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熟年クラブ連合会
     俳句・短歌・川柳・詩  (最終更新日 : 2019/02/15)
2015年12月号

2015年12月号 (2015/12/14) 俳句 (選者=樋口玄海児)


石鹸の香のする乙女夏隣り
芹摘んで母嫁の夕餉すまし汁
教はりし父よりうまき接木かな
三番茶摘んだら嫁に行くと云ふ
【猪野ミツエ】
(評:一句目、季語の夏隣りがよくきいている句。ブラジルの夏隣りは夏のような暑さである。その一日の仕事が終わりシャワーを浴びた後の娘に香りを感じたところをよくつかんで句にした。よく出来ている。)

朝寒やピンガに落して飲むカフェ
木藷とバナナあるブラジルは旨し国
穴深く埋めねば絶へぬ露の草
黄イッペー紫濃し野朝顔
【三原春風】
(評:一句目、ブラジルの冬の朝は暑さになれている身にはすこぶる寒さを感じる。特に老いてくると体のぬくもる飲み物をほしくなる。そこでピンガの味を覚えた老移民はピンガに落してぐいと飲む。美味しいかぎり。)

初参加の人も多かり念腹忌
子供の日ヘボ句ひねりて暮れにけり
墓参り今年も夫と参る幸なりし
父母弟妹眠る霊園春の雨
【矢島みどり】
(評:一句目、みどりさんはブラジルの句会では新しい人のようだ。ブラジルで念腹忌を知らない人はないだろう。それに初参加されて驚かれた句。新しい人の句ではよく出来ている。これを機会に多くの句会に出て多くの句を作られることを望む。)

雨上がり透き通る色空のあり
文明よ携帯電話の蝉しぐれ
涼しい風卒寿をかさね供養の日
【山田富子】

アマゾンの森の監督樹木の日
パウブラジル小庭に植えし樹木の日
旅たのしい朝寝の後のシャワー浴ぶ
【森川玲子】

牛飼いは朝寝も出来ぬ乳しぼり
旨かりし移民の初期の草の餅
アマゾンの樹木切り悲し樹木の日
【原口貴美子】

草餅の失敗作を喜ばれ
切り株をぬぐえば木目春の塵
朝寝して胃の腑に流す濃きカフェー
【畠山てるえ】

念腹忌の賞の黄菊を佛前に
ウイラプルー(楽土鳥)命あふるる森ありて
ウイラプルーに誘はれ森より帰り来ず
【香山和榮】

草萌や六角敷石残る街
ベンテビィマカロン喰えて飛び去りぬ
木の実割る仕事のカボクラ森林農
【清水もと子】

アバカテの花屑の降る野良の径
サボテンの花に明けたる一山家
マンガ樹に声を休めて昼サビア
サボテンの花に貧しき一山家
葡萄園のマリタカの群脅し銃
【樋口玄海児】


短歌 (選者=藤田朝壽)


道の辺にタンポポの黄色あいらしく遂に手折りて一輪ざしに
夏時間朝の六時はまだ暗い自分に活入れサア体操だ!
故里を去り過ぎ行きて半世紀血縁も減り音信も減り
【セントロ桜会 大志田良子】
(評:タンポポに心をよせ詩心がある歌ですね。)

孫娘二十三才の誕生日佳き日集いて楽しき一日
老祖父母心づくしのお祝いを素直によろこぶ良き娘なり
いつの日か花嫁姿見たきもの胸に夢抱き九十五の祖母
【プラッサ・ダ・アルボレ老壮会 矢島みどり】
(評:夢はきっと叶うことでしょう。)

卒寿すぎ団体旅行乗下車に回りの人が手を貸してくれ
旅行してポストに着いて食事する吾れ責任者無料と言われ
バスの中吾れ乗る前にだれかしら良い場所吾れに取ってくれてる
【バレットス寿楽会 池田正勝】
(評:囲りの人たちの優しさといたわりが表れてほのぼのとします。表現がいいですね。)

鳥達は朝早くから騒いでる何処に行くのか楽しそうなり
病院の待合室でスマートホン気をまぎらわすのかみんな打ってる
プリマベーラ色あざやかに咲き誇る心をいやす春の日の花
【サンパウロ中央老壮会 神田桂子】
(評:二首目の歌、よく観察していますね。)

初めての習字の時間前向きにいそしむ心は続くなりやと
孫恋しあと二ヶ月で誕生日うぶ声あげたあの日あの時
今日明日と熟年クラブ活発に年を重ねて更に未来へと
【サンパウロ中央老壮会 原野初子】
(評:初めての原野さん。みなよく出来ていて嬉しいです。)

「戸塚マリ先生を偲んで」
先生に背筋のばせと指摘され今日も胸張り吾れ歩むなり
舞台にてタンゴ踊らる先生は八十歳とは思えぬステップ
アーの発声我と競いて敗けた時くやしそうな師の若き顔
【サンパウロ中央老壮会 西原訓子】
(評:先生の御冥福を心からお祈り申し上げます。)

寒暖のくり返す後今日も雨天候不順季節の変り目
盆供養伯人導師の先導で聖経読誦日伯両語で
月火曜NHK短歌に俳句あり楽しみなれど学ぶ間もなし
【インダイアツーバ親和会 野村文恵】
(評:NHKのこの番組はありがたいです。勉強になります。)

アルバムを開けば十九の花嫁が六十年前の私の笑顔
結婚の三三九度の式あげて新婚旅行も知らぬスタート
恙無く二人三脚六十年ゆずり合いつつ支え合いつつ
【サンパウロ中央老壮会 三宅珠美】
(評:本当におめでとうございます。)

フィナードをお盆と呼んで墓参り夏の訪れひそかに感じ
夏時間時計の針は合わせても体の時計なかなか合わず
長雨でうっとうしさを過ごす日々恵みの雨となってくれるか
【サンパウロ中央老壮会 尾身千枝子】
(評:雨の日は本当にうっとうしいですね。早くこの水不足が消えますように。)

卒寿より習いし短歌好きになり考えながら日々励みおり
レジストロの灯籠流しに行きし娘のみやげは名物おばあ茶ん
日本より短歌入選知らせあり感動のあまり抱きしめ拝む
【サウーデ文化協会老壮部 山田かおる】
(評:三才で渡伯した山田さん。今年は本当におめでたい年になり、私も嬉しいです。)

隣家に飼われているらし名の知らぬ鳥の囀りわれをなぐさむ
ユーカリの枝先に丸き蜂の巣あり近づく雨に揺れにゆれおり
【セントロ桜会 富樫苓子】
(評:どちらの歌も情景がよく見え、よい歌ですね。)

誘われて温泉旅行来てみれば小さなピッシーナ(温泉)二つあるだけ
和やかにみんなで入る温泉は小さくてよかった絆ふかまり
湯につかり友と語らう楽しさに日々の疲れもいやされてゆく
【サンパウロ中央老壮会 山城みどり】
(評:忙しい中の温泉旅行。いやされて絆も深まりよかったですね。)

歌友らの好むワラビを独り野に採りいて喉の乾きおぼゆる
混血の郵便局の職員はわれと親しく未婚の女性
前山のユーカリひと本丈高しウルブーはいつも枝に止まりぬ
【スザノ福栄会 藤田朝日子】
(評:沢山のワラビを頂き、春が一度に訪れ嬉しかったです。ありがとうございました。)

購いし発売切手の美しさ文書くペンの捗り早し
石鎚のふもとの郷里をたたえいし姑は帰郷もならず逝きたり
月の夜を賑わい渡る鳥の声フェスタ帰りの若者に似る
【スザノ福栄会 寺尾芳子】
(評:月の夜の鳥をフェスタ帰りの若者に似るとは発想が奇抜でたのしいですね。)

子や孫に叱られながら水仕事われも老いたり先行き思う
足弱くなりし二人の毎日を楽しませてくれるNHKテレビ
雨降って涼しくなりしアパートで夫と二人の静かな暮らし
【スザノ福栄会 杉本鶴代】
(評:NHKテレビはありがたいですね。私も十九年間見続けです。)

よい便り来る筈もなき歳なれどポストの音に胸がときめく
八十路には八十路の楽しみ朝早くベッドの上で自由体操
つややかに一切れづつが皿にありピンクサァモンの売り場楽しむ
【スザノ福栄会 青柳房治】
(評:いくつになられても胸のときめくことがあって素敵ですね。)

外に出て春の日を浴びアパートの上の青空夫とながむる
結婚した六十二年を夫とありこの幸せをかみしめながら
【スザノ福栄会 青柳ます】
(評:末長く御主人と共にお幸せに。)

心やすき歌友なれども吾が評の過ぎたるかとも夜床に悔ゆる
足病みて欠席投稿つづく友つもる話の出来る日を待つ
わんぱくな男孫二人をあづかる日「嵐がくるよ」と部屋かたづける
【スザノ福栄会 原君子】
(評:男孫二人をあずかる日「嵐がくるよ」は実感があり楽しい歌ですね。)

庭園に松見えたれば邦人の屋敷ならんと一人諾う
賞味期限あやぶむ娘は冷蔵庫の福神漬の心配をする
「ながし」とはピーアの事よと娘に教え「流しのタクシー」にわれ首ひねる
【サンパウロ中央老壮会 野村康】
(評:日本語を教えるのは大変なことですね。)

前選者藤田朝壽さん出版す九十過ぎて立派な本を
初夏の風全身で受けキリスト像厳しい顔でリオを見下ろす
【藤田朝壽】


川柳 (選者=柿嶋さだ子)


貧困が人を優しく強くする
飽食で育ち人情わからない
母奮闘貧の苦労を子も背負う
【サンパウロ中央老壮会 中西笑】
(評:お母さんの苦労を見て育ったお子さんたちもきっと強くて優しい人たちに違いない。)

百二十年皇族来伯晴れやかに
誇りある文化勲章光る人
コツコツと陰日向なく光る人
【サンパウロ中央老壮会 鈴木ふみ】
(評:そんな人は確かにいる。そんな奇特な人を見ると思わず眩しさを感じさせられる。)

入れ墨をボディーアートと称す馬鹿
評論家知識豊富で知恵乏し
旅と酒こよなく愛する君と僕
【サンパウロ中央老壮会 角谷博】
(評:得難い相手である。旅の悦びが伝わってくる。)

健康セミナー知った顔が皆来てる
人生の最後は笑って大往生
ばあちゃんと駆け来る孫の輝く目
【サンパウロ中央老壮会 坂口清子】
(評:「輝く目」に孫とおばあ様の幸せが満ちている。)

春愁や旅行中にも威張る夫
団体ツアー心身共に疲れ気味
ついて行く歳ではないと大反省
のんびりと出来るはやっぱり我が家だけ
【サンパウロ中央老壮会 新井ちさと】
(評:メキシコへの観光参加者九十名。思ったより大変な旅でした、と言う作者の感想が全句に見られて佳。)

日本が今度も体操で金メダル
さすが日系パルケ前田は南米一
テレフエリコパルケの眺めの素晴らしさ
【セントロ桜会 中山実】
(評:ペスカ前田から始まって、大きく進展。今では南米一とも言われるパルケ前田への観光を楽しむ作者。)

九回の裏で燃えてる勝負の火
友が友呼んで陽気な人生譜
【カンピーナス明治会 塩飽博柳】
(評:友情は心の触れ合いである。嘘偽りがあっては友情は保てまい。)

躾糸母のめりはり効いている
丁寧に生きよう限りある命
高齢化少子化次の化が怖い
【サンパウロ中央老壮会 藤倉澄湖】
(評:ヒト科のエゴに依る厳しい変化が推測されますね。)

故郷に住み家もないのにバス通る
リオ五輪総てに頑張り欲しいもの
祖父だけで孫六人の歳となり
【レジストロ春秋会 小野浮雲生】
(評:お孫さんたちの歳に負けぬよう健康専一にこれからも頑張って下さい。)

じわじわと友の親切身にしみる
じわじわと地球異変が攻めてくる
めりはりをきかせ主婦の座守りぬき
【サンパウロ中央老壮会 渡辺文子】
(評:主婦の座は厳しい。余程の集中力が無くては守りきれない。)

惜しみない愛が平和のもととなる
ほめられて大器晩成型が伸び
完璧な妻いて帰宅恐怖症
【サンパウロ中央老壮会 彭鄭美智】
(評:妻の寝静まるのを待って、そろりそろりと忍び足で――。)

悦びを手振り身振りで話す人
盛り上がる土の下の芽の強さ
子や孫に逢う悦びの一人旅
【オザスコ市 太田孝江】
(評:しばらく振りで逢う孫たちを目に浮かべながらの満悦の旅である。)

ミカン山盛り一(ひと)山幾らの叩き売り
苦労むなしく骨折り損と知った悔
柳友逝きて句作の力抜けたまま
【オザスコ市 林久美】
(評:天上からお友達もエールを送っています。頑張って下さい。)

嬉しい嬉しくもない誕生日
徳なしもわたる人生不自由なし
老いの口何を言っても愚痴になる
【オザスコ市 斉藤晃伯】
(評:未来よりも過去を言いたがる老人が多い。我慢して聞いてあげよう。)

◎席題「細腕」 笑出題
細腕は草食男子の屋号なり【博】
細腕と云えども強い母の愛【博】
細腕と侮るなかれ実業家【ふみ】
細腕が育てた子等がくれる幸【ふみ】
細腕と油断してたら殴られた【清子】
細腕と云えども夫より強い腕【清子】
細腕と云うけど俺より強い腕【実】
年老いて自慢の腕もやせ細る【実】
泣き笑い細腕奮闘物語り【笑】
母さんの笑顔が光る細い腕【笑】
細腕の支えが光る開拓史【柿嶋さだ子】
自分史に母の細腕生きている【柿嶋さだ子】
裏おもて同じ色もつ友が好き【柿嶋さだ子】
深みある言葉余韻となって生き【柿嶋さだ子】
春が行く早さ人の逝く早さ【柿嶋さだ子】
笑みくれる人いて一人の喪があける【柿嶋さだ子】
まだ少し生きたし趣味の彩を足し【柿嶋さだ子】


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