思い出ふかし
十三人の子らを育てし喜びは老いたる今も楽しい思い出
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:十三人も子育てなさったとは考えられません。一番大事な事を頭が下がります。)

人気なき山道行きしは乙女か小さきヒールの跡がつづけり
捨てられに行くのかトラックの荷の上につながれし犬伸び上がりおり
もう止めると言いし日もあり孫娘今日シャドレスの国際名人
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:お孫さんのことおめでとうございます。観察のよく効いた一首二首です。)

生きていることのよろこび春の庭花壇に雲が影を落としつ
色ガラス透かして春陽やわらかし塔の上ゆくひとひらの雲
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:喜びの春がやって来ました。花壇のあるのは幸せですね。)

ほしき花手折らんとして爪立てど思い叶わぬ後一センチ
歳月は音なく過ぎて世の中は物騒音に明け暮れており
「もう少ししっかりしてよ」と頭を叩くやっと卒寿を迎えし吾に
【スザノ福栄会 原君子】
(評:思い叶わぬことが一センチとは、そんなことを上手に歌っていますね。)

津波にて妻子を亡くした家族らが黙祷ささぐ慰霊碑の前
目をつむり寝むりしばかりに又起きて短歌一首をたのしむ八十路
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:一首の短歌のために寝たばかりに起きるなんて、ありがたい趣味。頑張って下さい。)

桜より命短い白イッペー昨日白が今日は緑に
春なのに夏が来たかの日の光り日陰えらんで日傘とざして
春に入りサビアの声が目覚しに都会の中にも自然の恵みが
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:都会の中に自然を詠み込んだ良い歌です。)

メキシコの日語学院の基作りたる春日光子の「あかね」ひた読む
【藤田朝壽】

◎この度、わが熟年短歌会の山田かおるさんが日本第三十回の国民文化祭に入選されました。
三歳児ふるさと出でて卒寿まで生かされしこのブラジルが好き
【山田かおる】
謹んでお祝い申し上げます。


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


人並みに生き来しことにただ感謝
浪花節唄うも聞くも涙して
過ぐる日々早くて我の老いを知る
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:「歳月人を待たず」という。それにしても早すぎると思う歳月に己の老いを知らされる。)

経済の再生なるやTPP
内助の功光り輝くノーベル賞
億の民救い医学にノーベル賞
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:三億人の人命を救ったとされる熱帯病の特効薬を開発した大村智教授の受賞は人命に関する事だけにひとしおの喜びであった。)

テオティワカン消えた古代の都市の謎
日墨の絆高めるアコンカグア
メキシコの歴史遺跡に偲ばれる
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:遺跡を巡りながらメキシコの歴史に思いを深める作者の知性に感動しました。)

アチバイア花といちごで盛り上がる
スポーツ仲間集えば老も若返る
高齢化杖に足を支えられ
【セントロ桜会 中山実】
(評:足の弱い人にとって杖は離せないものの一つである。杖を頼りに外に出て老いを楽しむ人は多い。)

つまみ食いこれも女性の得意癖
おにぎりも十指揃えば丸く出来
試食して美味しいですねと帰る客
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:スポンサー側にとっては少々期待外れといったところ。でも宣伝費としては案外安上がりなのかも知れない。)

この星に平和憲法残したい
身の丈で生きてすっきり老いている
金持ちも品格だけは買えずいる
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:人生にはお金で買えないものがある。品格もその一つだと言えよう。)

友だちの髪型そっくり真似てみる
進む道自分で決めて悔はない
大家族互いに育つ助け合い
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:教え合い助け合う事で家族は皆健勝に育って行くもの。)

外へ出たい戸開けてよと猫せがむ
インフレー調べまくって野菜買う
【サンパウロ中央老壮会 寺田雪恵】
(評:高値に目を見張りながらより安価なものをと調べ歩くのも主婦業の一つである。)

追従(ついじゅうの明るい心で世が開け
年金を片手に枠を組む余生
ゆっくりと黄昏道を辿る我
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:長くて短いたそがれ道。ゆっくりゆっくり参りましょう。)

食足りて衣住が足りて和が崩れ
便利さが庶民の暮らしを暗くする
平和です父は父たり子は子たり
【サンパウロ市 高田早波】
(評:健全な家族の象徴。円満な家族がおのずと見えて来るようです。)

過去にある夢見た時代なつかしく
親切が仇となる世の恐ろしさ
箸を持つ老移民の節くれ手
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:節くれた手の尊さ。移民の歴史が刻まれている。)

選ばれて喜ぶ人や怒る人
鉢植えにされた野花の美しさ
ラーメン屋となり合わせて味勝負
【オザスコ市 井上風車】
(評:「さぁ、どちらに軍配が上がるかな」正に味で勝負といったところ。)

昼近し時計ならずも腹が鳴る
保ち保たれ過ぎし来し日々なつかしく
老いの坂登りつときどき振り返る
【オザスコ市 太田孝江】
(評:振り返りつつゆっくり登る老いの坂もまた楽しいもの。)

山に野に若葉茂れば気もはずむ
自他ともに喜びあえる物つくり
妙案も表現不足で誤解され
【スザノ市 飛松信雄】
(評:口下手な人にとっては大きなマイナスである。)

手鍋下げてもそんな時代もありました
大切に保管し過ぎて場所忘れ
保養なら我が家に限る外になし
【オザスコ市 おちば光子】
(評:やっぱり我が家。心置きなくのびのびできる我が家に勝る所なし。)

少し春ときめきくれた良い出会い
きっとまた会いましょうねと五円玉
それぞれの感性生き生き句座はずむ
キーたたく指に押されて行く世紀
ナツメロが映す遠い日の灯影
【柿嶋さだ子】

◎席題「有難う」 清子出題
健康とそこそこの金あり有り難い【ふみ】
年金で悠々自適有り難い【ふみ】
有り難く頂く生命(いのち)で日々新た【博】
有り難し満ちし暮らしを送る日々【博】
ありがとうおぼえていつも頭下げ【実】
ありがとの心で生きて日々楽し【実】
バスで席譲られ感謝ありがとう【清子】
年金で余生ほくほく有難い【清子】


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